Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0103) MOANIN' IN THE MOONLIGHT / Howlin' Wolf 【1959年リリース】

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高校生の頃にRobert Johnson〔ロバート・ジョンソン〕の「KING OF THE DELTA BLUES SINGERS, VOL. II」を輸入レコード店の店主に進められて購入したことが筆者とブルースの出会いである。


その後、Muddy Watersマディ・ウォーターズ〕、Jimmy Reed〔ジミー・リード〕、Sonny Boy Williamson II〔サニー・ボーイ・ウィリアムソンII〕等を聴いて、ロック・ファンだった筆者も一端のブルース・マニアになったつもりだったのだが、Howlin' Wolf〔ハウリン・ウルフ〕を聴いた時はちょっとした戸惑いがあった。


Muddy Waters やJimmy ReedやSonny Boy Williamson IIのレイドバックした音は特にこれと言った緊張感を強いられることなくゆったりとした気分で聴くことができるのだが、 Howlin' Wolfの癖の強い潰れた濁声と190cmを超える巨体から響き出るシャウトは強烈で、「俺のブルースがお前みたいな小僧に解るのか?」と脅迫されているようで腰が引けてしまったのである。


今回取り上げたHowlin' Wolfの1stアルバム「MOANIN' IN THE MOONLIGHT」の一曲目、"Moanin' at Midnight"で聴くことが出来る彼の歌声はその芸名のとおり、正に「遠吠えする狼」そのものだ。


実は、Robert Johnsonを初めて聴いた時も人間離れした彼の歌声に怖さを感じて腰が引けたのだが、聴いているうちに彼の呪術にかけられるかの如く、直ぐにその深みに嵌り込んでいった。


ところが、Howlin' Wolfの場合は彼の魅力に気付くのにもっと時間がかかった。


Howlin' Wolfを聴き始めた頃はあの濁声とシャウトがどうにも馴染めなかったのである。


ところが、不思議なもので、聴き続けるうちに、あの濁声とシャウトに魅力を感じるようになってきたのである。


当時はインターネットで簡単に試聴できるような時代ではないので、レコードやCDを買う時は一か八かの勝負である。


もし、ファースト・インプレッションがNGの場合でも、「買ったレコードは何とかして好きにならなければ」という思いでこのアルバムを聴き続けたことが効を奏したのだろう。


ただし、筆者が今の時代ように、簡単に音源を試聴できる時代にHowlin' Wolfに出会っていたら彼の音楽を聴き続けることは出来なかったような気がする。


技術の革新により音楽は昔よりも身近なものになったが、それによって失われた物もあるような気がしてならない。

 

#0102) THE DOORS / THE DOORS 【1967年リリース】

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THE DOORS〔ザ・ドアーズ〕のことを知った切っ掛けは、THE CULT〔ザ・カルト〕のIan Astbury〔イアン・アストベリー〕が洋楽雑誌(たぶん、MUSIC LIFE)でTHE DOORSを好きだと言っていた記事を読んだ時だったと思う。


3rdアルバムの「ELECTRIC」以降はバリバリのハード・ロック・バンドに路線変更したTHE CULTだか、その活動の初期はポジティヴ・パンクというジャンルにカテゴライズされており、1970年代後半の英国で興ったパンク・ムーヴメントに触発されて活動を始めたバンドのはずである。


パンクに触発されて活動を始めたアーティストはパンクよりも前の時代(1960年代~1970年代前半)のアーティストを否定するのが普通の時代だったので、Ian Astburyが躊躇うことなく「THE DOORSが好きだ」と言っているのを聞いて少し驚いた記憶がある。


しかし、後々、徐々に分かってきたのだが、THE DOORSというバンドはパンク出身のアーティストからラヴ・コールを送られることが多い。


ECHO & THE BUNNYMEN〔エコー&ザ・バニーメン〕もTHE DOORSからの影響を公言していたし、TELEVISION〔テレヴィジョン〕に至っては「THE DOORSがレコードをリリースしていたレーベルだから」という理由でエレクトラと契約を交わしている。


当時、ポストパンクやニュー・ウェーヴを好んで聴いていた筆者にとって、THE DOORSは避けて通れないアーティストとなった。


そして、当時、毎週欠かさず見ていた洋楽情報番組のベストヒットUSATHE DOORSの"Light My Fire"を聴いて、そのただならぬ気配に完全にやられたことにより購入に至った一枚が今回取り上げた1stアルバムの「THE DOORS」である。


このアルバムは、Bob Dylanボブ・ディラン〕の「HIGHWAY 61 REVISITED」、T. REX〔T・レックス〕の「ELECTRIC WARRIOR」、David Bowieデヴィッド・ボウイ〕の「ZIGGY STARDUST」(原題は長いので省略)、THE VELVET UNDERGROUND〔ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〕の「& NICO」(これも省略)、KING CRIMSONキング・クリムゾン〕の「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」等と並んで、リアルタイムのロックだけには飽き足らず、ロックの歴史を辿り始めた頃に聴き倒したアルバムであり、筆者にとって非常に思い入れの深いアルバムである。


THE DOORSのアルバムとしては、後にアルバイトで自分の自由になるお金が得られるようになってから買った2ndアルバムの「STRANGE DAYS」や3rdアルバムの「WAITING FOR THE SUN」の方が作品としての完成度が高いと感じたのだが、何しろ感受性の豊かな年頃(高校1年生頃)に聴き倒した1stの方が自分の中に残された爪痕が深い。


このアルバムは、飛び切りキャッチーな"Light My Fire"や、映画『地獄の黙示録』に使われた"The End"が有名なので、そこに注目が集まり易いアルバムだが、オープニング曲の"Break On Through (To The Other Side)"からエンディング曲の"The End"までTHE DOORS流の美学を貫き通したトータル・コンセプト・アルバムだと思って筆者はこのアルバムを聴いている。


一曲たりとも聴き逃すことの出来ないアルバムであり、全ての曲が収まるべきところに収まっているアルバムなので、ラストを飾る"The End"は11分を超える大作であるにも関わらず、その長さを感じたことが無い。


そして、パンク以降のロック・シーンでそのジャンルを確立させたゴシック・ロックのルーツは諸説あるが、筆者はこのアルバムがその源流になったのではないかと推測している。

 

#0101) 13TH FLOOR RENEGADES / LAST GREAT DREAMERS 【2018年リリース】

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2018年現在、筆者は所謂アラフィフと呼ばれる年齢である。


中学生の頃にロックを知って以来、趣味の音楽鑑賞は現在でも続いているのだが、この歳になると十代の頃のように熱くなれるアーティストにはなかなか出会えなくなった。


ところが、最近、色々なロックン・ロール・バンドの名前をキーにしてインターネットで情報を検索していたところ、やけに気になるバンドを見つけてしまった。


そのバンドの名はLAST GREAT DREAMERS〔ラスト・グレート・ドリーマーズ〕。


自らを「最後の偉大なる夢追い人たち」と名乗るそのバンド名が気に入り、早速YouTubeで聴いてみた(観てみた)のだが、あまりにも筆者のストライク・ゾーンだったので久々にCDを購入してしまった。


それが今回取り上げたLAST GREAT DREAMERSの4thアルバム「13TH FLOOR RENEGADES」だ。


無節操に色々な音楽を聴き漁る筆者だが、「最も好きなジャンルは何か?」と問われたなら、必ず「ロックン・ロール」と答えるだろう。


それも、ポップで、キャッチーで、ちょっと切ないメロディを聴かせてくれるロックン・ロールが最高に好きなのである。


そういうロックン・ロール・バンドは、グランジオルタナティヴのムーヴメントが勃発してからは少なくなった。


ムーヴメントの終焉以降、スウェーデンからはBACKYARD BABIES〔バックヤード・ベイビーズ〕 、THE HELLACOPTERS〔ザ・ヘラコプターズ〕、HARDCORE SUPERSTAR〔ハードコア・スーパースター〕、米国からはBUCKCHERRY〔バックチェリー〕、BULLETS AND OCTANE〔バレッツ・アンド・オクターン〕等、活きのいいロックン・ロール・バンドも出てくるようになった。


いずれのバンドも筆者は喜んで聴いていたのだが、これらのバンドはハード・ロックヘヴィ・メタルからの影響が少なからずあり、筆者のストライク・ゾーンからは微妙にずれていたのである。


筆者のストライク・ゾーンは既に示したように、ポップで、キャッチーで、ちょっと切ないメロディを聴かせてくれるロックン・ロールであり、ハード・ロックヘヴィ・メタルからの影響が無い方が好ましい。


具体的なバンド名を挙げるならHANOI ROCKSハノイ・ロックス〕やTHE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕がそれにあたる。


LAST GREAT DREAMERSも正にその系譜に位置するバンドなのである。


今のところバンドのプロフィールが殆ど判らないのだが、バンドのサイトを見ると英国のバンドであることが分り、バイオグラフィからはHANOI ROCKSやTHE DOGS D'AMOURから影響を受けたという文を読み取ることが出来る。


HANOI ROCKSのようなパンキッシュなテイストやTHE DOGS D'AMOURのようなブルージーなテイストは薄いのだが、初期のTHE BEATLESザ・ビートルズ〕やCHEAP TRICK〔チープ・トリック〕に通ずるパワー・ポップなテイストが心地良い。


SLADE〔スレイド〕やSWEET〔スウィート〕に通ずるグリッター感も薄っすらとある。


筆者は、1980年代の英国にいた知る人ぞ知るグラム・ロックン・ロール・バンドTHE BABYSITTERS〔ザ・ベビーシッターズ〕を思い出してしまった。


最近少しずつLAST GREAT DREAMERSのことが分かってきたのだが、どうやらそれほど若いバンドではなさそうだ。


ミュージック・ヴィデオに写っているメンバーを見ると、筆者とそれほど歳が変わらなさそうである。


1stアルバムのリリースが1994年なので、キャリア20年以上のベテランである。


久々にCDを集めてみたいと思えるバンドに出会えた。


今後も息の長い活動を期待する。

 

 

#100.5) 当ブログにおけるアーティスト名と作品名の表記方法

当ブログでアーティスト名および作品名を記述する時の表記について纏めておく。

アーティスト名の表記
バンド名およびユニット名 全て大文字で記述

THE ROLLING STONES

LED ZEPPELIN

BRINSLEY SCHWARZ ※1)

THE JEFF BECK GROUP ※2)

EMERSON, LAKE & PALMER ※3)

TOM PETTY & THE HEARTBREAKERS ※4)

BoDEANS ※5)


※1)ミュージシャン名がバンド名またはユニット名になっている場合はミュージシャン名を全て大文字で記述する。

※2)ミュージシャン名がバンド名またはユニット名の一部になっている場合はミュージシャン名も全て大文字で記述する。

※3)複数のミュージシャン名がandで繋がる場合は&(アンパサンド)を用いる。

※4)ミュージシャン名とバンド名またはユニット名がandで繋がる場合は&(アンパサンド)を用いる。

※5)例外的に小文字で記述する場合もある。


記事の中で初めてそのバンド名またはユニット名を記述する場合は下記の書式でアルファベット表記とカタカナ表記を並記する。

書式: アルファベット表記〔カタカナ表記〕

例1)THE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ

例2)THE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド

例3)DEEP PURPLE〔ディープ・パープル〕

バンド名またはユニット名に定冠詞のTHEが付く場合、省略せずに必ず「ザ」または「ジ」と記述する。

ミュージシャン名 頭文字は大文字、他は小文字で記述

Brinsley Schwarz

Morrissey

Blind Lemon Jefferson

Paul McCartney ※6)


※6)例外的に頭文字以外を大文字で記述する場合もある。


記事の中で初めてそのミュージシャン名を記述する場合は下記の書式でアルファベット表記とカタカナ表記を並記する。

書式: アルファベット表記〔カタカナ表記〕

例4)Brinsley Schwarz〔ブリンズリー・シュウォーツ〕

作品名の表記
アルバム名およびEP名 全て大文字で記述
鍵括弧で挟む

「PLEASE PLEASE ME」

THE ROLLING STONES

「McCARTNEY II」 ※7)


※7)例外的に小文字で記述する場合もある。

曲名 単語の先頭文字は大文字、他は小文字で記述
一重引用符で挟む

"Please Please Me"

"Walking The Dog"

#0100) GOLD: 35TH ANNIVERSARY EDITION / CARPENTERS 【2004年リリース】

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このブログではグレイテスト・ヒッツ・アルバム(所謂「ベスト・オブ・アーティスト名」的なアルバム)を殆ど取り上げていない。


何故なら、グレイテスト・ヒッツ・アルバムはレコード会社による編集盤が多く、オリジナルのスタジオ・アルバムと比べると、そのアーティストの意向が反映されていないような気がするからだ。


しかし、アーティストのタイプによっては、オリジナルのスタジオ・アルバムを聴くよりも、先ずはグレイテスト・ヒッツ・アルバムを聴いて、その後、オリジナルのスタジオ・アルバムを辿るという聴き方をした方が良いケースもある。


例えば、CARPENTERSカーペンターズ〕は今回取り上げた「GOLD: 35TH ANNIVERSARY EDITION」という非常に優れたグレイテスト・ヒッツ・アルバムがあるので、これからCARPENTERSを聴いてみたいと思っている人には、先ずはこれを聴くことをお勧めしたい。


筆者はCARPENTERSをリアルタイムで聴いた世代ではないので、CARPENTERSの曲を知ったのはけっこう後になってからだった。


筆者が洋楽を聴き始めて少し経った頃にKaren Carpenter〔カレン・カーペンター〕は他界しており、CARPENTERSに対しては前の時代のアーティストという印象があった。


しかし、1980年代も後半になって、ふとしたことからCARPENTERSの楽曲を聴くことになる。


当時、付き合っていた年上の彼女がCARPENTERSのファンであり、彼女の車の助手席に座っている時にCARPENTERSの楽曲を聴く機会を得たのである。


ちなみに彼女は日本の歌謡曲やニュー・ミュージックを中心に音楽を聴いている普通の女子だったのだが、洋楽ではCARPENTERSABBA〔アバ〕を好んで聴いていた。


とにかく筆者は彼女のおかげでCARPENTERSの楽曲を何の予備知識もないまま聴くことが出来たわけだが、その完成度の高さに驚かされた。


キャッチーなメロディとそれを引き立てる完璧なアレンジ、そしてKaren Carpenterの美しいアルトとその歌唱力、という具合に足りないものが何もないのである。


更に付け加える魅力としては、Karen Carpenterの聴きとり易く美しい英語の発音だろう。


まるで英語の先生のようである。


CARPENTERSくらい名曲の多いアーティストのグレイテスト・ヒッツ・アルバムとなると、どれを聴いても似たようなものだと思うのだが、Amazon Music Unlimitedで最も見つけ易かったのがこのアルバムだった。


収録曲の全てが名曲だが、とりあえず一曲だけ聴いてみたい人は、1995年にテレビドラマ『未成年』のエンディング曲として使われた曲で、Karen Carpenterが最も愛した曲と言われている"I Need To Be In Love"(邦題:青春の輝き)を聴いてみることをお勧めする。