THE DOORS〔ザ・ドアーズ〕のことを知った切っ掛けは、THE CULT〔ザ・カルト〕のIan Astbury〔イアン・アストベリー〕が洋楽雑誌(たぶん、MUSIC LIFE)でTHE DOORSを好きだと言っていた記事を読んだ時だったと思う。
3rdアルバムの「ELECTRIC」以降はバリバリのハード・ロック・バンドに路線変更したTHE CULTだか、その活動の初期はポジティヴ・パンクというジャンルにカテゴライズされており、1970年代後半の英国で興ったパンク・ムーヴメントに触発されて活動を始めたバンドのはずである。
パンクに触発されて活動を始めたアーティストはパンクよりも前の時代(1960年代~1970年代前半)のアーティストを否定するのが普通の時代だったので、Ian Astburyが躊躇うことなく「THE DOORSが好きだ」と言っているのを聞いて少し驚いた記憶がある。
しかし、後々、徐々に分かってきたのだが、THE DOORSというバンドはパンク出身のアーティストからラヴ・コールを送られることが多い。
ECHO & THE BUNNYMEN〔エコー&ザ・バニーメン〕もTHE DOORSからの影響を公言していたし、TELEVISION〔テレヴィジョン〕に至っては「THE DOORSがレコードをリリースしていたレーベルだから」という理由でエレクトラと契約を交わしている。
当時、ポストパンクやニュー・ウェーヴを好んで聴いていた筆者にとって、THE DOORSは避けて通れないアーティストとなった。
そして、当時、毎週欠かさず見ていた洋楽情報番組のベストヒットUSAでTHE DOORSの"Light My Fire"を聴いて、そのただならぬ気配に完全にやられたことにより購入に至った一枚が今回取り上げた1stアルバムの「THE DOORS」である。
このアルバムは、Bob Dylan 〔ボブ・ディラン〕の「HIGHWAY 61 REVISITED」、T. REX〔T・レックス〕の「ELECTRIC WARRIOR」、David Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕の「ZIGGY STARDUST」(原題は長いので省略)、THE VELVET UNDERGROUND〔ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〕の「& NICO」(これも省略)、KING CRIMSON〔キング・クリムゾン〕の「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」等と並んで、リアルタイムのロックだけには飽き足らず、ロックの歴史を辿り始めた頃に聴き倒したアルバムであり、筆者にとって非常に思い入れの深いアルバムである。
THE DOORSのアルバムとしては、後にアルバイトで自分の自由になるお金が得られるようになってから買った2ndアルバムの「STRANGE DAYS」や3rdアルバムの「WAITING FOR THE SUN」の方が作品としての完成度が高いと感じたのだが、何しろ感受性の豊かな年頃(高校1年生頃)に聴き倒した1stの方が自分の中に残された爪痕が深い。
このアルバムは、飛び切りキャッチーな"Light My Fire"や、映画『地獄の黙示録』に使われた"The End"が有名なので、そこに注目が集まり易いアルバムだが、オープニング曲の"Break On Through (To The Other Side)"からエンディング曲の"The End"までTHE DOORS流の美学を貫き通したトータル・コンセプト・アルバムだと思って筆者はこのアルバムを聴いている。
一曲たりとも聴き逃すことの出来ないアルバムであり、全ての曲が収まるべきところに収まっているアルバムなので、ラストを飾る"The End"は11分を超える大作であるにも関わらず、その長さを感じたことが無い。
そして、パンク以降のロック・シーンでそのジャンルを確立させたゴシック・ロックのルーツは諸説あるが、筆者はこのアルバムがその源流になったのではないかと推測している。