筆者がロックを本格的に聴き始めたのは中学生だった1982年頃である。
英国でパンク・ムーヴメントが勃発したのは1977年なので、それから僅か5年後くらいに筆者はロックを本格的に聴き始めたことになるのだが、当時を思いだしてみると、1982年頃にはパンク・ムーヴメントの爪痕は殆ど残っていなかったような気がする。
もちろんアンダーグラウンドなシーンではポストパンクやニュー・ウェイヴにパンクの血が脈々と受け継がれていたわけだが、ロックを聴き始めた当時の筆者が洋楽雑誌を見て興味を惹かれるのはパンクのような反体制的なジャンルとは真逆のDURAN DURAN〔デュラン・デュラン〕やSPANDAU BALLET〔スパンダー・バレエ〕といった煌びやかなニュー・ロマンティック系のアーティストだった。
ただし、「パンク」というキーワードは当時の洋楽雑誌にチョイチョイ出てくるので、少し前の英国でパンク・ムーヴメントなる「ロック改革」のような一大事件が興っていたことは自然と知るようになった。
そうなると、パンクという音楽を聴いてみたくなり、THE CLASH〔ザ・クラッシュ〕の「LONDON CALLING」やTHE JAMの「THE GIFT」を買って聴いてみたのだが、「パンク=反体制」、「反体制=過激」というイメージからは遠い感じのする、かなりしっかりとした真っ当な音楽であることに戸惑いを感じたのである。
今思うと、「LONDON CALLING」はともかく、「THE GIFT」は1982年のリリースなので、パンク・ムーヴメントが完全に終息した後のアルバムであり、チョイスを間違えたと言えるだろう。
そんな時に出会ったのが英国3大ハードコア・パンク・バンドのDISCHARGE〔ディスチャージ〕、GBH〔ジー・ビー・エイチ〕、THE EXPLOITED〔ジ・エクスプロイテッド〕であり、今回はTHE EXPLOITEDの1stアルバム「PUNKS NOT DEAD」を取り上げてみた。
とにかく、当時の筆者にとってハードコア・パンクは極めて分かり易いパンクのロールモデルだったのだが「PUNKS NOT DEAD」は中でも最も分かり易い一枚である。
ジャギジャギとかき鳴らされるギター、ブリブリと唸るベース、性急なビートを刻むドラム、歌うというよりはがなりたてるヴォーカル、何よりもタイトルが「PUNKS NOT DEAD」である。
このアルバムはハードコア・パンクの歴史に燦然と輝く名盤であるとことはもちろんなのだが、DISCHARGEやGBHと比べるとオイ!としての側面が強いことも特筆すべき点だろう。