「パンクとは何ぞや?」
1977年に英国で興ったパンク・ムーヴメントは極めて個性的なバンドを輩出した。
しかし、筆者が洋楽を聴き始めたのは1980年代初期からであり、パンク・ムーヴメントをリアルタイムで体験できた世代ではない。
従って、英国のオリジナル・パンク・バンドのレコードは後追いで聴いたのだが、彼らのレコードは当時の筆者がイメージしていたパンクとは違っていることが多かった。
初めて聴いたパンクのレコードは中学の同級生のH君がカセットテープに録音してくれたSEX PISTOLS〔セックス・ピストルズ〕の「FLOGGING A DEAD HORSE」という編集盤だったのだが、これは筆者のイメージしていたパンクと一致していたので解り易かった。
しかし、その後、SEX PISTOLSのJohnny Rotten〔ジョニー・ロットン〕改めJohn Lydon〔ジョン・ライドン〕が結成したPUBLIC IMAGE LTD〔パブリック・イメージ・リミテッド〕の3rdアルバム「THE FLOWERS OF ROMANCE」を聴いた時は原始人の儀式のように聴こえ、当時はその良さが全く解らなかった。
THE CLASH〔ザ・クラッシュ〕は、最初に聴いたアルバムが3rdアルバム「LONDON CALLING」だったのだが、レゲエ、ロカビリー、R&B等、音楽性に幅がありすぎて、当時はこのアルバムの凄さを全く解らなかった。
THE DAMNED〔ザ・ダムド〕は、最初に聴いたアルバムが6thアルバム「PHANTASMAGORIA」だったのだが、煌びやかにキーボードが鳴るゴージャスなゴシック・サウンドは気に入ったものの、パンクという言葉からイメージする音とは全く違っていた。
しかし、そんな頃に「ロック辞典」のような本で見つけたハードコア・パンクはイメージしていたパンクその物であり解り易かった。
今回取り上げたGBH〔ジー・ビー・エイチ〕は、DISCHARGE〔ディスチャージ〕、THE EXPLOITED〔ジ・エクスプロイテッド〕と並び、英国3大ハードコア・パンクと呼ばれる重鎮だ。
GBHの1stアルバム「CITY BABY ATTACKED BY RATS」は、耳を劈く攻撃的なギター、乾いた性急な2ビート、腐敗した国家や世の中の不条理を糾弾する歌詞、どれをとってもパンクその物なのである。
今でこそハードコア・パンクが「パンクの表現方法の一つ」であることを理解しているが、「パンクとは何ぞや?」と混乱していた頃の筆者にとって、パンクとは即ちハードコア・パンクのことだったのである。