Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.19) 好きな日本のロック・バンド(80年代)のアルバム10選

■ 第10位

cover

title DEAD LINE
(1st album)
artist DEAD END[デッド・エンド]
released 1986年
comment  インディー・レーベルからリリースされた1stアルバムなのだが、アルバムとしての完成度、曲のクオリティはメジャー・レーベルに移った2nd以降の方が遥かに上をいっていると思う。
 しかし、DEAD ENDが描く(と言うよりは、シンガーのMORRIEが描く)、百鬼夜行的なおどろおどろしい世界観を存分に味わうなら、この1stなのである。
 後にサウンド面の要となるギタリストの足立"YOU"祐二は、この1stではまだイニシアチブとっていないと思うので、2nd以降で聴ける洗練されたヘヴィ・メタルとは全く趣が異なり、別のバンドのようだ。
 このアルバムには洗練された要素が殆ど盛り込まれておらず、力尽くで強引な印象を受ける。
 アルバム・カヴァーも2nd以降のDEAD ENDのセンスなら有り得ない絵面なのだが、このアルバムの音にはピッタリであり、これ以上ないほどに嵌っている。

■ 第9位

cover

title GOOD EVENING WONDERFUL FIEND
(1st album)
artist THE WILLARD[ザ・ウィラード]
released 1985年
comment  筆者が、邦楽のロックを明確に意識して聴いた最初のレコードは、このTHE WILLARDのインディー・レーベルからリリースされた1stアルバムだったと思う。
 中学の同級生I君が筆者に貸してくれた(正確にはカセットテープにダビングしてくれた)アルバムだったのだが、筆者の最初の感想は「ダムドやん!」だった。
 特にシンガーのJunは歌い方もヴィジュアルもThe Damnedザ・ダムド]のDave Vanian[デイヴ・ヴァニアン]そのものに見えたので、最初の印象は良くなかったのである。
 しかし、日本語で歌っている故に否応なしに歌詞が耳に入ってくるので、意識して歌詞を聴いてみたところ、海賊っぽい世界観の歌詞を面白いと思うようになり、演奏もカッコ良かったので徐々に好きになっていった。
 筆者はインディ―至上主義ではないのだが、メジャーに移った2nd以降では1st以上に好きになれるアルバムがなかったので、筆者にとって日本のパンクと言えば、このアルバムなのである。

■ 第8位

cover

title gArNeT
(1st album)
artist G-Schmitt[ゲー・ジュミット]
released 1988年
comment  バンド名に付く G を「ジー」ではなく「ゲー」と読めるか否かで、このバンドへの思入れを推し量ることができる。
 筆者は、ガールズ・バンドや、女子をフロントに立てたバンドが好きなので、当時(80年代)、日本で活動していたその手のバンドをいくつか聴いてみたのだが、正直なところ、なかなか聴き辛いものが多かった。
 なかでもポストパンク/ニュー・ウェイヴ系のバンドには聴き辛いものが多かったのだが、G-Schmittだけは別格で、洋楽のポストパンク/ニュー・ウェイヴと並行して聴いていた。
 特にこのアルバムで聴けるベースとドラムの暗黒ファンク感が漂うリズムは秀逸である。
 シンガーのSYOKOは非常にヴィジュアルの美しい人であり、曲も良かったので、歌詞を英語にして英国でリリースしたら、けっこう人気がでたのではないだろうか?
 「ガールズ・バンドや、女子をフロントに立てたバンドが好き」と言いつつ、実はポストパンク/ニュー・ウェイヴに関しては、その手の洋楽を殆ど聴いてこなかったので、筆者にとって、女子が歌うポストパンク/ニュー・ウェイヴと言えばG-Schmittなのである。

■ 第7位

cover

title CASINO DRIVE
(2nd album)
artist RED WARRIORS[レッド・ウォーリアーズ]
released 1987年
comment  高校生の頃、筆者と友達(K君)と先輩の3人で深夜ドライブをしているときに、K君がカーオーディオに入れたカセットテープが、このアルバムのB面だった。
 流れてきた曲は"JOHN"。
 軽やかなアコースティック・ギターと、爽やかなコーラスに一瞬でノックアウトだった。
ダイアモンド☆ユカイ(vo)の確かな歌唱力とエンターティナーとしての資質、木暮"shake"武彦(gt)の天才的な作曲能力、小川清史(ba)と小沼達也(dr)がしっかりと支えるブレやヨレの無い安定のリズム。
 日本人が日本語で王道ロックン・ロールをやるにあたり、最も効果的な方法を示したのがRED WARRIORSだ。
 RED'Sは、1st~3rdの3部作で王道ロックン・ロールを完成させたのだが、後期のThe Beatlesザ・ビートルズ]に深く傾倒した4thアルバムのSwingin' Dazeが実は最高傑作のような気もする。

■ 第6位

cover

title ZIGGY 〜IN WITH THE TIMES
(1st album)
artist ZIGGY[ジギー]
released 1987年
comment  前述のK君が、「お前、Hanoi Rocksハノイ・ロックス]が好きなんやったら、絶対これ好きんなれるはずやし」と言って貸してくれたのが、このアルバムだ。
 偉そうに上から言われている感じだが、Hanoi RocksをK君に教えたのは筆者だ。
 ただし、K君の慧眼は見事であり、このアルバムを1回聴いただけで、筆者はZIGGYのファンになってしまった。
Hanoi RocksAerosmithエアロスミス]といった洋楽のロックン・ロール/ハード・ロックは言うまでもなく、当時、日本のロックの頂点に君臨していたBOØWY[ボウイ]からの影響や、70年代の歌謡曲まで取り込んで、ZIGGY流のロックン・ロールにしてしまうそのセンスは見事としか言いようがない。
 90年代以降は音楽性の不一致や人間関係のゴタゴタでメンバーが安定しなくなったバンドだが、ZIGGYと言えばこのアルバムでデビューした森重樹一(vo)、松尾宗仁(gt)、戸城憲夫(ba)、大山正篤(dr)の4人なのである。

■ 第5位

cover

title CRASH
(2nd album)
artist JUSTY-NASTY[ジャスティ・ナスティ]
released 1989年
comment  このアルバムは、メジャー・レーベルからリリースされた最初のアルバム。
 インディー・レーベル時代はバッド・ボーイズ・ロックン・ロール系の曲をやっていたのだが、メジャーからの第一弾となったこのアルバムではBOØWYからの影響が感じられるビート・ロック系の音に変わっている。
 セルアウトと言ってしまうのは簡単だが、メジャーから音源をリリースする以上、それに関わるレーベルやマネジメントに所属する人達の命運が掛かってるのだから売れなければ意味がない。
 このアルバムに収録されているメジャー1stシングル "言いだせなくて" は、インディー時代とはかなりテイストの異なるダンサブルで憂いのある曲だが、メジャー第一弾としては最高の仕上がりであり名曲だ。
 当時、バッド・ボーイズ・ロックン・ロールは乱立するバンドにより飽和状態にあったので、彼らが選んだこの路線変更は大正解だったと言えるだろう。

■ 第4位

cover

title LA VIE EN ROSE
(1st album)
artist D'ERLANGER[デランジェ
released 1989年
comment  このバンドに魅かれた最初の理由は、ギタリストのCIPHER[サイファー/瀧川一郎]が、筆者と同じ、京都の出身だったからだ。
 自分よりも1つだけ年上の同じ地元の人が、アルバムをリリースできるほどのミュージシャンになっているという事実が、当時の筆者には衝撃的だったのである。
 元々はグラム・メタル系のバンドだったが、やはり、これもBOØWYの影響が大きいと思うのだが、インディー・レーベルからリースしたこの1stアルバムではビート・ロック系の音に変わっている。
 自らサディスティカル・パンクと呼んだ彼らの曲は、ゴシック風味のある性急なビートが印象的なのだが、やけに色気があり艶っぽいところがこのバンドの特徴だ。
 ゴシック系の曲で統一されるのかと思いきや、突然 "LULLABY" のようなドキャッチーな曲が出てきて意表を突かれる瞬間がある。
 このバンドのシンガーkyoの声と歌は特徴的であり、上手いとか下手という単純な二元論では説明できない個性がある。

■ 第2位

cover

title GET THE BLACK
(1st album)
artist SHADY DOLLS[シェイディ・ドールズ]
released 1987年
comment  このアルバムを買ってきて、ステレオのスピーカーから流れてきた1曲目の "SING A SONG" 聴いたときは度肝を抜かれるほど驚いた。
 めちゃくちゃ演奏が上手いのである。
 速弾きとかの上手さではなく、ロックン・ロールを演奏するために必要なリズムの取り方とか、タメの効かせ方が絶妙に上手いのだ。
 よく知られた話だが、この1stアルバムをリリースしたときのSHADY DOLLSの平均年齢は19歳である。
 平均年齢19歳でこの上手さ、練習量が多いのか、持って生まれたセンスが凄いのか、あるいは、その両方なのか?
 SHADY DOLLSと同様に、The Rolling Stonesザ・ローリング・ストーンズ]をお手本にした日本のバンドでは、彼らより少し上の世代にTHE STREET SLIDERS[ザ・ストリート・スライダーズ]がいるのだが、当時の筆者は何回聴いてもTHE STREET SLIDERSの凄さがよく分からなかった。
 それに対し、SHADY DOLLSは1回聴いただけで直ぐに好きになってしまったのである。

■ 第1位

cover

title G.D.FLICKERS
(compilation album)
artist G.D.FLICKERSジー・ディー・フリッカーズ]
released 1989年
comment  この作品はオリジナル・アルバムではなく、メジャーからデビューする前に、インディー・レーベルからリリースされたGLAMOUROUS & DAINGEROUSSOME GIRLSという2枚のミニ・アルバムを1枚のCDに纏めた編集盤だ。
G.D.FLICKERSは、2022年の現在まで、一度も解散することなく活動を続けており、メンバーもベース以外はこの音源のリリース時から変わっていない。
 そして、彼らの音楽性も、この当時から現在まで殆ど変わっていない。
 活動歴が永いので上手くなってきてはいるのだが、彼らの音は昔も今も愛想の無い武骨なロックン・ロールのままだ。
 同時期に活動していたRED WARRIORSのような王道でもなく、ZIGGYのような器用さもない。
 飾り気のないスッピンのロックン・ロールなのだが、これはシンガーのJ♂E[ジョー/稲田錠]がパンク出身だからかもしれない。
 バラードだって甘ったるいラヴ・ソングではなく、この作品に収録されている "Lovely Girl" みたいに、女の子を突き放すような、それでいて女の子に優しいような曲なのである。

■ 第1位

cover

title DREAMS
(1st album)
artist NICKEY & THE WARRIORS[ニッキー&ザ・ウォーリアーズ]
released 1987年
origin  
comment  筆者が最も好きな日本の女性ロック・シンガーはNICKEYなのだが、結局のところ、最も好きな80年代の日本のロック・バンドもNICKEY & THE WARRIORSになってしまった。
 とにかく、NICKEYは可愛い。
 「音楽じゃなくて顔かよ!」と言われるかもしれないが、ロック・バンドのフロントに立つ女子のヴィジュアルは重要なのである。
 ヴィジュアルの話から入ってしまったが、Ramonesラモーンズ]やJohnny Thunders & the Heartbreakers[ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ]、そして日本のSHEENA & THE ROKKETS[シーナ&ザ・ロケッツ]からの影響を伺えるパンキッシュなロックン・ロールは、かなりカッコ良い。
 NICKEYの歌は舌足らずで、けして上手いわけではないのだが、彼女の歌はこのバンドの曲にとてもよく合っている。
 90年代以降も日本の女性ロック・シンガーをたくさん聴いてきたが、未だに筆者にとってのNo.1はNICKEYであり、残りの時間も少なくなってきたので、NICKEYを超える人は見付けられなさそうだ。
 NICKEYは1年くらい前からYouTubeを始めており、最近また見る機会が増えたのだが、いまだに可愛いのには驚かされる。

 

「好きな日本のロック・バンド(80年代)のアルバム10選」と銘打ってリストを作ってみたのだが、実のところ筆者は蘊蓄を語れるほど日本のロックに詳しくない。


筆者がロックを聴き始めたのは1982年であり、中1のときだ。


今でこそ、日本でロックと言えば邦楽が主流になっているが、当時は圧倒的に洋楽が主流であり、ロックとは「英語で歌うもの」、「日本語で歌ってはいけないもの」という不文律があったような気がする。


筆者の記憶では、邦楽ロック、所謂、日本のロック・バンドが活気づいてきたのは1980年代後半からだ。


今回、選んだ10枚も、全て1985年から1989年の間、つまり、80年代後半にリリースされたアルバムである。


そして、全て筆者自身が買ったことのあるアルバムを選んでいる。


最初は友達にダビングしてもらったカセット・テープを聴いていて、だいぶ後になってから買ったものもあるが、とにかく自分で買ったことのあるアルバムである。


1980年代後半になると、ロック・リスナーが洋楽派と邦楽派に二極化していったのだが、筆者の場合は前者だった。


つまり、洋楽派なのだが、邦楽に興味が無かったわけではなく、実は聴きたいのだが、レコードを買う時に洋楽を優先してしまうため、邦楽にまでお金が回らないのである。


ただし、お金が回らない邦楽は、邦楽好きの友達からレコードを借り、逆に筆者は洋楽のレコードを彼らに貸していたので、持ちつ持たれつの関係が出来上がっていた。


今のように、定額で聴き放題の音楽配信サービスがあれば、洋楽も邦楽も満遍なく聴いていたと思うので、そういう環境に恵まれている今の若い人たちを羨ましく思う。


筆者も音楽鑑賞の98%くらいは音楽配信サービスを利用するようになり、たぶんCDは3年以上買っていないと思うし、CDショップにも同じくらいの期間行っていない。


かつて、買いたくても買えなかった日本のロック・バンドのアルバムを、今では音楽配信サービスで聴けるようになったのは本当にありがたいと思う。


今回取り上げた10枚は「日本語で歌う」という制約を設けて選んだ。


例えば、LOUDNESSラウドネスVOW WOW[ヴァウワウ]も大好きな日本のロック・バンドなのだが、彼らの場合は英語で歌う方がスタンダードなので今回の10枚には入れなかった。


横浜銀蝿も大好きな日本のロック・バンドなのだが、銀蝿は筆者がロックを明確に意識する前に出会ったバンドなので今回の10枚には入れなかった。


HILLBILLY BOPSヒルビリー・バップス]も大好きな日本のロック・バンドなのだが、今回のリストに入れるには何だかミスマッチに思えたので入れなかった。


これらのバンドは、いずれ違った形で取り上げたいと思う。