Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0099) MAJOR LODGE VICTORY / GIN BLOSSOMS 【2006年リリース】

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以前、#0059SOUL ASYLUM〔ソウル・アサイラム〕の9thアルバム「THE SILVER LINING」を取り上げた時に、「このアルバムがリリースされた2006年には、彼らと同様に劇的な復活作を届けてくれたアーティストが他にもいる」と書いた。


その一つとして、#0069GOO GOO DOLLS〔グー・グー・ドールズ〕の8thアルバム「LET LOVE IN」を取り上げたが、今回取り上げるGIN BLOSSOMS〔ジン・ブロッサムズ〕の4thアルバム「MAJOR LODGE VICTORY」も同様の一枚である。


SOUL ASYLUMGOO GOO DOLLSの場合は解散せずに活動を続けていたバンドが久々に放った復活作だったが、GIN BLOSSOMSの場合は解散していたバンドが再結成して放った復活作であり、そういう意味ではGIN BLOSSOMSの復活作はSOUL ASYLUMGOO GOO DOLLSの復活作よりも重みがあるのかもしれない。


GIN BLOSSOMSの良さを説明するのは簡単である。


とにかく、彼らの良さはそのメロディの美しさだ。


オルタナティヴ・ロック全盛の1993年に"Hey Jealousy"や"Found Out About You"というグッド・メロディのシングルをヒット・チャートに送り込んだ彼らだが、この「MAJOR LODGE VICTORY」収録のオープニング曲である"Learning The Hard Way"はそれらを遥かに凌駕する瑞々しいメロディを持った名曲である。


もし、このキラキラと輝く美しい曲を、晴れた休日の朝に偶然ラジオで聴けたなら、一日中ずっと幸せな気分でいられるだろう。


アルバムの中のベスト・ソングは間違いなくこの"Learning The Hard Way"なのだが、収録されている12曲全てのクオリティが高い。


GIN BLOSSOMSは1990年代の初頭に活躍したバンドなので、オルタナティヴ・ロックにカテゴライズされることが多いのだが、彼らの音楽性からはalternative(代替案)という感じは殆ど無く、むしろ、その古典的でメロディアスなスタイルはmainstream(主流)である。


はっきり言ってしまえば保守的なのである。


特にこのアルバムは保守的で、彼らの出身地であるアリゾナのバーでビールでも飲みながら聴きたい感じの曲が詰まっている。


パンク出現以降のロックは、保守的であると悪とされてしまう傾向があるのだが、筆者はそれが悪いことだとは思わない。


色々な選択肢がたくさんあった方が、筆者のような無節操に何でも聴きまくるリスナーにはありがたいのである。

 

#0098) I AGAINST I / BAD BRAINS 【1986年リリース】

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Jimi Hendrixジミ・ヘンドリックス〕が率いたTHE JIMI HENDRIX EXPERIENCE〔ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス〕や、Arthur Lee〔アーサー・リー〕が率いたLOVE〔ラヴ〕のように、黒人が中心メンバーとなるロック・バンドはロックの歴史の初期からあった。


そもそも、ロックとは、或いは、ロックン・ロールとは、Chuck Berryチャック・ベリー〕、Little Richard〔リトル・リチャード〕、Bo Diddley〔ボ・ディドリー〕、Fats Dominoファッツ・ドミノ〕等、黒人によって産み出されたポピュラー・ミュージックなのである。


ところが、いつの間にかロックの世界からは黒人が追い出されてしまい、白人中心の音楽産業になった。


それによってロックが発展したという側面もあるのだが、黒人がロックの中心に残ったままロックを発展させていたらどんな音楽が産まれていたのかなと考えることがあった。


BAD BRAINS〔バッド・ブレインズ〕を初めて聴いた時、その答えを見つけたような気がした。


初めて聴いたBAD BRAINSのアルバムは今回取り上げた3rdアルバムの「I AGAINST I」だ。


一般的には、1stアルバム「BAD BRAINS」や2ndアルバム「ROCK FOR LIGHT」の方が評価は高いのかもしれない。


しかし、ロック・ファンになら分かって頂けると思うのだが、一般的に評価の高いアルバムよりも初めて聴いたアルバムの方に強い愛着を感じてしまうことは多々ある。


筆者にとっては「I AGAINST I」もそんな一枚なのである。


BAD BRAINSをハードコア・パンク・バンドとして捉えるのであれば「I AGAINST I」というアルバムは少々物足りないアルバムなのかもしれない。


もちろんハードコア・チューンも収録されてはいるが、「BAD BRAINSにしては」という枕詞付ではあるものの、けっこうメロディアスで聴き易い曲も入っていて、ハードコア・パンクというよりはミクスチャー・ロックという感じなのである。


BAD BRAINSというバンドは、彼らがSEX PISTOLSを聴いてパンクに目覚めるまではフュージョン・バンドだったのでメンバー全員の演奏技術が非常に高い。


「I AGAINST I」とは、その高度な演奏技術を駆使して色々なジャンルの音楽を融合させることに成功したアルバムなのである。

 

#0097) MASTER OF PUPPETS / METALLICA 【1986年リリース】

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筆者にスラッシュ・メタルを教えてくれたのは高校の同級生のH君だった。


時代は1980年代中期。


当時の筆者はグラム・メタルやニュー・ウェーヴを中心に洋楽を聴いていて、スラッシュ・メタルについての知識はゼロに近かった。


ちなみにグラム・メタルは当時の日本ではLAメタルと呼ばれることの方が一般的だったのだが、グラム・メタルとニュー・ウェーヴのリスナー層が重なることはあまりなく、むしろ反目しあう関係にあった。


筆者もグラム・メタルを聴いている洋楽仲間たちからは「ニュー・ウェーヴみたいな辛気臭い音楽のどこがええねん?」と言われ、ニュー・ウェーヴを聴いている洋楽仲間たちからは「グラム・メタル(LAメタル)みたいなアホ丸出しの音楽のどこがええねん?」と言われ、両方のジャンルの音楽を聴いていることについて馬鹿にされたものである。


そんな中、前述の同級生のH君だけは筆者の音楽の趣味嗜好を馬鹿にすることなく、お互い好きなレコードをテープに録音して交換しあったりしていた。


H君も元々はグラム・メタルのファンだったのだが、SLAYER〔スレイヤー〕の3rdアルバム「REIGN IN BLOOD」と、今回取り上げたMETALLICAメタリカ〕の3rdアルバム「MASTER OF PUPPETS」を聴いてバリバリのスラッシャーになった。


筆者は、そんなH君から上記の二枚をカセットに録音してもらい、バリバリのスラッシャーにはならなかったが、スラッシュ・メタルという音楽の面白さを発見し、最終的にはこの二枚をお小遣いで購入するほどスラッシュ・メタルが好きになっていた。


しかし、スラッシュ・メタルに入門するならこの二枚を同時に聴くのはやめた方がいいような気がする。


SLAYERの「REIGN IN BLOOD」が徹底して高速スラッシュ・チューンで攻めてくるのに対し、METALLICAの「MASTER OF PUPPETS」は冒頭の二曲、"Battery"と "Master of Puppets"の破壊力は凄まじいのだが、三曲目の"The Thing That Should Not Be"は抒情的な曲で、以降もちょくちょく抒情的な曲を挟んでくる。


筆者の場合、これらの抒情的な曲の良さに気付くのにけっこう時間がかかり、どうしてもSLAYERの「REIGN IN BLOOD」ばかり聴いてしまうのである。


結局、METALLICAの「MASTER OF PUPPETS」というアルバムが高速スラッシュ・チューンも抒情的な曲も、全てを含めた上で魅力的なアルバムだと気付くのに一年くらいかかった記憶がある。


最終的には大好きなアルバムとなった「MASTER OF PUPPETS」だったが、筆者が好きなMETALLICAはここまでとなった。


次作の4thアルバム「...AND JUSTICE FOR ALL」以降は好きになれるアルバムが今のところ一枚も無い。


果敢に新しい音楽に挑戦していった時代のイノヴェーターであるMETALLICAに筆者はついて行けなかったのである。

 

 

#0096) EVERYTHING I LONG FOR / Hayden 【1995年リリース】

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今回取り上げるHayden〔ヘイデン〕の1stアルバム「EVERYTHING I LONG FOR」は彼の出身国であるカナダでは1995年にリリースされてるのだが、日本でリリースされたのは翌年の1996年だった。


日本ではBeck〔ベック〕の2ndアルバム「ODELAY」とリリースのタイミングが重なっており、洋楽雑誌にはこの2枚を同じ大きさで1ページに横並びにした広告が掲載されていた。


つまり、あのBeckと同じプライオリティで扱われていたわけだ。


筆者はBeckの1stアルバム「MELLOW GOLD」を気に入っていたので「ODELAY」を買うことは決めていたのだが、Beckと横並びにされていたHaydenというシンガー・ソングライターのことも気になってしまい、同時にこの2枚を買った。


家に帰って、先ずはBeckの「ODELAY」を聴いて「期待どおり」という感想を持ちつつ、次にHaydenの「EVERYTHING I LONG FOR」を聴いて予想外の衝撃を受けた。


Beckの「ODELAY」は当然のように良かったのだが、Haydenの「EVERYTHING I LONG FOR」が凄すぎたせいで「ODELAY」が霞んでしまい、これ以降Beckをあまり聴かなくなってしまった。


「EVERYTHING I LONG FOR」というアルバム、或いは、Haydenというシンガー・ソングライターの書く曲は万人向けとは言い難い。


短い咳払いから始まるオープニング曲"Bad As They Seem"の沈み込むような鬱々としたHaydenの歌い方を聴いて、「ダメだ、こりゃ」と敬遠したくなる人の方が多いのではないかと思う。


アルバム・タイトルの「EVERYTHING I LONG FOR」とは「私が待っているもの全て」とでも訳せばいいのだろうか?


いずれにしろ、あまりポジティヴな印象が感じられないタイトルだ。


悲しげな曲を延々と聴かされるアルバムなのだが、筆者はこういう世界に浸りたくなる時がけっこうな頻度である。


同じ時期に聴いていた同じくカナダ出身のシンガー・ソングライターRon Sexsmithロン・セクスミス〕の1stアルバム「RON SEXSMITH」が「切なさ」や「温かさ」を感じさせてくれる作品であることに対し、Haydenの「EVERYTHING I LONG FOR」は「悲しさ」や「冷たさ」を感じさせてくれる作品であり実に対照的だ。


これ以前の筆者はカナダと米国の音楽は同じで違いは無いと思っていたのだが、HaydenRon Sexsmithのおかげでカナダとい国の音楽からカナダ独自の個性を見出せるようになった。

 

#0095) HIGH ON THE HOG / BLACK OAK ARKANSAS 【1973年リリース】

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日本のロック・ファンに、「知っているサザン・ロック・バンドは?」と訊いた時に名前のあがるバンドはTHE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド〕、LYNYRD SKYNYRD〔レーナード・スキナー〕、ZZ TOP〔ジージー・トップ〕辺りだろうか?


ZZ TOPはサザン・ロックというよりもブギー・ロックという認識の方が強いのかもしれない。


いずれにしても、サザン・ロック・バンドの代表例として、BLACK OAK ARKANSAS〔ブラック・オーク・アーカンソー〕というバンドの名前をあげる日本のロック・ファンは少ないはずだ。


バンド名どおり、アーカンソー州出身のこのバンド(しかし、ARKANSASというスペルでアーカンソーと読ませるとは分かり難い)、米国ではかなりの人気バンドらしいが、筆者がこのバンドを知ったのはわりと最近である。


4~5年前にWikipediaでサザン・ロックについて調べている時にBLACK OAK ARKANSASという名前を見つけ、Amazonで検索したところOriginal Album Seriesを発見し、安価だったので購入したのがこのバンドとの出会いだった。


今回取り上げた「HIGH ON THE HOG」は、そのOriginal Album Seriesの中に入っていた一枚で、彼らの4thアルバムだ。


ちなみに上記のOriginal Album Seriesは、特定のアーティストのオリジナル・アルバムが5枚で一組になっている商品で、安価なのでけっこう重宝なのだが、時々とんでもなく高いプレミアム価格の中古盤が出品されている場合がある。


今、Amazonで調べてみたところ、BLACK OAK ARKANSASのOriginal Album Seriesも今では凄い価格になっていた。


幸いにも筆者は安価な時期にこのCDを購入できたのだが、このバンドの音を聴いてみて真っ先に感じたのが「とにかくアメリカっぽい」ということだ。


そもそもサザン・ロック・バンドはアメリカっぽいのだが、その中でもBLACK OAK ARKANSASはダントツでアメリカっぽい。


それも開放的なアメリカっぽさではなく、南部特有の閉鎖的な空気感が滲み出ているようなアメリカっぽい音なのである。


初期のアルバムはサザン・ロックというよりもカントリー・ロックという感じなのだが、この「HIGH ON THE HOG」ではカントリー・ロック色は少し後退し、サザン・ロック色が濃くなっている。


このバンドのシンガーJim Dandy〔ジム・ダンディ〕、は、こういうバンドのメンバーにしては珍しくグラマラスな人物なので、興味を持たれた方には動画を観ることもお勧めしたいしたい。


Jim Dandyの放つギラギラとした男の色気にむせ返りそうになり、そこがまた何ともアメリカっぽいのである。