Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0155) LITTLE PIECE OF DIXIE / BLACKBERRY SMOKE 【2009年リリース】

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晴れた休日の朝に何故か無性に聴きたくなるのがサザン・ロックだ。


サザン・ロックが持つ土の匂いを感じさせる音、つまりはブルースやカントリーのフレイヴァ―が、のんびりと過ごせる休日の朝に絶妙にフィットするのだ。


1970年代ならTHE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド〕、THE MARSHALL TUCKER BAND〔マーシャル・タッカー・バンド〕、ZZ TOP〔ヅィー・ヅィー・トップ〕、LYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕、BLACK OAK ARKANSAS〔ブラック・オーク・アーカンソー〕等、1980年代ならTHE FABULOUS THUNDERBIRDS〔ザ・ファビュラス・サンダーバーズ〕、THE GEORGIA SATELLITES〔ザ・ジョージア・サテライツ〕等、1990年ならTHE BLACK CROWES〔ザ・ブラック・クロウズ〕、GOV'T MULE〔ガヴァメント・ミュール〕等、とにかく、このジャンルのバンドは演奏技術に長けた名バンドが多い。


そして、2000年以降の、このジャンルのホープと言えばBLACKBERRY SMOKE〔ブラックベリー・スモーク〕だろう。


先輩格のTHE BLACK CROWESと同じく、米国ジョージア州アトランタ出身のバンドであり、バンド名にBLACKが入っていたり、フロント・マンでメイン・ソングライターのCharlie Starr〔チャーリー・スター〕のルックスがTHE BLACK CROWESのChris Robinson〔クリス・ロビンソン〕に似ていたりという具合に、THE BLACK CROWESからの影響を強く感じさてくれるバンドだ。


ただし、音楽的にはBLACKBERRY SMOKEの方がTHE BLACK CROWESよりもカントリーからの影響が濃い。


インターネットで検索すると3rdアルバムの「THE WHIPPOORWILL」の人気が高いようだが、筆者は今回取り上げた2ndアルバムの「LITTLE PIECE OF DIXIE」を聴く回数の方が多い。


他のアルバムに比べて、「LITTLE PIECE OF DIXIE」を多く聴く理由は何かと問われても明確な答えは無い。


どのアルバムもカントリー・フレイヴァ―が漂う保守的なロックなので、アルバム毎に大きな違いなどは無く、他のアルバムよりも「LITTLE PIECE OF DIXIE」を聴く回数が増えるのは単なる筆者の好みだけの問題だろう。


このブログを書いている今日が正に休日の朝であり、「LITTLE PIECE OF DIXIE」を聴きながら文書を書いているのだが、やはり、休日の朝に聴くサザン・ロックは良い。


コンサバと言われようが、反骨精神に欠けると言われようが、何も縛られることない休日の朝に聴くサザン・ロックは最高なのである。

 

#0154) PERVERSE / JESUS JONES 【1993年リリース】

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1989年は、当時、UKロックを聴いている者にとって、けっこうセンセーショナル年だ。


この年の5月には、THE STONE ROSESザ・ストーン・ローゼズ〕がロックの歴史を変えた名盤、1stアルバムの「THE STONE ROSES」をリリースしている。


そして、10月には、あのJESUS JONES〔ジーザス・ジョーンズ〕も、1stアルバムの「LIQUIDIZER」をリリースしているのだ。


「あのJESUS JONES」と書いてしまったが、2019年現在、JESUS JONESを知っている人や聴いている人はどれくらいいるのだろう?


THE BEATLESザ・ビートルズ〕やLED ZEPPELINレッド・ツェッペリン〕に匹敵するロック・レジェンドとなったTHE STONE ROSESに比べ、JESUS JONESの存在は限りなく小さい。


しかし、1989年にJESUS JONESが「LIQUIDIZER」をリリースした時、当時のUKロック界では、「THE STONE ROSESの次に来るのはJESUS JONESだ」的な空気が間違いなくあった。


そして、JESUS JONES自身もデビュー当時の瞬間風速はかなりのものがあったので、それを感じさせるに十分な存在感があった。


しかし、どう言う訳か、彼らは失速していくのが速かった。


2ndアルバムの「DOUBT」までは、かなりの勢いがあったのだが、今回取り上げた3rdアルバムの「PERVERSE」をリリースした頃から、じわじわと勢いに陰りが見え始めたように記憶している。


JESUS JONESの音楽性は、当時、流行していた「ロックとダンスと融合」なのだが、THE STONE ROSES等のマッドチェスター系が放つ酩酊感漂うダンス・ミュージックとは異なり、JESUS JONESのそれはデジタル・ビートとロック・ギターのダイレクトな融合であり、これはマッドチェスター系よりも解り易いアプローチだと言える。


しかし、解り易いものは飽きられるのも早い。


皮肉な展開だが、JESUS JONESが本当にやりたかった音楽は、飽きられ始めたこの3rdアルバム「PERVERSE」で完成したのではないだろうか?


1stや2nd比べ格段にハードになったこのアルバム、そして、オープニングを飾る尋常ならざる緊迫感に満ちた"Zeroes And Ones"を聴くにつけ、そう思えて仕方がない。


彼らが失速し始めたこのアルバムこそが、実は彼らの最高傑作なのである。

 

#0153) TALKING BOOK / Stevie Wonder 【1972年リリース】

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1970年代は洋楽の黄金時代であり、「手に負えない名盤」が多い。


例えば、THE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ〕の「EXILE ON MAIN ST.」、David Bowieデヴィッド・ボウイ〕の「ZIGGY STARDUST」、AEROSMITHエアロスミス〕の「ROCKS」、FUNKADELICファンカデリック〕の「HARDCORE JOLLIES」等、きりがない。


上記は、いずれも、まだ、このブログでは取り上げていないのだが、いつか必ず取り上げたい「手に負えない名盤」である。


そして、本日取り上げるStevie Wonderスティーヴィー・ワンダー〕の15thアルバム「TALKING BOOK」も紛うことなき「手に負えない名盤」だ。


そもそも、1970年代のStevie Wonderのアルバムは名盤揃いであり、まるで神が降臨して制作したのではないかと思えるような「手に負えない名盤」を連発していた。


筆者がStevie Wonderを最初に聴いたのは、1984年に全米1位となったヒット曲"I Just Called To Say I Love You"なのだが、この時は正直なところ、「ゆるいラヴ・バラードを歌とうたはるオッサンやなぁ~」くらいにしか思っていなかった。


しかし、当時の洋楽雑誌に掲載されていた「1970年代の名盤特集」的な記事で、1970年代のStevie Wonderは凄かったらしいということを知った。


そうなると、どうしても聴きたくなる訳で、お小遣いをはたいて買ったのが「TALKING BOOK」なのである。


ワクワクしながら「TALKING BOOK」をレコード・プレイヤーに乗せて針を落としたのだが、1曲目 "You Are The Sunshine Of My Life"のイントロで鳴っている軽快なコンガの音で、もう完全にノックアウトだった。


この気持ち良すぎる多幸感は何なんだろう?


聴いていると、そのまま昇天してしまいそうになるような多幸感とでも言えば分って頂けるだろうか?


結局、その多幸感はアルバムのラストを飾る"I Believe"まで続くことになる。


実は、最近、色々と嫌なことが続いた。


何だか荒んだ気持ちになっていたので、久しぶりに「TALKING BOOK」を聴いてみたのだが、あの頃と同じように幸せな気持ちになり、少しだけ優しい気持ちを取り戻すことが出来た。


このアルバムに出会えたことに感謝したい。

 

#0152) THE SKY MOVES SIDEWAYS / PORCUPINE TREE 【1995年リリース】

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2019年現在において、現代のPINK FLOYDピンク・フロイド〕と言えばPORCUPINE TREE〔ポーキュパイン・トゥリー〕だ。


今回取り上げる彼らの3rdアルバム「THE SKY MOVES SIDEWAYS」を聴くにつけ、その認識が深まる。


PORCUPINE TREEの曲がPINK FLOYDの曲に酷似している訳でない。


PORCUPINE TREEのロックに対するアプローチが、PINK FLOYDの提示してきた方法論と似ているのである。


プログレッシヴ・ロック・バンドでありながら、PORCUPINE TREEはPINK FLOYDと同様に演奏技術の高さでグイグイとくるタイプではない。


否、もちろん、演奏技術は高いのだ。


PORCUPINE TREEの曲は、昨日今日、楽器を始めたような輩に演奏できるような代物ではない。


PORCUPINE TREEは、高度な演奏技術を持ちながらも、それだけに頼ることはなく、深遠な精神世界をテーマとして描かれた楽曲の奥深さでリスナーを魅了するタイプのバンドなのだ。


このような曲作りに対するアプローチが極めてPINK FLOYD的なのである。


今回取り上げた「THE SKY MOVES SIDEWAYS」は、ヴォーカルの入った曲も多少はあるのだが、ほぼインストゥルメンタル・アルバムであると言い切ってしまっても差し支えないだろう。


インストゥルメンタル・アルバムである上に、キャッチーなメロディも無いので、このアルバムはPORCUPINE TREEのアルバムの中でも、かなり取っ付きにくい作品である。


しかし、このアルバムは、ヴォーカルが(殆ど)無いことや、キャッチーなメロディが無いことが全くマイナスになっていない。


むしろ、それらを極限まで抑えることで人間の複雑な精神世界を描くことに成功しており、プログレッシヴ・ロック・アルバムとしての価値を高めている。


しかし、これは、筆者がインストゥルメンタルも好んで聴くリスナーであるといことで、多少のバイアスが掛かった感想になっているのかもしれない。


このアルバムは、「これからロックを聴き始めたい」という人にお薦めできるアルバムではないのだが、1970年代に隆盛を極めたあのプログレッシヴ・ロックをもう一度味わいたい人にとっては垂涎の一枚となるはずである。

 

#0151) STATIONS OF THE DEAD / ZEN MOTEL 【2007年リリース】

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#0101で取り上げたLAST GREAT DREAMERS〔ラスト・グレート・ドリーマーズ〕に続き、また、筆者好みのバンドを見つけた。


ZEN MOTEL〔ゼン・モーテル〕というバンドなのだが、オフィシャル・サイトによると、2004年に1stアルバムをリリースしており、現時点(2019年)での最新アルバムを2017年にリリースしているので、たぶん、まだ解散していと思われる。


このページに彼らのインタビューが掲載されているのだが、ここで語られる彼らの音楽的影響源が実に興味深い。


動画を観ると限り、ギター×2、ベース、ドラムスという4人編成で、ベースがリード・ヴォーカルを兼ねるスタイルのようだ。


筆者はベースを弾きながら歌うシンガーが何故か好きで、THIN LIZZYシン・リジィ〕のPhil Lynott〔フィル・ライノット〕、MOTORHEADモーターヘッド〕のLemmy〔レミー〕等に、やけに惹かれる傾向がある。


さて、ZEN MOTELだが、英国出身のバンドであり、あのTHE WILDHEARTSザ・ワイルドハーツ〕のギタリストCJが結成したCJ & THE SATELLITES〔CJ&ザ・サテライツ〕のベーシストLee Wray〔リー・レイ〕が率いるバンドのようだ。


音楽的には、MOTORHEADTHE WILDHEARTSあたりに通じる、所謂、爆走型のヘヴィ・ロックン・ロールである。


Amazon Music Unlimitedで2ndアルバム「STATIONS OF THE DEAD」と3rdアルバム「WE WANT YOUR BLOOD」を聴いてみたのだが、この手のバンドの御多分に洩もれず、両方とも大した違いは無い。


しかし、バカボンのパパではないが、こういうバンドは「これでいいのだ」。


故に、どちらを取り上げても良いのだが、とりあえず2ndアルバム「STATIONS OF THE DEAD」の画像を貼っておくことにする。


「ロックン・ロール・バンドに新しさなんて求めていない」とか「最近のロックは行儀が良すぎて面白くない」と思っている人には是非お薦めしたいバンドだ。


筆者がロックン・ロール・バンドのアルバムに求める音は、タイムクリックで正確に補正された完璧な音ではなく、このアルバムのような、ライヴ・ハウスで汗を飛ばしながらハチャメチャになって演奏してる感じをそのまま封じ込めたような音である。


ロックン・ロールは、まだ死んでいない。