1989年は、当時、UKロックを聴いている者にとって、けっこうセンセーショナル年だ。
この年の5月には、THE STONE ROSES〔ザ・ストーン・ローゼズ〕がロックの歴史を変えた名盤、1stアルバムの「THE STONE ROSES」をリリースしている。
そして、10月には、あのJESUS JONES〔ジーザス・ジョーンズ〕も、1stアルバムの「LIQUIDIZER」をリリースしているのだ。
「あのJESUS JONES」と書いてしまったが、2019年現在、JESUS JONESを知っている人や聴いている人はどれくらいいるのだろう?
THE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕やLED ZEPPELIN〔レッド・ツェッペリン〕に匹敵するロック・レジェンドとなったTHE STONE ROSESに比べ、JESUS JONESの存在は限りなく小さい。
しかし、1989年にJESUS JONESが「LIQUIDIZER」をリリースした時、当時のUKロック界では、「THE STONE ROSESの次に来るのはJESUS JONESだ」的な空気が間違いなくあった。
そして、JESUS JONES自身もデビュー当時の瞬間風速はかなりのものがあったので、それを感じさせるに十分な存在感があった。
しかし、どう言う訳か、彼らは失速していくのが速かった。
2ndアルバムの「DOUBT」までは、かなりの勢いがあったのだが、今回取り上げた3rdアルバムの「PERVERSE」をリリースした頃から、じわじわと勢いに陰りが見え始めたように記憶している。
JESUS JONESの音楽性は、当時、流行していた「ロックとダンスと融合」なのだが、THE STONE ROSES等のマッドチェスター系が放つ酩酊感漂うダンス・ミュージックとは異なり、JESUS JONESのそれはデジタル・ビートとロック・ギターのダイレクトな融合であり、これはマッドチェスター系よりも解り易いアプローチだと言える。
しかし、解り易いものは飽きられるのも早い。
皮肉な展開だが、JESUS JONESが本当にやりたかった音楽は、飽きられ始めたこの3rdアルバム「PERVERSE」で完成したのではないだろうか?
1stや2nd比べ格段にハードになったこのアルバム、そして、オープニングを飾る尋常ならざる緊迫感に満ちた"Zeroes And Ones"を聴くにつけ、そう思えて仕方がない。
彼らが失速し始めたこのアルバムこそが、実は彼らの最高傑作なのである。