Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0204) DIG YOUR OWN HOLE / THE CHEMICAL BROTHERS 【1997年リリース】

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遅ればせながらKeith Flint〔キース・フリント〕の訃報を受け、#0194で彼が所属していたTHE PRODIGY〔ザ・プロディジー〕の「THE FAT OF THE LAND」を取り上げた。


それが切っ掛けとなり、1990年代に嵌っていたエレクトロニカのアーティストを最近よく聴いている。


THE PRODIGYの「THE FAT OF THE LAND」は1997年にリリースされたアルバムだが、同じ年に、当時、THE PRODIGYと人気を二分していたエレクトロニカのもう一方の雄であるTHE CHEMICAL BROTHERS〔ザ・ケミカル・ブラザーズ〕が「DIG YOUR OWN HOLE」という凄い2ndアルバムをリリースしている。


同じ時期にはUNDERWORLDアンダーワールド〕やORBITAL〔オービタル〕の人気も高かったのだが、やはり、この時期のエレクトロニカと言えばTHE PRODIGYTHE CHEMICAL BROTHERSがツートップだろう。


つまり、ブリティッシュ・ビートにおけるTHE BEATLESザ・ビートルズ〕とTHE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ〕、サザン・ロックにおけるTHE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド〕とLYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕、プログレッシヴ・ロックにおけるPINK FLOYDピンク・フロイド〕とKING CRIMSONキング・クリムゾン〕のような存在がこの時期のエレクトロニカではTHE PRODIGYTHE CHEMICAL BROTHERSなのである。


THE PRODIGYの「THE FAT OF THE LAND」もそうなのだが、今回取り上げるTHE CHEMICAL BROTHERSの「DIG YOUR OWN HOLE」もかなりロック色の強いエレクトロニカだ。


この辺りの音楽はエレクトロニカの中でもビッグ・ビートというジャンルにカテゴライズされ、エレクトロニカ本来のサンプリングとバンド・サウンドを絶妙に融合させたロック寄りのアプローチをしており、当時、ロック・ファンを巻き込んで大きなムーヴメントになっていた。


このアルバムに収録されている"Setting Sun"はシングルとしてもリリースされた曲なのだが、この時期、将に飛ぶ鳥を落とす勢いだったOASIS〔オアシス〕のNoel Gallagher〔ノエル・ギャラガー〕がヴォーカルと作詞で参加しており、全英1位を獲得している。


この"Setting Sun"という曲、1960年代風の古典的なロックと、1990年代のエレクトロニカが見事に融合した強烈にカッコ良い曲であり、正直なところ、筆者は、自分が聴いたことのあるOASISのどの曲よりも"Setting Sun"の方が好きだ。


やはり、この時期のエレクトロニカは好きなので、このブログのタイトルにはそぐわないが、これからも時々取り上げたい。

 

#0203) BOOM / T. M. STEVENS OUT OF CONTROL 【1995年リリース】

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今日は、#0187で取り上げたVAI〔ヴァイ〕の「SEX & RELIGION」に参加しているベーシストT. M. Stevens〔T.M.スティーヴンス〕がT. M. STEVENS OUT OF CONTROL〔T.M.スティーヴンス・アウト・オブ・コントロール〕名義でリリースした1stアルバム「BOOM」を取り上げる。


T. M. Stevensは1951年生れなので、この1stアルバム「BOOM」をリリースした時は44歳である。


そのキャリアにおいて、多くの著名ミュージシャンと活動してきたベーシストが44歳にして放った渾身の一撃と言える作品だろう。


T. M. Stevensは、James Brownジェームス・ブラウン〕やBootsy Collinsブーツィー・コリンズ〕というファンクの大物との活動がよく知られているため、筆者はこの「BOOM」とうアルバムに対し、勝手にファンクのアルバムだという先入観を持っていたのだが、実際に聴いてみたところ、これはかなりロック色の強いアルバムだった。


もちろん、ファンクの要素があるのは確かなのだが、T. M. Stevensが自身の音楽性をヘヴィ・メタル・ファンクと言っているとおり、ロックの中でも特にヘヴィ・メタルハード・ロックに通じる重さと切れ味がある。


黒人が奏でるロックと言えば、BAD BRAINS〔バッド・ブレインズ〕、FISHBONE〔フィッシュボーン〕、LIVING COLOUR〔リヴィング・カラー〕、24-7 SPYZ〔トゥエンティ・フォー・セヴン・スパイズ〕等の名があがると思うのだが、T. M. Stevensがこのアルバムで奏でている音楽は、上記のバンドよりも、もっと王道のハード・ロックに近い(LIVING COLOUR のドラマーWill Calhoun〔ウィル・カルホーン〕はこのアルバムに参加している)。


リード・シンガーとしてポール・ロジャース〔Paul Rodgers〕かRobert Plantロバート・プラント〕を迎えてこのアルバムを制作していたなら、もっとハード・ロック的なアルバムになっていたのではないかと思うのは筆者だけだろうか?


ファンクの要素が入っているとどうしても苦手だという人は別として、筆者はこのアルバムは多くのロック・ファンに聴いて欲しい作品だと思っている。


筆者の好きなAl Pitrelli〔アル・ピトレリ〕やStevie Salasスティーヴィー・サラス〕というギタリストも参加しており、T. M. Stevensのベースだけでなく、ギターの聴きどころが多いのもこのアルバムの特徴だ。


このアルバムは、あまりロック・ファンに知られていないので、ロック・ファンにも聴いてもらえればと思い今回取り上げてみた。

 

#0202) WEATHER REPORT / WEATHER REPORT 【1971年リリース】

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ジャズ・フュージョンのトップ・アーティストと言えば、たぶんWEATHER REPORT〔ウェザー・リポート〕ということになるのだろう。


筆者は、あくまでもロック・リスナーであり、ジャズに関しては自分で聴きたいアーティストを探し出してまで聴くようなことは殆ど無い。


筆者が聴くジャズのアーティストは、筆者が若い頃に長期出張で赴任していたとある地方都市のジャズ喫茶のマスターから教えてもらったものばかりだ。


そんなジャズとの縁が薄い筆者でも、ロックを聴き始めた頃(1980年代初期)から知っていたジャズ・フュージョン・バンドがWEATHER REPORTだ。


ただし、その頃の筆者はWEATHER REPORTというバンド名を知っていただけで、それがジャズ・フュージョン・バンドだということまでは知らなかった。


そんなWEATHER REPORTを初めて聴いたのも件のジャズ喫茶だった。


#0192で取り上げたChick Coreaチック・コリア〕の1stアルバム「RETURN TO FOREVER」(ただし、これは実質的にはRETURN TO FOREVER〔リターン・トゥ・フォーエヴァー〕というバンドの1stアルバムだ)でジャズ・フュージョンに嵌った筆者は、他のジャズ・フュージョンのアーティストも聴いてみたくなり、件のジャズ喫茶のマスターから教えてもらったのが、今回取り上げたWEATHER REPORTの1stアルバム「WEATHER REPORT」だった。


WEATHER REPORTは、Chick Coreaと同様、Miles Davisマイルス・デイヴィス〕のアルバムに参加していたWayne Shorterウェイン・ショーター〕(Tenor Sax, Soprano Sax)とJoe Zawinulジョー・ザヴィヌル〕(Electric Piano, Acoustic Piano)の二人を中心に結成されたバンドだ。


故に、筆者はこのアルバム「WEATHER REPORT」の音楽性を「RETURN TO FOREVER」のような清々しいジャズ・フュージョンであると勝手に予想していたのだが、このバンドの音楽性は「RETURN TO FOREVER」とはだいぶ違っていた。


このアルバムは、最初から最後まで、とにかく、ずっと混沌とした雰囲気が続くのである。


収録曲は不安定な天気の如く、コロコロとその様相を変えてゆき、将に天気予報というそのバンド名のとおり、移り変わる天気を随時伝えているようなのである。


これは、聴き方を変えるとプログレッシヴ・ロックとしても聴けるアルバムなのである。

 

#0201) WHERE HAVE ALL THE GOOD GIRLS GONE / THE CRYBABYS 【1991年リリース】

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THE CRYBABYS〔ザ・クライベイビーズ〕は、元U.K. SUBS〔U.K.サブス〕のDarrell Bath〔ダレル・バス〕と元THE BOYS〔ザ・ボーイズ〕のHonest John Plain〔オネスト・ジョン・プレイン〕を中心に結成された英国のロックン・ロール・バンドだ。


しかし、筆者にとってのこのバンドは、THE DOGS D'AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕のアルバム「MORE UNCHARTERED HEIGHTS OF DISGRACE」でギターを弾いていたDarrell Bathがいたバンドという印象の方が強い。


「MORE UNCHARTERED HEIGHTS OF DISGRACE」は、1991年に解散したTHE DOGS D'AMOURが翌年の1992年に再結成し(何のための解散だったのか?)、1993年にリリースしたアルバムである。


この時期、THE DOGS D'AMOUR黄金期のギタリストであるJo Dog〔ジョー・ドッグ〕は、元HANOI ROCKSハノイ・ロックス〕のAndy McCoy〔アンディ・マッコイ〕が結成したSHOOTING GALLERY〔シューティング・ギャラリー〕のツアーに参加しており、THE DOGS D'AMOURの再結成には参加できなかったため、その穴を埋めてくれたのがDarrell Bathなのである。


Darrell Bathはギブソン系のギターをメインとして用いるギタリストであり、フェンダー系のギターをメインとして用いるJo Dogとは一味違った新しいテイストをTHE DOGS D'AMOURに与えてくれたとても印象深い人物だ。


この辺りのロックン・ロール・バンドは密接に関わりあっているので面白い。


そんな、Darrell Bathと、もう一人の主役であるHonest John Plainがメイン・ソングライターとして参加していたバンドがTHE CRYBABYSであり、今回取り上げたのは彼らの1stアルバム「WHERE HAVE ALL THE GOOD GIRLS GONE」である。


THE CRYBABYSの奏でる音は、THE DOGS D'AMOURが好きな人なら大抵好きになれるであろう、英国的な湿り気を帯びたロックン・ロールだ。


そう言えば、昔読んだ洋楽雑誌(たぶんMUSIC LIFE)に載ったDarrell Bath在籍時のTHE DOGS D'AMOURのインタビュー記事で、Darrell Bathが「俺はTHE DOGS D'AMOURのファンなんだ」と言っていた記憶がある。


THE CRYBABYS の曲には、THE DOGS D'AMOUR のTyla〔タイラ〕が描く短編映画のようなドラマティックな趣は無いのだが、一日中聴いていられるような肩の力の抜けた軽快さがある。


THE CRYBABYSのアルバム聴いている時に、筆者がいつも感じるのは、「このバンドを英国のパブで聴けたら最高だろうな」ということだ。


時代遅れのロックン・ロールと言われれば、将にそのとおりなのだが、それが好きなんだからほっといてくれという感じなのである。

 

#0200) TUESDAY NIGHT MUSIC CLUB / Sheryl Crow 【1993年リリース】

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ZIGGY〔ジギー〕の松尾宗仁〔まつおそうにん〕が、「今、必ずニュー・アルバムを買っているアーティストはTHE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ〕とSheryl Crowシェリル・クロウ〕だけ」と言っていたのがSheryl Crowを聴こうと思った切っ掛けだった(たぶんインターネットの記事だったと思う)。


今回取り上げたSheryl Crowの1stアルバム「TUESDAY NIGHT MUSIC CLUB」は1993年にリリースされたアルバムだが、筆者がこのアルバムを聴いたのは2000年代に入ってからだったと思う。


Sheryl Crowがデビューした当時、毎月必ず購入していた洋楽雑誌(MUSIC LIFE、rockin'on、CROSSBEAT等)でこのアルバムが取り上げられていたのは知っていたが、筆者にとっては、これといった特徴のない女性ミュージシャンというくらいの認識しかなかった。


ところが、上記のとおり、日本が誇る最高のロックン・ロール・ギタリストの一人である松尾宗仁が推しているのを知って、「これは間違いないはずだ」と思い、「TUESDAY NIGHT MUSIC CLUB」を購入するに至ったのである。


このアルバムを聴くまで、筆者はSheryl Crowの曲を聴いたことがなかった。


当時は開局して3年目を向かえていた地元のFM局「α-STATION」をよく聴いていた時期なので、もしかすると知らず知らずのうちにSheryl Crowの曲を耳にしていた可能性はあるが、意識はしてはいなかった。


誠に失礼ながらSheryl Crowのことを、「これといった特徴のない女性ミュージシャン」と思い込んでいたのだが、遅ればせながら聴いてみた「TUESDAY NIGHT MUSIC CLUB」は米国のルーツ・ミュージックに根差した実に豊潤な味わいがあり極めて魅力的だったのである。


確かにこのアルバムは、LITTLE FEATリトル・フィート〕やLYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕等、米国の(特に南部の)ルーツ・ミュージックに根差した音楽を好む松尾宗仁が推すのが頷ける音だ。


Sheryl Crowの1stアルバムは既にHugh Padgham〔ヒュー・パジャム〕のプロデュースにより完成していたものがあったのだが、Sheryl Crowがそれに納得がいかずにBill Bottrell〔ビル・ボットレル〕をプロデューサーに起用して一から作り直したことは有名な話だ。


確かに、ゲート・リバーブによるテクニカルなドラム・サウンドXTC〔エックス・ティー・シー〕やPeter Gabrielピーター・ガブリエル〕にはピッタリだが、土の匂いがするSheryl Crowのカントリー・ブルースには合わない。