Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0324) DEMANUFACTURE / FEAR FACTORY 【1995年リリース】

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米国におけるインダストリアル・ロックの歴史はMINISTRY〔ミニストリー〕によって切り開かれ、NINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ〕がそれを完成させた。


視野を世界規模に切り替えれば、他にも好きなアーティストはいるのだが、米国に限定するのであれば、筆者も上記二つのアーティストがこのジャンルにおける最高峰だと思う。


そして、MINISTRYとNINE INCH NAILSに続くアーティストととなると、MARILYN MANSONマリリン・マンソン〕とWHITE ZOMBIE 〔ホワイト・ゾンビ〕~Rob Zombie〔ロブ・ゾンビ〕なのだろう。


Marilyn Manson とRob Zombieという稀代のエンターテイナーによって、インダストリアル・ロックは大衆性を得ることに成功した。


やがて、インダストリアル・ロックはインダストリアル・メタルと呼ばれるようにもなるのだが、とにかくこのジャンルにおいては上記4アーティストの存在が大きすぎた。


そんな中、デス・メタルグルーヴ・メタル等、当時の新しいメタルのスタイルを取り入れたインダストリアル・メタルを構築し、上記4バンド以降の最重要インダストリアル・メタル・バンドとなったのが今回取り上げているFEAR FACTORY〔フィア・ファクトリー〕であり、彼らの存在を世に知らしめた1枚が、今回取り上げている2ndアルバムの「DEMANUFACTURE」だ。


実のところ、FEAR FACTORYはインダストリアル・メタルと呼ぶには機械的感触が薄い。


しかし、デス・メタルと呼ぶにはクリーン・ヴォイスの割合が高く、グルーヴ・メタルと呼べるほどグルーヴィーではなく、そもそもデス・メタルグルーヴ・メタルと呼ぶには機械的感触が強い。


このように、FEAR FACTORYとは、極めて絶妙なバランスで成り立っているバンドなのである。


例えば「ラウドな音楽は好きなんだけど、MINISTRYやNINE INCH NAILSみたいな機械モンはちょっと...」いう人でもFEAR FACTORYなら抵抗なく聴けるのではないだろうか?


「全部人間が演奏しないとダメ」とか「打ち込み使うのはけしからん」と言うのであれば仕方がないが、FEAR FACTORYはかなりバンド感の強いインダストリアル・メタル・バンドであり、筆者もFEAR FACTORYを聴く時はMINISTRYやNINE INCH NAILSとは違う気持ちで聴いている。


このアルバム以降、FEAR FACTORYはスペース・ロック的な要素を強めながら、よりキャッチーな方向に舵を切っていくことになる。

 

#0323) McALMONT / McAlmont 【1994年リリース】

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今回取り上げているMcAlmont〔マッカルモント〕というシンガーを知った切っ掛けは、McAlmont がSUEDEスウェード〕を脱退したギタリストのBernard Butler〔バーナード・バトラー〕とMcAlmont & Butler〔マッカルモント&バトラー〕を結成し、1995年に1stアルバム「THE SOUND OF... McALMONT & BUTLER」リリースした時だ。


筆者は1990年代初期のある一時期だけだが、聴くことの出来る英国出身の若手ロック・アーティストがSUEDEMANIC STREET PREACHERSマニック・ストリート・プリーチャーズ〕だけになってしまったことがある。


1990年前後に登場した英国のロック・アーティストは、そこら辺にいる学生のような素人っぽい人が多かった。


「これからはオーディエンスが主役の時代だ」と言ったのは、その時代における英国ロックのカリスマたるTHE STONE ROSESザ・ストーン・ローゼズ〕らしいが、もしかするとその言葉の影響があるのかもしれない。


筆者は、THE STONE ROSESの1stアルバム「THE STONE ROSES」は大好きだったし、今でも「THE STONE ROSES」はロックの歴史に燦然と輝く名盤だと思っているのだが、上記の「オーディエンスが主役」という言葉を洋楽雑誌で読んだ時は「そんなアホなことがあるかっ!」と思ったものである。


そんな素人っぽい人たちで賑わっていた1990年前後の英国ロック界にあって、ロック・スターとしての覚悟を感じさせてくれるアーティストがSUEDEとMANICSだけだったのである。


そのSUEDE のギタリストだったBernard Butler が組む相手なら間違いないはずだと信じて買ったMcAlmont & Butlerの「THE SOUND OF... McALMONT & BUTLER」が掛け値なしの大名盤だったので、後追いで買ったのが今回取り上げているMcAlmontの1stソロ・アルバム「McALMONT」なのだが、こちらもまた掛け値なしの大名盤なのである。


このアルバムは元々McAlmontがマルチ・インストゥルメンタリストのSaul Freeman〔ソウル・フリーマン〕と結成していたTHIEVES〔シーヴス〕というユニットから発展し、McAlmontのソロ・アルバムという体裁でリリースされたものらしい。


筆者は美しいファルセットが聴きたくなったら、このアルバムを聴くことにしている。


とにかく、このアルバムを聴いてMcAlmontのファルセットに溺れたいのだ。


特にシングルとしてもリリースされた"Either"と"Unworthy"が醸し出す多幸感は聴く者を確実に昇天させる名曲であり、美しきポップ・ミュージックのお手本のようなアルバムなのである。

 

#0322) MISPLACED CHILDHOOD / MARILLION 【1985年リリース】

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10代後半の頃(1980年代後半)、アルバイト先で仲良くなったU君という友達がいた。


お互いにロック好きということでU君とは、そう時間をかけずに深い付き合いになった。


ロック好きの仲間が増えると何が楽しいかというと、お互いの好きなロックの話をすることが出来るのはもちろんなのだが、自分の持っていないレコードやCDの貸し借りが出来ることが何よりも楽しい。


今のように定額制の聴き放題音楽配信サービスみたいな便利なものは無い時代であり、自分が買うことが出来るレコードやCDの量には当然ながら金銭的な限度あった。


そんな時に自分の持っていないレコードやCDをロック好きの仲間と貸し借りが出来るというのは、今の時代では想像し難いと思うが大変ありがたいことだったのだ。


U君との付き合いを続けていく中で彼のお兄さんとも仲良くなれたのだが、お兄さんは熱狂的なプログレッシヴ・ロック・マニアで膨大な量のレコードやCDを所蔵していて、その中からあれやこれやと見繕っては筆者にプログレのレコードやCDを貸してくれた。


実のところ彼が見繕ってくれるレコードやCDは英国以外の欧州のアーティスト(ユーロ・プログレッシヴ・ロック)が多く、知らないものばかりだったのだが、今回取り上げているMARILLION〔マリリオン〕は以前からその名前を知っていたアーティストだった。


今回取り上げている3rdアルバムの「MISPLACED CHILDHOOD」は当時の洋楽雑誌である「MUSIC LIFE」や「音楽専科」に広告が大きく掲載さていて、以前から聴きたいと思っていたのだが、なかなか手が出せずにいたアルバムだった。


それをU君のお兄さんと仲良くなることにより聴くことが出来たのは有難い話であり、筆者はこのアルバムを貪るように聴いた。


MARILLIONの音楽性はPeter Gabrielピーター・ガブリエル〕在籍時のポップ化する前のGENESISジェネシス〕からの影響が強い前時代的なものであり、シンセポップが主流だった当時の英国のメインストリームからはかけ離れていた。


しかし、この場末の劇場で観るオペラのような世界観は、筆者のような「安っぽいロマンティスト」の心を強烈に引き付けるのでる。


MARILLIONはポンプ・ロック(Pomp Rock / 華麗なるロック)とも呼ばれているのだが、このアルバムはプログレッシヴ・ロックといよりも、ポンプ・ロックと呼んだ方が相応しい気がする。

 

#0321) LE RED SOUL COMUNNITTE / TOKYO SEX DESTRUCTION 【2002年リリース】

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時代が21世紀を向かえた初っ端にロックン・ロール・リバイバル或いはガレージ・ロックリバイバルというムーヴメントがあった。


これは、ちょうどその頃に米国から登場したTHE STROKESザ・ストロークス〕やTHE WHITE STRIPES〔ザ・ホワイト・ストライプス〕の人気に端を発したムーヴメントだ。


英国からはTHE LIBERTINESザ・リバティーンズ〕、オーストラリアからはTHE VINES〔ザ・ヴァインズ〕、スウェーデンからはTHE HIVES〔ザ・ハイヴス〕、MANDO DIAOマンドゥ・ディアオ〕という具合に、1960年代から1970年代のロックン・ロールやガレージ・ロックへの回帰を標榜するバンドが各国から同時多発的に登場した。


今、名前を挙げたバンドの中で筆者が最も好きでよく聴いたのはTHE HIVESだ。


そして、どう言う訳か人気者のTHE WHITE STRIPESに関しては今までまともに聴く機会がない。


今回取り上げているTOKYO SEX DESTRUCTION〔トーキョー・セックス・ディストラクション〕が1stアルバム「LE RED SOUL COMUNNITTE」をリリースしたのは2002年なので、時期的にはちょうどこのムーヴメントと重なっている。


TOKYO SEX DESTRUCTIONはスペイン・バルセロナ出身のバンドだが、スペインという国は筆者の中ではちょっとロックとは結び付きにくい国だ。


確か、このバンドは洋楽雑誌rockin'onで知ったと記憶しているのだが「東京」、「性」、「破壊」という、何の脈絡もなくランダムに選んだ言葉を三つ並べただけのような奇妙なバンド名の命名センスに惹かれて1stアルバム「LE RED SOUL COMUNNITTE」を購入した。


はっきり言って、魔が差した感じで買ってしまった一枚なので、全く期待していなかったのだが、MC5〔エム・シィー・ファイヴ〕への憧憬を隠さない彼等のガレージ・ロックの一撃に見事なまでにやられてしまった。


MC5をマネジメントしていたJohn Sinclair〔ジョン・シンクレア〕にあやかり、メンバー全員がSinclair姓を名乗るというギミックも面白い。


所謂ロックン・ロール・リバイバル或いはガレージ・ロックリバイバルの中では前年(2001年)にリリースされたTHE HIVESのコンピレーション・アルバム「YOUR NEW FAVOURITE BAND」と並んで最もよく聴いたアルバムだ。


2020年現在で日本語版どころか英語版のWikipediaすらないマイナーなバンドだが、全10曲を30分弱で駆け抜けるこのアルバムはガレージ・ロック好きには垂涎の一枚にはるはずである。

 

#0320) VIXEN / VIXEN 【1988年リリース】

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自分の年齢が40代に入ったあたりから新しいロックを積極的に探して聴くということが激減し、1990年代前半までのロックばかりを懐かしんで聴くようなった。


昔、自分の親がテレビで懐メロ番組を見て「最近の歌はダメだ、やっぱり昔の歌が良い」と言っていたが、それと全く同じことを自分がやっているわけである。


たぶん、今も、刺激的でカッコいいロックは次々と出てきているはずなのだが、それを受け入れるだけの豊かな感性を自分が無くしてしまったのだろう。


今の自分はロック・ファンではなく、ただの懐メロ好きのオジサンだ。


自分が最も貪欲にロックを聴いていた1980年代を振り返ると、その時代におけるロック・シーンのメインストリームはヘヴィ・メタルだったなと思う。


もちろんメインストリームに対するオルタナティブとしてインディー・ロックも一定の人気を獲得していたが、普段ロックを聴かないようなリスナー層まで巻き込んだムーヴメントとなると、それはやはりヘヴィ・メタルだけであり、中でもグラム・メタルやポップ・メタルの勢いは凄かった(ちなみに、このグラム・メタルやポップ・メタルに対し、同じメタルの中から出てきたオルタナティブスラッシュ・メタルなのである)。


そんな1980年代を象徴するメタル・バンドは山ほどいるわけだが、今回とり上げているVIXEN〔ヴィクセン〕もその一つだろう。


VIXENはメンバー全員が女性のメタル・バンドなのだが、彼女達よりも前に登場した女性メタル・バンドとは明確に違う新しさがあった。


例えばGIRLSCHOOL〔ガールスクール〕やROCK GODDESS〔ロック・ゴッデス〕といった女性メタル・バンドには怖いイメージがあったが、VIXENは下の画像のとおり女性らしいエレガントなイメージを打ち出しており怖いイメージはない。

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VIXENはメンバー全員が美人なのだが、特にシンガーのJanet Gardner〔ジャネット・ガードナー〕の美しさは下の画像のとおりであり、ロック・ミュージシャンというよりもモデルだ。

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メタルに限らずロック全般を見渡しても歴代最も美しい容姿を持つ女性ロック・ミュージシャンはJanet Gardnerだろう。


これで、曲がショボかったらガクッとなるのかもしれないが、今回取り上げている1stアルバム「VIXEN」は、ほどよくキャッチーで、ほどよくヘヴィな楽曲が詰まった名盤である。


このアルバムが成功した理由は、自分達で書いた曲に拘らず、外部ソングライターの曲を積極的に取り入れた彼女達の柔軟性だろう。


ギタリストのJan Kuehnemund〔ジャン・クエネムンド〕が2013年に59歳という若さで癌により亡くなってしまったのは残念で仕方がない。


ベーシストのShare Pedersen〔シェア・ペダーセン〕は筆者の最も好きなバンドTHE DOGS D’AMOUR〔ザ・ドッグス・ダムール〕のドラマーBam〔バム〕と結婚しShare Ross〔ロス〕となった。


ドラマーのRoxy Petrucci〔ロキシーペトルッチ〕は、あのSKID ROWスキッド・ロウ〕のシンガーSebastian Bach〔セバスチャン・バック〕も在籍していたMADAM X〔マダム・エックス〕出身のメンバーである。