Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0429) AUGUST AND EVERYTHING AFTER / COUNTING CROWS 【1993年リリース】

f:id:DesertOrchid:20211011213211j:plain

 

今回取り上げているCOUNTING CROWS[カウンティング・クロウズ]の1stアルバム「AUGUST AND EVERYTHING AFTER」を英語版のWikipediaで調べてみると、Genreの欄にAlternative Rockと書いてある。


「うぅ~ん」という感じである。


AUGUST AND EVERYTHING AFTER」は1993年にリリースされたアルバムであり、当時はグランジ/オルタナティヴ・ロックの全盛期だ。


当時の日本の洋楽雑誌でも、「AUGUST AND EVERYTHING AFTER」をオルタナティヴ・ロックとして扱っていたような記憶があるのだが、実際のところ、このアルバムは、どう聴いてもオルタナティヴ・ロックではない。


言うまでもないことかもしれないが、Alternativeとは、「取って代わるもの」、或いは、「代替手段」という意味である。


では、オルタナティヴ・ロックとは、「何に取って代わるもの」であり、「何の代替手段」なのかと言えば、「メインストリームのロックに取って代わるもの」であり、「メインストリームのロックの代替手段」なのである。


大衆に支持されるメインストリームの王道ロックではなく、支持してくれる人は少ないかもしれないが、独特の表現手段でロックをやるのがオルタナティヴ・ロックなのだ。


そうなると、COUNTING CROWSの「AUGUST AND EVERYTHING AFTER」に詰められた曲の感触はオルタナティヴ・ロックというよりも、むしろ、メインストリームの王道ロックなのである。


筆者の耳には、COUNTING CROWSの曲は、ハートランド・ロックと言われてる、かなり保守的なロックの音に近いよう聴こえている。


メインストリームだからダメなんて言うつもりは全く無く、むしろ、筆者は、オルタナティヴ・ロックも聴くが、本質的にはメインストリームの王道ロックが好きなリスナーだ。


何しろ、筆者のロックへの入り口は、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンとグラム・メタル(LAメタル)である。


筆者の周りには、オルタナティヴ・ロックを知ると、メインストリームの王道ロックを馬鹿にして聴かなくなる人もいたが、筆者はオルタナを好きになってからも、王道ロックを聴き続けたし、何より、そんなストイックなロックの聴き方ができない。


そんな無節操なロック・ファンである筆者にとって、COUNTING CROWSが奏でる、米国の大地の匂いのする王道ロックは大歓迎なのである。

 

#0428) FANTASTIC / WHAM! 【1983年リリース】

f:id:DesertOrchid:20211003123904j:plain

 

今回取り上げているWHAM!ワム!]の1stアルバム「FANTASTIC」が、全英チャートで初登場1位になっていることを最近知った。


FANTASTIC」は1983年にリリースされており、当時の筆者は14歳なので、中2の時にリアルタイムで聴いたアルバムだ。


この時代は英国のアーティストが、米国のチャートを席捲していた時期であり、それはメディアによって、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれていた。


ちなみに、1960年代に、THE BEATLESザ・ビートルズ]やTHE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ]等が米国のチャートを席捲した現象がブリティッシュ・インヴェイジョンであり、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンとは、1980年代に起きた2回目のブリティッシュ・インヴェイジョンという意味である。


筆者の洋楽への入り口は、正にこの第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンなのである。


当時の筆者は、DURAN DURANデュラン・デュラン]、SPANDAU BALLETスパンダー・バレエ]、CULTURE CLUBカルチャー・クラブ]、KAJAGOOGOO[カジャグーグー]あたりと共に、WHAM!も夢中になって聴いていた。


当時は全然気付いてなかったのだが、今、改めて上記したアーティストの1stアルバムを聴いてみると、その完成度の高さに驚かされる。


どれもこれも、素人臭さが全く無く、曲も演奏も実にプロっぽいのである。


後の1990年代に起きた、シューゲイザーブリットポップには、物凄く素人臭いアーティストが多かったが、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンのアーティストは完全にプロであり、本人たちのプロ意識も高い。


その中でも、今回取り上げているWHAM!の「FANTASTIC」は完成度の高さが尋常ではない。


筆者は、George Michaelジョージ・マイケル]の最高傑作は、ソロとしての1stアルバム「FAITH」だと思っているのだが、彼の作曲家としての才能は「FANTASTIC」の時点で既に完成されいる。


George Michaelは1963年生れなので、当時の彼は20歳なのだが、今、改めて「FANTASTIC」を聴いてみると、とてもじゃないが20歳の新人が書いた曲とは思えない完成度の高さなのである。


ここに至るまで、もう一人のWHAM!であるAndrew Ridgeley[アンドリュー・リッジリー]に触れなかったが、彼はGeorge Michaelの親友というだけで充分に大きな役割を果たしたのである。

 

#0427) BADLANDS / BADLANDS 【1989年リリース】

f:id:DesertOrchid:20210925085941j:plain

 

大名盤である。


今回取り上げているBADLANDSの1stアルバムについては、それだけで充分だ。


ちなみに、2ndアルバムの「VOODOO HIGHWAY」も1stと甲乙つけがたい大名盤である。


ハード・ロックが好きで、BADLANDSを聴いたことがないのであれば、それは非常に勿体ないことなので絶対に聴くべきだ。


BADLANDSは、Ozzy Osbourneオジー・オズボーン]のバンドを脱退したギタリストのJake E. Lee[ジェイク・E・リー]が、シンガーのRay Gillen[レイ・ギラン]、ドラマーのEric Singer[エリック・シンガー]、ベーシストのGreg Chaisson[グレッグ・チェイソン]と共に結成した、ブルースをベースにしたハード・ロック・バンドだ。


Ray GillenとEric SingerはBADLANDS 結成前は、BLACK SABBATHブラック・サバス]に在籍経験があるのだが、Eric Singerは、現在(2021年)ではKISS[キッス]のドラマーとして有名だ。


それにしても、ドラマーなのに名前がEric Singerというのは大変ややこしい。


シンガーのRay Gillenは残念ながら1993年に34歳という若さで亡くなっており、Greg ChaissonはBADLANDS加入前の経歴がよく分からない。


BADLANDSを簡単に説明すると、凄腕のミュージシャンが集まって、素晴らしい曲を演奏した、奇跡のようなハード・ロック・バンドだ。


Jake E. Leeは、Ozzy Osbourneの「BARK AT THE MOON」と「THE ULTIMATE SIN」を事前に聴いていたのでテクニカル・スキルの高いギタリストであることは予めて分かっていた(ちなみに、この人がOzzy Osbourneのアルバムで弾いているギターはテクニカル過ぎて、レコードを聴いているだけでは、どうやって弾いているのか全く分からない)。


BADLANDSの曲は、そんなJake E. Leeのテクニカルなギターと、泥臭いブルースを実に巧く融合させた完全無欠のハード・ロックなのである。


そして、そんなJake E. Leeのテクニカルなギターを時に凌駕してしまうほど凄いのが、Ray Gillenの迫力のヴォーカルだ。


この人の高音域における声の伸びの美しさは絶品であり、1980年代に登場したシンガーの中でも、その実力はトップクラスであると言えるだろう。


もし、BADLANDSを聴いたことがないのであれば、シングルにもなった"Dreams in the Dark"を聴いてもらえれば、その実力が分かるはずである。

 

#0426) SCARECROW / John Cougar Mellencamp 【1985年リリース】

f:id:DesertOrchid:20210919134320j:plain

 

今回取り上げているJohn Cougar Mellencampジョン・クーガー・メレンキャンプ]の8thアルバム「SCARECROW」は1985年のリリースであり、当時の筆者は16歳(高1)だった。


このアルバムは、物凄く売れていたという印象があり、筆者はこのアルバムでJohn Cougar Mellencampというアーティストに出会った。


現在はJohn Mellencampという本名で活動している彼だが、Johnny Cougar(1st~2nd)→John Cougar(3rd~6th)→John Cougar Mellencamp(7th~10th)→John Mellencamp(11th~)という具合に、徐々にアーティスト名を本名に変えていった経緯がある。


たぶん、レコード会社かマネジメントあたりに付けられたCougarという芸名が、かなり嫌だったのではないだろうか。


ちなみに、Cougarとは、日本では一般的にピューマと呼ばれている動物であり、食肉目ネコ科に分類される肉食動物のことである。


ネコ科は、ネコ亜科(イエネコ、ヤマネコ等)とヒョウ亜科(ヒョウ、トラ、ライオン等)に分かれるのだが、ピューマは、見た目や大きさはヒョウのようなのだが、ヒョウ亜科ではなく、ネコ亜科に分類される変わった動物であり、筆者にとってはユキヒョウと並ぶ好きな動物の一つだ。


だいぶ話が横道に逸れたが、筆者はこの「SCARECROW」あたりからハートランド・ロックというジャンルを熱心に聴くようになった。


この「SCARECROW」、そして、同じく1985年にリリースされているTom Petty & THE HEARTBREAKERS[トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ]の「SOUTHERN ACCENTS」の2枚は、当時、かなり聴き込んでいた。


筆者が洋楽を聴き始めた切っ掛けは、DURAN DURANデュラン・デュラン]、CULTURE CLUBカルチャー・クラブ]、KAJAGOOGOO[カジャグーグー]、WHAM!ワム!]といった英国の煌びやかなアーティストだったのだが、1984年にリリースされたBruce Springsteenブルース・スプリングスティーン]の「BORN IN THE U.S.A.」が切っ掛けとなり、米国の煌びやかではないロックにも興味を持つようになった。


その後は、Huey Lewis & THE NEWS[ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース]の「SPORTS」に嵌り、そして、この手の米国産ロックを好きになる決定打となったのが今回取り上げているJohn Cougar Mellencampの「SCARECROW」だった。


今、この手の米国産ロックのことをHeartland Rock[ハートランド・ロック](中西部地域のロックという意味か?)と言うらしいが、1980年代当時、Heartland Rockというジャンル名は、少なくとも日本では使われていなかったと思う。


「この手の米国産ロック」と書くと、何のことか分からなくなりそうなので、この記事でもHeartland Rockと書くが、Heartland Rockのアーティストというのは、日本ではけっこうイメージを誤解されているようように思えてならない。


多くの日本人は、Heartland Rockのアーティストに対し、「勇ましい」とか「男らしい」というイメージを持っているのではないだろうか?


筆者も、最初はそのイメージでHeartland Rockのアーティストのことを理解しようとしていたのだが、実際に聴き込んでみると、彼らは意外なほど繊細...というか女々しいのである。


John Cougar Mellencampの「SCARECROW」も自身の弱さを曝け出したようなアルバムであり、そこが男の胸にグッと刺さるのである。

 

#0425) SINFUL / ANGEL 【1979年リリース】

f:id:DesertOrchid:20210911180340j:plain

 

今回取り上げている米国・ワシントンD.C.出身のバンドANGEL[エンジェル]は、1975年に1stアルバムの「ANGEL」をリリースしている。


筆者は1969年生れなので、当然のことながらリアルタイムで聴いたバンドではない。


ANGELのキーボディストだったGregg Giuffria[グレッグ・ジェフリア]は、1980年代にGIUFFRIA[ジェフリア]というバンドを率いて活動しており、筆者は、このGIUFFRIAが好きだったので、そこから遡ってANGELに辿り着いたのである。


今回取り上げているのは5thアルバムの「SINFUL」なのだが、そのアルバム・カヴァーのとおり、レコード会社やマネジメントからアイドルとして売り出されていたバンドだ。


ただし、1stアルバムの「ANGEL」、2ndアルバムの「HELLUVA BAND」では、プログレッシヴ・ロックの要素が強い重厚なハード・ロックを演奏しており、アイドル・バンドらしい分かり易い音楽性ではない。


デビュー当時、本国の米国では鳴かず飛ばずの状況だったが、日本ではデビューから女性ファンを中心に大人気となった。


確かに、キーボディストのGregg Giuffriaと、ギタリストのPunky Meadows[パンキー・メドウス]のヴィジュアルはかなりのものであり、とりわけ、Punky Meadowsは、筆者も初めて彼の写真を見た瞬間、自分の中のカッコ良いギタリスト・ランキングの上位に飛び込んできた。


何しろ、ステージに上がっていない時の姿がこの麗しさであり、

f:id:DesertOrchid:20210911180406j:plain



ステージに上がっている時の姿がこのカッコ良さなのである。

f:id:DesertOrchid:20210911180459j:plain



日本の女性ファンが飛びつくのも当然だろう。


ただし、先ほども書いたとおり、デビュー当時のANGELは、アイドル・バンドらしい、分かり易い音楽性を持っていたわけではない。


ANGELがポップな面を押し出してきたのは3rdアルバムの「ON EARTH AS IT IS IN HEAVEN」からであり、その方向性が功を奏し、4thアルバムの「WHITE HOT」では売り上げも伸び、全米55位のという結果を残すことができた。


そして、今回取り上げている5thアルバムの「SINFUL」は、彼らのキャッチーでポップな面が最も強く打ち出されており、アルバム・カヴァーどおり、アイドル・バンドとして分かり易いアルバムとなったのだが、売り上げは前作を超えることができず、このアルバムを最後に解散という道を選ぶことになった。