Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.10) 好きなインディー・ロックのアルバム10選

■ 第10位

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title STUTTER[スタッター]
(1st album)
(label: Sire, Blanco y Negro)
artist JAMES[ジェイムス]
released 1986年
origin Whalley Range, Manchester, England, UK
comment  筆者の中でインディー・ロックというワードに対し、シナプスの如く結びつくのが、このバンドJAMESだ。
 JAMES、THE SMITHSザ・スミス]、THE STONE ROSESザ・ストーン・ローゼズ]、HAPPY MONDAYSハッピー・マンデーズ]は、だいたい同じ時期に活動を開始したということを、これら4組のいずれかのインタビューで読んだ記憶がある。
 この4組の中で、最も安定した活動を維持できたのが、JAMESという一番地味なバンドであるということは、なかなか興味深い。
 演奏はとても良いのだが、Tim Booth[ティム・ブース]のヴォーカルはショボい。
 それがまた、インディー・ロックっぽいのである。

■ 第9位

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title 16 LOVERS LANE[16ラヴァーズ・レーン]
(6th album)
(label: Mushroom [AUS], Beggars Banquet [UK])
artist THE GO-BETWEENS[ザ・ゴー・ビトウィーンズ
released 1988年
origin Brisbane, Queensland, Australia
comment  THE GO-BETWEENSは、自分の中で不思議な存在のバンドだ。
 彼らの全てのアルバムが好きなのにも関わらず、THE GO-BETWEENSというバンドやメンバーへの思い入れが全く無い。
 そもそも筆者は曲最優先であり、その曲を書いているアーティストに対して感情移入することは極めて稀なのだが、THE GO-BETWEENSに対してはそれが著しい。
 Grant McLennan[グラント・マクレナン]とRobert Forster[ロバート・フォスター]、この二人が書く珠玉の名曲を何も考えずに純粋にだ楽しみたいだけであり、筆者にとってのTHE GO-BETWEENSとは、そんなバンドなのである。

■ 第8位

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title DARKLANDS[ダークランズ]
(2nd album)
(label: Blanco y Negro)
artist THE JESUS AND MARY CHAIN[ザ・ジーザス・アンド・メリーチェイン]
released 1987年
origin East Kilbride, Scotland, UK
comment THE JESUS AND MARY CHAINが登場したときの売り文句は「SEX PISTOLSセックス・ピストルズ]以来の衝撃!」だった。
 「ほんまかいな?」思いつつ、彼らの1st「PSYCHOCANDY」を聴いたのだが、別な意味で「ほんまかいな?」だった。
 まぁ、当時の筆者も、そして、現在も筆者も、パンクがよく分かっていない奴、或いは、パンクの精神性が不要な奴なので、「SEX PISTOLS以来の衝撃!」という売り文句自体が「何それ?」だったのだが...
 しかし、この2nd「DARKLANDS」は、1stよりも圧倒的に好きになれた。
 素人の歌と演奏のようなアルバムだが、メロディー、そして、曲がとても良いのだ。

■ 第7位

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title PRIMAL SCREAMプライマル・スクリーム
(2nd album)
(label: Creation)
artist PRIMAL SCREAMプライマル・スクリーム
released 1989年
origin Glasgow, Scotland, UK
comment PRIMAL SCREAMの最高傑作を挙げろと言われれば、それはもちろん3rd「SCREAMADELICA」だ。
 しかし、インディー・ロックという括りを設けるなら、この2nd「PRIMAL SCREAM」になってしまう。
 筆者から見ると、PRIMAL SCREAMというバンドは、ロックン・ロールへの愛が有るのか無いのか、よく分からないバンドである。
 たぶん、彼らのロックン・ロールへの愛は深遠過ぎて、筆者のような軽薄なロックン・ロールバカ一代では掴み切れないのだろう。
 このアルバムは、PRIMAL SCREAMが最も分かり易い形でロックン・ロールへの愛を描いて見せたアルバムだ。

■ 第6位

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title TIGER BAY[タイガー・ベイ]
(3rd album)
(label: Creation)
artist SAINT ETIENNE[セイント・エティエンヌ
released 1994年
origin Croydon, London, England, UK
comment  SAINT ETIENNEは、インディー・ロックというよりは、インディ―・ポップなのだろうか?
 筆者は英国人女性と関わったことが無いので、あくまでも想像の範囲なのだが、このグループのシンガーであるSarah Cracknell[サラ・クラックネル]は英国人女性っぽいなぁ~と感じている。
 当時のSarah Cracknellには、ぜひとも、ヴィクトリア朝時代の衣装を着てシャーロック・ホームズのドラマに出演してほしかった。
 そもそも筆者は、Sarah Cracknellにように、可愛らしいポップ・ミュージックにのせて、素人っぽい歌を披露する女性シンガーが好きなのである。
 素人っぽい男性シンガーには辛辣になりがちな筆者なのだが、何故か素人っぽい女性シンガーには甘くなってしまうのである。
 ちなみに、筆者の性別は♂なので、「だからだよっ」と言われれば、返す言葉は無い。

■ 第5位

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title RANK[ランク]
(live album)
(label: Rough Trade [UK] Sire [US])
artist THE SMITHSザ・スミス
released 1988年
origin Manchester, England, UK
comment  筆者は、ライヴ・アルバムはあまり好きではないのだが、THE SMITHSに関しては、どのスタジオ・アルバムよりも、このライヴ・アルバム「RANK」が彼らの最高傑作だと思っている。
 初めて聴いたTHE SMITHSのアルバムは2nd「MEAT IS MURDER」だったのだが、演奏は最高にカッコ良いにも関わらず、ヴォーカルを全く受け入れることができなかった。
 それは他のスタジオ・アルバムも同じで、せっかくのカッコ良い演奏が、全てMorrisseyモリッシー]のヨーデルのようなヴォーカルにぶっ壊されてしまうのである。
 しかし、このライヴ・アルバムだけはMorrisseyのヴォーカルに重さと激しさと分厚さがあり、カッコ良く聴こえるのだ。
 そして、このライヴ・アルバムは、Craig Gannon[クレイグ・ギャノン]がアディショナル・ギターとして参加していた時期の音源なので、Johnny Marr[ジョニー・マー]とCraig Gannon、二人のギターによりサウンドに厚みが感じられるところも良い。
 ちなみに、Morrisseyが書く歌詞の意味を知ってからは、スタジオ・アルバムも楽しめるようになった。

■ 第4位

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title RED ROSES FOR ME[赤い薔薇を僕に]
(1st album)
(label: Stiff)
artist THE POGUES[ザ・ポーグス
released 1984
origin London, England, UK
comment ケルティック・パンク(パンクとケルト音楽を掛け合わせた音楽)を演奏するバンドはけっこう多いと思うのだが、やはりその最高峰はTHE POGUESだ。
ケルティック・パンクを演奏しているバンドの多くは、パンクにケルト音楽の要素を取り入れている感じだが、THE POGUESはケルト音楽をパンクのアティチュードで演奏しているように感じられる。
 THE POGUESと言えば、ヒット曲の"Fairytale of New York(ニューヨークの夢)"が飛び抜けて有名なので、それが収録されている3rd「IF I SHOULD FALL FROM GRACE WITH GOD(堕ちた天使)」に人気が偏っているような気がするが、スティッフ・レコードからリリースしたこの1stや、2nd「RUM SODOMY & THE LASH(ラム酒、愛、そして鞭の響き)」も3rdに勝るとも劣らない傑作だ。
 THE POGUESが気に入るようであれば、本格派のケルト音楽を演奏するバンド、THE CHIEFTAINSザ・チーフタンズ]を聴いてみるのも良い。

■ 第3位

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title LONDON 0 HULL 4[ロンドン0ハル4]
(1st album)
(label: Go! Discs)
artist THE HOUSEMARTINS[ザ・ハウスマーティンズ]
released 1986年
origin Kingston upon Hull, England, UK
comment  このアルバムを一言で表すなら珠玉のメロディが詰った名曲集である。
 一度再生してしまうと、途中で止めることができない。
 ただ、困ったことに、このアルバム、そして、このバンドについては、それくらいしか書くべきことがないのである。
 無理やり絞り出すなら「見た目がイケてない」ということくらいだろうか?
 それから、「LONDON 0 HULL 4」というのはサッカーのスコアのことらしい。
 面白いくらいに「面白い話」が出てこないバンドだ。
 単純に「メロディの良さ」、「曲の良さ」なら80年代のインディ―・ロック・バンドの中では優勝である。

■ 第2位

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title THE HOUSE OF LOVE[ザ・ハウス・オブ・ラヴ]
(1st album)
(label: Creation)
artist THE HOUSE OF LOVE[ザ・ハウス・オブ・ラヴ]
released 1988年
origin London, England, UK
comment  クリエイション・レコーズ最大の大物と言えばMY BLOODY VALENTINEマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン]なのだろうか?
 しかし、シューゲイザーというムーヴメントへの思い入れが希薄な筆者にとってのクリエイション・レコーズと言えば、THE HOUSE OF LOVEのデビュー・アルバムなのである。
 このアルバムの1曲目に収録されている"Christine"を初めて聴いたときは、あまりの美しさに頭がクラクラとしたことを今でも鮮明に憶えている。
 そして、更にこのアルバムは、その"Christine"と同等、或いは、それ以上名曲がぎっしりと詰っているのである。
 このバンドのソングライターであるGuy Chadwick[ガイ・チャドウィック]のインタビュー映像を見たことがあるのだが、そのインタビューの中での彼は「最近の英国には好きなバンドがいない。米国のGUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]やJANE'S ADDICTION[ジェーンズ・アディクション]は良いね」と言っていた。
 それを見た筆者は「ほんまかいな?君らのやっている音楽と全然違うやん!」と思ったのだが、彼の言葉が本当にしろ嘘にしろ、この当時の英国において、THE HOUSE OF LOVEというバンドが極めてユニークな存在であったことは間違いないのである。

■ 第1位

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title GRAND PRIX[グランプリ]
(4th album)
(label: Creation, DGC)
artist TEENAGE FANCLUBティーンエイジ・ファンクラブ
released 1995年
origin Bellshill, Scotland, UK
comment TEENAGE FANCLUBというバンドを今のように愛聴することになるとは思っていなかった。
 初めて買ったTEENAGE FANCLUBのアルバムは、1991年にリリースされた3rd「BANDWAGONESQUE」だった。
 当時はグランジ・ムーヴメントだったので、それっぽい音を期待していたのだが、「BANDWAGONESQUE」は演奏に関してはグランジっぽさはあったものの、ヴォーカルやメロディが甘すぎて「何か違う」と感じたのだ。
 ところが、数年後、何となく「BANDWAGONESQUE」を聴き直してみたところ、「えっ、こんなにえぇ曲やった?」というくらいTEENAGE FANCLUBに嵌ったのだ。
TEENAGE FANCLUBの殆どのアルバムは、どれを聴いても一定以上の曲の良さが担保されているのだが、最高傑作となると「GRAND PRIX」になるだろう。  「GRAND PRIX」とは、Norman Blake[ノーマン・ブレイク](vocals, guitar)、Raymond McGinley[レイモンド・マッギンリー](vocals, guitar)、Gerard Love[ジェラード・ラヴ](vocals, bass)という、個性の異なる3人のソングライターの魅力が最も伝わり易いTEENAGE FANCLUBのアルバムなのである。

 

「以前、好きなニュー・ウェイヴのアルバム10選」と「好きなポストパンクのアルバム10選」を書いたときに、ニュー・ウェイヴとポストパンクとインディー・ロックの違いがよく分からないと書いたが、今回は積み残していた「好きなインディー・ロックのアルバム10選」を書いてみた。


インディー・ロックから10枚選ぶのは、ニュー・ウェイヴやポストパンクから10枚選ぶよりも難しくはなかった。


今回10枚選ぶにあたり、唯一設けたルールは、インディー・ロックというジャンル名のとおり、インディペンデント・レコード・レーベルからリリースされているアルバムに限定した。


今回この「好きなインディー・ロックのアルバム10選」を書いたところ、面白い発見があった。


それは、筆者がインディー・ロックだと思って聴いていたアルバムの多くが、実はメジャー・レーベルからリリースされていたことだ。


例えば、Lloyd Cole & THE COMMOTIONS[ロイド・コール&ザ・コモーションズ]の1st「RATTLESNAKES」やTHE WATERBOYS[ザ・ウォーターボーイズ]の1st「THE WATERBOYS」はメジャー・レーベルからのリリースだった。


インディー・ロックというジャンル名も、インディペンデント・レコード・レーベルからリリースされていることが絶対ではなく、雰囲気ものなのだろう。

 

#0440.9) 好きな80年代ロックン・ロールのアルバム12選

■ 第12位

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title CRIMINAL HISTORY
(compilation album)
artist THE JONESES[ザ・ジョーンゼス]
released 2000年
origin Southern California, US
comment  THE JONESESというバンドに、THE JONESESらしい個性は殆どないと思う。
 THE JONESESは、Johnny Thunders & THE HEARTBREAKERS[ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ]のエピゴーネンだと思うのだが、極めて優秀なエピゴーネンなのである。
 個性云々はどうであれ、こういう先人への愛が深いバンドを筆者は好きにならずにいられないのである。
 1986年に「KEEPING UP WITH THE JONESES」という1stアルバムを1枚だけリリースして解散したバンドだが、このコンピレーション・アルバムで彼らの殆どの曲を聴くことができる。

■ 第11位

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title WHATEVER HAPPENED TO... THE COMPLETE WORKS OF SOHO ROSES
(compilation album)
artist ソーホー・ローゼズ[SOHO ROSES]
released 2007年
origin London, England, UK
comment  SOHO ROSESというバンドに、SOHO ROSESらしい個性は殆どないと思う。
 筆者はSOHO ROSESを初めて聴いたときに「ちょっとBUZZCOCKS[バズコックス]っぽいな」と思ったのだが、このバンドは本当にBUZZCOCKSの名曲"What Do I Get?"をカヴァーしている。
 個性云々はどうであれ、こういう先人への愛が深いバンドを筆者は好きにならずにいられないのである。
 1989年に「THE THIRD AND FINAL INSULT」という1stアルバムを1枚だけリリースして解散したバンドだが、このコンピレーション・アルバムで彼らの殆どの曲を聴くことができる。
 ちなみに、このバンドのドラマーPat ‘Panache ’Walters〔パット・ウォルタース〕は、この手のバンドとしては珍しい黒人である。

■ 第10位

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title THE BABYSITTERS
(1st album)
artist THE BABYSITTERS[ザ・ベイビーシッターズ]
released 1985年
origin UK
comment  THE BABYSITTERSは、70年代のSLADE[スレイド]やSWEET[スウィート]のようなグラマラスなロックン・ロールを80年代の英国に蘇らせようとしたバンドなのではないだろうか?
 彼らの曲は、SLADEそのものに聴こえたりとか、SWEETそのものに聴こえたりとかするときがあり、THE BABYSITTERSらしい個性があるとは言い難い。
 個性云々はどうであれ、こういう先人への愛が深いバンドを筆者は好きにならずにいられないのである。
 記憶は曖昧だが、筆者はこのアルバムのレビューを当時の洋楽雑誌「音楽専科」で知ったと思うのだが、そのレビューを見た瞬間、とにかく買わずにはいられなかったのである。

■ 第9位

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title DESERT ORCHID
(1st album)
artist CRAZYHEAD[クレイジーヘッド]
released 1988年
origin Leicester, England, UK
comment  筆者がこの「はてなブログ」で使っている「desert orchid」というIDは、このCRAZYHEADのアルバムから拝借している(そもそもDesert Orchidとは英国の競走馬の名前だ)。
 80年代の英国は、インディー・ロックの人気が高かったので、所謂(いわゆる)普通のロックン・ロールをやるバンドは殆どいなかった。
 そんな状況下にあって、突如、登場したロックン・ロール・バンドがCRAZYHEADだった。
 このアルバムも、当時、購読していたいずれかの洋楽雑誌で知ったと思うのだが、MOTÖRHEADを連想させるCRAZYHEADというバンド名だけで買わずにはいられなかったのである(実際の音の方はMOTÖRHEADとは全然違うのだが)。

■ 第8位

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title THE LORDS OF THE NEW CHURCH
(1st album)
artist THE LORDS OF THE NEW CHURCH[ザ・ローズ・オブ・ザ・ニュー・チャーチ]
released 1982年
origin US / UK
comment  これもまた記憶が定かではないが、このアルバムは筆者が初めて買った洋楽雑誌「MUSIC LIFE」の新譜レビューに載っていたような記憶がある。
 THE LORDS OF THE NEW CHURCHを語るときには必ず言われるのだが、このバンドは、元DEAD BOYS[デッド・ボーイズ]のStiv Bators[スティーヴ・ベイタース](vocals)、元THE DAMNEDザ・ダムド]のBrian James[ブライアン・ジェイムス](guitar)、元SHAM 69[シャム・シックスティーナイン]のDave Tregunna[デイヴ・トレガンナ](bass)、元THE BARRACUDAS[ザ・バラクーダズ]のNick Turner[ニック・ターナー](drums)によって結成されたパンクのスーパー・グループだ。
 そんな面子でありながら音の方にはパンクっぽさは殆どなく、後のL.A. GUNS[エル・エー・ガンズ]やTHE THROBS[ザ・スロブス]あたりの新世代グラム・メタルへの影響も感じさせるゴシック・ロック風味のあるロックン・ロールだ。

■ 第7位

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title MORE SONGS ABOUT LOVE AND HATE
(3rd album)
artist THE GODFATHERS[ザ・ゴッドファーザーズ]
released 1989年
origin London, England, UK
comment  筆者は、このバンドの2nd「BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH」が聴きたくて、CDプレイヤーを買った。
 当時、リリースされる音楽媒体は、アナログ・レコードからCDへの過渡期であり、日本では「BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH」がCDでしかリリースされなかったからだ。
 ずっと永らくの間、最も好きなTHE GODFATHERSのアルバムは「BIRTH, SCHOOL, WORK, DEATH」だったのだが、ここ2~3年の間に「MORE SONGS ABOUT LOVE AND HATE」に入れ替わった。
 今回取り上げた12組の中で、このTHE GODFATHERSだけは、グラマラス要素が全く無い
 見た目はメンバー全員が短髪でスーツ着用、音の方は愛想の欠片も無いゴリゴリのロックン・ロールだ。

■ 第6位

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title D.A.D. DRAWS A CIRCLE
(2nd album)
artist D-A-D[ディー・エー・ディー]
released 1987年
origin Copenhagen, Denmark
comment  当時、デンマークのバンドといえば、知っているのはPRETTY MAIDS[プリティ・メイズ]くらいだったのだが、D-A-Dが3rd「NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS」でワールド・ワイド・デビューしたときは驚いた。
 彼らの奏でるロックン・ロールがAC/DC[エーシー・ディーシー]級のカッコ良さだったからだ(これは偏見以外の何者でもない)。
 曲として評価するのであれば、「NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS」収録の"Sleeping My Day Away"になるのだが、アルバム1枚の完成度では2nd「D.A.D. DRAWS A CIRCLE」を推したい。
 メンバーはデンマーク人なのに、このバンドの曲は何故か西部劇っぽいテイストがある。
 ちなみに、このバンドの名前は1stの時点ではD*****LAND AFTER DARK(伏字にします)だったのだが、「夢の国」からの圧力でバンド名を変えざるをえなかった。
 以降、D.A.D.、D-A-D、D☆A☆Dなど、バンド名の表記を変えながら活動しているのだが、筆者はこのバンドも「夢の国」も両方とも大好きなので複雑な気分である。

■ 第5位

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title ROBESPIERRE'S VELVET BASEMENT
(2nd album)
artist JACOBITES[ジャコバイツ]
released 1985年
origin UK
comment  誤解を恐れず、そして、熱狂的なJACOBITESマニアからの攻撃を恐れずに書くのであれば、JACOBITESとは、偽物のJohnny Thundersジョニー・サンダース](Nikki Sudden[ニッキー・サドゥン])と、偽物のKeith Richards[キース・リチャーズ](Dave Kusworth[デイヴ・カスワース])によるデュオだ。
 しかし、その「偽物」というのが難しい。
 ヴィジュアル的にはエピゴーネンそのものなのだが、彼らの曲はJACOBITES以外の何物でもないのである。
 この哀愁を撒き散らすアコースティックギターが印象的なロックン・ロールは「JACOBITESです!」としか言いようが無いのである
 このデュオの面白いところは、共作曲が殆どなく、それぞれで曲を書いて歌っているというところであり、Nikki SuddenとDave Kusworthがお互いのソロ曲に参加しあっている感じなのである。
 そして、これは筆者の思い込みかもしれないのだが、JACOBITESの曲は、日常的にロックン・ロールを聴かない人(例えばインディー・ロック・ファンの人)でも抵抗なく聴けるような気がする。

■ 第4位

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title RELAPSE
(compilation album)
artist THE LONDON COWBOYS[ザ・ロンドン・カウボーイズ
released 2008年
origin London, England, UK
comment  「THE LONDON COWBOYS?なにそれ?」という人が殆どだと思う。
 THE LONDON COWBOYSとは、元NEW YORK DOLLSのリズム隊だったArthur "Killer" Kane[アーサー・"キラー"・ケイン](bass)とJerry Nolan[ジェリー・ノーラン](drums)によるTHE IDOLS[ジ・アイドルズ]がアップデートして出来たバンドだ。
 当然のことながら、NEW YORK DOLLSの要素を多分に持つロックン・ロール・バンドなのだが、時代の影響を受けているのか、薄っすらとニュー・ロマンティックっぽさがあるのが面白い。
 シンガーのSteve Dior[スティーヴ・ディオール](この人の苗字の読み方がイマイチわからん)は、見た目もちょっとニューロマっぽい。
 1982年に1stアルバムは「ANIMAL PLEASURE」、1984年にミニ・アルバム「TALL IN THE SADDLE」をリリースして解散したバンドだが、このコンピレーション・アルバムで彼らの殆どの曲を聴くことができる。
 ちなみに、このバンドの左利きのギタリストBarry Jones〔バリー・ジョーンズ〕は、この手のバンドとしては珍しい黒人である。

■ 第3位

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title FLIES ON FIRE
(1st album)
artist FLIES ON FIRE[フライズ・オン・ファィア]
released 1989年
origin Los Angeles, California, USA
comment  FLIES ON FIREは、今回取り上げた12組の中で、唯一リアルタイムで聴いていないバンドだ。
 数年前にAmazonのお薦めで知ることになり、軽い気持ちで聴いてみたのだが、あまりのカッコ良さに打ちのめされたバンドである(筆者がこのバンドを見落としていたというのは不思議である)。
 たぶん、このバンドのメンバーは、相当なストーンズ・マニアなのではないだろうか?
 音楽的には、70年代初期のTHE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ]、アルバムで言えば「STICKY FINGERS」から「IT'S ONLY ROCK 'N ROLL」あたりのSTONESの影響が極めて強いのだが、このバンドの凄いところは、これほどSTONESの影響を受けていながら、FLIES ON FIREとしての明確な個性があるところだ。
 1991年に2nd「OUTSIDE LOOKING INSIDE」をリリースした後で解散してしまったのだが、1st、2nd共に名盤である。
 ただし、一番好きな曲となると、2ndに収録されている"Blues #33"になるのだが。

■ 第2位

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title BANGKOK SHOCKS, SAIGON SHAKES, HANOI ROCKS[白夜のバイオレンス]
(1st album)
artist HANOI ROCKSハノイ・ロックス
released 1981年
origin Helsinki, Finland
comment  筆者がロックを聴き始めた頃(1982年、筆者は中1)出会ったアルバムだ。
 そして、間違いなく、筆者をロックン・ロールの世界にに引き摺り込んだアルバムでもある。
HANOI ROCKSのルーツには、NEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ]やAEROSMITHエアロスミス]があると思うのだが、HANOI ROCKSの曲はNEW YORK DOLLSにもAEROSMITHにも似ていない(そもそもNEW YORK DOLLSAEROSMITHの曲は全然似ていないのだが)。
 天才という言葉を安易に使うと安っぽくなってしまうのであまり使いたくはないのだが、このバンドのソングライターであるAndy McCoy[アンディ・マッコイ]についてはどうしても天才という言葉を使いたくなる。
 彼の書く曲は、「えっ、あのバースで始まって、このコーラスに繋げるって...こんな展開よく思いつきましたね」と感じることが多い。
 物凄くメロディやリフが練られていて、所謂ロックン・ロールという言葉から連想されるような単調なイメージが全く無い。
 Andy McCoyはフィンランド生れでスウェーデン育ちなのだが、そのちょっと変わったバックグラウンドが、彼のソングライティングに何らかの影響を与えているのだろうか?

■ 第1位

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title IN THE DYNAMITE JET SALOON
(1st album)
artist THE DOGS D'AMOUR[ザ・ドッグス・ダムール]
released 1988年
origin London, England, UK
comment  THE DOGS D'AMOURは、筆者が生涯で最も好きになったバンドだ。
 もう、残りの人生も僅かな時間になったので、これ以上好きになれるバンドには、この先の人生で出会わないような気がする。
 またもや安易に天才という言葉を使ってしまうが、このバンドのソングライターであるTyla[タイラ]も天才だ。
 彼の書く曲は、THE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ]やFACES[フェイセズ]の影響がはっきりと感じられるのだが、そこに彼自身のエッセンスが美しく注ぎ込まれている。
 「彼自身のエッセンス」とは、敗者の美学を感じさせる人生の悲哀である。
 勝者のまま人生を終えられる人など、ほんの一握りだろう。
 大抵の人は敗北を味わうものであり、Tylaというソングライターはそれを表現するのが絶妙に上手い。
 おそらく、彼が最も影響を受けているのは、STONESでもFACESでもなく、彼自身が語っているとおり、Charles Bukowski[チャールズ・ブコウスキー]なのだろう。

 

前々回はニュー・ウェイヴ、前回はポストパンクについて、好きなアルバムを10枚選んだが、正直なところ、しんどかった。


何故なら、特異なジャンル、或いは思い入れのあるジャンルではないからだ。


今回は逆に、最も特異なジャンル、最も思い入れのあるジャンルであるロックン・ロールについて、好きなアルバムを12枚選んだ。


ただし、単に「好きなロックン・ロールのアルバム」にしてしまうと際限なく出てきてしまうので、「好きな80年代ロックン・ロールのアルバム」に限定した。


過去に「好きなグラム・メタルのアルバム」を10枚ずつ3回に渡って書いたのだが、それと、今回の「好きな80年代のロックン・ロール」に違いがあるのかと思われるかもしれない。


しかし、筆者の中では明確な違いがある。


これは、言葉で説明するのが非常に難しい。


例えば、今回選んでいるHANOI ROCKSは、普段、グラム・メタルを聴かない人からすれば、グラム・メタルに思えるかもしれない。


しかし、筆者はHANOI ROCKSはグラム・メタルではなく、ロックン・ロールだと思っている。


今回選んだ基準は、筆者がグラム・メタルではなく、ロックン・ロールだと思っているバンドだ。


今回の記事を書いてみて感じたのは、ロックン・ロールというのは、ジャンルの幅が広すぎて、逆に選ぶのが難しいということだ。


例えば、THE REPLACEMENTS[ザ・リプレイスメンツ]のことを、普段の筆者はロックン・ロールだと思っているのだが、THE REPLACEMENTSを今回のリストに入れてしまうと、HÜSKER DÜ[ハスカー・ドゥ]も入れたくなるし、SOUL ASYLUM[ソウル・アサイラム]やGOO GOO DOLLS[グー・グー・ドールズ]も入れたくなり、ハードコア・パンクオルタナティヴ・ロックにまで広がってしまう。


なので、これらのバンドは、また別の機会に取り上げることにした。

 

#0440.8) 好きなポストパンクのアルバム10選

■ 第10位

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title ...AND DON'T THE KIDS JUST LOVE IT[アンド・ドント・ザ・キッズ・ジャスト・ラブ・イット]
artist TELEVISION PERSONALITIES[テレヴィジョン・パーソナリティーズ]
released 1981年
origin England, UK
comment  TELEVISION PERSONALITIESというバンドがいることは昔から何となく知っていたのだが、その音源を聴いたのは10数年前(2000年代後半)だ。
四条河原町タワーレコードに行ったときに、このCDを見付けてなんとなく買ってしまったのだが、家に帰って聴いてみたところ、Dan Treacy[ダン・トレイシー]の歌の下手っぷりに腰を抜かすほど驚いた。
 だが、しかし、バカボンのパパではないが、「これでいいのだ」。
 こういうのもOKなのがパンクであり、ポストパンクの面白さなんだと思う。

■ 第9位

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title STRANGE BOUTIQUE[ストレンジ・ブティック]
artist THE MONOCHROME SET[ザ・モノクローム・セット]
released 1980年
origin London, England, UK
comment  THE MONOCHROME SETを初めて聴いたのも2000年代後半だ。
 2000年代後半の筆者は、ロックのサブジャンルのなかでも、最も詳しくないパンクやポストパンクのお勉強モードに入っていた時期なのだが、このアルバムは文句なしにカッコ良い1枚だった。
 日本ではネオアコネオ・アコースティック)というよく分からないジャンルがあり、このバンドもその一派として扱われることもあるようだが、彼らが奏でる緊張感や疾走感のある名曲の数々からは、ジャンルを超越した普遍性を感じ取ることができる。

■ 第8位

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title MANIC POP THRILL[マニック・ポップ・スリル]
artist THAT PETROL EMOTION[ザット・ペトロール・エモーション]
released 1986年
origin Derry, Northern Ireland, UK
comment  THAT PETROL EMOTIONは、アイルランド出身のTHE UNDERTONES[ジ・アンダートーンズ]の残党が立ち上げたバンドだ(THAT PETROL EMOTIONはロンドンを活動拠点にしていた)。
 最初に聴いたのは3rd「END OF THE MILLENNIUM PSYCHOSIS BLUES」であり、それにドハマりして、そこから遡ってこの1stに辿り着いた。
 THE UNDERTONESの頃よりも更にノイジーになったギターもカッコ良いのだが、表現力が豊かな米国人シンガーSteve Mack[スティーヴ・マック]の歌が良い。

■ 第7位

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title HAPPY BIRTHDAY[ハッピー・バースデー]
artist ALTERED IMAGES[オルタード・イメージ]
released 1981年
origin Glasgow, Scotland, UK
comment  このALTERED IMAGESの1stは、2ndや3rdとは比較にならないほど素人っぽいのだが、そこが好きだ。
 2nd以降も、シンガーのClare Grogan[クレア・グローガン]の歌だけは常に素人っぽいのだが、この1stは、どこを切っても全てが素人っぽくて、Clare Groganの可愛さが際立っている。
 勝手な思い込みなのだが、Clare Groganって、クラスの男子からの人気は抜群に高いが、女子からの人気が徹底的に低いタイプの娘のような気がする(所謂80年代型のアイドルということなのだろうか?)。
 そして、筆者は、そういうタイプの女子が好みのタイプだったりする。

■ 第6位

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title CRUMBLING THE ANTISEPTIC BEAUTY[美の崩壊]
artist FELT[フェルト]
released 1982年
origin Water Orton, England, UK
comment  ポストパンク・バンドのアルバムで、これほどギターの美しいアルバムは、なかなか見つからないのではないだろうか?
 ただし、あまりにもギターが良すぎるので、ヴォーカルが全然耳に残らないのだが...
 筆者は、90年代にLawrence[ローレンス]が立ち上げたブリットポップ・グループのDENIM[デニム]を先に聴いており、そこから遡ってFELTを聴いたのだが、DENIMとはまるで違うFELTのアコースティックなサウンドには、かなり驚かされた。
 この表現力の幅の広さがあるからこそ、プロのミュージシャンとして生き残っていけるんだろうなと感じたのである。

■ 第5位

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title THE FLOWERS OF ROMANCE[フラワーズ・オブ・ロマンス]
artist PUBLIC IMAGE LTD[パブリック・イメージ・リミテッド]
released 1981年
origin London, England, UK
comment  元SEX PISTOLSセックス・ピストルズ]のJohnny Rotten[ジョニー・ロットン]改めJohn Lydonジョン・ライドン]のバンドから、こんな原始時代のような音楽が飛び出すとは、誰が想像できるだろうか?
 アルバム・カヴァーも不気味だし、買う前から嫌な予感はあったのだが、その予感が的中したのである。
 一番好きなPiLのアルバムは5th「ALBUM」なのだが、ポストパンクとなると2nd「METAL BOX」か、この3rd「THE FLOWERS OF ROMANCE」を挙げるべきだろう。
 最初に聴いた時の印象はすこぶる悪かったにも関わらず、どいう言う訳か今でも時々聴きたくなる不思議なアルバムであり、更にどう言う訳か今ではけっこう好きなアルバムになってしまっている。

■ 第4位

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title KILIMANJARO[キリマンジャロ
artist THE TEARDROP EXPLODES[ザ・ティアドロップ・エクスプローズ]
released 1980年
origin Liverpool, England, UK
comment  80年代のリヴァプール出身バンドと言えば、筆者の中で真っ先に思い浮かぶのがECHO & THE BUNNYMEN[エコー&ザ・バニーメン]とTHE TEARDROP EXPLODESだ。
 そして、これは筆者の勝手なカテゴライズだが、ECHO & THE BUNNYMENはニュー・ウェイヴ、THE TEARDROP EXPLODESはポストパンクというイメージがある。
 THE TEARDROP EXPLODESは、このデビュー・アルバムの時点で既にロック・バンドとして完成しているおり、全てが完璧で欠けた部分が見当たらない。
 そして、あまり言われていないと思うのだが、このバンドのキーボードの使い方は、後に登場するINSPIRAL CARPETS[インスパイラル・カーペッツ]やTHE CHARLATANS[ザ・シャーラタンズ]に影響を与えていると思う。

■ 第3位

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title FORCE[フォース]
artist A CERTAIN RATIO[ア・サートゥン・レシオ]
released 1986年
origin Manchester, England, UK
comment  このアルバム「FORCE」は、A CERTAIN RATIOの5thアルバムであり、筆者がリアルタイムで聴いた数少ないポストパンク・バンドのアルバムだ。
 ただし、このアルバムは、初期の彼らのアルバムで聴けるようなポストパンク的な暗黒ファンクといった感じではなく、かなり正統派ファンクの要素が強めだ。
 ファンクの要素を取り入れたポストパンクと言えばGANG OF FOUR[ギャング・オブ・フォー]が有名だと思うのだが、筆者はA CERTAIN RATIOの方が好みに合っている。
 そして、同じ時代で、マンチェスター出身のファクトリー・レコード所属バンドと言えばJOY DIVISIONジョイ・ディヴィジョン]が有名だと思うのだが、筆者の推しはA CERTAIN RATIOだ。

■ 第2位

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title SEVENTH DREAM OF TEENAGE HEAVEN[セブンス・ドリーム・オブ・ティーンエイジ・ヘブン]
artist LOVE AND ROCKETS[ラブ・アンド・ロケッツ]
released 1985年
origin Northampton, England, UK
comment  元BAUHAUS[バウハウス]のDaniel Ash[ダニエル・アッシュ]、David J[デイビッド・J]、Kevin Haskins[ケビン・ハスキンス]により結成されたスリーピース・バンドのデビュー・アルバム(このバンドはBAUHAUSからシンガーのPeter Murphy[ピーター・マーフィー]を除いたメンバーで結成されている)。  「BAUHAUS - Peter Murphy」で、こんなに変わるのかなというくらい、BAUHAUSのゴシック・ロックとはかけ離れた音になった。
アコースティック・ギターの音が心地良いドリーム・ポップである。
 Daniel AshとKevin Haskinsは、BAUHAUSとLOVE AND ROCKETSの間にTONES ON TAILというバンドをやっていて、TONES ON TAILはゴシック・ロックっぽさがあったのだが、LOVE AND ROCKETSでは過去に決別するかのような新しいサウンドを鳴らしている。

■ 第1位

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title JANE FROM OCCUPIED EUROPE[ジェーン・フロム・オキュパイド・ヨーロッパ]
artist SWELL MAPS[スウェル・マップス
released 1980年
origin Birmingham, England, UK
comment  筆者は、Nikki Sudden[ニッキー・サドゥン]とDave Kusworth[デイヴ・カスワース]のJACOBITES[ジャコバイツ]を先に知り、Nikki Suddenが過去に在籍していたバンドということでSWELL MAPSに辿り着いた。
 ちなみに、JACOBITESに辿り着いた切っ掛けは、Dave KusworthがTHE DOGS D'AMOUR[ザ・ドッグス・ダムール]のメンバーだったからだ。
 筆者は、THE DOGS D'AMOUR → JACOBITESという流れでだったので、SWELL MAPSにもTHE DOGS D'AMOURやJACOBITESのような陰りのあるロックン・ロールを期待していたのだが、SWELL MAPSの音はガラクタのようなポストパンクであり、最初は全くダメだった。
 ところが、何故か、聴き続けるうちに愛着が湧いてきたのである。
 この手のエクスペリメンタルなロックをやる人達は「あえて難しいことをやってやる」という感じのスノッブな連中が多いような気がするのだが、SWELL MAPSの場合は「曲を作ったら、なんだかエクスペリメンタルになってしまいました」という感じなのである。
 特にこの2nd「JANE FROM OCCUPIED EUROPE」は、「演奏が下手なミュージシャンがプログレをやっている」という感じの凄いアルバムになっている。

 

前回はニュー・ウェイヴから10枚選んだのだが、今回はポストパンクから10枚選んだ。


しかし、ニュー・ウェイヴとポストパンクの違いというのは、全くもってよく分からない。


どうも、パンクが絡むジャンルは分かり難いような気がする。


何故なら、パンクが絡むと音楽性だけではなく、精神論が入ってくるからだ。


ロックのサブジャンルには、ハード・ロックヘヴィ・メタルや、インダストリアル・ロックとインダストリアル・メタル等、違いや境目のよく分からないものがある。


その中でも、ニュー・ウェイヴとポストパンクは、最も違いや境目がよく分からない。


加えて言うなら、インディー・ロックも、ニュー・ウェイヴやポストパンクとの違いや境目がよく分からない。


例えば、筆者の中で、ECHO & THE BUNNYMENはニュー・ウェイヴ、SWELL MAPSはポストパンク、THE SMITHSはインディー・ロックというイメージがあるのだが、これは筆者の思い込みであり、人によっては見解が異なるだろう。


その見解の違いが面白そうなので、他の人が選ぶ「ニュー・ウェイヴやポストパンクの好きなアルバム10選」を見てみたくなった。

 

#0440.7) 好きなニュー・ウェイヴのアルバム10選

■ 第10位

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title POWER, CORRUPTION & LIES[権力の美学]
artist NEW ORDERニュー・オーダー
released 1983年
origin Salford, England, UK
comment NEW ORDERというバンドへの思い入れは全く無いのだが、曲が良いので80年代の彼らのアルバムはけっこうな頻度で聴いていた。
NEW ORDERの前身であるJOY DIVISIONジョイ・ディヴィジョン]は、ゴシック・ロックにカテゴライズされることがあるのだが、JOY DIVISIONにゴシック・ロック的な要素って殆ど無いのではないだろううか?
 初期のNEW ORDERは、プロのバンドとしては、かなり演奏技術が危うい(スタジオ・アルバムですら、ギリギリセーフとバリバリアウトの境目だ)。
 特にBernard Sumner[バーナード・サムナー]が一番危ういと思うのだが、そんな彼にバンドのフロントを任せるという英断が凄い。
 更に、そのBernard Sumnerがギターを弾きながら歌うというのだから、危うさが倍増するのである(せめて、どっちか一つにしといたら?)。
 書けば書くほど悪口っぽくなってしまうのだが、筆者はこのバンドの曲は好きなのである。

■ 第09位

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title KISS ME, KISS ME, KISS ME[キス・ミー、キス・ミー、キス・ミー]
artist THE CUREザ・キュアー
released 1987年
origin Crawley, West Sussex, England, UK
comment THE CUREというバンドへの思い入れは全く無いのだが、曲が良いので(特に5th「THE TOP」以降)彼らのアルバムはけっこうな頻度で聴いていた。
 中でも、全18曲(アナログ盤では2枚組)という大作である、この7th「KISS ME, KISS ME, KISS ME」は一番のお気に入りだ。
 Robert Smith[ロバート・スミス]は天才的なソングライターだと思うのだが、筆者はSimon Gallup[サイモン・ギャラップ]のベースが好きだ。
THE CUREはゴシック・ロックにカテゴライズされることもある。
 筆者はゴシック・ロックも大好きなのだが、筆者の耳ではTHE CUREの曲からゴシック・ロックらしさを感じることは殆どなく、非常にポップな曲を書くのが上手なポストパンク/ニュー・ウェイヴのバンドという印象が強い(このバンドにゴシック・ロック感あるかな?)。

■ 第8位

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title PLEASURE VICTIM[そのとき、私は…]
artist BERLIN[ベルリン]
released 1982年
origin Los Angeles, California, U.S.
comment  BERLINといえば、映画『トップガン』の挿入歌である"Take My Breath Away"(邦題:愛は吐息のように)が最大のヒット曲なので、この曲が収録されている4th「COUNT THREE & PRAY」が代表作なのだろうか?
 しかし、筆者が一番好きなBERLINのアルバムは2nd「PLEASURE VICTIM」だ。
 オリジナル盤は収録曲が7曲なのでミニ・アルバムと言ってもいいくらいのサイズなのだが、女性ヴォーカルをフィーチュアしたシンセポップとしては極上の作品だ。
 と、蘊蓄(うんちく)を書いて見たものの、筆者がBERLINを好きな一番の理由はシンガーのTerri Nunn[テリー・ナン]が可愛かったからだ。
 若い頃のTerri Nunnは、今でも十分通用するくらい、超絶的な可愛さなのである。

■ 第7位

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title DECLARATION[アラーム宣言]
artist THE ALARM[ジ・アラーム]
released 1984
origin Rhyl, Wales, UK
comment  THE ALARMはデビューしたときに「MUSIC LIFE」や「音楽専科」で彼らの記事を読んで、「なんか、カッコ良さげなバンドが出てきたわぁ~」と思って、貸しレコード屋でこのデビュー・アルバム借りて聴いたところ、予想通りのカッコ良さで逆に意表を突かれた。
 このアルバムがリリースされた頃はロックを聴き始めて2年くらいが経過していたので、それなりに何度かの失敗を味わっていたのだが、このアルバムは文句なしのカッコ良さだった。
 当時は、このバンドがウェールズ出身ということは意識していなかったのだが、今、改めて聴くと、後に同じウェールズから登場するMANIC STREET PREACHERSマニック・ストリート・プリーチャーズ]に通じる「熱さ」と「優しさ」があることに気付いた。
 "Sixty Eight Guns"のような、アコースティック・ギター使って、コーラス・パートでシンガロングに盛り上がる曲は、否が応でも思春期の少年の心に刺さるのである。

■ 第6位

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title THE CROSSING[インナ・ビッグ・カントリー]
artist BIG COUNTRY[ビッグ・カントリー]
released 1983年
origin Dunfermline, Fife, Scotland, UK
comment  これはロックをを聴き始めた頃に聴きまくったアルバムだ(たぶん、半年くらい、毎日聴き続けたんちゃうやろか?)。
 このアルバムがリリースされた当時の筆者は中2であり、スコットランドがどんな国かも分かっていなかったのだが、このアルバムで聴けるバグパイプ調のギターで、今も筆者の中にあるスコットランドという国へのイメージが完成したような気がする。
 バンド名がBIG COUNTRYで、一番有名な曲が"In a Big Country"なので、日本では一発屋っぽいイメージを持たれているが、彼らの本国である英国では、2nd「STEELTOWN」は全英1位を獲得しており、長期的な人気を維持していた。
 筆者にとっても、このバンドの最高傑作は「STEELTOWN」なのだが、「思い出」という付加価値があるので、1枚選ぶとなると、どうしてもこのデビュー・アルバムになってしまう。

■ 第5位

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title REACH THE BEACH[リーチ・ザ・ビーチ
artist THE FIXX[ザ・フィクス]
released 1983年
origin London, England, UK
comment  筆者はニュー・ウェイヴというジャンル名を聞くと、真っ先に思い浮かぶのがこのTHE FIXXというバンドだ。
 この2nd「REACH THE BEACH」は、たぶん、彼らのアルバムの中で最も商業的に成功したアルバムだと思うのだが、今、改めて聴き直してみても、よく出来たアルバムだなと感じる。
 80年代の他の英国のバンドと比較した場合、DURAN DURANデュラン・デュラン]やSPANDAU BALLETスパンダー・バレエ]ほどポップではなく、初期のTHE HUMAN LEAGUE[ザ・ヒューマン・リーグ]やDEPECHE MODEデペッシュ・モード]ほどアート志向でもない。
 ニッチなところに上手いこと入り込んだバンドである。
 THE FIXXの曲は、一聴すると特別な個性が無いように聴こえるのだが、非常に曲作りの上手いバンドであり、実はこのバンドに似ているバンドは、当時の英国にいなかったのである。

■ 第4位

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title DREAMTIME[夢現
artist THE STRANGLERS[ザ・ストラングラーズ
released 1986年
origin Guildford, Surrey, England, UK
comment  このアルバムは、THE DAMNEDザ・ダムド]の「PHANTASMAGORIA」と共に、筆者に「パンクとは何なのか」ということを分からなくさせたアルバムだ。
 洋楽雑誌のパンク特集では、SEX PISTOLSセックス・ピストルズ]と共に、必ずその名が挙がるバンドでなので、「ピストルズと同じ頃に出てきたパンク・バンドやし、これやったら間違いないやろ」ということで買ったわけなのだが、スピーカーから出てきた音はSEX PISTOLSとは全く違う音なのである。
 その結果、パンクが分からなくなるのだが、このアルバムは曲が良いのでパンクとは無関係に好きになってしまうのである(これはTHE DAMNEDの「PHANTASMAGORIA」も同じだ)。
 このアルバムにはステレオタイプなパンクのイメージは皆無なのだが、欧州的で耽美な色彩を放つアート・ロックの名盤であり、今でも一番好きなTHE STRANGLERSはこれだ。

■ 第3位

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title OCEAN RAIN[オーシャン・レイン]
artist ECHO & THE BUNNYMEN[エコー&ザ・バニーメン]
released 1984
origin Liverpool, England, UK
comment  現在、筆者が最もよく聴くECHO & THE BUNNYMENのアルバムは5th「ECHO & THE BUNNYMEN」なのだが、ニュー・ウェイヴらしさで語るなら、この4th「OCEAN RAIN」までかなと思う。
 ECHO & THE BUNNYMENを知る前の筆者は、ニュー・ロマンティックや第2次ブリティッシュ・インヴェイジョン、グラム・メタル等、メインストリームのロックを中心に聴いていたのだが、ECHO & THE BUNNYMENを知ることにより、ポストパンク、ニュー・ウェイヴ、インディー・ロック等、オルタナティヴなロックに興味を持つようになった。
 このアルバム「OCEAN RAIN」はストリングスが多用されているのだが、聴きどころは、やはり、Will Sergeant[ウィル・サージェント]のギターだと思う。
 Will Sergeantの弾く、闇を切り裂くような怜悧なギターは痺れるほどカッコ良い。
 筆者の中でのWill Sergeantは、BAUHAUS[バウハウス]のDaniel Ash[ダニエル・アッシュ]、KILLING JOKEキリング・ジョーク]のGeordie Walker[ジョーディー・ウォーカー]と並ぶ、ポストパンク世代の3大ギタリストなのである。

■ 第2位

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title NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)[黄金伝説]
artist SIMPLE MINDS[シンプル・マインズ
released 1982年
origin Glasgow, Scotland, UK
comment  ニュー・ウェイヴに限らず、あらゆるロックのアルバムの中で最も聴いた回数の多いアルバムの1つが、このSIMPLE MINDSの5th「NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)」だ。
 ただ、面白いなと思うのは、あれほど聴いていながら、今はSIMPLE MINDSというバンドに対する思い入れが全く無いということだ。
 それにも関わらず、今もって、この「NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)」は筆者にとっての名盤なのである。
 一般的には、SIMPLE MINDSの名盤は、Steve Lillywhite[スティーヴ・リリーホワイト]がプロデュースした6th「SPARKLE IN THE RAIN」なのかもしれない。
 しかし、筆者にとってのSIMPLE MINDSとは、ニュー・ウェイヴらしい内省的な部分を多分に持つ、この5th「NEW GOLD DREAM (81-82-83-84)」までなのである。

■ 第1位

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title MIRROR MOVES[ミラー・ムーヴス]
artist THE PSYCHEDELIC FURS[ザ・サイケデリック・ファーズ]
released 1984
origin London, England, UK
comment  引き続き、ニュー・ウェイヴに限らず、あらゆるロックのアルバムの中で最も聴いた回数の多いアルバムの1つが、このTHE PSYCHEDELIC FURSの4th「MIRROR MOVES」だ。
 そして、これもまた面白いなと思うのは、あれほど聴いていながら、今はTHE PSYCHEDELIC FURSというバンドに対する思い入れが全く無いということだ。
 「MIRROR MOVES」は、THE PSYCHEDELIC FURSというバンドが、ギリギリまでメインストリームに接近し、その結果、大成功となったアルバムだと思う。
 次作「MIDNIGHT TO MIDNIGHT」では、完全にメインストリームになったのだが、この「MIRROR MOVES」では、ギリギリのところでオルタナティヴに留まりつつ、極上のポップ・ミュージックを提供してくれている。
 メインストリームにメロディが有って、オルタナティヴにはメロディが無いというわけではないのだが、このアルバムは奇跡的なくらい、オルタナティヴでありながらキャッチーなメロディが満載なのである。

 

今回は、「好きなニュー・ウェイヴのアルバム10選」となったわけだが、これまでの10選シリーズの中で一番難しかった。


理由は二つある。


一つは、ニュー・ウェイヴとポストパンクの明確な違いが分からないからだ。


筆者の認識としては、「ポストパンクよりもニュー・ウェイヴの方がメインストリームに近いのかな?」という程度だ。


もう一つは、ニュー・ウェイヴ系アーティストの場合、アルバムは好きで聴いていたのだが、アーティストへの思い入れが無いからだ(思い入れがあるのはECHO &  THE BUNNYMENくらいだ)。


ここが、これまで10選を書いてきたグラム・ロック、グラム・メタル、ニュー・ロマンティック、ゴシック・ロックとの大きな違いだ。


ニュー・ウェイヴ系バンドの多くは、雑誌のインタビュー等で、なんとなくスノッブな印象を持ってしまっていた。


また、同級生でロックを聴いている連中のなかでもニュー・ウェイヴやポストパンクを聴いている連中は、「自分は他の人とは違う特別な感性を持っている」的な痛い奴が多かったのである。


筆者にしてみたら、「君は、特に特徴の無い平凡な人ですよ」という連中ばかりだったのだが、グラム・メタルを聴きつつ、ニュー・ウェイヴも聴いていた筆者に対し、ニュー・ウェイヴ好きの連中は、「グラム・メタルみたいな下品なロックを聴いてる奴がニュー・ウェイヴのような価値の高い音楽を聴くな!」という接し方だったのである。


特にニュー・ウェイヴ好きの女子からは、殊の外、上記の扱いを受けた記憶がある。


筆者にしてみらた、「いやいや、両方とも時代に消費されるだけの、たかがポップ・ミュージックでしょ?」という感じだったのである。


なお、今回10選で「なんでU2[ユートゥー]が入っていないんだ、書いた奴は頭がおかしいじゃないか?」と思う人がいるかもしれないが、これはあくまでも筆者の好みのリストである。


当時の筆者にとっては、アイルランドの英雄U2の曲よりも、スコットランドのBIG COUNTRYやSIMPLE MINDSウェールズのTHE ALARMの方が心に刺さったのだから仕方がないのである。

 

#0440.6) 好きなゴシック・ロックのアルバム10選

■ 第10位

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title FIRST AND LAST AND ALWAYS[マーシーの合言葉]
artist THE SISTERS OF MERCY[ザ・シスターズ・オブ・マーシー
released 1985年
origin Leeds, West Yorkshire, England, UK
comment  実のところ、一番好きなTHE SISTERS OF MERCYのアルバムは、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルに限りなく接近した3rd「VISION THING」だ。
 しかし、ゴシック・ロックとしてのTHE SISTERS OF MERCYであるならば、この1st「FIRST AND LAST AND ALWAYS」を選ばざるを得ない。
 このアルバムの半分以上の曲を書いているのは、後にTHE SISTERS OF MERCYを脱退し、THE MISSION[ザ・ミッション]を立ち上げるWayne Hussey[ウェイン・ハッセイ]なのだが、「良い曲は全部THE MISSIONのために取っておいたのですか?」と尋ねたくなるほど、このアルバムでのWayne Husseyの曲は、彼のペンによる曲の中では平凡である。
 それにも関わらず、このアルバムが放つゴシック・ロック感は尋常ではなく、もし、ゴシック・ロックを知りたいという人がいるのであれば、最初に聴かせるべきアルバムはこれなのである。

■ 第9位

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title SONG AND LEGEND[ソング・アンド・リジェンド]
artist SEX GANG CHILDREN[セックス・ギャング・チルドレン]
released 1982年
origin Brixton, London, England, UK
comment  SEX GANG CHILDRENは、SOUTHERN DEATH CULT[サザン・デス・カルト](後のTHE CULT[ザ・カルト])、THE DANSE SOCIETY[ザ・ダンス・ソサエティ]と共に、ポジティヴ・パンク御三家と呼ばれていたのだが、現在ではポジティヴ・パンクという言葉がそもそも死語である。
 ポジティヴ・パンクを簡単に説明するのであれば「ポジティヴ・パンク≒ゴシック・ロック」ということになるのだが、筆者にとってのSEX GANG CHILDRENは、今でもポジティヴ・パンクと言った方がしっくりくるバンドだ。
 Gothic[ゴシック]という言葉を聞くと、何となく荘厳なイメージが湧くかもしれないが、SEX GANG CHILDRENの曲は荘厳なイメージを持ちつつ、どこかヘンテコで笑ってしまいたくなる妙なところがある。
 ちなみに、CULTURE CLUBカルチャー・クラブ]Boy George[ボーイ・ジョージ]が自分のバンドの名前として考えていたのがSEX GANG CHILDRENなのだが、もし、CULTURE CLUBではなくSEX GANG CHILDRENと名乗っていたら、どれだけ曲が良かったとしても、Boy Georgeの世界規模での成功は難しかったような気がする。

■ 第8位

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title HEAVEN IS WAITING[ヘヴン・イズ・ウェイティング]
artist THE DANSE SOCIETY[ザ・ダンス・ソサエティ
released 1983年
origin Barnsley, England, UK
comment  THE DANSE SOCIETYも、SOUTHERN DEATH CULT、SEX GANG CHILDRENと共に、ポジティヴ・パンク御三家と呼ばれていたのだが、「御三家」なんていうものを作りたがるのは、たぶん日本の洋楽雑誌であり、彼らの本国である英国では、この3つのバンドを一括りに捉えるようなことは無いのではないだろううか?
 シンガーのSteve Rawlings[スティーヴ・ロウリングス]が超美形だったので、このジャンルでは女子からの人気が高めのバンドだったのだが、音楽的には女子が好むようなアイドル的なポップなものではない。
 キーボードによる音の壁のような「硬さ」がこのバンドの曲の特徴であり、そんな彼らの特徴が最も良い形で仕上がっているのが、この2nd「HEAVEN IS WAITING」だ(ポップすぎると叩かれた3rd「LOOKING THROUGH」も好きだ)。
 筆者は、JOY DIVISIONジョイ・ディヴィジョン]を初めて聴いた時に、「ダンス・ソサエティに似てる」と思ったのだが、実際はTHE DANSE SOCIETYがJOY DIVISIONの影響を受けているのだろう(筆者はJOY DIVISIONよりもTHE DANSE SOCIETYの方が好きだ)。

■ 第7位

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title ALL ABOUT EVE[イヴの序曲]
artist ALL ABOUT EVE[オール・アバウト・イヴ
released 1988年
origin England, UK
comment  美しい女性ヴォーカルとゴシック・ロックが描く荘厳な世界観は相性が良い。
 後に、ゴシック・ロックをアップデートしたゴシック・メタルというジャンルが確立し、WITHIN TEMPTATIONウィズイン・テンプテーション]やNIGHTWISH[ナイトウィッシュ]という素晴らしいバンドが登場することを見ても、その相性の良さは明らかだろう(WITHIN TEMPTATIONややNIGHTWISHはシンフォニック・メタルなのかな?)。
 ALL ABOUT EVEの音楽性にメタル感はゼロであり、むしろ、フォークっぽいのだが、このALL ABOUT EVEの名盤デビュー・アルバムは、後に登場する、女性ヴォーカルをフィーチュアした数々のゴシック・ロック/ゴシック・メタル系バンドに影響を与えているはずだ。
 と、書きつつ、このアルバムを久しぶりに聴いてみたのだが、ゴシック・ロックっぽい「おどろおどろしいさ」は殆ど無く、少しダークなドリーム・ポップという感じなので、ちょっと驚いている。

■ 第6位

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title CATASTROPHE BALLET[カタストロフィ・バレー]
artist CHRISTIAN DEATH[クリスチャン・デス]
released 1984
origin Los Angeles County, California, US
comment  CHRISTIAN DEATHについて、一番驚くのは、このバンドが英国ではなく、米国、それもカリフォルニア州ロサンゼルスの出身であるということだ。
 そして、このバンドのシンガーであるRozz Williams[ロズ・ウィリアムズ]が最も影響を受けたアーティストが、David Bowieデヴィッド・ボウイ]とROXY MUSICロキシー・ミュージック]なのだが、David Bowieはともかく、ROXY MUSICを好きな人がカリフォルニアにいるというのが意外で仕方がないのだ(まぁ、これは筆者の偏見だ)。
 このバンドのインパクトという面では、1st「ONLY THEATRE OF PAIN」だと思うのだが、音楽的な面では2nd「CATASTROPHE BALLET」か3rd「ASHES」であり、今回は僅差で2ndを選んでみた。
 少年時代のRozzが、BowieやROXY MUSIC(というより、Bryan Ferry[ブライアン・フェリー])に夢中だったことがありありと伝わってくるアルバムなのだが、BowieやFerryよりも先に逝ってしまったRozzのことを思うと、ちょっと悲しく聴こえてしまうアルバムでもある。

■ 第5位

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title IMMIGRANT[過ちの美学]
artist GENE LOVES JEZEBEL[ジーン・ラヴズ・ジザベル]
released 1985年
origin UK
comment  GENE LOVES JEZEBELのアルバムは、ポップになった3rd「DISCOVER」以降の方が好きなのだが、ゴシック・ロックとしてのGENE LOVES JEZEBELなら1st「PROMISE」か2nd「IMMIGRANT」ということになる。
 今回、2nd「IMMIGRANT」を選んだのは、筆者が初めて買ったGENE LOVES JEZEBELのアルバムであり、思い入れが強いからだ。
 Michael Aston[マイケル・アストン](vocals)、そして、ジェイ・アストン[Jay Aston](guitar&vocals)という超美形の双子の兄弟がフロントにいるということが当時の洋楽雑誌では殊の外取り上げられていたのだが、筆者は男なので彼らが美形か否かはどうでもいい話しであり、筆者にとっての興味の対象は彼らの作り出す音楽のみだった。
 ゴシック・ロックの中でも一際耽美な彼らの曲が好きだったのだが、今では、Michael Aston's GENE LOVES JEZEBEL、Jay Aston's GENE LOVES JEZEBELという2つに分裂しており、「兄弟仲が悪い」という兄弟がいるバンドの伝統を守っているところも素敵だ。

■ 第4位

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title PHANTASMAGORIAファンタスマゴリア
artist THE DAMNEDザ・ダムド
released 1985年
origin London, England, UK
comment  このアルバムは、筆者に「パンクとは何なのか」ということを分からなくさせたアルバムだ。
 中1の時(1983年)に、同級生のH君からSEX PISTOLSセックス・ピストルズ]のコンピレーション・アルバムを聴かせてもらい、「ふぅ~ん、パンクって、こういう激しい音楽なんやぁ」と自分の中で定義して、その後、しばらくはパンクを深掘りすることはなかった。
 そして、ある時、ふと「パンクを掘ってみよ」と思って買ったのが、このTHE DAMNEDの6thアルバム「PHANTASMAGORIA」なのである。
 「ダムドって、ピストルズと同じ頃に出てきたパンク・バンドやし、これやったら間違いないやろ」と思って買ったのだが、スピーカーから出てきた音がSEX PISTOLSと全く違っていたので面喰ってしまい、パンクが分からなくなったのである。
 ただ、このアルバムそのものは曲が良いので直ぐに大好きになり、今でも1番好きなTHE DAMNEDのアルバムはこれだ。
 シンガーであるDavid Vanian[デイヴ・ヴァニアン]のゴシック趣味が全開になったアルバムである。

■ 第3位

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title GOD'S OWN MEDICINE[ゴッズ・オウン・メディシン]
artist THE MISSION[ザ・ミッション]
released 1986年
origin Leeds, West Yorkshire, England, UK
comment  3位以上が筆者にとって、ゴシック・ロックの不動の名盤3枚である。
 「GOD'S OWN MEDICINE」は、THE SISTERS OF MERCYで多くの曲を書いていたWayne Husseyが、SISTERSを脱退して立ち上げたTHE MISSIONの1stアルバムなのだが、SISTERS時代にWayne Husseyが書いたどの曲よりも、このアルバムの曲の方が遥かにクオリティが高い。
 SISTERSはドラムマシン(Doktor Avalanche[ドクター・アバランシュ])を使っていたのでリズムが無機質だったが、THE MISSIONでは生身のドラマー(Mick Brown[ミック・ブラウン])が演奏しているのでリズムにオーガニックな広がりがある(筆者はドラムマシンも生身のドラマーも両方好きだ)。
 このアルバムの基盤は当然ゴシック・ロックなのだが、曲調はかなりメロディアスであり、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル色が強いので、その手のジャンルが苦手な人には合わないかもしれない。
 しかし、ゴシック・ロックはもとより、ゴシック・メタルも守備範囲のリスナーにとっては至高の1枚であると言えるだろう。

■ 第2位

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title LOVE[ラヴ]
artist THE CULT[ザ・カルト]
released 1985年
origin Bradford, West Yorkshire, England, UK
comment  THE CULTの前身は、SEX GANG CHILDREN、THE DANSE SOCIETYと共に、ポジティヴ・パンク御三家と言われていたSOUTHERN DEATH CULTだ。
 他の2バンドとTHE CULTの最も大きな違いはシンガーの歌の上手さだ(もちろん、上手いのはTHE CULTの方)。
 このアルバムはTHE CULTの2ndであると共に、彼らにとって最後のゴシック・ロック路線のアルバムであり、3rd「ELECTRIC」では筋骨隆々にビルドアップしたハード・ロック/ヘヴィ・メタル路線を打ち出す。
 しかし、このアルバムも普段ハード・ロック/ヘヴィ・メタルを聴かない人にとっては、充分すぎるくらいのハード・ロック/ヘヴィ・メタル感があるのではないだろうか?
 幽かな記憶なのだが、シンガーのIan Astbury[イアン・アストベリー]とギタリストのBilly Duffy[ビリー・ダフィー]が、日本の洋楽雑誌のインタビューで、FREE[フリー]、BAD COMPANY[バッド・カンパニー]、LED ZEPPELINレッド・ツェッペリン]が好きだと言っているのを読んだことがある。
 本格的なハード・ロック/ヘヴィ・メタルになるのは3rd「ELECTRIC」からなのだが、既にこの2nd「LOVE」でもその片鱗を聴くことができる。

■ 第1位

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title IN THE FLAT FIELD[暗闇の天使]
artist BAUHAUS[バウハウス
released 1980年
origin Northampton, England, UK
comment  「ゴシック・ロックとはBAUHAUSのことである」、ゴシック・ロックを説明するにも、BAUHAUSを説明するにも、それで充分なのではないだろうか?
 BAUHAUSのメンバーはゴシック・ロックと呼ばれることを嫌がっていたが、彼らどれだけ否定しても、BAUHAUSはゴシック・ロック・バンドなのである。
 そして、この1stアルバム「IN THE FLAT FIELD」こそが、ゴシック・ロック感が最も強く打ち出されたBAUHAUSのアルバムなのである。
 ただし、現在、主に流通しているリイシュー盤はシングル曲の"Dark Entries"を1曲目に収録しているので、"Double Dare"から始まるオリジナル盤とは、かなり印象が変わってしまっている。
 リイシュー盤は、2曲目の"Double Dare"から聴き始めた方が良い(何で1曲目に"Dark Entries"を入れたのだろう?)。
 ゴシック・ロックはポストパンクから派生したジャンルだと思うのだが、パンクはもとよりグラム・ロックからの影響も強い。
 BAUHAUSは、T. REX[T・レックス]の"Telegram Sam"とDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]の"Ziggy Stardust"をカヴァーしてるので、ゴシック・ロック・バンドの中でも殊の外グラム・ロックからの影響が強い。
 BAUHAUSを最も気持ち良く聴く方法は、この「IN THE FLAT FIELD」を聴きながら、彼らと共に奈落に沈んでいくことである。

 

筆者は1969年生れなので、パンク・ムーヴメントをリアルタイムでは体験できていない。


筆者がリアルタイムで体験したのはパンク の後に興ったハードコア・パンクとポジティヴ・パンクだ。


そして、時代の流れの中でポジティヴ・パンクというジャンル名は無くなり、ゴシック・ロックというジャンル名に統一されていった。


反戦反核という社会性のあるメッセージをテーマとするバンドが多かったハードコア・パンクに比べ、ポジティヴ・パンクは独自の美意識で世界観を構築するバンドが多かったため、いつしかパンクという言葉とは結びつけにくくなり、ゴシック・ロックという呼び方で統一されたのではないかと思っている。


そして、筆者の中におけるゴシック・ロックは、ニュー・ロマンティックと並び、70年代のグラム・ロックから影響を受け、80年代に花開いたムーヴメントであると定義付けている。


今回は、そんなゴシック・ロックというジャンルから、好きなアルバムを10枚選んだのである。