Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.15) 好きなブルー・アイド・ソウル(80年代男性ヴォーカル)のアルバム10選

■ 第10位

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title FINE YOUNG CANNIBALS[ファイン・ヤング・カニバルズ]
(1st album)
artist FINE YOUNG CANNIBALS[ファイン・ヤング・カニバルズ]
released 1985年
origin Birmingham, England, UK
comment  FINE YOUNG CANNIBALSのシンガー、Roland Gift[ローランド・ギフト]は白人以外の血が入ってそうな顔立ちなのだが、80年代のブルー・アイド・ソウルは「白人が歌うソウル」というよりも既に「スタイル」になっていたので、筆者の中でのFINE YOUNG CANNIBALSとはブルー・アイド・ソウルなのである。
 FINE YOUNG CANNIBALSは、たった2枚のアルバムを残して解散したグループなのだが、その一瞬の輝きが凄かった。
Roland Giftは、声質も歌い方も非常に癖の強いシンガーなのだが、その手のシンガーにありがちな「ヘタウマ」ではなく「ちゃんと上手い」という、なかなかいないタイプのシンガーである。

■ 第9位

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title SHE WAS ONLY A GROCER'S DAUGHTER[オンリー・ア・グローサーズ・ドーター]
(3rd album)
artist THE BLOW MONKEYS[ザ・ブロウ・モンキーズ
released 1986年
origin London, England, UK
comment  THE BLOW MONKEYSは、2nd「ANIMAL MAGIC」の時点で既に好きなバンドになっていたのだが、この3rdアルバムで完全にTHE BLOW MONKEYSに嵌ることになった。
 バンドの中心人物、Dr. Robert[ドクター・ロバート]は、あのCurtis Mayfieldカーティス・メイフィールド]にもその才能を認められた人物であり、彼のギターと歌は本当に素晴らしい。
 そして、あまり取り上げられることない地味な扱いになりがちだが、Dr. Robertを支える3人のメンバー、Neville Henry[ネヴィル・ヘンリー](tenor sax)、Mick Anker[ミック・アンカー](bass)、Tony Kiley(drums)[トニー・カイリー]の演奏も素晴らしい。

■ 第8位

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title CAFÉ BLEU[カフェ・ブリュ]
(1st album)
artist THE STYLE COUNCIL[ザ・スタイル・カウンシル
released 1984
origin Woking, England, UK
comment  筆者が洋楽を聴き始めた時期は、Paul Wellerポール・ウェラー]がTHE JAMザ・ジャム]を解散させ、THE STYLE COUNCILを結成する時期と同じだ。
 最初に聴いたPaul WellerがらみのアルバムはTHE JAMのラスト・アルバム(6thアルバム)「THE GIFT」なのだが、リアルタイムで追いかけたのはTHE STYLE COUNCILなので、圧倒的にTHE STYLE COUNCILへの思い入れの方が強い。
 モッズ/パンクから始まったTHE JAMは徐々にソウルに傾倒してゆき、「THE GIFT」の頃には既に半分くらいTHE STYLE COUNCILのようになっていた。
 そして、このTHE STYLE COUNCILの1stアルバムでは、「もう僕にロックン・ロールを求めないでくれ」と言っているような、本格的なソウルのアルバムとなった。

■ 第7位

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title Cupid & Psyche 85[キューピッド&サイケ85]
(2ns album)
artist SCRITTI POLITTIスクリッティ・ポリッティ
released 1985年
origin Leeds, England, UK
comment  このアルバムは、全く隙のない完璧なアルバムだ。
 デジタル・シンセサイザーを駆使したシンセポップを使ってブルー・アイド・ソウルを再構築したこのアルバムのサウンドは、今、この2022年に聴いても驚くほど新鮮である。
 音楽性とは全く関係の無い話しなのだが、当時、付き合っていた女の子にこのアルバムを聴かせたところ、物凄く好きになってくれたアルバムでもあり、筆者にとっては思い出深い1枚なのである。

■ 第6位

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title BACK IN THE HIGH LIFE[バック・イン・ザ・ハイ・ライフ]
(4th album)
artist Steve Winwoodスティーヴ・ウィンウッド
released 1986年
origin Handsworth, Birmingham, England, UK
comment  筆者がこの手のリストを作る時は、基本的にそのディケイド(例えば今回なら1980年から1989年)にデビュー・したアーティストを選ぶことにしており、ベテランを取り上げることは避けている。
 しかし、「好きなブルー・アイド・ソウル(80年代男性ヴォーカル)」と銘打ったのであれば、このアルバムを取り上げない訳にはいかない。
 1960年代にTHE SPENCER DAVIS GROUP[ザ・スペンサー・デイヴィス・グループ]のシンガー/オルガン奏者としてデビューしたSteve Winwoodが、紆余曲折の活動を経て80年代に放ったブルー・アイド・ソウルの最高到達点である。

■ 第5位

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title POPPED IN SOULED OUT[ポップド・イン・ソウルド・アウト]
(1st album)
artist WET WET WET[ウェット・ウェット・ウェット]
released 1987年
origin Clydebank, Scotland, UK
comment  このアルバムがリリースされた1987年はハード・ロック/ヘヴィ・メタルの名盤が多い年で有名であり、筆者もこの辺りから聴く音楽の中心がハード・ロック/ヘヴィ・メタルに大きく偏っていった。
 しかし、そんな中でも、このアルバムは本当によく聴いた1枚であり、デビュー・アルバムでこのクオリティの高さは驚愕に値する。
ブルー・アイド・ソウルのお手本のようなアルバムであり、「ブルー・アイド・ソウルって、こんな音楽だよ」と言って人に聴かせるのにもってこいのアルバムだ。

■ 第4位

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title THE SECRET OF ASSOCIATION[シークレット・オヴ・アソシエーション]
(2nd album)
artist Paul Young[ポール・ヤング]
released 1985年
origin Luton, Bedfordshire, England, UK
comment  あのRod Stewart[ロッド・スチュワート]をして、「俺の次に歌が上手い」と言わしめたシンガー、それがPaul Youngだ。
 Hall & Oates[ホール&オーツ]のカヴァー、"Everytime You Go Away"が大ヒットしたため、「Paul Youngはカヴァー曲を歌う人」という印象が強いのかもしれない。
 しかし、このアルバムの後半に纏めて収録されているPaul YoungとIan Kewley[イアン・キューリー]のペンによるオリジナル曲も、地味でシングル向きではないのだが(本人も「自分はキャッチーなシングル向きの曲を書けない」と言っている)、実は意外なほどクオリティが高いのである。

■ 第3位

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title A NEW FLAME[ニュー・フレイム]
(3rd album)
artist SIMPLY REDシンプリー・レッド
released 1989年
origin Manchester, England, UK
comment  世間的には、大ヒット曲"Stars"が収録されている4th「STARS」がSIMPLY REDの最高傑作なのかもしれないが、筆者にとってのSIMPLY REDの最高傑作はこの3rdアルバムなのである。
 1st「PICTURE BOOK」、2nd「MEN AND WOMEN」も好きなのだが、どこかインディー・バンドっぽさが残る貧乏臭さがあり、それはプロデュースなのかもしれないが、このバンド(というよりはMick Hucknall [ミック・ハックネル])の本質からは離れているのではないかと思っていた。
 そんなインディー・バンドっぽさを完全に捨て去り、ゴージャスでファンキーなブルー・アイド・ソウルに生まれ変わった瞬間が、このアルバムなのである。

■ 第2位

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title PARADE[パレード]
(4th album)
artist SPANDAU BALLETスパンダー・バレエ
released 1984
origin Islington, London, England, UK
comment  ニュー・ロマンティック系のバンドは3rdアルバムくらいで力尽きてしまう場合が殆どなのだが、SPANDAU BALLETは売上は別として、3rdアルバム以降も楽曲のクオリティを維持することのできた稀有なバンドである。
 このアルバムは、前作である3rd「TRUE」の大ヒットの煽りを喰らってしまい、あまり評価されていないのだが、個人的には「TRUE」よりも収録曲の質は上だと思っている。
 Gary Kemp[ゲイリー・ケンプ](guitar)という稀代のソングライターの才能が更に一歩先に進んだアルバムであり、この大人の色気が漂うアルバムこそがSPANDAU BALLETの最高傑作なのである。

■ 第1位

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title COLOUR BY NUMBERS[カラー・バイ・ナンバーズ]
(2nd album)
artist CULTURE CLUBカルチャー・クラブ
released 1983年
origin London, England, UK
comment  全盛期のCULTURE CLUBはBoy George[ボーイ・ジョージ]の奇抜なメイクやファッションに話題が集中しすぎて、音楽性を真剣に評価される機会が少なかったのだが、彼らの音楽性を高く評価している人もいて、その1人が前述のPaul Wellerだった。
 1st「KISSING TO BE CLEVER」はファンカラティーナ(ファンク+ラテン)の名盤だったが、この2ndはブルー・アイド・ソウルの名盤であり、全ての収録曲がキャッチーでシングル・カット可能な水準を持つ。
 当時の英国の若手ポップ・バンドの中でも、この時期のCULTURE CLUBほど良い曲の書けるバンドは殆どいなかったのではないだろうか?
 1曲目の"Karma Chameleon"のヒットが大きすぎるのだが、この曲はカントリー色が強く、アルバムの中では異色の曲である。

 

このリストを作り始めたときには全くその気はなかったのだが、結果として全て英国のミュージシャンになった。


80年代に限らず、60年代の昔から英国のミュージシャンはブルースやソウル等、ブラック・ミュージックに傾倒する人が多い。


今回取り上げた10枚はブルー・アイド・ソウルの中でも、かなりメジャーなアルバムであり、マニアックなものは入っていない。


もしかすると、第1位に選んだCULTURE CLUBの「COLOUR BY NUMBERS」、第2位に選んだSPANDAU BALLETの「PARADE」あたりはブルー・アイド・ソウルではなく、ポップ・ソングだと思っている人の方が多いのかもしれない。


しかし、筆者にとって、これらのアルバムはブルー・アイド・ソウルであり、アーティストのイメージからは結びつきにくいかもしれないが、意外なほどソウルフルなのである。


80年代の英国からは実に多くのユニークなアーティストが数多く登場したのだが、正直なところ、ポストパンク、ニュー・ウェイヴ、インディ―・ロックあたりは、50を過ぎたこの歳になってからは殆ど聴かなくなってしまった。


それに比べ、今回取り上げたような、ソウルをルーツに持つポップ・ミュージックは、ずっと聴き続けていたのだが、この歳になってから自分の中でブームが再燃し、頻繁に聴くようになった。


今後も、たぶん、聴き続けるような気がする。

 

#0440.15) 好きなロックン・ロールのアルバム10選+3(2000年前後編)

先ずは、本編のランキングに入る前に、かつて好きだったバンドのメンバーの2000年代における復活劇を番外編として3つ記述したい。

■ 番外編1

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title BEAUTIFUL CREATURES
(1st album)
artist BEAUTIFUL CREATURES[ビューティフル・クリーチャーズ
released 2001年
origin Los Angeles, California, US
comment  80年代後半のLAで活躍したファンキーなグラム・メタル・バンドBANG TANGO[バング・タンゴ]のJoe Lesté[ジョー・レステ](vo)と、後にSixx:A.M.[シックス:エイ・エム]やGUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]に参加するDJ Ashba[DJアシュバ](g)を中心に結成されたバンドの1stアルバム。
 音楽性はBANG TANGOのファンキーな要素を薄めてオーソドックスなハード・ロックに近づけており、当たり前のように当時のグラム・メタルを感じさせるアルバムだ。
 正直なところ、Joe Lestéがバンド活動を続けていたことに驚いたのだが、このアルバムは好評を得ており、グラマラスなスタイルのロックに復活の切っ掛けを与えた1枚だと思っている。

■ 番外編2

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title CONTRABAND
(1st album)
artist VELVET REVOLVERヴェルヴェット・リヴォルヴァー
released 2004年
origin Rancho Santa Margarita, California, US
comment  元GUNS N' ROSESのSlash[スラッシュ](g)、Duff McKagan[ダフ・マッケイガン](b)、Matt Sorum[マット・ソーラム](ds)と、元STONE TEMPLE PILOTS[ストーン・テンプル・パイロッツ]のScott Weiland[コット・ウェイランド](vo)が合流したバンドの1stアルバム(LA界隈では古くから知られた存在だったDave Kushner[デイヴ・クシュナー](g)も参加している)。
 このアルバムがリリースされた年の筆者は既に30代半ばだっだので、ロックのアルバムを発売日に買いに行くようなことはしていなかったのだが、このアルバムに関しては興奮を抑えることができずに発売日に買いにいっている。
 元GUNS N' ROSESのメンバーが演奏するバンドに入り、完全に嵌って歌うことのできるグランジ出身のシンガーはScott Weilandだけなのではないだろうか?

■ 番外編3

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title ORIGIN VOL. 1
(4th album)
artist THE SOUNDTRACK OF OUR LIVES[ザ・サウンドトラック・オブ・アワ・ライブス]
released 2004年
origin Gothenburg, Sweden
comment  何が切っ掛けでTHE SOUNDTRACK OF OUR LIVES(以下、T.S.O.O.L.)のことを知ったのかは全く憶えていないのだが、驚いたのはT.S.O.O.L.が、かつて好きで聴いていたUNION CARBIDE PRODUCTIONS[ユニオン・カーバイド・プロダクションズ]の元メンバーが中心になって結成されたバンドだったことだ。
 UNION CARBIDE PRODUCTIONSは、スウェーデンのTHE STOOGES[ザ・ストゥージズ]と言っても言い過ぎではないくらい「殆どTHE STOOGES」なバンドだったのだが、T.S.O.O.L.では音楽性の幅を広げている。
 この4tアルバムでは、THE STOOGES直系のガレージ・ロックの要素は残しつつ、サイケデリックな浮遊感やブルースの泥臭さも取り入れ、一筋縄ではいかない音楽性を披露している。

 

そして、ここからが本編のランキングの記述となる。

■ 第10位

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title GIVE ME THE FEAR
(1st album)
artist TOKYO DRAGONS[トーキョー・ドラゴンズ]
released 2005年
origin London, England, UK
comment  TOKYO DRAGONSは、ブルージーな要素を多分に含む英国産のハード・ロックン・ロール・バンド。
 90年代以降の英国は、インディー・ロック・バンドは次から次へと出てくるのだが、この手のロックらしいロックをやるバンド(つまりAC/DC[エーシー・ディーシー]っぽいバンド)は殆ど出てこなくなった。
 アルバムを2枚出して解散してしまった短命なバンドながら、曲は最高にカッコ良く、2000年代における期待のバンドだったのだが、バンド名が絶望的にカッコ悪いのが残念だった(ヤクルト+中日?野球チームか!)。

■ 第9位

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title PENNY PILLS
(1st album)
artist CRASH KELLY[クラッシュ・ケリー]
released 2003年
origin North Bay, Ontario, Canada
comment  カナダ出身のバンドだが、T. REX[T・レックス]、SLADE[スレイド]、SWEET[スウィート]等70年代の英国産グラム・ロックや、KISS[キッス]、CHEAP TRICK[チープ・トリック]等70年代の米国産ハード・ロックからの影響が強そうなバンドだ。
 実際にはバンドというよりもSean Kelly[ショーン・ケリー]というスタジオ・ミュージシャン出身のシンガー兼ギタリストのソロ・プロジェクトらしい。
 彼の書く曲の端々からは「ちゃんとロックを勉強しました」という感じが滲み出ており、筆者はこの手のミュージシャンには無条件でシンパシーを感じてしまう質なので聴いていると微笑ましくなってくる。

■ 第8位

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title WAR OF LOVE
(1st album)
artist NEGATIVE[ネガティヴ]
released 2003年
origin Tampere, Finland
comment フィンランドは狭義のスカンディナヴィアという定義からは外れるらしいのだがスウェーデンと並ぶロック大国であり、あの伝説のHANOI ROCKSハノイ・ロックス]を産んだ国だけあって、登場するロック・バンドの偏差値は高い。
 NEGATIVEの音楽性は少しゴシック感のあるグラム・メタルであり、80年代のグラム・メタルに嵌った世代なら反射的に飛びついてしまう音だ。
 たしか、『BURRN!』のインタビュー記事だったと思うのだが、シンガーのJonne Aaron[ヨンネ・アーロン]が好きなバンドとしてGUNS N' ROSESとNIRVANAニルヴァーナ]を挙げており、こういうことを躊躇いなく言える世代が出てきたのが嬉しかった(Jonne Aaronは上記アルバム・カヴァー中央の人物で1983年生れ)。

■ 第7位

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title THE REVELRY
(1st album)
artist BULLETS AND OCTANE[ブレッツ・アンド・オクタン]
released 2004年
origin Los Angeles, California, US
comment  このBULLETS AND OCTANEの1stアルバムは、元CANDY[キャンディー]~元KILL FOR THRILLS[キル・フォー・スリルズ]~元GUNS N' ROSESのGilby Clarke[ギルビー・クラーク]がプロデュースを担当している(ちなみに2nd「IN THE MOUTH OF THE YOUNG」のプロデュースは元HELMET[ヘルメット]のPage Hamilton[ペイジ・ハミルトン]だ)。
 80年代後半にグラム・メタルから派生したバッド・ボーイズ・ロックン・ロールを2000年代に復活させたようなラウドでセクシーでスリージーな音であり、筆者の世代(2022年現在で50代前半)にはドンピシャに嵌る音だ。
 バッド・ボーイズ・ロックン・ロールというジャンル名はカッコ悪いのだが、音は最高にカッコ良いのである。

■ 第6位

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title BLACK SKIES IN BROAD DAYLIGHT
(1st album)
artist LIVING THINGS[リヴィング・シングス]
released 2004年
origin St. Louis, Missouri, US
comment  LIVING THINGSは、今回取り上げたバンドの中では最もガレージ・ロック色が強いのだが、それでもこの頃(2000年代前半)に盛り上がっていたガレージ・ロック・リヴァイヴァル系のバンドとは明確に違うロック・スターらしい煌びやかさがある。
 このアルバムのプロデュースは、あのSteve Albiniスティーヴ・アルビニ]なのだが、Albini独特の殺伐とした感じは無く、たぶん彼がプロデュースしたアルバムの中で最もAlbiniらしさの出ていない作品なのではないだろうか?
 この1stは、Lillian[リリアン](vo、g)、Eve[イヴ](b)、Bosh[ボシュ](ds)のBerlin[ベルリン]兄弟で制作されており、後にCory Becker[コリー・ベッカー](g)を加えた編成で制作されたアルバムに比べると線が細いのだが、その青臭さがまた良かったりする。

■ 第5位

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title SCANDINAVIAN LEATHER
(5th album)
artist TURBONEGRO[ターボネグロ]
released 2003年
origin Nesodden, Norway
comment  TURBONEGROは1992年に1stアルバムをリリースしているので2000年前後に登場したバンドではないのだが、日本でTURBONEGROが正式に紹介されたのは1998年にリリースされた4th「APOCALYPSE DUDES」からのような気がする(筆者の思い込みかもしれないが)。
 この「SCANDINAVIAN LEATHER」は筆者が初めて買ったTURBONEGROのアルバムであり、James Williamson[ジェームズ・ウィリアムソン]在籍時のIggy & THE STOOGES[イギー&ザ・ストゥージズ]や、バンド編成時代のALICE COOPER[アリス・クーパ]を彷彿とさせるハード・ドライヴィングなロックン・ロールに一発でKOされてしまった1枚だ。
ノルウェーのバンド言えば、大好きなTNTティー・エヌ・ティー]というバンドの印象が強すぎて透明感のあるハード・ロックという勝手なイメージがあったのだが、TURBONEGROにはそのイメージを叩き壊されてしまったのである。

■ 第4位

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title BUCKCHERRY
(1st album)
artist BUCKCHERRY[バックチェリー]
released 1999年
origin Anaheim, California, US
comment  このBUCKCHERRYの1stアルバムを聴いたとき、「僕の好きだったロックが戻ってきた」と感じ、王道のロック・バンドが米国に戻ってきたことがとにかく嬉しかったものである。
 筆者は90年代前半に勃発したグランジ/オルタナティヴ・ロックのムーヴメントにもどっぷりと嵌ったのだが、それによって、それまで好きだったハード・ロック/ヘヴィ・メタル(特にグラム・メタル)が衰退してしまったことには不満を感じていた。
 はっきり言って、このBUCKCHERRYの1stアルバムは「殆どAD/DC」みたいな部分も多く、新しい刺激のようなものは皆無なのだが、このアルバムを聴いたとき、長期に渡りモノクロだったロックの世界に色が戻ったように思えたのである。

■ 第3位

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title BAD SNEAKERS AND A PIÑA COLADA
(2nd album)
artist HARDCORE SUPERSTAR[ハードコア・スーパースター]
released 2000年
origin Gothenburg, Sweden
comment  BUCKCHERRYの1stアルバムと共に「ロックの世界に色が戻った」と感じたアルバムがもう1枚あり、それが、このHARDCORE SUPERSTARの2nd「BAD SNEAKERS AND A PIÑA COLADA」だ。
 特に、日本盤にはボーナス・トラックとして、大好きなHANOI ROCKSの名曲"Don't You Ever Leave Me"が収録されているので、これでテンションを上げるなというのは無理な話しなのである。
スウェーデンでは、既にTHE HELLACOPTERS[ザ・ヘラコプターズ]とBACKYARD BABIES[バックヤード・ベイビーズ]が、長期に渡り閉じられていた古(いにしえ)のロックン・ロールへの扉を開いてくれていたのだが、HARDCORE SUPERSTARの登場により、その扉は完全に開け放たれたのである。

■ 第2位

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title GRANDE ROCK
(3rd album)
artist THE HELLACOPTERS[ザ・ヘラコプターズ]
released 1999年
origin Stockholm, Sweden
comment スウェーデンデスメタル・バンドENTOMBED[エントゥームド]にいたNicke Andersson[ニッケ・アンデション](ds)と、BACKYARD BABIESのDoregen[ドレゲン](g)のサイド・プロジェクトだったはずが、いつの間にか90年代後半から2000年代を代表するロックン・ロール・バンドになってしまったのがこのTHE HELLACOPTERSだ(NickeはTHE HELLACOPTERSではvoとgを担当)。
 DoregenはBACKYARD BABIESに専念するため、このアルバム「GRANDE ROCK」には参加していないのだが、たとえDoregenがいなくても、このアルバムは鼻血が吹き出しそうなくらいハイテンションなカッコ良い曲がギッシリと詰っている。
 このバンドは「ロックン・ロールは、こう書けばカッコ良くなる、こうして演奏するとカッコ良くなる」ということを知り尽くしており、こんな曲を書いて、こんな演奏をされたら、サイド・プロジェクトで済まなくなるのは当たり前なのである。

■ 第1位

cover

title TOTAL 13
(2nd album)
artist BACKYARD BABIES[バックヤード・ベイビーズ]
released 1998年
origin Nässjö, Sweden
comment  THE HELLACOPTERSと双璧を成す、90年代後半から2000年代を代表するロックン・ロール・バンドがと言えば、誰もがBACKYARD BABIESの名を挙げるはずであり、消えかけていた古(いにしえ)のグラマラスなロックン・ロールを蘇らせたのは、間違いなくこの2つのバンドなのである。
 この2nd「TOTAL 13」は、BACKYARD BABIESの初期の代表作であり、80年代にリリースされていたら「APPETITE FOR DESTRUCTION」級のヒットになっていたかも?と感じさせるポテンシャルがある。
 後の4th「STOCKHOLM SYNDROME」では、HANOI ROCKSのMichael Monroe[マイケル・モンロー]とSami Yaffa[サミ・ヤッファ]、THE DOGS D'AMOUR[ザ・ドッグス・ダムール]のTyla[タイラ]をはじめ、多くのレジェンドをゲストに迎えており、このバンドの業界人気の高さを目の当たりにすることになる。

 

西暦2000年頃、米国のTHE WHITE STRIPES[ザ・ホワイト・ストライプス]やTHE STROKESザ・ストロークス]、英国のTHE LIBERTINESザ・リバティーンズ]等、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルと呼ばれるバンドがあちこちに登場し、メディアからは「ロックン・ロールが復活した」と言って騒がれた。


THE WHITE STRIPESについては、何となく、いけ好かないスノッブな感じがして聴く気が起こらず、未だにまともに聴いたことがない。


しかし、THE STROKESTHE LIBERTINESについては、「おっ、かっこええやん」と思いながら、それなりに好きで聴いていた。


とは言うものの、THE STROKESTHE LIBERTINESについても、「俺たちはロックのエリートだぜ」と言わんばかりのスノッブな匂いを感じていたのも事実である。


まぁ、本人たちにそんな気は全く無いのかもしれないが、筆者にはそう聴こえてしまったのだ。


むしろ、同じ頃に活躍していた同系統のバンドでは、スウェーデンTHE HIVES[ザ・ハイヴス]やMANDO DIAOマンドゥ・ディアオ]の方が圧倒的に好きだった。


筆者も、それなりにガレージ・ロック・リヴァイヴァルを楽しんでいたのだが、イマイチ乗り切れずにいた。


どの辺りが乗り切れなかったのかと言えば、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルのバンドには、筆者が求める「ロックの煌びやかさ」が無かったのだ。


そんな時に、自分の中にガツンと入ってきて、「これやん!」と思えたのが、今回のランキング・リストに入れたバンドだったのである。


これらのバンドには、筆者がロックを聴き始め頃に嵌りまくったグラム・メタルや、そこから派生したバッド・ボーイズ・ロックン・ロール、或いはブルース・ロックの血が脈々と受け継がれていた。


筆者は、ロックン・ロールとはrealではなくfakeでいいと思っている。


否、むしろfakeであるべきだと思っている。


筆者にとってのロックン・ローラーとは、虚構を煌びやかに且つ馬鹿馬鹿しく演じることのできる人達なのである。


ロックン・ローラーを演じている自分に酔いしれてほしいのだ。


BACKYARD BABIES、THE HELLACOPTERS、HARDCORE SUPERSTAR、BUCKCHERRYのメンバーは筆者と同世代(1970年前後の生れ)であり、特に共感できる部分が大きいので、ランキング・リストの上位4組を占めることになった。


それにしても、選んだ10組のうち、5組が北欧出身のバンドである。


5/10ということは、あたりまえだが1/2であり、半分が北欧出身のバンドなのである。


2000年以降、この手のロックの本場は英米ではなく、北欧なのである。

 

#0440.13) 好きなスラッシュ・メタルのアルバム10選(北米編・四天王以外)

■ 第10位

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title THE ULTRA-VIOLENCE
(1st album)
artist DEATH ANGEL[デス・エンジェル]
released 1987年
origin San Francisco Bay Area, California, US
comment  名盤という意味では3rd「ACT III」なのだが、出会ったときの衝撃が大きすぎたので、筆者にとってのDEATH ANGELとは、いまだにこのこのデビュー・アルバム「THE ULTRA-VIOLENCE」なのである。
 サンフランシスコ・ベイエリア出身のバンドだが、この突進力は欧州出身のスラッシュ・メタルに近いのではないだろうか?
 同じベイエリア出身のグラム・メタル・バンドVAIN[ヴェイン]のシンガーDavy Vain[デイヴィー・ヴェイン]がバンドと共同プロデュースしているというのも面白い。
 なお、デビュー当時は、「全員10代」、「全員フィリピン系米国人」、「全員親戚関係」というユニークなメンバー構成だった。

■ 第9位

cover

title TAKING OVERR
(2nd album)
artist OVERKILL[オーヴァーキル]
released 1987年
origin Old Bridge Township, New Jersey, US
comment スラッシュ・メタル・バンドでギタリストが1人というのは珍しい。
 そして、シンガーは、スラッシュ・メタル・バンドとしては、けっこうメロディを歌う方である。
 この後、3rd「UNDER THE INFLUENCE」、4th「THE YEARS OF DECAY」で音楽性の幅を広げていくのだが、この2ndアルバムでは1st「FEEL THE FIRE」の荒々しさも残しつつ徐々に音楽性の幅を広げ始めているのが面白い。
 メタル好き以外のリスナーには、間違っても購買意欲をそそらせないようなアルバム・カヴァーも最高だ。

■ 第8位

cover

title GAME OVER
(1st album)
artist NUCLEAR ASSAULT[ニュークリア・アソルト]
released 1st年
origin New York City, New York US
comment クロスオーヴァー・スラッシュは、ハードコア・パンクからヘヴィ・メタルに接近するケースと、ヘヴィ・メタルからにハードコア・パンク接近するケースがあるのだが、NUCLEAR ASSAULTは後者になる。
クロスオーヴァー・スラッシュの起源は諸説あるのだが、NUCLEAR ASSAULTはその起源の1つと言われている。
 このバンドが不思議なのは、ハードコア・パンクの成分を多分に取り得れながらも、楽曲はヘヴィ・メタルらしい鋼鉄感があるところだ。
 完成度という点では3rd「HANDLE WITH CARE」なのだが、筆者がスラッシュ・メタルに求めるものは完成度よりも衝撃度なので、1枚選ぶとなるとどうしてもこの1stになってしまうのである。

■ 第7位

cover

title THE LEGACY
(1st album)
artist TESTAMENT[テスタメント]
released 1987年
origin Berkeley, California, US
comment  TESTAMENTは、ベイエリア・スラッシュを代表するバンドだが、ちょっと異色のバンドのようにも思える。
 このバンドを異色たらしめているのは、あのJoe Satrianiジョー・サトリアーニ]の生徒の1人であるAlex Skolnick[アレックス・スコルニック]のテクニカルなギターだ。
 Alex Skolnickは、後にニューヨークのニュースクール大学でジャズを学ぶのだが、このTESTAMENTの1stの時点で既にメタル・ギタリストの枠を超える流麗で多角的なプレイを聴かせてくれている。
ベイエリア・スラッシュ特有のザクザクと刻まれるリフの中に入ってくるAlex Skolnickのギターは、一聴すると浮いているように感じるときもあるのだが、それこそがTESTAMENTの個性なのである。

■ 第6位

cover

title NO PLACE FOR DISGRACE
(2nd album)
artist FLOTSAM AND JETSAM[フロットサム・アンド・ジェットサム]
released 1988年
origin Phoenix, Arizona, US
comment  言わずと知れた、METALLICAメタリカ]にベーシストのJason Newsted[ジェイソン・ニューステッド]を引き抜かれたバンドである。
 そして、METALLICAはJason Newstedを手に入れて、筆者にとって初めてNGとなったMETALLICAのアルバム「...AND JUSTICE FOR ALL」を制作した。
 今回取り上げている「NO PLACE FOR DISGRACE」はJason Newstedが引き抜かれた直後のアルバムであり、彼は演奏していないのだが、はっきり言って「...AND JUSTICE FOR ALL」とは比較にならないほどの大傑作アルバムである。
スラッシュ・メタルの成分も含みつつ、正統派ヘヴィ・メタル(パワー・メタル)としての大傑作アルバムであり、もっとバカ売れしていても不思議ではないアルバムだと思う。

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■ 第5位

cover

title BONDED BY BLOOD
(1st album)
artist EXODUS[エクソダス
released 1985年
origin Richmond, California, US
comment  EXODUSは、何故か「聴きたい」という衝動が湧き上がらなかったバンドであり、この「BONDED BY BLOOD」は今回取り上げた10枚の中で、唯一リアルタイムで聴いていないアルバムだ。
 そんなEXODUSに対し、「聴きたい」という衝動が湧き上がった原因は、雑誌BURRN!における「ミュージシャンが選ぶ好きなスラッシュ・メタルのアルバム」のような企画で、この「BONDED BY BLOOD」を1位に上げている人があまりにも多かったからだ。
 その企画を読んだことにより、早速、このアルバムを聴いたのだが、完璧なベイエリア・クランチと、狂気を撒き散らすPaul Baloff[ポール・バーロフ]のヴォーカルに一発でノックアウトされたのである。
 ある意味、四天王(METALLICAMEGADETH、SLAYER、ANTHRAX)の何れのアルバムよりも、スラッシュ・メタルを最も体現しているアルバムはこの「BONDED BY BLOOD」なのではないだろうか?

■ 第4位

cover

title RRRÖÖÖAAARRR
(2nd album)
artist VOIVOD[ヴォイヴォド]
released 1986年
origin Jonquière (Saguenay), Quebec, Canada
comment スラッシュ・メタルの曲の多くは、「よくこんな難しい曲を演奏できるね?」とか「なんでこんな複雑な曲が書けるの?」と感じるものが多いのだが、VOIVODの曲を聴くと特にそれを感じる。
 VOIVODは、後にプログレッシヴ・メタルとして、更に複雑でテクニカルな世界を極めていくのだが、この2ndの時点でも充分過ぎるほどプログレッシヴな曲を演奏している。
 正直なところ、VOIVODのアルバムは聴きにくく、特に1st「WAR AND PAIN」と、この2nd「RRRÖÖÖAAARRR」は特に聴きにくいのだが、何故か中毒のように何度も聴かされてしまうのである。
 筆者は薬物やアルコールの中毒は「大反対」なのだが、こういった音楽への中毒なら「吝か(やぶさか)ではない」と思っている。

■ 第3位

cover

title ALICE IN HELL
(1st album)
artist ANNIHILATOR[アナイアレイター]
released 1989年
origin Ottawa, Ontario, Canada
comment MEGADETHメガデス]からギタリストが脱退すると、必ずDave Mustaine[デイヴ・ムステイン]から声が掛かる男が、このANNIHILATORのJeff Waters[ジェフ・ウォーターズ]だ。
 確かに、Jeff Watersが弾く正確無比なリフと速弾きのソロは、間違いなくMEGADETHに嵌るはずだ。
 音楽的にもMEGADETHと極めて近い位置にいるテクニカル・スラッシュメタルなのだが、初期(1st~3rd)のMEGADETHが持っていたパンキッシュな要素はANNIHILATORには無く、MEGADETHよりもANNIHILATORの方が正統派ヘヴィ・メタル(パワー・メタル)に近い。
 Jeff Watersは気に入ったシンガーがいないときは無理にシンガーを加入させずに自分で歌ってしまう人なのだが、このデビュー・アルバムではヴォーカルをRandy Rampage[ランディー・ランペイジ]に任せて、自分はギターに専念している。

■ 第2位

cover

title INTO THE MIRROR BLACK
(2nd album)
artist SANCTUARY[サンクチュアリ
released 1990年
origin Seattle, Washington, US
comment MEGADETHのDave Mustaineがプロデュースした1st「REFUGE DENIED」は未だしも、この2ndはスラッシュ・メタルというよりもパワー・メタルだ。
 しかし、ギター・リフにはスラッシュ・メタルの面影が残っている曲もあり、とにかく大好きなアルバムなので今回のリストに入れることにした。
 このバンドの魅力は、荘厳な雰囲気が漂う楽曲と、オペラ歌手としてのトレーニング経験を活かしたWarrel Dane[ウォーレル・デイン]が歌う安定感のあるヴォーカルだろう。
 「とにかく速い曲が好き、ミドルテンポはけしからん」という人にはお薦めしかねるのだが、このアルバムは90年代に入って飽和状態と化したスラッシュ・メタルの次なる可能性を示した名盤である。

■ 第1位

cover

title PROCESS OF ELIMINATION
(1st album)
artist MACE[メイス]
released 1985年
origin Seattle, Washington, US
comment クロスオーヴァー・スラッシュを標榜するバンドは数あれど、最もヘヴィ・メタルハードコア・パンクをガチンコでぶつけ合ってるバンドはこのMACEなのではないだろうか?
 このバンドの音楽性はあまりにもUnusualすぎて説明が難しく、「ハードコア・パンクの中にテクニカルなメタル・ギターが入る」と言ってしまえばそれまでなのだが、それだけでは説明しきれないヘンテコ感がある。
 かつて、相反するジャンルだったメタルとパンクは、クロスオーヴァー・スラッシュによって融合が始まり、MACEがそれを完成させた。
 筆者はロックを聴き始めた頃からメタルもパンクも節操なく聴くリスナーであり、ロックに纏わりつく精神論やイデオロギーなんてものは一切無視するタイプなので、MACEのこのアルバムを聴いていると楽しくて仕方がないのだ。
 ちなみに2nd(ラスト・アルバム)の「THE EVIL IN GOOD」も本作と甲乙つけがたい名盤である。

 

筆者の世代(1969年生れ)にとって、メタルと言えば、グラム・メタルと、今回取り上げたスラッシュ・メタルなのではないだろうか?


グラム・メタルのことをポーザーと呼び、そのカウンターとして登場したのがスラッシュ・メタルということになっているらしい。


つまり、グラム・メタルとスラッシュ・メタルは対立関係にあるのだが、どちらか一方だけを聴くというリスナーは、少なくとも筆者の周りには殆どいなかったと記憶している。


そして、アーティスト側も実際には対立していなかったのではないかと筆者は思っている。


METALLICAメタリカ]が「METALLIC」(通称「THE BLACK ALBUM」)のプロデュースをBob Rock[ボブ・ロック]に依頼した理由は、MOTLEY CRUE[モトリー・クルー]の「DR. FEELGOOD」を聴いたからだ。


今回は、「好きなスラッシュ・メタルのアルバム10選(北米編・四天王以外)」ということで選んだ。


四天王、つまり、METALLICAMEGADETH、SLAYER、ANTHRAXを外したのは、これらを入れてしまうと、それだけで4/10が埋まってしまい、面白くもなんともないリストになるからだ。


四天王には別格というイメージがあるが、筆者の中では今回取り上げた10組のアーティストも四天王に勝るとも劣らない存在だ。


今回選んだ10枚のうち、1位に選んだMACEの「PROCESS OF ELIMINATION」以外、差は殆ど無い。


違う日に選んだなら、順位は入れ替わるかもしれない。


筆者にとってのスラッシュ・メタルとは、グラム・メタルと双璧を成すくらい思い入れの深い80年代のムーヴメントなので、機会があれば欧州や南米のスラッシュ・メタル・バンドも取り上げて「お気に入りリスト」を作ってみたいと思う。

 

#0440.12) 好きなオルタナティヴ・ロックのアルバム10選

■ 第10位

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title SCREAM, DRACULA, SCREAM![スクリーム、ドラキュラ、スクリーム!]
(4th album)
artist ROCKET FROM THE CRYPT[ロケット・フロム・ザ・クリプト]
released 1995年
origin San Diego, California, US
comment ROCKET FROM THE CRYPTの「SCREAM, DRACULA, SCREAM!」は、洋楽雑誌CROSSBEATの新譜レビューを見て、アルバム・カヴァーのカッコ良さに釣られて買ったアルバムだ。
 アルバム・カヴァーのカッコ良さにばかり目がいってしまい、レビューの内容は全く憶えていないのだが、高い評価を得ていたような気がする。
 筆者なりにこのアルバムを手っ取り早くレビューするなら「物凄くカッコ良いロックン・ロール」或いは「物凄くカッコ良いガレージ・パンク」だ。
 筆者はサクソフォンが好きなので、ROCKET FROM THE CRYPTのメンバーにサクソフォン奏者がいることを知って期待値が上がってしまったのだが、このアルバムはサクソフォンの音がアルバムのテンションを2倍にも3倍にも上げている。
 このアルバムで聴ける音はロックの黎明期からあるスタイルであり、新しいものなんて全く無い。
 しかし、何も考えずにロックを聴きたいときにはこういう音が一番良いような気がする。

■ 第9位

cover

title SATURATION[サチュレイション]
(4th album)
artist URGE OVERKILL[アージ・オーバーキル]
released 1993年
origin Chicago, Illinois, US
comment  URGE OVERKILLは音も見た目も実にスタイリッシュでエレガントだ。
 筆者は「聴く」だけなら曲が良ければ見た目はどうでもいいと思う方なのだが、自分でバンドを「やる」なら多くのオルタナティヴ・ロックの人達が着ているような小汚い服でステージに上がるのは嫌だ(そもそも夏ですらTシャツとジーンズだけで外に遊びにいけないタイプの人間だ)。
 URGE OVERKILLは着ている服がお洒落であり、やっている音楽もその服装にピッタリと合う都会的で洗練されたロックン・ロールなのである。
 URGE OVERKILLというバンドは、音はもちろんのこと、スリーピースというバンド構成といい、お洒落な服装といい、筆者が「やりたい」と思うバンドにかなり近い。
 彼らの曲と演奏は、ライヴハウスで盛り上がりそうな面もあるのだが、ホテルのラウンジで演奏しても映えるような気がする。
 URGE OVERKILLという、ちょっとヤバそうなバンド名も、ありがちな「THE ~S」とは一味も二味も違っていてカッコ良い。

■ 第8位

cover

title ESPECIALLY FOR YOU[エスペシャリー・フォー・ユー]
(1st album)
artist THE SMITHEREENS[ザ・スミザリーンズ]
released 1986年
origin Carteret, New Jersey, US
comment  THE SMITHEREENSの「ESPECIALLY FOR YOU」は、もう少し上位でもよかった気がするのだが、色々と順位を捻くり回していたらこの位置になってしまった。
 THE SMITHEREENSの曲はこの「ESPECIALLY FOR YOU」に限らず、どのアルバムにも筆者の耳にやたらとフィットするメロディーを持つ曲が多い。
 しかし、「ESPECIALLY FOR YOU」はデビュー・アルバムということもあり、初々しいや瑞々しさが最も溢れており、それを聴きたいがためにこのアルバムに手が伸びてしまうのだ。
 このバンドの最も大きな影響源は、やはりTHE BEATLESザ・ビートルズ]なのだろう。
 何しろ、全ての収録曲をTHE BEATLESのカヴァーだけで埋めた「MEET THE SMITHEREENS!」というタイトルのアルバムをリリースしてしまうのだから。
 更には、THE WHOザ・フー]のアルバム「TOMMY」の収録曲の殆どをカヴァーした「THE SMITHEREENS PLAY TOMMY」というタイトルのアルバムもリリースしているので、きっと60年代の英国のバンド全般が好きなのだろう。

■ 第7位

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title ROCK COLLECTION[ロック・コレクション]
(3rd album)
artist POND[ポンド]
released 1997年
origin Portland, Oregon, US
comment  PONDは今回取り上げている10組の中で最も知名度が低いのではないだろうか?
 確かrockin'onだったと思うのだが、PONDがこのアルバム「ROCK COLLECTION」をリリースしたときのインタビューが載っていて、それでこのバンドに興味を持つことになった。
 ただし、今となっては、そのインタビューの内容は全く記憶に無く、たぶん、彼らが影響を受けたアーティストが筆者の好みと一致したのではないかと思う。
 非常にオルタナティヴ・ロックらしいオルタナティヴ・ロックなのだが、1曲1曲がとても丁寧に作られているように感じられ、ユルっとした演奏と歌が何とも心地良い。
 何に似ているかと問われると答えるのが難しい音なのだが、あえて例えるならDINOSAUR Jr.[ダイナソーJr.]とPAVEMENTペイヴメント]とWEEZER[ウィーザ]による三角形の真ん中にいるような音だろうか?
 個人的には上記した有名な3組よりも、無名に近いPONDの方が好きだったりする。

■ 第6位

cover

title THIRD EYE[サード・アイ]
(3rd album)
artist REDD KROSS[レッド・クロス]
released 1990年
origin Hawthorne, California, US
comment REDD KROSSオルタナティヴ・ロックというよりはパワー・ポップなのだろうか?
REDD KROSSのバックグラウンド的なことは、日本では殆ど紹介されていないと思うのだが、この「THIRD EYE」というパワー・ポップの名盤を聴けばTHE BEATLESザ・ビートルズ]からの影響が大きいことは直ぐに分かる。
 そして、THE BEATLESだけではなく、T. REX[T・レックス]やDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]等、英国のアーティストからの影響が大きいように思える。
 このアルバムは日本の殆どの洋楽雑誌で高評価を得ていたので、「これやったら間違いないやろ~」と信じて買って、「間違いがなかった」ケースである。
 今の感覚では、雑誌の評価だけを鵜呑みにして3,000円前後のお金を払うという行為は危険極まりないのだが、当時は今のような世界規模のインターネットなんて無い時代であり、アーティストの音源を視聴できるような環境が殆ど無かったので、雑誌に頼るかテレビやラジオで偶然聴くかくらいしか情報を収集する方法がなかったのである。
 とにかく、当時の筆者はこのアルバムが「大当たり」だったことが嬉しくて嬉しくて、半年くらいの間、毎日聴いていた。

■ 第5位

cover

title NEW MISERABLE EXPERIENCE[ニュー・ミゼラブル・エクスペリアンス]
(2nd album)
artist GIN BLOSSOMS[ジン・ブロッサムズ]
released 1992年
origin Tempe, Arizona, US
comment

 90年代初期の筆者はALICE IN CHAINS[アリス・イン・チェインズ]やSTONE TEMPLE PILOTS[ストーン・テンプル・パイロッツ]等のグランジ、JANE'S ADDICTION[ジェーンズ・アディクション]やFAITH NO MORE[フェイス・ノー・モア]等のファンク・メタルがお気に入りだったので、GIN BLOSSOMSの「NEW MISERABLE EXPERIENCE」を買ったときは「やってもたぁ~、えらい地味なもん買うてしもたぁ~」というのが正直な感想だった。
 と、思いつつも、当時は定額で聴き放題の音楽配信サービスなんて無い時代なので、3,000円前後のお金を払って買ったアルバムを何とか好きになろうと聴き続けるのである。
 結局どうしても「ダメ」なものもあるのだが、いつの間にか「好き」に変わるものも少なくなく、「NEW MISERABLE EXPERIENCE」は見事に「好き」に変わった1枚だったのである。
 最初は「アメリカで売れているらしいから買うてみたけど、この地味なアルバムのどこがえぇの?」という感じだったのだが、聴き続けるうちにこのアルバムの曲たちが持つ清涼感に癒されるようになり、「名盤やん!」と言うようになったのである。
 GIN BLOSSOMSはオルタナティヴ・ロックにカテゴライズされることも多いが、音楽的には上質なアメリカン・ロックであり、メインストリーム・ロックなので、これをオルタナティヴ・ロックと思わない人も多そうな気がする。
 ちなみに、人気のピークが過ぎ去った2006年にリリースした「MAJOR LODGE VICTORY」もメインストリーム・ロックの名盤である。

■ 第4位

cover

title A BOY NAMED GOO[ボーイ・ネームド・グー~グーという名の少年~]
(5th album)
artist GOO GOO DOLLS[グー・グー・ドールズ]
released 1995年
origin Buffalo, New York, US
comment

 初期のGOO GOO DOLLSはパンクやオルタナティヴ・ロックにカテゴライズされていたが、ワーナー・ブラザース・レコードと契約してリリースした4th「SUPERSTAR CAR WASH」以降の彼らはメインストリーム・ロックだと思う。
 故に「好きなオルタナティヴ・ロック~」と銘打ったこのリストに「A BOY NAMED GOO」を入れるのは迷ったのだが、とにかく大好きなアルバムなので入れないわけにはいかなかった(筆者の中ではハード・ロック/ヘヴィ・メタルハートランド・ロック以外は大体オルタナティヴ・ロックなのである)。
 このアルバムには"Name"というヒット・シングルが収録されているが、正直な感想を言うと"Name"はこのアルバムの中では地味な存在であり、もっと派手でロックの王道を行くような名曲がたくさん収録されている。
GOO GOO DOLLSの主役はJohn Rzeznik[ジョン・レズニック](vocals & guitar)であり、アルバムはJohn Rzeznikの曲と歌が中心なのだが、Robby Takac[ロビー・テイキャック](bass & guitar)の曲と歌も収録される。
 Robby Takacの曲と歌が間に挟まるとテンションが下がるという人もいるのだが、筆者は良い感じの箸休めになっているような気がしてけっこう好きだ(Robby Takac自身は箸休めのつもりではないはずなのでこんな言い方は失礼なのだが)。
 ちなみに、人気のピークが過ぎ去った2006年にリリースした「LET LOVE IN」もメインストリーム・ロックの名盤である。

■ 第3位

cover

title GRAVE DANCERS UNION[グレイヴ・ダンサーズ・ユニオン]
(6th album)
artist SOUL ASYLUM[ソウル・アサイラム
released 1992年
origin Minneapolis, Minnesota, US
comment

 A&Mレコードからリリースしたアルバムのセールスが不振だったため、解散を考えていたSOUL ASYLUMが、コロムビア・レコードと契約して放ったキャリア最高の売上を誇るアルバムがこの「GRAVE DANCERS UNION」だ。
 たぶん、オルタナ原理主義の人がこのアルバムを聴くと「セルアウトした」と感じるのではないだろうか?
 極めてメインストリーム寄りのアメリカン・ロックであり、このアルバムをオルタナティヴ・ロックと呼ぶのは少々無理があるような気がするのだが、とにかく大好きなアルバムなのでこのリストに入れないわけにはいかなかった。
 ヒット・シングル"Runaway Train"だけのアルバムだと思われているふしもあるが、このアルバムを最初から最後まで聴いてしまうと"Runaway Train"はけっこう地味な存在のような気がする。
 「セルアウトした」と言われれば確かにそうなのだが、とにかく、上質なアメリカン・ロックがギッシリと詰ったアルバムなのである。
 ちなみに、人気のピークが過ぎ去った2006年にリリースした「THE SILVER LINING」もメインストリーム・ロックの名盤である。

■ 第2位

cover

title NEW DAY RISING[ニュー・デイ・ライジング]
(3rd album)
artist HÜSKER DÜ[ハスカー・ドゥ]
released 1985年
origin Saint Paul, Minnesota, US
comment  HÜSKER DÜも、かなり好きなバンドなのだが、解散してから後追いで聴いたバンドだ。
 HÜSKER DÜのアルバムは全て好きなのだが、初めて聴いたのはこの「NEW DAY RISING」だ。
 HÜSKER DÜは、90年代以降に登場した多くのオルタナティヴ・ロック・バンドから「影響を受けた」と言われることが多いバンドなので、筆者の中では「いつかは聴かなければならない」存在だった。
 2000年代の終わり頃、当時ほぼ毎週末に行っていた京都のタワーレコードで、セール対象の商品として低価格で売られている「NEW DAY RISING」を見つけ、「今だっ!」と思って買ったのだが、1曲目の"New Day Rising"で完全にブチのめされた。
 この世には数多のオルタナティヴ・ロック・バンドが存在するが、"New Day Rising"ほどメロディックでスピーディーでカッコ良い曲を書けるバンドは、なかなか居ないのではないだろうか?
 1曲目の"New Day Rising"を聴くと、「スピードで押し切るのかな?」と思えてしまうのだが、そうではなく、曲毎に様々な変化を付けて、しっかりと聴かせてくれるところも凄いのである。

■ 第1位

cover

title LET IT BE[レット・イット・ビー]
(3rd album)
artist THE REPLACEMENTS[ザ・リプレイスメンツ]
released 1984
origin Minneapolis, Minnesota, US
comment  THE REPLACEMENTSに関しては、全てのアルバムが好きだし、全てのEPが好きだし、全てのシングルが好きだ。
 70年代の3大ロック・バンドは、AEROSMITHエアロスミス]、KISS[キッス]、QUEEN「クイーン」ということらしいのだが、1969年生れの筆者にとって、リアルタイムで接することができた80年代の3大ロック・バンドと言えば、HANOI ROCKSハノイ・ロックス]、THE DOGS D'AMOUR[ザ・ドッグス・ダムール]、そして、このTHE REPLACEMENTSなのである!
 THE REPLACEMENTS(長いので以下、THE 'MATS)の音楽性は、初期はハードコア・パンクと呼ばれ、後期はオルタナティヴ・ロックと呼ばれていたが、筆者にとってのTHE 'MATSはロックン・ロールという一言で充分なのである。
 THE 'MATSのアルバムならどれを選んでも良いのだが、今回はBob Stinson[ボブ・スティンソン](guitar)が在籍していた頃のアルバムを選びたかったので、何となく「LET IT BE」にしてみた。
 しかし、レイドバックしたアメリカン・ロックを聴かせてくれるラスト・アルバム(7th)の「ALL SHOOK DOWN」も捨て難く、今日の気持ちが少し違っていたらこちらを選んでいたかもしれない。

 それにしても、自分達のアルバムのタイトルを「LET IT BE」にするなんて、何も考えてないのか、とても勇気があるのか、どっちなんだろう?

 

「好きなオルタナティヴ・ロックのアルバム10選」ということなのだが、オルタナティヴ・ロックというのは幅が広いので選ぶのが難しかった。

筆者の中ではハード・ロック/ヘヴィ・メタルハートランド・ロック以外は大体どれも、オルタナティヴ・ロックだ。

これだけ幅が広い場合、無秩序に選ぶと訳が分からなくなるので、グランジ、ファンク・メタル、オルタナティヴ・メタル等、オルタナティヴ・ロックサブジャンル的なものは選択対象から外すことにした。

オルタナティヴ・ロックの大物と言えば、PIXIESピクシーズ]、DINOSAUR Jr.[ダイナソーJr.]、R.E.M.[アール・イー・エム]、SONIC YOUTHソニック・ユース]あたりなのだろうか?

しかし、今回、これらの大物は筆者独自のリストに入らなかった。

PIXIESDINOSAUR Jr.は好きなのだが、今回取り上げた10組ほどではない。

R.E.M.は6thアルバムの「GREEN」まではけっこう好きで聴いていたのだが、以降は何故か自然と聴かなくなった。

SONIC YOUTHは6thアルバムの「GOO」だけはリリース当時によく聴いていたのだが、他のアルバムは何枚か聴いてみたがピンとこなかった。

今回10枚選んでみて分かったのは、筆者はオルタナティヴ・ロックよりもメインストリーム・ロックの方が好きなのだということだ。

上位に入れたSOUL ASYLUMの「GRAVE DANCERS UNION」、GOO GOO DOLLSの「A BOY NAMED GOO」、GIN BLOSSOMSの「NEW MISERABLE EXPERIENCE」はオルタナティヴ・ロックにカテゴライズされてはいるが、音の方は実質的にメインストリーム・ロックだ。

いずれ、グランジ、ファンク・メタル、オルタナティヴ・メタルといった、オルタナティヴ・ロックサブジャンルからも10枚選んでみたい。

 

#0440.12) 好きなインダストリアルのアルバム10選

■ 第10位

cover

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title ANTICHRIST SUPERSTAR[アンチクライスト・スーパースター]
(2nd album)
artist MARILYN MANSONマリリン・マンソン
released 1996年
origin Fort Lauderdale, Florida, US
comment  米国のようなキリスト教の影響力が強い国で「ANTICHRIST SUPERSTAR」というアルバム・タイトルは、かなりヤバいのではないだろうか?
Marilyn MansonことBrian Hugh Warner[ブライアン・ヒュー・ワーナー]以前にも反キリストを掲げるアーティストはいたと思うのだが、それらに比べるとMarilyn Mansonは圧倒的に露骨で挑発的でガチなイメージがある。
 筆者は宗教や信仰に関しては全くの無関心であり、「神」や「あの世」に関しても、たぶん無いんじゃないかなと思っている。
 正直なところ、筆者にとって、MARILYN MANSONの反キリスト的な部分などに興味はなく、ただ単に優れたロック・アルバムとしての「ANTICHRIST SUPERSTAR」が好きなのだ。
 筆者にとってのMARILYN MANSONとは、かつてALICE COOPERアリス・クーパー]が生み出したショック・ロックを、インダストリアル・スタイルで90年代に蘇らせた良質なロック・バンドなのである。

■ 第9位

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title HELLBILLY DELUXE: 13 TALES OF CADAVEROUS CAVORTING INSIDE THE SPOOKSHOW INTERNATIONAL[ヒルビリー・デラックス]
(1st album)
artist Rob Zombie[ロブ・ゾンビ
released 1998年
origin Haverhill, Massachusetts, US
comment  インダストリアルというジャンルの中でも、そのパイオニアであるMINISTRY[ミニストリー]は、普段ラウド系の音楽を聴かない人にはノイジーすぎる。
 同ジャンルの頂点であるNINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ]もMINISTRYほどではないが、やはり普段ラウド系の音楽を聴かない人にはノイジーすぎるだろう。
MARILYN MANSONはノイジーな要素を多分に残しつつ、MINISTRYやNINE INCH NAILSよりもインダストリアルというジャンルを大衆化させることに成功した。
 そして、MARILYN MANSON以上にインダストリアルというジャンルを大衆化させることに成功したアーティストがRob Zombieなのではないだろうか?
 筆者の中におけるRob Zombieと、はインダストリアルというジャンルの中で最もポップなアーティストなのである。

■ 第8位

cover

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title THE DOWNWARD SPIRAL[ザ・ダウンワード・スパイラル]
(2nd album)
artist NINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ
released 1994年
origin Cleveland, Ohio, US
comment  インダストリアルというジャンルにおいて、その頂点に位置するアーティストと言えばNINE INCH NAILSなのではないだろうか?
 筆者がNINE INCH NAILSを知った切っ掛けは、GUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]のW. Axl Rose[W・アクセル・ローズ]がNINE INCH NAILSを推していたからだ。
 ただし、1st「PRETTY HATE MACHINE」を聴いたときは「激しめのシンセポップ」という感じで、そこまで嵌らなかった。
 嵌ったのは、EP「BROKEN」でのスラッシュ・メタルにも通じる激烈なサウンドを聴いてからだ。
 そして、NINE INCH NAILSの最高傑作と言えば、この2nd「THE DOWNWARD SPIRAL」になるだろう。
 激烈でありながら、暗闇に沈んでいくようなこのサウンドこそがNINE INCH NAILSでありTrent Reznor[トレント・レズナー]なのである。

■ 第7位

cover

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title PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS[ΚΕΦΑΛΗΞΘ -詩篇69-]
(5th album)
artist MINISTRY[ミニストリー
released 1992年
origin Chicago, Illinois, US
comment  インダストリアルというジャンルにおいて、その頂点に位置するアーティストがNINE INCH NAILSだとするならば、パイオニアに位置するアーティストはMINISTRYなのではないだろうか?
 この話は日本でMINISTRYを語るときに必ず出てくる話しなのだが、MINISTRYが日本のロック・ファンに大きく認知される切っ掛けとなったのはスラッシュ・メタル・バンドMEGADETHメガデス]の来日公演だ。
MEGADETHが来日公演時のSEにMINISTRYの4th「THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE」を使っていたのだ。
 筆者もMEGADETH切っ掛けで「THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE」に嵌り、次作となるこの「PSALM 69」でMINISTRYに完全にノックアウトされたクチである。
 このアルバムはエレクトロニック・ボディ・ミュージックスラッシュ・メタルの完璧な融合である。
 MINISTRYは共和党政権政党であるときに名作をリリースすると言われており、Al Jourgensen[アル・ジュールゲンセン]というミュージシャンは根っからのアンチ保守勢力なのである。

■ 第6位

cover

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title HEAVY AS A REALLY HEAVY THING[超怒級怒濤重低爆音]
(1st album)
artist STRAPPING YOUNG LAD[ストラッピング・ヤング・ラッド]
released 1995年
origin Vancouver, British Columbia, Canada
comment  天才Steve Vaiスティーヴ・ヴァイ]に見出された男もやはり天才だった。
 STRAPPING YOUNG LADのDevin Townsend[デヴィン・タウンゼンド]が、Steve Vaiの「SEX & RELIGION」(1993年)のシンガーに抜擢されたは若干21歳のときである。
 そのDevin TownsendがSteve Vaiの元を去って立ち上げたプロジェクトがこのSTRAPPING YOUNG LADだ。
 この1stアルバムはSTRAPPING YOUNG LAD名義となっているが、ソングライティング、ギター、ヴォーカル、キーボード、プログラミング、ミキシング等々、アディショナル・ミュージシャンは使っているものの、Devin Townsendが殆ど1人で作り上げている。
 徹頭徹尾、妥協を許さない機械的なメタルサウンドを聴きたいときには持って来いの1枚でなのである。

■ 第5位

cover

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title KILLING JOKE[黒色革命]
(1st album)
artist KILLING JOKEキリング・ジョーク
released 1980年
origin Notting Hill, London, England, UK
comment  インダストリアルの原点というのは諸説あると思うのだが、現在、我々が共有しているインダストリアルのイメージを作ったのは、英国のTHROBBING GRISTLEスロッビング・グリッスル]、CABARET VOLTAIREキャバレー・ヴォルテール]、KILLING JOKE、米国のSWANS[スワンズ]、BIG BLACK[ビッグ・ブラック]、ドイツのEINSTÜRZENDE NEUBAUTEN[アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン]あたりだろう。
 この中で筆者が最も熱心に聴いたのはKILLING JOKEだ。
KILLING JOKEは90年代以降のアルバムの方がインダストリアル的な要素が強まり、この1stアルバムも含めて80年代のアルバムはポストパンク的な要素の方が強い。
 しかし、このアルバムから聴こえてくる冷ややかでありながらもアグレッシヴな音は間違えなく、その後のインダストリアル系アーティストに多大なる影響を与えている。
 そして、このバンドのギタリストGeordie Walker[ジョーディー・ウォーカー]は、BAUHAUS[バウハウス]のDaniel Ash[ダニエル・アッシュ]、ECHO & THE BUNNYMEN[エコー&ザ・バニーメン]のWill Sergeant[ウィル・サージェント]と並ぶ、ポストパンク世代の3大ギタリストでもある。

■ 第4位

cover

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title VIOLENT NEW BREED[ヴァイオレント・ニュー・ブリード]
(3rd album)
artist SHOTGUN MESSIAH[ショットガン・メサイア
released 1993年
origin Skövde, Sweden
comment  SHOTGUN MESSIAHは、元々はグラム・メタル・バンドだったのだが、この3rd「VIOLENT NEW BREED」では突如その音楽性をインダストリアル・メタルに路線変更した。
 90年代初期は路線変更するグラム・メタル・バンドが多かったのだが、このSHOTGUN MESSIAHの路線変更については、売れたかどうかは別にして、かなり成功したケースである。
 グラム・メタル・バンドのギタリストは、テクニックよりも雰囲気で聴かせる人が多かったのだが、このバンドのギタリストであるHarry Cody[ハリー・コーディ]は物凄いテクニシャンであり、それがこのインダストリアル・メタル路線と実によく合っているのだ。
 結局、このアルバムを最後にSHOTGUN MESSIAHは解散するのだが、その後、シンガーのTim Sköldは、KMFDMやMARILYN MANSONでベーシストやマルチ・インストゥルメンタリストとして活躍する。
 Harry Codyは、Tom Waitsトム・ウェイツ]のアルバム「REAL GONE」に参加したりしていたのだが、現在では表舞台からは退いているようだ。

■ 第3位

cover

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title L'EAU ROUGE[ロー・ルージュ]
(2nd album)
artist THE YOUNG GODS[ザ・ヤング・ゴッズ]
released 1989年
origin Geneva, Switzerland
comment

 THE YOUNG GODSの3rdは「THE YOUNG GODS PLAY KURT WEILL」という全曲Kurt Weill[クルト・ヴァイル]のカヴァー・アルバムであり、Kurt Weillから多大な影響を受けている。
 Kurt Weillと言えば、言わずと知れたオペレッタ三文オペラ』で有名な作曲家だが、THE YOUNG GODSの音楽性にもその影響が色濃く顕れている。
 この2nd「L'EAU ROUGE」でも、オペラやミュージカルのような演劇的表現とインダストリアルが交じり合った実にユニークな楽曲を聴くことができる。
 実のところ、THE YOUNG GODSの音楽性はインダストリアルと言うよりもダーク・キャバレーと言うべきなのかもしれない。
 この2nd「L'EAU ROUGE」は、あのDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]もその影響を公言していた名盤中の名盤である。
David Bowieは、その生涯をとおして、自分よりキャリアが上であろうが下であろうが、様々な人達からインスパイアされ続けたアーティストだ。
 Bowie自身が、その影響を租借できたかとうかは別として、彼が「良い」という音楽を聴くと、ほぼ間違いないのである。
 なお、THE YOUNG GODSは現在でも活動を続けており、2022年4月現在に最新アルバムは、2019年の「DATA MIRAGE TANGRAM」だ↓

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 初期のTHE YOUNG GODSとは全然違うのだが、アンビエントな音が心地良い名盤である。

■ 第2位

cover

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title ANGST[アングスト]
(7th album)
artist KMFDM[ケーエムエフディーエム]
released 1993年
origin Hamburg, Germany
comment

 KMFDMは、現在でも頻繁に聴くアーティストだ。
 2022年4月現在におけるKMFDMの最新アルバムは、2019年の「PARADISE」であり↓

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 これも愛聴しているのだが、1枚取り上げるとなると、どうしても90年代のアルバムから選びたくなる。
 今、この記事を書いていて聴きたくなったのが7th「ANGST」だ。
EBM寄りのインダストリアルにメタリックなギターを絡めるのが一番上手いのは、やはりKMFDMだ。
 なにより、KMFDMの良いところは、アルバムを沢山リリースしてくれるところだ。
 1990年代には7枚、2000年代には5枚、2010年代にも5枚という、ハイペースでアルバムをリリースおり、実に働き者である。
 KMFDMの曲には激しい面もあるのだが、シンセポップ的な要素も強いので「米国型の激烈インダストリアルはちょっと...」という人でも聴けるような気がする。
 KMFDMのSascha Konietzko[サシャ・コニエツコ]は、PIG[ピッグ]ことRaymond Watts[レイモンド・ワッツ]や日本のBUCK-TICK[バクチク]のメンバーと組んでSCHWEIN[シュヴァイン]というユニットもやっているのだが、彼らのアルバム「SCHWEIN」も、かなりの名盤である。

■ 第1位

cover

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title THE SWINING[ザ・スワイニング]
(3rd album)
artist PIG[ピッグ]
released 1993年
origin London, England, UK
comment

 PIGもKMFDMと並び、現在でも頻繁に聴くアーティストだ(PIGことRaymond WattsはKMFDMのメンバーだった時期もあった)。
 2022年4月現在におけるKMFDMの最新アルバムは、2020年の「PAIN IS GOD」であり↓

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 これも愛聴しているのだが、1枚取り上げるとなると、どうしても90年代のアルバムから選びたくなる。
 今、この記事を書いていて聴きたくなったのが3rd「THE SWINING」だ。
 本格的なインダストリアルという意味では、次作「SINSATION」以降になるだろう。
 これまでの筆者もPIGと言えば、圧倒的に「SINSATION」以降のアルバムの方が好きだったのだが、最近は初期のPIGを聴くことが増えた。
 初期のPIGはホーンやオーケストラを大袈裟に取り入れた曲が多いのだが、最近はその過剰に派手な音に嵌ってしまているのだ。
 Raymond Wattsは、日本のBUCK-TICKSOFT BALLET[ソフト・バレエ]のメンバー組んでSCHAFT[シャフト]というユニットもやっているのだが、彼らのアルバム「SWITCHBLADE」も、かなりの名盤である。
 余談だが、Raymond Wattsは、とてもハンサムなのに自らをPIGと名乗るところには少しイラっとさせられる。

 

インダストリアル・ロックとインダストリアル・メタルの境界線は曖昧だ。


インダストリアル・ミュージックと呼ばれることもあれば、単にインダストリアルと呼ばれることもある。


しかし、インダストリアル(industrial)は形容詞なので、ロック、メタル、ミュージックなどを付けなければ座りが悪い。


今回のタイトル「好きなインダストリアルのアルバム10選」というのは、我ながら変なタイトルを付けてしまったなと思うのだが、インダストリアルと付くジャンル全般だと思ってほしい。


今回選んだ10枚は、意図した訳ではないのだが、下位5組が米国出身のアーティスト、上位5組が欧州出身のアーティストになった。


今回のリストでは、

1位:PIG
2位:KMFDM
3位:THE YOUNG GODS

としたのだが、この3組は筆者にとっての不動のトップ3であり、順位はあくまでの今日の順位である。


明日には変わっている可能性もある。