Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.20) 好きなアイリッシュ・ロック(90年代)のアルバム5選

【5位】Trains, Boats and Planes / The Frank and Walters

[title]
Trains, Boats and Planes
 1st album
 released: 1992

[artist]
The Frank and Walters (ザ・フランク・アンド・ウォルターズ)
 origin: Cork, Ireland

[comment]
 筆者にとって、The Frank and Walters のようなバンドは一番好きなバンドにはならないのだが、安定感が抜群で曲のクオリティが高く、いつでも安心して聴けるバンドだ。
 派手さは無く流行からも程遠いのだが、彼らの奏でるしなやかなメロディーはエヴァーグリーンであり、筆者の中では Teenage Fanclubティーンエイジ・ファンクラブ]の近い位置にいるバンドだ。
 あまりに地味すぎるので、ついつい忘れてしまいがちなのだが。

【4位】Infernal Love / Therapy?

[title]
Infernal Love
 3rd album
 released: 1995

[artist]
Therapy? (セラピー?)
 origin: Larne, Northern Ireland

[comment]
 1st Nurse ~ 2nd Troublegum では、Nirvanaニルヴァーナ]等、米国産グランジ/オルタナティヴの強すぎる影響から脱し切れていない感じだったのだが、この 3rd は一皮むけた感がある。
 演奏も歌も表現力が上がっており、楽曲の幅も広がっている。
 見た目がゴツいので、ゴリゴリの音を出しそうなのだが、実はけっこう繊細な面もあり、見た目とは裏腹に器用なバンドである。

【3位】Casanova / The Divine Comedy

[title]
Casanova
 4th album
 released: 1996

[artist]
The Divine Comedy (ザ・ディヴァイン・コメディ)
 origin: Enniskillen, Northern Ireland

[comment]
 欧州人としての美学を追求したこの手の音楽は、バロック・ポップあるいはチェンバー・ポップと言うのだろうか?
 当時、このアルバムと My Life Story[マイ・ライフ・ストーリー]の The Golden Mile の2枚はこのジャンルのお気に入りで、毎日のように聴いていた。
 時期的にはブリットポップの末期と重なるのだが、ブリットポップとは比較にならないほど壮大な世界観を持っており、似て非なるものである(でも、Pulp[パルプ]とは、ちょっと近いかもしれない)。

【2位】Casual Sex in the Cineplex / The Sultans of Ping FC

[title]
Casual Sex in the Cineplex
 1st album
 released: 1993

[artist]
The Sultans of Ping FC (ザ・サルタンズ・オブ・ピン・FC)
 origin: Cork, Ireland

[comment]
 Sultans には "U talk 2 much" という曲があり、そのタイトルを知ったとき、「君たち、U2のこと嫌いだよね?」と訊きたくなった(笑)。
 本当のタイトルは "You Talk Too Much" というのだが、祖国の英雄をこそっとおちょくるセンスが面白い。
 Sultans は、「サッカー・ファンがRamonesラモーンズ]をお手本にしてバンドを始めました」的なアホっぽいバンドなのだが、曲は意外なほど良くて、筆者にとっては U2 の何十倍、何百倍もカッコ良いと思える大好きなバンドだった。

【1位】Immigrants, Emigrants and Me / Power of Dreams

[title]
Immigrants, Emigrants and Me
 1st album
 released: 1990

[artist]
Power of Dreams (パワー・オブ・ドリームス)
 origin: Dublin, Ireland

[comment]
 The Sultans of Ping FC は祖国の英雄 U2 をこそっとおちょくってたが、Power of Dreams の場合は明確に名指しで U2 への嫌悪感を表していた。
 当時の筆者は Suedeスウェード]と Manic Street Preachersマニック・ストリート・プリーチャーズ]にぞっこんだったのだが、Power of Dreams は Suede や Manics と同じくらい好きなバンドだった。
 Power of Dreams はメンバーが10代の頃この 1st をリリースしているのだが、この瑞々しい曲の数々は10代の頃にしか書けないような気がする(特に "100 Ways to Kill a Love" のキラキラ感!)。
 50を過ぎたオッサンになった今でも、このアルバムを聴くと鼻の奥がツンとなり、涙が出そうになる。

~ 総括 ~

 このブログでは好きなアーティストのことを書いてきたのだが、苦手なアーティストについては殆ど書いてこなかった。
 しかし、筆者も人間なので苦手なアーティストはいる。

 一般的に「凄い」と言われているアーティストや名盤でも、何故か筆者にはピンとこないということもけっこうある。

ブリットポップの大御所、Blur[ブラー]と Oasis[オアシス]は、最初は熱心に聴いていたのだが、何故かある日突然飽きてしまった。
 それ以来、この二つの大御所は殆ど聴いていない。

 90年代におけるロックの救世主、Nirvanaニルヴァーナ]は、BleachIn Utero は好きなのだが、何故か名盤 Nevermind は "Come as You Are" くらいしか好きな曲がない。

 メタルの王者、Metallicaメタリカ]は、1st Kill 'em All、2nd Ride the Lightning、3rd Master of Puppets は大好きだ。
 しかし、4th ...And Justice for All 以降、好きになれたのは 5th Metallica (通称 The Black Album) だけ。

 そして、筆者がロックを聴いてきた歴史の中で最もピンとこなかった「凄い大物」が U2[ユートゥー]だ。

U2 とは出会い方が悪かったのかもしれない。
 筆者は、U2War と同じ日に Echo & the Bunnymen[エコー&ザ・バニーメン]の Porcupine を聴いたのだが、Echo & the Bunnymen がカッコ良すぎて U2 が完全に霞んでしまったのである。
 音楽の好みなんて人それぞれなので、人によっては逆になることもあるはずだが、筆者には Echo & the Bunnymen と U2 の間には雲泥の差があるように感じられたのである。

 その後も U2All That You Can't Leave Behind までは追いかけたのだが結局嵌れなかった。
 音楽もそうなのだが、U2 には音楽以外にへばり付いているもの多く、その辺が鬱陶しかったというのもある。
 それを、分かり易く表しているのが、AC/DC[エーシー・ディーシー]の Brian Johnson[ブライアン・ジョンソン]が U2 について語った言葉だ。

 正確には憶えていないが、「労働者だった頃の俺には金が無かったからアフリカのことを考える余裕なんてなかった。俺はコンサートに来てくれた人に募金しろなんて言いたくない。」というニュアンスの言葉だったと思う。

 今回取り上げた5組のアーティストはアイルランドの英雄 U2 に嵌れなかった筆者が好きになった、90年代に活躍したアイリッシュ・ロックのアーティストだ。
U2 と比べると、吹けば飛ぶようなアーティストかもしれないが、いずれも筆者にとっては大切なアーティストなのである。

#0440.19) 好きな日本のロック・バンド(80年代)のアルバム10選

■ 第10位

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title DEAD LINE
(1st album)
artist DEAD END[デッド・エンド]
released 1986年
comment  インディー・レーベルからリリースされた1stアルバムなのだが、アルバムとしての完成度、曲のクオリティはメジャー・レーベルに移った2nd以降の方が遥かに上をいっていると思う。
 しかし、DEAD ENDが描く(と言うよりは、シンガーのMORRIEが描く)、百鬼夜行的なおどろおどろしい世界観を存分に味わうなら、この1stなのである。
 後にサウンド面の要となるギタリストの足立"YOU"祐二は、この1stではまだイニシアチブとっていないと思うので、2nd以降で聴ける洗練されたヘヴィ・メタルとは全く趣が異なり、別のバンドのようだ。
 このアルバムには洗練された要素が殆ど盛り込まれておらず、力尽くで強引な印象を受ける。
 アルバム・カヴァーも2nd以降のDEAD ENDのセンスなら有り得ない絵面なのだが、このアルバムの音にはピッタリであり、これ以上ないほどに嵌っている。

■ 第9位

cover

title GOOD EVENING WONDERFUL FIEND
(1st album)
artist THE WILLARD[ザ・ウィラード]
released 1985年
comment  筆者が、邦楽のロックを明確に意識して聴いた最初のレコードは、このTHE WILLARDのインディー・レーベルからリリースされた1stアルバムだったと思う。
 中学の同級生I君が筆者に貸してくれた(正確にはカセットテープにダビングしてくれた)アルバムだったのだが、筆者の最初の感想は「ダムドやん!」だった。
 特にシンガーのJunは歌い方もヴィジュアルもThe Damnedザ・ダムド]のDave Vanian[デイヴ・ヴァニアン]そのものに見えたので、最初の印象は良くなかったのである。
 しかし、日本語で歌っている故に否応なしに歌詞が耳に入ってくるので、意識して歌詞を聴いてみたところ、海賊っぽい世界観の歌詞を面白いと思うようになり、演奏もカッコ良かったので徐々に好きになっていった。
 筆者はインディ―至上主義ではないのだが、メジャーに移った2nd以降では1st以上に好きになれるアルバムがなかったので、筆者にとって日本のパンクと言えば、このアルバムなのである。

■ 第8位

cover

title gArNeT
(1st album)
artist G-Schmitt[ゲー・ジュミット]
released 1988年
comment  バンド名に付く G を「ジー」ではなく「ゲー」と読めるか否かで、このバンドへの思入れを推し量ることができる。
 筆者は、ガールズ・バンドや、女子をフロントに立てたバンドが好きなので、当時(80年代)、日本で活動していたその手のバンドをいくつか聴いてみたのだが、正直なところ、なかなか聴き辛いものが多かった。
 なかでもポストパンク/ニュー・ウェイヴ系のバンドには聴き辛いものが多かったのだが、G-Schmittだけは別格で、洋楽のポストパンク/ニュー・ウェイヴと並行して聴いていた。
 特にこのアルバムで聴けるベースとドラムの暗黒ファンク感が漂うリズムは秀逸である。
 シンガーのSYOKOは非常にヴィジュアルの美しい人であり、曲も良かったので、歌詞を英語にして英国でリリースしたら、けっこう人気がでたのではないだろうか?
 「ガールズ・バンドや、女子をフロントに立てたバンドが好き」と言いつつ、実はポストパンク/ニュー・ウェイヴに関しては、その手の洋楽を殆ど聴いてこなかったので、筆者にとって、女子が歌うポストパンク/ニュー・ウェイヴと言えばG-Schmittなのである。

■ 第7位

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title CASINO DRIVE
(2nd album)
artist RED WARRIORS[レッド・ウォーリアーズ]
released 1987年
comment  高校生の頃、筆者と友達(K君)と先輩の3人で深夜ドライブをしているときに、K君がカーオーディオに入れたカセットテープが、このアルバムのB面だった。
 流れてきた曲は"JOHN"。
 軽やかなアコースティック・ギターと、爽やかなコーラスに一瞬でノックアウトだった。
ダイアモンド☆ユカイ(vo)の確かな歌唱力とエンターティナーとしての資質、木暮"shake"武彦(gt)の天才的な作曲能力、小川清史(ba)と小沼達也(dr)がしっかりと支えるブレやヨレの無い安定のリズム。
 日本人が日本語で王道ロックン・ロールをやるにあたり、最も効果的な方法を示したのがRED WARRIORSだ。
 RED'Sは、1st~3rdの3部作で王道ロックン・ロールを完成させたのだが、後期のThe Beatlesザ・ビートルズ]に深く傾倒した4thアルバムのSwingin' Dazeが実は最高傑作のような気もする。

■ 第6位

cover

title ZIGGY 〜IN WITH THE TIMES
(1st album)
artist ZIGGY[ジギー]
released 1987年
comment  前述のK君が、「お前、Hanoi Rocksハノイ・ロックス]が好きなんやったら、絶対これ好きんなれるはずやし」と言って貸してくれたのが、このアルバムだ。
 偉そうに上から言われている感じだが、Hanoi RocksをK君に教えたのは筆者だ。
 ただし、K君の慧眼は見事であり、このアルバムを1回聴いただけで、筆者はZIGGYのファンになってしまった。
Hanoi RocksAerosmithエアロスミス]といった洋楽のロックン・ロール/ハード・ロックは言うまでもなく、当時、日本のロックの頂点に君臨していたBOØWY[ボウイ]からの影響や、70年代の歌謡曲まで取り込んで、ZIGGY流のロックン・ロールにしてしまうそのセンスは見事としか言いようがない。
 90年代以降は音楽性の不一致や人間関係のゴタゴタでメンバーが安定しなくなったバンドだが、ZIGGYと言えばこのアルバムでデビューした森重樹一(vo)、松尾宗仁(gt)、戸城憲夫(ba)、大山正篤(dr)の4人なのである。

■ 第5位

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title CRASH
(2nd album)
artist JUSTY-NASTY[ジャスティ・ナスティ]
released 1989年
comment  このアルバムは、メジャー・レーベルからリリースされた最初のアルバム。
 インディー・レーベル時代はバッド・ボーイズ・ロックン・ロール系の曲をやっていたのだが、メジャーからの第一弾となったこのアルバムではBOØWYからの影響が感じられるビート・ロック系の音に変わっている。
 セルアウトと言ってしまうのは簡単だが、メジャーから音源をリリースする以上、それに関わるレーベルやマネジメントに所属する人達の命運が掛かってるのだから売れなければ意味がない。
 このアルバムに収録されているメジャー1stシングル "言いだせなくて" は、インディー時代とはかなりテイストの異なるダンサブルで憂いのある曲だが、メジャー第一弾としては最高の仕上がりであり名曲だ。
 当時、バッド・ボーイズ・ロックン・ロールは乱立するバンドにより飽和状態にあったので、彼らが選んだこの路線変更は大正解だったと言えるだろう。

■ 第4位

cover

title LA VIE EN ROSE
(1st album)
artist D'ERLANGER[デランジェ
released 1989年
comment  このバンドに魅かれた最初の理由は、ギタリストのCIPHER[サイファー/瀧川一郎]が、筆者と同じ、京都の出身だったからだ。
 自分よりも1つだけ年上の同じ地元の人が、アルバムをリリースできるほどのミュージシャンになっているという事実が、当時の筆者には衝撃的だったのである。
 元々はグラム・メタル系のバンドだったが、やはり、これもBOØWYの影響が大きいと思うのだが、インディー・レーベルからリースしたこの1stアルバムではビート・ロック系の音に変わっている。
 自らサディスティカル・パンクと呼んだ彼らの曲は、ゴシック風味のある性急なビートが印象的なのだが、やけに色気があり艶っぽいところがこのバンドの特徴だ。
 ゴシック系の曲で統一されるのかと思いきや、突然 "LULLABY" のようなドキャッチーな曲が出てきて意表を突かれる瞬間がある。
 このバンドのシンガーkyoの声と歌は特徴的であり、上手いとか下手という単純な二元論では説明できない個性がある。

■ 第2位

cover

title GET THE BLACK
(1st album)
artist SHADY DOLLS[シェイディ・ドールズ]
released 1987年
comment  このアルバムを買ってきて、ステレオのスピーカーから流れてきた1曲目の "SING A SONG" 聴いたときは度肝を抜かれるほど驚いた。
 めちゃくちゃ演奏が上手いのである。
 速弾きとかの上手さではなく、ロックン・ロールを演奏するために必要なリズムの取り方とか、タメの効かせ方が絶妙に上手いのだ。
 よく知られた話だが、この1stアルバムをリリースしたときのSHADY DOLLSの平均年齢は19歳である。
 平均年齢19歳でこの上手さ、練習量が多いのか、持って生まれたセンスが凄いのか、あるいは、その両方なのか?
 SHADY DOLLSと同様に、The Rolling Stonesザ・ローリング・ストーンズ]をお手本にした日本のバンドでは、彼らより少し上の世代にTHE STREET SLIDERS[ザ・ストリート・スライダーズ]がいるのだが、当時の筆者は何回聴いてもTHE STREET SLIDERSの凄さがよく分からなかった。
 それに対し、SHADY DOLLSは1回聴いただけで直ぐに好きになってしまったのである。

■ 第1位

cover

title G.D.FLICKERS
(compilation album)
artist G.D.FLICKERSジー・ディー・フリッカーズ]
released 1989年
comment  この作品はオリジナル・アルバムではなく、メジャーからデビューする前に、インディー・レーベルからリリースされたGLAMOUROUS & DAINGEROUSSOME GIRLSという2枚のミニ・アルバムを1枚のCDに纏めた編集盤だ。
G.D.FLICKERSは、2022年の現在まで、一度も解散することなく活動を続けており、メンバーもベース以外はこの音源のリリース時から変わっていない。
 そして、彼らの音楽性も、この当時から現在まで殆ど変わっていない。
 活動歴が永いので上手くなってきてはいるのだが、彼らの音は昔も今も愛想の無い武骨なロックン・ロールのままだ。
 同時期に活動していたRED WARRIORSのような王道でもなく、ZIGGYのような器用さもない。
 飾り気のないスッピンのロックン・ロールなのだが、これはシンガーのJ♂E[ジョー/稲田錠]がパンク出身だからかもしれない。
 バラードだって甘ったるいラヴ・ソングではなく、この作品に収録されている "Lovely Girl" みたいに、女の子を突き放すような、それでいて女の子に優しいような曲なのである。

■ 第1位

cover

title DREAMS
(1st album)
artist NICKEY & THE WARRIORS[ニッキー&ザ・ウォーリアーズ]
released 1987年
origin  
comment  筆者が最も好きな日本の女性ロック・シンガーはNICKEYなのだが、結局のところ、最も好きな80年代の日本のロック・バンドもNICKEY & THE WARRIORSになってしまった。
 とにかく、NICKEYは可愛い。
 「音楽じゃなくて顔かよ!」と言われるかもしれないが、ロック・バンドのフロントに立つ女子のヴィジュアルは重要なのである。
 ヴィジュアルの話から入ってしまったが、Ramonesラモーンズ]やJohnny Thunders & the Heartbreakers[ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ]、そして日本のSHEENA & THE ROKKETS[シーナ&ザ・ロケッツ]からの影響を伺えるパンキッシュなロックン・ロールは、かなりカッコ良い。
 NICKEYの歌は舌足らずで、けして上手いわけではないのだが、彼女の歌はこのバンドの曲にとてもよく合っている。
 90年代以降も日本の女性ロック・シンガーをたくさん聴いてきたが、未だに筆者にとってのNo.1はNICKEYであり、残りの時間も少なくなってきたので、NICKEYを超える人は見付けられなさそうだ。
 NICKEYは1年くらい前からYouTubeを始めており、最近また見る機会が増えたのだが、いまだに可愛いのには驚かされる。

 

「好きな日本のロック・バンド(80年代)のアルバム10選」と銘打ってリストを作ってみたのだが、実のところ筆者は蘊蓄を語れるほど日本のロックに詳しくない。


筆者がロックを聴き始めたのは1982年であり、中1のときだ。


今でこそ、日本でロックと言えば邦楽が主流になっているが、当時は圧倒的に洋楽が主流であり、ロックとは「英語で歌うもの」、「日本語で歌ってはいけないもの」という不文律があったような気がする。


筆者の記憶では、邦楽ロック、所謂、日本のロック・バンドが活気づいてきたのは1980年代後半からだ。


今回、選んだ10枚も、全て1985年から1989年の間、つまり、80年代後半にリリースされたアルバムである。


そして、全て筆者自身が買ったことのあるアルバムを選んでいる。


最初は友達にダビングしてもらったカセット・テープを聴いていて、だいぶ後になってから買ったものもあるが、とにかく自分で買ったことのあるアルバムである。


1980年代後半になると、ロック・リスナーが洋楽派と邦楽派に二極化していったのだが、筆者の場合は前者だった。


つまり、洋楽派なのだが、邦楽に興味が無かったわけではなく、実は聴きたいのだが、レコードを買う時に洋楽を優先してしまうため、邦楽にまでお金が回らないのである。


ただし、お金が回らない邦楽は、邦楽好きの友達からレコードを借り、逆に筆者は洋楽のレコードを彼らに貸していたので、持ちつ持たれつの関係が出来上がっていた。


今のように、定額で聴き放題の音楽配信サービスがあれば、洋楽も邦楽も満遍なく聴いていたと思うので、そういう環境に恵まれている今の若い人たちを羨ましく思う。


筆者も音楽鑑賞の98%くらいは音楽配信サービスを利用するようになり、たぶんCDは3年以上買っていないと思うし、CDショップにも同じくらいの期間行っていない。


かつて、買いたくても買えなかった日本のロック・バンドのアルバムを、今では音楽配信サービスで聴けるようになったのは本当にありがたいと思う。


今回取り上げた10枚は「日本語で歌う」という制約を設けて選んだ。


例えば、LOUDNESSラウドネスVOW WOW[ヴァウワウ]も大好きな日本のロック・バンドなのだが、彼らの場合は英語で歌う方がスタンダードなので今回の10枚には入れなかった。


横浜銀蝿も大好きな日本のロック・バンドなのだが、銀蝿は筆者がロックを明確に意識する前に出会ったバンドなので今回の10枚には入れなかった。


HILLBILLY BOPSヒルビリー・バップス]も大好きな日本のロック・バンドなのだが、今回のリストに入れるには何だかミスマッチに思えたので入れなかった。


これらのバンドは、いずれ違った形で取り上げたいと思う。

 

#0440.18) 好きなAC/DC[エーシー・ディーシー]のアルバム5選

■ 第1位

cover

title If You Want Blood You've Got It[ギター殺人事件~AC/DC流血ライヴ~]
(live album)
released 1978-10-13
comment  筆者は、ライヴ・アルバムは基本的に好きではないのだが、いくつかのアーティストについては、スタジオ・アルバムよりもライヴ・アルバムの方を好んで聴くケースがある。
AC/DCのこのアルバムもそんなケースの1つだ。
 元を辿れば、Guns N' Roses[ガンズ・アンド・ローゼズ]のLive from the Jungleで"Whole Lotta Rosie"を聴いたことでAC/DCへの興味が深まり、原曲が聴きたくて購入したのがこのアルバムだ。
 ライヴ・アルバムだが、選曲としてはこの時期のAC/DCのベストと言える内容になっている。
 ちなみに、"Whole Lotta Rosie"はGuns N' Rosesのカヴァーでも、観客の合いの手は「アンガス!」である。

■ 第2位

cover

title Let There Be Rock[ロック魂]
(4th album)
released 1977-03-21
comment AC/DCと言えば、全てのアルバムが名盤だ。
 低迷していたと言われる頃(80年代中期~後期)にリリースされたアルバムですら、筆者に取っては名盤なのである。
 時々、「AC/DCはリフが良いだけで、メロディーが無い」と言っている人に出会うことがある。
 そんな人に会ったとき、筆者は、「ええかげんにせいよ、ほんまに!」と言って、喧嘩を売ってしまう。
AC/DCは最高のリフ・メイカーであると同時に、最高のメロディー・メイカーでもあり、それを最も分かり易く味わえるのがこのアルバムなのである。

■ 第3位

cover

title Back in Black[バック・イン・ブラック]
(7th album)
released 1980-07-25
comment  他界したBon Scott[ボン・スコット]の後任シンガーとして、Brian Johnson[ブライアン・ジョンソン]が参加して制作した最初のアルバムであり、シンガーの交代というバンドの危機的状況下で放ったアルバムが、結果としてキャリア最大のヒット作となった。
 Brian Johnsonの声質のため、かなりメタリックな質感のアルバムに仕上がっている。
 一番好きなAC/DCのアルバムではないが、一番衝撃を受けたAC/DCのアルバムはこれだ。
 80年代に隆盛を極めた多くのグラム・メタル・バンドの曲は、このアルバムからアイディアを拝借している。

■ 第4位

cover

title Powerage[パワーエイジ]
(5th album)
released 1978-05-25
comment AC/DCは、どのアルバムを聴いても同じだと思っている人がいるなら、2位に挙げたLet There Be Rockの次に、このアルバムを聴いてみるべきだろう。
Let There Be Rockがメロディー・メイカーとしてのAC/DCを楽しむアルバムなら、このアルバムはリフ・メイカーとしてのAC/DCを徹底的に楽しむためのアルバムだ。
Let There Be RockHighway to Hellという派手なアルバムに挟まれ、AC/DCのカタログの中では地味な存在かもしれないが、実はかなりの名盤である。
 そして、Aerosmithエアロスミス]のギタリスト、Joe Perryジョー・ペリー]のフェイヴァリット・アルバムでもある。

■ 第5位

cover

title The Razors Edge[レイザーズ・エッジ]
(12th album)
released 1990-09-21
comment  80年代中期~後期のAC/DCは低迷期と言われているが、それは、90年にリリースされたこのアルバムが良すぎるために、そう思われているのではないだろうか?
 筆者は低迷期と言われている時期のAC/DCのアルバムも好きなのだが、その頃のアルバムはAC/DCとしては少々落ち着いている感じがしなくもない。
 それに比べると、このアルバムで聴ける吹っ切れたかのような鋭くてタフな演奏は、70年代後期から80年代初期にかけてのAC/DCを彷彿とさせるのである。
 このアルバムで取り戻した勢いは、そのまま、現時点での最新作である17thアルバムのPower Upまで失速することなく維持されている。

 

AC/DCは世界最高峰のロックン・ロール・バンドだ。


The Rolling Stonesザ・ローリング・ストーンズ]も世界最高峰のロックン・ロール・バンドと言われることがあるが、ロックン・ロールの純度の高さで比べるなら、StonesよりもAC/DCの方が上をいっている。


もちろん、Stonesも優れたロックン・ロール・バンドであり、筆者もStonesが大好きなのだが、Stonesというバンドは実に上手く流行を取り入れることのできるバンドでもある。


それに比べ、AC/DCはロックン・ロール馬鹿一代の如く、突き進んできたバンドだ。


AC/DCのアルバムはどれを聴いても同じに聴こえる」と批判されたとき、Malcolm Young[マルコム・ヤング]は「同じバンドだからな」と言っていたらしいが、実に痛快なエピソードである。


AC/DCはStonesのKeith Richards[キース・リチャーズ]のフェイバリット・バンドでもあり、この話を知ったときは「なるほど」と思い、思わず笑みがこぼれてしまった。


Ramonesラモーンズ]のDee Dee Ramone[ディー・ディー・ラモーン]は、「この世にロックン・ロール・バンドは3つしかない。RamonesMotörheadとAC/DCだ」と言ったらしいが、上手いことを言うものである。


当然、この世には、もっと多くのロックン・ロール・バンドが存在する。


しかし、Dee Dee Ramoneのこの言葉には強烈な説得力がある。


RamonesMotörheadは、もうこの世に存在しない。


残るはAC/DCだけだが、AC/DCもMalcolm Youngが亡くなったり、Brian Johnsonが耳を患ったりと、かなり危うい状態である。


しかし、AC/DCには、ここままゴールまでロックン・ロール街道を突っ走てほしいのである。

 

#0440.17) 好きなDavid Bowie[デヴィッド・ボウイ]のアルバム5選

■ 第1位

cover

title Low[ロウ]
(11th album)
released 1977-01-14
comment  今回のリストでは、Lowを1位、"Heroes"を2位としたが、筆者にとってこの2枚は順位が付け難いので気持ちとしては2枚とも1位だ。
 録音場所がベルリンだからクラウトロックっぽくなったのか、クラウトロックっぽいものを作りたいからベルリンで録音したのか?
 このアルバムでのBowieはあまり歌っていないのだが、そこがこのアルバムの良いところでもある。
 筆者は、サウンドリエーターとしてのBowieが好きなのであり、シンガーとしてのBowieには殆ど興味が無い。
 従って、このアルバムは、筆者にとって、最もBowieを楽しめる1枚なのである。

■ 第2位

cover

title "Heroes"[英雄夢語り (ヒーローズ)]
(12th album)
released 1977-10-14
comment Lowに続きベルリンで録音されたアルバムであり、このアルバムもインストゥルメンタルの比率が高い。
 後に(80年前後)に登場するポストパンクやニュー・ウェイヴに対し、大きな影響を与えたアルバムだが、多くのポストパンクやニュー・ウェイヴのアーティストが束になってかかっても太刀打ちできない名盤である。
 特に後半のインストゥルメンタル・パートは、陳腐な言い方だ神憑っているとしか言いようがない。
 少し乱暴な言い方になるのだが、もし、Bowieがこのアルバムを最後に引退していたなら、現在での評価は更に上がっていたように思えてならない。

■ 第3位

cover

title Station to Stationステイション・トゥ・ステイション
(10th album)
released 1976-01-23
comment Low"Heroes"に続く3部作の最終章はLodgerなのだが、正直なところ、Low"Heroes"が放つヒリヒリとしたテンションの高さと比べると、Lodgerはどうにも緩く感じてしまいLow"Heroes"と同じ気持ちで聴くことができない。
 それに対し、Lowの1つ前のアルバムであるこのStation to Stationには、Low"Heroes"へと続くテンションの高さが既に放たれており、筆者にとってはStation to StationLow"Heroes"こそがBowieの3部作なのである。
 前作Young Americansに引き続きソウル等ブラック・ミュージックの要素を取り入れながらも、Bowieの歌にはあまり重きが置かれておらず、演奏の面白さの方に耳が魅かれるアルバムである。

■ 第4位

cover

title Black Tie White Noiseブラック・タイ・ホワイト・ノイズ
(18th album)
released 1993-04-05
comment  筆者が初めてリアルタイムで聴いたBowieのアルバムは、1983年リリースのLet's Danceなのだが、それに続くTonightNever Let Me Downの3枚は、いずれも全く良いと思えなかった。
 後追いで聴いたLow"Heroes"と比べると、80年代のBowieは「ほんまにおんなじ人なん?」と思えるほど、凋落の一途を辿っていたのである。
 そんな80年代のBowieが復活の兆しを見せた瞬間が一瞬だけあり、それがこのBlack Tie White Noiseだ。
Let's Danceと同じNile Rodgers[ナイル・ロジャース]のプロデュースなのだが、Let's Danceでは嵌らなかったものが、このBlack Tie White Noiseでは完璧に嵌っている。
"Heroes"よりも後のアルバムでは、最後まで集中力を切らさずに聴ける唯一のアルバムである。

■ 第5位

cover

title Tin Machine[ティン・マシーン]
(Tin Machine's 1st album)
released 1989-05-22
comment Black Tie White Noiseで復活の兆しを一瞬だけ見せたBowieだが、このTin Machineでその予兆を垣間見ることができる。
 たぶん、Never Let Me Downを制作した後に、「この路線が自分に合っていない」と気付いたのではないだろうか?
 Bowieがソロでの活動を止め、このTin Machineを結成したとき、殆どの人は「どうせ長続きしない」と思ったはずであり、実際にそうなった。
 しかし、Reeves Gabrels[リーヴス・ガブレルス](lead guitar)、Tony Sales[トニー・セイルス](bass)、Hunt Sales[ハント・セイルス](drums)という凄腕のミュージシャンと共にロックン・ロールしているBowieには、80年代の不調を吹き飛ばす勢いがある。
 ただし、物凄く、バックの演奏に救われているアルバムでもある。

 

今年(2022年)は、お盆くらいから、ずっとDavid BowieLow"Heroes"を聴いている。

 

とにかく、このアルバムは、いつ聴いても凄い。

 

ロック史に燦然と輝く「永遠の名盤」である。

 

キャリア初期のシンガーソングライターっぽい時代(1970年前後)や、グラム・ロック時代(1970年代前期)のアルバムも好きなのだが、あまりにも聴きすぎたせいか、今では少々飽きてしまっている。

 

それに比べ、Low"Heroes"の2枚は、飽きるほど聴いているはずなのに全く飽きていない。

 

20世紀が生んだ天才総合芸術家であるDavid Bowieが、最も音楽的に充実していたときに放ったアルバムがこの2枚であり、あまりにもこの2枚が凄すぎるので、その後は、David Bowie自身ですら、この2枚を超えることができなったのである。

 

#0440.16) 好きなヒップ・ホップ(80年代)のアルバム10選

■ 第10位

cover

title STRICTLY BUSINESS[ストリクトリー・ビジネス]
(1st album)
artist EPMD[イーピーエムディー]
released 1988年
origin Long Island, New York, U.S.
comment  88年のアルバムなのだが、筆者はEPMDのバックグラウンドを知らないまま、2000年代になってからこのこのアルバムを聴いたので、そこまで古いアルバムだとは気付いておらず、90年代のアルバムかなと思っていた。
Bob Marleyボブ・マーリー]の"I Shot the Sheriff"をサンプリングした、1曲目の"Strictly Business"は特に秀逸であり、レゲエを殆ど聴かない筆者にとって"I Shot the Sheriff"と言えば、Eric Claptonエリック・クラプトン]かEPMDなのである。
 自分の曲をヒップ・ホップにサンプリングされることを快く思わないアーティストは多いと思うのだが、もし、Bob Marleyが存命だったなら、この曲をどう思ったのだろう?

■ 第9位

cover

title CRIMINAL MINDED[クリミナル・マインデッド]
(1st album)
artist BOOGIE DOWN PRODUCTIONS[ブギ・ダウン・プロダクションズ]
released 1987年
origin New York City, U.S.
comment  これも2000年代に入ってから聴いたアルバムであり、BOOGIE DOWN PRODUCTIONSは完全に後追いで聴いたアーティストだ。
 筆者は、KRS-One[KRS・ワン]がらみでは、このアルバムが一番好きだ。
 Scott La Rock[スコット・ラ・ロック]の意外なほどシンプルなトラックに、KRS-Oneの切れ味鋭いラップは、一聴するとミスマッチのような気もするのだが、これがBOOGIE DOWN PRODUCTIONSの個性なのである。
 Scott La Rockが急死しなければ、BOOGIE DOWN PRODUCTIONSは、この路線を更に追求していたのではないだろうか?

■ 第8位

cover

title STRAIGHT OUTTA COMPTON[ストレイト・アウタ・コンプトン]
(1st album)
artist N.W.A[エヌ・ダブリュ・エー]
released 1988年
origin Compton, California, U.S.
comment  N.W.Aを聴いた切っ掛けは、GUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]のAxl Rose[アクセル・ローズ]がN.W.Aのことを好きで愛聴しえいると言っていたからだ。
 筆者は、「ヒップ・ホップはニューヨークの音楽」という先入観があったので、ロサンゼルスにもヒップ・ホップがあるということが何とも以外だった。
 物凄い怒りに満ちたアルバムだが、米国の一部の心無い警察官による黒人への暴力のニュースを聴くと、筆者のように人種差別の殆ど無い国で育った人間でもN.W.Aの怒りが理解できるような気がする。
 ただし、筆者のような「ぬるま湯」に使って育ってきた人間に「理解できるような気がする」と言われても、N.W.Aは喜んでくれないような気がする。

■ 第7位

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title IT TAKES A NATION OF MILLIONS TO HOLD US BACK[パブリック・エナミー・II]
(2nd album)
artist PUBLIC ENEMYパブリック・エナミー
released 1988年
origin Long Island, New York, U.S.
comment PUBLIC ENEMYのことは、デビュー当時のMANIC STREET PREACHERSマニック・ストリート・プリーチャーズ]が「現存するミュージシャンで好きなのはGUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]とPUBLIC ENEMYだけ」と言っていたこともあり、ずっと気になっていたのだが、まともに聴き始めたのは90年代に入ってからだ。
 切っ掛けは、大好きなスラッシュ・メタル・バンドANTHRAXアンスラックス]と共演した91年のシングル"Bring the Noise"だった。
 筆者は英語が苦手なので、彼らの歌詞を直接理解することはできないのだが、名盤と誉れ高いこの2ndで鳴らされている緊張感のある音を聴いていると、米国政府に対する彼らの真剣な怒りを感じ取ることができるのである。

■ 第6位

cover

title RHYME PAYS[ライム・ペイズ]
(1st album)
artist Ice-T[アイス-T]
released 1987年
origin Newark, New Jersey, U.S.
comment  Ice-Tについては、ソロよりも先に、彼が率いるクロスオーヴァー・スラッシュ/ラップ・メタルのバンドBODY COUNT[ボディ・カウント]の方を先に聴いている。
 BODY COUNTは、かなり激しめの音だったので、それらしい音を期待して、このアルバムを買ったのだが、ロックっぽいテイストは皆無であり、あまりにも王道のヒップ・ホップだったので驚いた。
 ギャングの中のギャングという感じの音であり、西海岸のヒップ・ホップは、この人が発展させたと言われている。
 筆者は、ヒップ・ホップの「東っぽさ」や「西っぽさ」については殆ど分からないのだが、このアルバムはカヴァー以外、西っぽさはあまり無いように思える。

■ 第5位

cover

title AS NASTY AS THEY WANNA BE[アズ・ナスティ・アズ・ゼイ・ワナ・ビー]
(3rd album)
artist 2 LIVE CREW[ツー・ライヴ・クルー]
released 1989年
origin Miami, Florida, U.S.
comment  2 LIVE CREWは、とにかく「エロい」ということで話題になり、男子である筆者は「どんだけエロいんか聴いてみたろ」と思い、このアルバムの購入に至った。
 ところが、英語が不得手な筆者には、2 LIVE CREWのリリック(歌詞)が全く分らず、ポカァ~ン...という感じだったのである。
 自分が英語が不得手なことは冷静に考えれば分かるものだが、後先考えずにエロさに魅かれてしまった結果だ。
 ただ、このハチャメチャ感は、エロさなんてどうでもよくなるくらい、楽しくて仕方ないのだ。

■ 第4位

cover

title PAID IN FULL[ペイド・イン・フル]
(1st album)
artist Eric B. & Rakim[エリックB&ラキム]
released 1987年
origin Long Island, New York, U.S.
comment  このアルバムは、とにかく聴いていて気持ち良くなれるアルバムだ。
 2022年現在から遡ると、もう35年も前のアルバムなのに、全く色褪せることの無い輝きを今も放ち続けている。
 RUN-DMCBEASTIE BOYSからヒップ・ホップを聴き始めた筆者は、ラップとは攻撃的でガツンっとくるものだと思っていたのだが、このアルバムには、そんな固定概念を覆された。
Rakimのフロウは美しく、Eric B.のトラックはソウルフルだ。

■ 第3位

cover

title BIGGER AND DEFFER[ビガー&デファー]
(2nd album)
artist LL Cool J[エルエル・クール・ジェイ]
released 1987年
origin Bay Shore, New York, U.S.
comment  RUN-DMCBEASTIE BOYSの次に聴いたヒップ・ホップのアーティストは、たぶん、LL Cool Jだったと思う。
 このアルバムに収録されている"I Need Love"は、一説によるとヒップホップ初のバラード(ラップ・バラード)らしいのだが、筆者のような根がロック・リスナーの耳で聴くと、あまりバラードっぽく感じられない。
 でも、"I Need Love"が名曲であるということは筆者にも分かる。
 自ら「Ladies Love COOL James」と名乗ってしまう、この人のキャラも好きだったりする。

■ 第2位

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title LICENSED TO ILL[ライセンス・トゥ・イル]
(1st album)
artist BEASTIE BOYSビースティ・ボーイズ
released 1986年
origin New York City, U.S.
comment  初めて聴いたヒップ・ホップのアーティストはRUN-DMC、その次はこのBEASTIE BOYSだった。
ハードコア・パンクをやっていた彼らが、ヒップ・ホップにシフトして放ったこの1stは、全米1位の大ヒット・アルバムになった。
 ヒップ・ホップのアルバムでありながら、そのサウンドには70年代のハード・ロック的なテイストが多分に含まれており、当時のロック・リスナーが最も受け入れやすいヒップ・ホップのアルバムだったのではないだろうか?
 アルバムとしての完成度は、2nd「PAUL'S BOUTIQUE」や4th「ILL COMMUNICATION」の方が上だと思うのだが、筆者にとってのBEASTIE BOYSと言えば、このアルバムでの破天荒な暴れっぷりなのである。

■ 第1位

cover

title RAISING HELL[レイジング・ヘル]
(3rd album)
artist RUN-DMC[ラン・ディーエムシー]
released 1986年
origin Hollis, Queens, New York City, NY, U.S.
comment  初めて聴いたヒップ・ホップのアーティストはRUN-DMCだった。
 筆者に限らず、筆者と同世代(2022年現在で50代前半)の殆どのロック・リスナーは、RUN-DMCでヒップ・ホップに出会ったのではないだろうか?
AEROSMITHエアロスミス]のカヴァー"Walk This Way"を聴いたときの衝撃は凄まじく、矢も楯もたまらずこのアルバムを買いに行き、気が付けばこのアルバムから聴こえてくる重厚なビートの虜になっていた。
 その後、AEROSMITHの3rd「TOYS IN THE ATTIC」で"Walk This Way"のオリジナルを聴くことになるのだが、オリジナルもヴォーカルというよりは殆どラップであり、Steven Tylerスティーヴン・タイラー]というシンガーの歌の上手さやリズム感の良さに改めて気付かされたのである。

 

ロック・リスナーである筆者が人生で衝撃を受けたロック以外の音楽は、ジャズとヒップ・ホップとドラムン・ベースだ(ちなみに、ロックの範疇に限って言うなら、プログレッシヴ・ロックスラッシュ・メタルだ)。


筆者は1969年生れなので、ジャズの登場にはリアルタイムで接することができなかった。


しかし、80年代のヒップ・ホップ、90年代のドラムン・ベースの登場にはリアルタイムで接することができた。


今回は「好きなヒップ・ホップ(80年代)のアルバム10選」なので、ドラムン・ベースの衝撃は置いておくとして、ヒップ・ホップとの出会いは本当に衝撃的だった。


具体的には、RUN-DMCBEASTIE BOYSとの出会いに衝撃を受けたのだが、このときの筆者は、この2組の音楽が、何か新しい音楽であるということは感じ取っていたのだが、ヒップ・ホップ・ミュージックの制作手法については全くの無知であり、ヒップ・ホップがアフリカ系アメリカ人の文化から登場したということも知らなかった。


筆者は、ロックを聴くときは、ミュージシャンの演奏技術にけっこう拘るほうなのだが、ヒップ・ホップの場合、既に演奏済みの音源を使ってトラック制作を行うため、演奏技術という概念が無い。


ヒップ・ホップにおける、このようなトラック制作手法を知ったとき、筆者は度肝を抜かれたのである。


このようなトラック制作手法を良しとしないロック・リスナーにとっては、ヒップ・ホップは受け入れ難い音楽なのかもしれない。


しかし、筆者は、新しもの好きの尻軽リスナーだったので、「このやり方、凄い!」と感じてしまい、簡単にヒップ・ホップを受入てしまったのである。


筆者は、無節操に色んなジャンルの音楽を聴くが、基本的には(尻の軽い)ロック・リスナーなので、ヒップ・ホップの知識は殆ど無いに等しい。


そして、英語が苦手なので、ヒップ・ホップのリリックを楽しむということは殆ど無く、サウンドとして楽しんでいる。


実は、このような筆者のヒップ・ホップの聴き方は、ロックを聴くときも同じなのである。


筆者は、ロックを聴くときも、英語が苦手なので、よほど好きなアーティストでないかぎり、歌詞は意識していない。


やはり、サウンドとして楽しんでいるだけであり、ヴォーカルは、楽器の一種なのである。