Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0451) 個人的な5大グラム・ロック・アーティスト

Alice Cooper [アリス・クーパー]

[origin]
Phoenix, Arizona, U.S.

[live album]
The Alice Cooper Show


 released: 1977

[studio album (4th)]
Killer


 released: 1971

[comment]
グラム・ロック・ムーヴメントでスーパースターの座に登り詰め、その後、70年代の KISS、80年代の W.A.S.P. や Lizzy Borden、90年代の Marilyn Manson に多大なる影響を与えたショック・ロックの帝王。
Alice Cooper は全盛期のアルバムはもちろん、低迷期と言われる時期のアルバムすら好きなのだが、多くのアーティストにカヴァーされている名曲 "Under My Wheels" のオリジナルを初めて聴いたときのテンションの上がりっぷりは今でも鮮明に憶えている。

New York Dolls [ニューヨーク・ドールズ]

[origin]
 New York City, U.S.

[live album]
French Kiss '74


 released: 2013

[studio album (1st)]
New York Dolls


 released: 1973

[comment]
 今回取り上げた個人的なグラム・ロック Big 5 において、活動期間中に商業的成功を得ることのできなかったのは、この New York Dolls だけなのだが、Todd Rundgren がプロデュースした 1st は特に良くできており、売れる要素はあったと思う。
 同時代の Slade や Sweet くらい常に安定した演奏ができて、AerosmithSteven Tyler のような絶対的なリーダーがいて、"Dream On" のようなキャッチーな曲が1曲あれば歴史は変わっていたのかもしれない(そうなると Dolls ではないか?)。

Slade [スレイド]

[origin]
 Wolverhampton, England, U.K.

[live album]
Slade Alive, Vol. 2


 released: 1978

[studio album (3rd)]
Slayed?


 released: 1972

[comment]
グラム・ロックというキーワードに対し、筆者が無条件で連想するバンドは2つあるのだが、その1つが Slade であり、80年代になってグラム・メタル・バンド Quiet Riot にカヴァーされた "Cum on Feel the Noize" は70年代のグラム・ロック・ムーヴメントを代表する名曲だ。
 とにかく Slade の曲は一緒に歌いたくなるキャッチーで高揚感のあるメロディーが秀逸であり、KISS の Gene Simmons が Slade をお手本にしたというのは納得できる(KISS のライヴ・アルバム Alive!Slade Alive! へのオマージュか?)。

The Sweet [ザ・スウィート]

[origin]
 London, England, U.K.

[live album]
Live in Denmark 1976


 released: 1998

[studio album (3rd)]
Desolation Boulevard


 released: 1974

[comment]
グラム・ロックというキーワードに対し、筆者が無条件で連想するもう1つのバンドがこの The Sweet であり、Mike Chapman と Nicky Chinn から提供されたシングル曲を次々にUKチャートの上位に送り込んだグラム・ロック・ムーヴメントを代表するバンドだ。
 このバンドの凄いところは、後に "Fox on the Run" や "Action" というキャッチーな曲を自作できる力があるのに、拘りを捨てて外部ソングライターの曲を取り入れてバンドを成功させたところだ(ちなみに "Action" は Steve Stevens のカヴァーが秀逸である)。

T. Rex

[origin]
 London, England, U.K.

[live album]
T. Rex in Concert


 released: 1981

[studio album (7th)]
The Slider


 released: 1972

[comment]
 筆者にとってグラム・ロックを代表するバンドと言えば、既に述べたとおり Slade と Sweet なのだが、グラム・ロックのアイコン、或いは、グラム・ロックの帝王となると、それは T. Rex、即ち Marc Bolan をおいて他にいないと思っている。
 ソングライターとしての Marc Bolan の魅力は 6th Electric Warrior に詰っていると思うのだが、「グラム・ロックとは何だったのか?」を知りたいのであれば、ギラギラと輝く 7th The Slider を聴けばその答えが直ぐに分かるはずである。


総括

 古い記憶で定かではないのだが、グラム・ロックというジャンルを知った切っ掛けは、当時(80年代)購読していた「音楽専科」という雑誌の「グラム・ロックを振り返る」的な特集記事だったと思う。

 筆者がロックを聴き始めたのは、1982年頃なので、当時の筆者にとってのグラム・ロックとは、およそ10年くらい前に流行したロック・ムーヴメントだった。

 上述した「音楽専科」の特集記事では、当時のアーティストとアルバムが紹介されていて、筆者もその記事を参考にしてレコードを買っていたのだが、「グラム・ロックっぽい!」と思えるアーティストもいれば、「えっ、こういうのもグラム・ロックなん?」て思えるアーティストもいた。

グラム・ロックは見た目の共通点で括られたムーヴメントなので、音楽的に共通する特徴は無いと言われている。

 しかし、筆者はグラム・ロックよりも先に、その影響を受けたグラム・メタルを先に聴いていたので、グラム・メタルっぽさのあるものをグラム・ロックっぽいと感じる先入観があったのである。

 今回取り上げた5組のうち、Alice Cooper、Slade、Sweet は聴いた瞬間からグラム・ロックっぽいと思えたアーティストだった。

 New York Dollsグラム・ロックというよりもプリミティヴなロックン・ロールとしての魅力に惹き付けられ、T. Rex は Marc Bolan の紡ぎだす魔法のような不思議で独特な世界観に引き摺り込まれた。

 他にも、同じ特集記事では David BowieRoxy Music、Mott the Hoople、Silverhead も紹介されていた(Jobriath、Sha Na Na、Mud、Hello も紹介されていたような気もするが定かではない)。

 しかし、David BowieRoxy Music からはグラム・ロックっぽさを全く感じることができず、洗練された音楽性を持つアート・ロックのアーティストとして好きになってゆき、筆者の中ではグラム・ロックではなくプログレッシヴ・ロックに近い位置に存在するアーティストになった。

 Mott the Hoople と Silverhead はグラム・ロックっぽくしようとしているけども、聴けば聴くほど The Rolling Stones や Faces に通じるオーセンティックなロックとして好きになってゆき、グラム・ロックのイメージからは遠のいていった。

 結局、筆者にとってのグラム・ロックとは「プロト・グラム・メタル」であり、開き直ったような「馬鹿馬鹿しさ」、偽物のような「いかがわしさ」を持ちながらも、実は優れた作曲センスを持つ高性能なロックなのである。

#0450) 好きなパンク(80年代)のアルバム10選

【10位】The Record / Fear

[title]
The Record
 1st album
 released: 1982

[artist]
 Fear [フィアー]
 origin: Los Angeles, California, U.S.

[comment]
 筆者は Guns N' Roses がカヴァーした "I Don't Care About You" → Fear という流れで、このアルバムに辿り着いた。
 インテリっぽいバンドが多いニューヨーク・パンクに比べ、カリフォルニア・パンクには荒っぽいバンドが多いのだが、中でもこのバンドの放つ聴く者の耳を喰いちぎるようなエネルギーは凄まじい。


【9位】Damaged / Black Flag

[title]
Damaged
 1st album
 released: 1981

[artist]
Black Flag [ブラック・フラッグ]
 origin: Hermosa Beach, California, U.S.

[comment]
 筆者は Henry Rollins (vo) の Rollins Band → Black Flag という流れで、このアルバムに辿り着いた。
 Rollins Band で提示したハードコア・パンクヘヴィ・メタルの融合は既にこのアルバムで完成しており、よく言われているとおり、このアルバムには Black Sabbath 直系の重さがある。


【8位】Walk Among Us / Misfits

[title]
Walk Among Us
 1st album
 released: 1982

[artist]
 Misfits [ミスフィッツ]
 origin: /Lodi, New Jersey, U.S.

[comment]
 筆者は Glenn Danzig (vo) の Danzig → Misfits という流れで、このアルバムに辿り着いた。
Metallica や Guns N' Roses にカヴァーされたバンドだがメタルっぽさは無く、ロックン・ロールやロカビリー(サイコビリー?)っぽいホラー・パンクであり、後に Danzig で打ち出すダークなヘヴィ・メタルとは似ている部分が殆ど無い。


【7位】Dance with Me / T.S.O.L.

[title]
Dance with Me
 1st album
 released: 1981

[artist]
 T.S.O.L. [トゥルー・サウンズ・オブ・リバティ]
 origin: Long Beach, California, U.S.

[comment]
 5th Hit and Run の日本盤が発売されたときに、その 5th を買って気に入り、その後 2000年代になってから、この 1st を聴いた。
 5th 発売時には「米国盤 The Cult」のような紹介記事があったのだが、The Cult のような呪術っぽさは無く、この 1st はシンプルなホラー・パンク/ハードコア・サウンドを全面出ししつつ、メロディはけっこう捻りが効いている。


【6位】Mommy's Little Monster / Social Distortion

[title]
Mommy's Little Monster
 1st album
 released: 1983

[artist]
 Social Distortion [ソーシャル・ディストーション]
 origin: Fullerton, California, U.S.

[comment]
 4th Somewhere Between Heaven and Hell の日本盤が発売されたときに、かなり気に入って聴いていたのだが、いつの間にか忘れてしまい、2000年代になってから、この 1st を聴いた(T.S.O.L. と、このバンドはご無沙汰期間が長く、2000年代に入ってから、ふと思い出したように聴いた)。
 パンクは音楽的な深みを出すことが難しいジャンルだと思うのだが、このバンドにはルーツ・ミュージックに根差した深みがあり、それは既に、この 1st の時点で確認できる。


【5位】Songs of Praise / The Adicts

[title]
Songs of Praise
 1st album
 released: 1981

[artist]
 The Adicts [ジ・アディクツ]
 origin: Ipswich, Suffolk, England, U.K.

[comment]
 パンクには「怒っている」というステレオタイプなイメージがあると思うのだが、このバンドの音には「怒っている」というイメージが無く、Monkey (vo) のピエロのメイク(時計じかけのオレンジ?)も相まって悲喜劇のイメージがある。
 このジャンルを英国ではパンク・パテティック(Punk Pathetique)というらしいのだが、ハードコア・パンクとは一線を画す面白味がある。


【4位】Dig That Groove Baby / Toy Dolls

[title]
Dig That Groove Baby
 1st album
 released: 1983

[artist]
 Toy Dolls [トイ・ドールズ]
 origin: Sunderland, Tyne and Wear, England, U.K.

[comment]
 このバンドもパンクなのに「怒っている」というステレオタイプなイメージが無く、前出の The Adicts 同様、パンク・パテティック(Punk Pathetique)なのだが、本気なのか冗談なのかの境目が分からないバンドだ。
 "Nellie the Elephant" のミュージック・ヴィデオを初めて見たときは、底抜けのアホっぷりに引っくり返り、後ろ受け身を取ってしまった。


【3位】Let's Start a War / The Exploited

[title]
Let's Start a War
 1st album
 released: 1983

[artist]
 The Exploited [ジ・エクスプロイテッド]
 origin: Edinburgh, Scotland, U.K.

[comment]
 The Exploited と言えば、印象的なタイトルを持つ 1st Punks Not Dead が有名だが、ハードコア・パンクとしての The Exploited の神髄は、2nd Troops of Tomorrow か、この 3rdだ。
 タイトルの Let's Start a War とは、当時の英国の首相、Margaret Thatcher[マーガレット・サッチャー]がフォークランド紛争を始めたことへの言及なのだが、とにかくその怒りっぷりが凄まじく、これぞハードコア・パンクと呼べる名盤である。


【2位】Midnight Madness and Beyond / GBH

[title]
Midnight Madness and Beyond
 1st album
 released: 1986

[artist]
 GBH [ジー・ビー・エイチ]
 origin: Birmingham, England, U.K.

[comment]
 このアルバムがリリースされた86年のロック・シーンと言えば、パンクは既に勢いを失っていたのだが、筆者はこのアルバムをリアルタイムで聴いたときにパンクのカッコ良さを理解できたような気がした。
 1st City Baby Attacked by Rats、2nd City Babys Revenge も名盤なのだが、このアルバムが放つ金属の味がしそうなメタリックなサウンドとキャッチーなメロディーは、ハードコア・パンクの完成形である。


【1位】Hear Nothing See Nothing Say Nothing / Discharge

[title]
Hear Nothing See Nothing Say Nothing
 1st album
 released: 1982

[artist]
 Discharge [ディスチャージ]
 origin: Stoke-on-Trent, Staffordshire, England, U.K.

[comment]
 このアルバムを初めて聴いたときから、筆者にとっての No.1 パンク・バンドが Discharge であり、No.1 パンク・アルバムが Hear Nothing See Nothing Say Nothing であることは不動である。
 激しい高速2ビートに乗せて、このアルバムで Discharge が叫ぶのは、反戦反核、反権力だ。
 このアルバムがリリースされてから40年以上の時間が経過しているが、戦争と核兵器を無くす方法は見つからず、人は当時よりも更に権力に支配されており、今後もそれが変わることは無さそうだ。


総括

 筆者は無節操に色々な音楽を聴き、それぞれのジャンルを分かったような気になっているのだが、正直なところパンクだけは全く分かっていないと自信を持って言える。

 初めて聴いたパンクのレコードは、中1のとき(1982年)に同級生のH君が貸してくれた Sex Pistols のコンピレーション・アルバムだ。

 たぶん、Flogging a Dead Horse だと思うのだが、レコードからダビングされたカセットテープだったので正確には分からない。

 とにかく、そのカセットテープを聴いて、「こういう激しいロックがパンクなんやぁ~」という先入観が筆者の中に植え付けられた(ただし、曲はロックン・ロールっぽいのに、シャウトしない Johnny Rotten のヴォーカルには違和感と一抹の不安を感じた)。

 それから、5年くらい経過して、「ちょっとパンクのこと勉強してみたろ~」と思い立って聴いたのが、

 だったのだが、あまりにも Sex Pistols と違っていて、激しくも無く、やたらと完成度の高いロックだったので、「パンクってなんなん?」となってしまったのである。

 そして、これらのアルバムは、筆者に植え付けられていたパンクのイメージとはかけ離れていたのだが、いずれのアルバムも完成度が高いので作品としては好きになってしまい、なんともややこしい心理状態に陥ってしまったのである。

 「パンクって、そういうもんなんや」って思えたのは、Joe Strummer の Punk is attitude. Not style. という名言を知ったときだ。

 とは言うものの、筆者は音楽は音楽としてしか捉えることのできない人間であり、音楽に音楽以外のもを基本的に求めないタイプのロック・リスナーである。

 そんな筆者にとって、やはり、パンクは音楽的にパンクらしい方が好ましいのである。

 今回取り上げた10枚は、1~5位がリアルタイムで聴いたアルバム、6~10位が90年代以降に後追いで聴いたアルバムという具合に、はっきりと別れた。

 そして、1~5位が英国のバンド、6~10位が米国のバンドという具合に、はっきりと別れた。

 筆者はニューヨーク・パンクが苦手だった。

Ramones、The Dictators、Dead Boys は好きだったのだが(Dead Boysはニューヨークではなくクリーブランド?)、Television、Richard Hell & the Voidoids、Patti Smith、Suicide、Talking Heads等は、どう聴いてもパンクに聴こえなくて、頭の中が?だらけになったのである。

 そんな東のニューヨークに対し、西のカルフォルニアには、分かり易いパンク・バンドが多いような気がする。

 筆者の中では、ニューヨーク・パンクは偏差値高めで取っ付きにくいというイメージが出来上がってしまい、今回取り上げた米国のバンドにもニューヨークのバンドは入っていない。

ニュージャージーのMisfits 意外は、全てカルフォルニア・パンクだ。

 正直なところ、最近、筆者が聴くロックは、ロックン・ロール、ブルース・ロック、ハード・ロック、サザン・ロック、プログレッシヴ・ロックハートランド・ロック等、コンサヴァティブなものが多いので、パンクのレコードを聴くのがけっこう辛かった。

 ロックとは、そもそも若者の音楽だと思うのだが、その中でもパンクは特に若者の音楽だと思う。

 この先の人生では、もうパンクを聴くことはないかもしれないと思っていたのだが、Discharge、GBH、The Exploited については、パンクが分からなくなていた筆者に「これがパンクだ!」と分からせてくれた大切なバンドなので、ここ数日、ヘヴィ・ローテーションになっている。

#0449) 好きなルーツ・ロック/ハートランド・ロックのアルバム10選

【10位】Slow Turning / John Hiatt

[title]
Slow Turning
 9th album
 released: 1988

[artist]
John Hiatt [ジョン・ハイアット]
 origin: Indianapolis, Indiana, U.S.

[comment]
John Hiatt を知ったのは、大好きな The Jeff Healey Band の "Angel Eyes" が 彼の書いた曲だったからだ(John Hiatt と Fred Koller の共作)。
 全体的に大地の温かさを感じさせるルーツ・ロックなのだが、特に最終曲のバラード "Feels Like Rain" が絶品である。


【9位】Men Without Women / Little Steven & the Disciples of Soul

[title]
Men Without Women
 1st album
 released: 1982

[artist]
 Little Steven & the Disciples of Soul [リトル・スティーヴン&ザ・ディサイプルズ・オブ・ソウル]
 origin: Winthrop, Massachusetts, U.S.

[comment]
 言わずと知れた The E Street Band のギタリスト、Little Steven が82年にが放った、けっこう遅咲きのデビュー・ソロ・アルバム(Bruce Springsteen や Southside Johnny との活動が忙し過ぎたのか?)。
 ギタリストのソロ・アルバムなのだが、ギターよりも歌に重きを置いたソフルフルな名盤だ。


【8位】Hearts of Stone / Southside Johnny & the Asbury Jukes

[title]
Hearts of Stone
 3rd album
 released: 1978

[artist]
 Southside Johnny & the Asbury Jukes [サウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークス]
 origin: New Jersey, U.S.

[comment]
 収録曲の多くを Little Steven が書き、Bruce Springsteen も単独で2曲、共作で1曲書いている。
 Southside Johnny 本人は、上述の2人と1曲だけ共作しているのだが、この人はミュージシャンというよりは歌手であり、Little Steven の曲を最も輝かせることのできるヴォーカリストなのである。


【7位】Rumble / Tommy Conwell & the Young Rumblers

[title]
Rumble
 2nd album
 released: 1988

[artist]
 Tommy Conwell & the Young Rumblers [トミー・コンウェル&ザ・ヤング・ランブラーズ]
 origin: Philadelphia, Pennsylvania, U.S.

[comment]
 このアルバムを聴いたとき、「将来、この人は Bruce SpringsteenTom Petty 級の大物なる」と確信したのだが、残念ながら早々に失速してしまった。
 パンクを通過した感触を放つルーツ・ロックは、今聴いても名盤だと思うのだが、メタル・バブルだった当時の米国のニーズには合わなかったのだろうか?


【6位】Scarecrowr / John Cougar Mellencamp

[title]
Scarecrowr
 8th album
 released: 1985

[artist]
John Cougar Mellencamp [ジョン・クーガー・メレンキャンプ]
 origin: Seymour, Indiana, U.S.

[comment]
 このアルバムは物凄く売れたアルバムであり、主に英国のロック聴いていた筆者の興味が米国に向き始めた頃に聴きまくったアルバムだ。
 米国ルーツ・ロックの奥深さが詰った名盤なのだが、特に、2曲目 "Grandma's Theme" から 3曲目 "Small Town" への流れが絶品なのである。


【5位】Sports / Huey Lewis & the News

[title]
Sports
 3rd album
 released: 1983

[artist]
 Huey Lewis & the News [ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース]
 origin: San Francisco, California, U.S.

[comment]
 筆者が洋楽を聴き始めた頃に売れまくっていたアルバムであり、初めて聴いたときは1曲目 "The Heart of Rock & Roll" のカッコ良さにブッ飛ばされた。
 80年代を強烈に感じさせる古臭さはあるのだが、そんなことは大したことではなく、Thin Lizzy の Phil Lynott も認めた骨太のロックン・ロールは最高にカッコ良い。


【4位】John Fogerty / John Fogerty

[title]
John Fogerty
 2nd album
 released: 1975

[artist]
 John Fogerty [ジョン・フォガティ]
 origin: Berkeley, California, U.S.

[comment]
Hanoi Rocks がカヴァーした "Up Around the Bend" で CCR を知り、CCRCosmo's Factory で原曲を聴き、その後、この John Fogerty のソロ・アルバムに辿り着く、というのが筆者世代で彼を好きな人のストーリーだと思う(筆者は2023年現在で50代半ば)。
 天才という言葉を簡単に使うのは嫌なのだが、この豊潤なルーツ・ロックを聴いていると、この人は本当に作曲の天才だとしか言いようがない。


【3位】Southern Accents / Tom Petty & the Heartbreakers

[title]
Southern Accents
 6th album
 released: 1985

[artist]
Tom Petty & the Heartbreakers [トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ]
 origin: Gainesville, Florida, U.S.

[comment]
 このアルバムをターンテーブルに乗せて、針を落とし、1曲目の "Rebels" が始まった瞬間、「ロックやなぁ~」と感じた(タイトルの "Rebels"、邦題は "反逆者" というのが如何にもロックらしい)。
 物凄く癖の強い声(濁声?)なので、けして聴き易くはないのだが、でもやはり、この声でなければ Tom Petty & the Heartbreakers は成立しない。
 当時、ロック初心者だった筆者が、「この The Heartbreakers が Johnny Thunders のバックもやっている」と本気で思っていたのは、今となっては恥ずかしい思い出だ。


【2位】Live 1975–85 / Bruce Springsteen & the E Street Band

[title]
Live 1975–85
 live album
 released: 1986

[artist]
Bruce Springsteen & the E Street Band [ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド]
 origin: Long Branch, New Jersey, U.S.

[comment]
 全40曲収録で約3時間半にもおよぶこのライヴ・アルバムを、このようなリストに選ぶのは反則なのかもしれないが、Born in the U.S.A. までの Bruce Springsteen なら、先ずはこれを聴いてみて、気に入った曲が入っているアルバムを聴くのが良いと思う。
 筆者は "Hungry Heart" がお気に入りで、The River を聴いた。
Ramones の Joey Ramone から頼まれて書いた "Hungry Heart" を、マネージャーから説得されて Ramones に渡さなかったというエピソードは有名だが、この曲、そもそも Ramones には合わないのでは...


【1位】Like a Rock / Bob Seger & the Silver Bullet Band

[title]
Like a Rock
 13th album
 released: 1986

[artist]
 Bob Seger & the Silver Bullet Band [ボブ・シーガー&ザ・シルヴァー・ブレット・バンド]
 origin: Detroit, Michigan, U.S.

[comment]
 Bob Seger は、筆者の中で、常に好きなロック・シンガーの上位にいる人であり、初めて聴いた彼のアルバムがこの Like a Rock だった。
 ロックらしいロックというのは色々あると思うのだが、この人ほどロックらしいロックをやっている人は、実際にはそれほど多くはいないのではないだろうか。
 そして、あまり言われないようだが、この人はメロディー作りのセンスも優れている。
 全てのアルバムを聴いてみて、一番好きになったのは Beautiful Loser(邦題:美しき旅立ち)なのだが、初めて聴いたせいなのか、思い入れが強いのはこのアルバムなのである。


総括

 ルーツ・ロック/ハートランド・ロックは、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル、サザン・ロック、ロックン・ロールと共に、筆者が最も好きなジャンルのロックである。

 これらのロックが好きな理由、それは、ロックらしいロックだからだ。

 とにかく、分かり易いのである。

ハートランド・ロックには、タフな男のイメージがあるが、実際には男の弱さや脆さが滲み出ている曲が多い。

 本当は弱いし脆いんだけど、表向きはタフに振舞わなければならない、しかし、それはかなり辛い。

 大抵の男なら、そんな思いをしたことがあるのではないだろうか?

#0448) 好きなロックン・ロール(2000年代)のアルバム10選

【12位】Blood, Sweat and Towers / Towers of London

[title]
Blood, Sweat and Towers
 1st album
 released: 2006

[artist]
 Towers of London [タワーズ・オブ・ロンドン]
 origin: Buckinghamshire, England, UK

[comment]
 知性の無い Manic Street Preachers と言うと貶しているように思われるが、そんなつもりは全くない(Manics も初期の頃は Richey Edwards が剃刀で自分の腕を斬ったりして、けっこうアホっぽいところがあった)。
Blood, Sweat and Towers というアルバム・タイトルは、たぶんブラス・ロック・バンド Blood, Sweat & Tears のもじりだと思うのだが、ロックン・ロールには、こういう意味不明な遊び心が大切だと思う。


【11位】Bazooka!!! / The Star Spangles

[title]
Bazooka!!!
 1st album
 released: 2003

[artist]
 The Star Spangles [ザ・スター・スパングルス]
 origin: New York City, US

[comment]
 このニューヨーク出身のバンドは、間違いなく、New York Dolls、The Heartbreakers、Ramones あたりのニューヨーク・パンクが好きで集まった連中が始めたバンドだと思う(だって、メンバーのルックス見たら、そんなん丸わかりやん)。
 しかし、曲に関しては、上に書いた、どのバンドよりも、ニューヨークから遠く離れた英国・マンチェスターBuzzcocks っぽいと感じるのは筆者だけだろうか?


【10位】Le Red Soul Comunnitte / Tokyo Sex Destruction

[title]
Le Red Soul Comunnitte
 1st album
 released: 2002

[artist]
 Tokyo Sex Destruction [トーキョー・セックス・ディストラクション]
 origin: Barcelona, Spain

[comment]
 スペインと言われて、筆者思い起こせるものは闘牛くらいなのだが、こんなカッコ良いロックン・ロール・バンドがいるなんて新鮮な驚きである(まぁ、日本のような極東にもロック・バンドがいるくらいだから、スペインにロック・バンドいるのは当たり前なのだが)。
 メンバー全員が MC5 のマネージャーだった John Sinclair (ジョン・シンクレア) にちなんで Sinclair 姓を名乗っているとおり、MC5 直系のヘヴィなロックン・ロール・バンドである。


【9位】Le Bring 'Em In / Mando Diao

[title]
Le Bring 'Em In
 1st album
 released: 2002

[artist]
Mando Diao [マンドゥ・ディアオ]
 origin: Borlänge, Dalarna County, Sweden

[comment]
 ロックン・ロールの名盤には、インパクトの強いオープニング曲が必要であり、それもイントロのギターの音一発で決まったりする(例えば、Alice Cooper の "School's Out" とか、New York Dolls の "Personality Crisis" とか)。
 そういう意味において、このアルバムのオープニング曲 "Sheepdog" は 100 点であり、メンバーの無邪気なまでの The Beatles への憧憬が微笑ましい。


【8位】Favourite Enemy / Trashmonkeys

[title]
Favourite Enemy
 4th album
 released: 2006

[artist]
 Trashmonkeys [トラッシュモンキーズ]
 origin: Germany

[comment]
 ドイツと言えば、Scorpions、Accept、Helloween 等、良質なヘヴィ・メタル・バンドを輩出する国のイメージがあるのだが、このバンドはストレートなロックン・ロール・バンドだ(そう言えば、ドイツにはメタルだけでなく、良質なプログレ・バンドも多い)。
 このバンドのバックグラウンドは殆ど知らないのだが、もの凄く曲作りが上手く、キーボードの使い方に只者ではないセンスを感じる。


【7位】Your New Favourite Band / The Hives

[title]
Your New Favourite Band
 compilation album
 released: 2001

[artist]
The Hives [ザ・ハイヴス]
 origin: Fagersta, Sweden

[comment]
 こういうリストにコンピレーション・アルバムを入れるのは邪道だと思うのだが、The Hives に関しては、このアルバムを選ばざるを得ない(オリジナル・アルバムも良いのだが、このアルバムには The Hives の最もプリミティヴなロックン・ロールがギッシリと詰っている)。
スウェーデンのバンドだが、The Hives に関しては、オリジナル・アルバムよりも、先ずはこの英国のポップトーンズ・レーベルからリリースされたコンピレーション・アルバムを聴くべきなのである。


【6位】We Sweat Blood / Danko Jones

[title]
We Sweat Blood
 2nd album
 released: 2003

[artist]
 Danko Jones [ダンコ・ジョーンズ]
 origin: Toronto, Ontario, Canada

[comment]
 「断固ダンコ主義!」というカッコ良い邦題にレコード会社のセンスの良さを感じる(かつての洋楽には、おおおっっっ!!!と唸るような邦題が付けられていたのだが、昨今では邦題が付くことが稀であり、少々寂しい)。
AC/DCThin Lizzy あたりのクラシック・ハード・ロックにパンクの風味を加えたサウンドは、直球一本勝負のロックン・ロールであり、スリーピース・バンドの理想形である。


【5位】The Datsuns / The Datsuns

[title]
The Datsuns
 1st album
 released: 2002

[artist]
The Datsuns [ザ・ダットサンズ]
 origin: Cambridge, New Zealand

[comment]
 とにかく、このバンドは登場した瞬間から、メチャメチャに好感の持てるバンドだった(かつて、ブルーバード等の名車を世に送り出した日産自動車のブランド名を思い起こさせるバンド名も好感が持てる!)。
Led ZeppelinDeep PurpleAC/DC 等の模倣だという批判は全く聞き入れる必要はなく、ロックとは、カッコ良い曲が書ければ、それが正義なのである。


【4位】As Your Greens Turn Brown / Diamond Dogs

[title]
As Your Greens Turn Brown
 1st album
 released: 2001

[artist]
 Diamond Dogs [ダイアモンド・ドッグス]
 origin: Sweden

[comment]
David Bowie のアルバムと同じバンド名を持つバンドなのだが、そのアルバムはもとより Bowie っぽさは微塵も無いバンドであり、むしろ Faces 直系のバンドだ(というよりも The Quireboys に近いと言った方が分かり易いかもしれない)。
 2000 年代以降の The Black Crowes に対し、「悪くはないけど、求めているものとは違う」と感じていた筆者のような人にドンピシャで嵌るバンドである。


【3位】Leave Them All Behind / Puffball

[title]
Leave Them All Behind
 5th album
 released: 2003

[artist]
 Puffball [パフボール]
 origin: Västerås, Sweden

[comment]
Motörhead 直系と言われるバンドは数多存在するが、90年代後半から2000年代前半においては、このバンドが本命中の本命だろう(本家の1.25倍くらいのスピードで爆走する曲もあり、スピードに関しては本家を凌駕している)。
 アルバム・タイトルの Leave Them All Behind とは、そのスピードで「聴く者を全てを置き去りにしていく」という意味なのだろうか?


【2位】Refuge for Degenerates / The Peepshows

[title]
Refuge for Degenerates
 4th album
 released: 2003

[artist]
 The Peepshows [ザ・ピープショウズ]
 origin: Örebro, Sweden

[comment]
 北欧には、憂いを帯びた悩まし気なメロディを書くロックン・ロール・バンドが多いのだが、この The Peepshows も、まさにその通りのバンドだ(ちなみに、その手のメロディを書く天才が Hanoi Rocks の Andy McCoy だ)。
 こういうメロディは米国のバンドからはまず出てこないし、同じ「憂い」でも英国のバンドだとまた違う表現になり、北欧独特なのである。


【1位】Ahead of the Lions / Living Things

[title]
Ahead of the Lions
 2nd album
 released: 2005

[artist]
 Living Things [リヴィング・シングス]
 origin: St. Louis, Missouri, USA

[comment]
 「もう米国からは好きになれるロックン・ロール・バンドは出てこないのかなぁ~」と思っていたときに、突然出会ったのがこのバンドだった(筆者にとっては、まさに驚天動地の出会いだったのである)。
 このアルバムと多くの曲が被っている Black Skies in Broad Daylight というアルバムもあり、これら二枚の関係がよく分からないのだが、張り詰めた緊張感が心地良い "Bombs Below" で始まり、奈落の底に落ちていくような "I Wish the Best for You" で終わる構成が良いので、最近はこちらを聴くことが多い。


総括

 2000年代初頭、ロックン・ロール・リバイバル、或いは、ガレージ・ロックリバイバルというムーヴメントがあった。

 そのムーヴメントの中心にいたのが米国の The StrokesThe White Stripes、英国の The Libertines だった。

 当時、筆者も The StrokesThe Libertines はデビュー・アルバムを買って聴いており、いずれのアルバムも良い曲が多いとは思ったのだが、嵌ったりするまでには至らなかった。

 嵌れなかった理由は、良い曲だなとは思うものの、カッコ良い曲だなとは感じなかったからだ。

 そして、あまりにも上手にロックン・ロール・リバイバルガレージ・ロックリバイバルをやっていて、何となく、いけ好かないと感じたのも嵌れなかった理由だ。

The White Stripes に関しては、ミュージック・ビデオを見て「うぅ~ん、いけ好かない」と感じてしまい、アルバムを買ったことがなく、未だにまともに聴いたことがない。

 これらのバンドを聴かなかった理由、或いは、聴いても嵌れなかった理由は、とにかく「いけ好かない」という、筆者の一方的で理不尽な理由なのである。

 この感じは、かつて、Sonic Youth、Television、The Velvet Underground 等を聴いたときと同じだ。

 良い曲だなとは思うものの、カッコ良い曲だなとは感じないのだ(でも、曲が良いので実は聴いた回数は多い)。

 筆者は、ロックン・ロールへの憧憬がアホほど溢れ出している曲や、「どやっ!カッコええやろ!」と言って無邪気にかっこつけているバンドが好きなのである。

 今回取り上げた12枚は、まさにそのタイプのバンドが2000年代にリリースしたアルバムだ。

 Towers of London は英国出身、The Star Spangles、Living Things は米国出身、Danko Jones はカナダ出身、The Datsunsニュージーランド出身、Trashmonkeys はドイツ出身、Tokyo Sex Destruction はスペイン出身、そして、The Peepshows、Puffball、Diamond Dogs、The HivesMando Diaoスウェーデン出身という具合に、スウェーデン出身のバンドが圧倒的に多く、英米以外を出身とするバンドも多い。

 90年代以降、ロックン・ロールの本場は英米ではなくなっており、むしろ、スウェーデンを含めた北欧がロックン・ロールの本場のようである。

 他にも取り上げたいアルバムがあるのだが、今回はメタルっぽいものは避けた(メタルを聴かない人には十分メタルっぽいものがあるかもしれない)。

 そして、The Dirtbombs、Demolition Doll Rods、The Detroit Cobras あたりも入れたかったのだが、あまりにもベテランっぽさが強すぎてフレッシュさがなくなるので外すことにした。

 と、書きつつも、今回取り上げた Diamond Dogs、The Peepshows、Puffball は、当時でもけっこうなベテランなのだが。

#0447) 好きな Jeff Beck[ジェフ・ベック]のアルバム5選

第1位

Blow by Blow [ギター殺人者の凱旋] / Jeff Beck
 2nd album
 released: 1975

[comment]
 ジャズ・ロック、フュージョンの名盤であることはもとより、インストゥルメンタル・ロックの名盤として、このアルバムが後世に遺した影響は計り知れない。
 80年代には Joe SatrianiSteve Vai 等、多くのテクニカルなギタリストによるインストゥルメンタル・ロックが人気を博すことになるが、そこへ至る道を切り開いたのがこのアルバムなのである。


第2位

Wired [ワイアード] / Jeff Beck
 3rd album
 released: 1976

[comment]
 このアルバムは Blow by Blow の次作であり、その Blow by Blow と双璧を成すインストゥルメンタル・ロックの大名盤。
 どちらか一枚を選ぶのは非常に難しく、二枚ともジャズ・ロック、フュージョンの名盤なのだが、このアルバムの方がロック的な要素が多く含まれており、よりハードなサウンドを聴きたいのであればこのアルバムだ。


第3位

Truth [トゥルース] / Jeff Beck
 1st album
 released: 1968

[comment]
Jeff Beck は、このアルバムで Rod Stewart という英国におけるトップ・シンガーと組んでしまったため、その後は彼以上のシンガーには出会いないと悟ったが故に、自分のバンドにパーマネントなシンガーを置かなくなったと言われている。
 70年代に隆盛を極めるハード・ロックのプロトタイプとも呼べる音楽性を持つこのアルバムは、ロックの歴史における最重要アルバムである。


第4位

There & Back [ゼア・アンド・バック] / Jeff Beck
 4th album
 released: 1980

[comment]
 このアルバムは、Blow by BlowWired と並び、Jeff Beckフュージョン期ににおける、インストゥルメンタル・アルバム三部作と言われているとか、いないとか。
 1曲目、"Star Cycle" における Jan Hammer のキーボードと Jeff Beck のギターによる壮絶なバトルや、リズム隊の秀逸さも素晴らしいのだが、聴きどころは 6曲目、"The Golden Road" の美しさであり、続く "Space Boogie" から 最終曲 "The Final Peace" にかけて聴ける Beck のギターの美しさなのである。


第5位

Beck, Bogert & Appice [ベック・ボガート&アピス] / Beck, Bogert & Appice
 1st album
 released: 1973

[comment]
 元 Vanilla Fudge のリズム隊、Tim Bogert (bass) と Carmine Appice (drums) が Jeff Beck と組んだスーパー・グループの最初で最後のスタジオ・アルバム。
 当初の予定では Rod Stewart がシンガーとして参加する予定だったのだが、Rod は Faces に参加してしまったので、ヴォーカルに重きを置かず、三人のテクニカルな演奏を聴かせることに徹していることが、このアルバムを名盤にしたと言ってもいい(三人が曲毎に担当している歌も、けして悪くはない)。

~ 総括 ~

 筆者世代(2023年現在で50第前半)のロック・リスナーには、ギタリストの暗黙的な格付けが存在する。

 頂点が Jimi Hendrix、そして、そのすぐ下に Eric ClaptonJimmy PageJeff Beck という The Yardbirds に在籍経験のある、所謂(いわゆる)世界三大ギタリストがいる(Ritchie Blackmore は世界三大ギタリストに限りなく近い存在だ)。

Jimi Hendrix が頂点にいるのは仕方がない。

 なにしろ、誰も手が付けられない絶頂期に若くして他界してしまっており、神格化されているのだから。

 しかし、Jimi Hendrix はドラッグが原因で逝ってしまうという、しょーもない死に方をしているというのもまた事実だ。

 筆者のなかでは、Jeff Beck がギタリストの頂点にいる。

 Clapton も Page も Beck も Jimi から多大な影響を受けており、Jimi 無くしては、70年代以降の世界三大ギタリストはありえないのだが、これらのギタリストの中で最も現役感のあるギタリストが Beck であるということに異論を唱えるロック・ファンは、あまり多くないのではないだろうか?

Beck はドラッグというロック界の悪癖とは無縁でり、むしろドラッグを毛嫌いしていたというところも、筆者が Beck を好きな理由だ。

Beck の演奏やアルバムを聴いていると、ドラッグみたいなクダラナイ物を使わない方がロックはカッコ良くなると、心底思えて仕方がないのである。