筆者はカッコ良いメタルが聴きたくなった時にこのアルバムを聴く。
ANTHRAX〔アンスラックス〕の3rdアルバム「AMONG THE LIVING」だ。
人によって、メタルという言葉で連想するのはBLACK SABBATH〔ブラック・サバス〕やJUDAS PRIEST〔ジューダス・プリースト〕のような元祖ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルだったり、IRON MAIDEN〔アイアン・メイデン〕のようなNWOBHMから現れた(当時の)新世代のブリティッシュ・ヘヴィ・メタルだったり、HELLOWEEN〔ハロウィン〕のようなジャーマン・メタルだったりと、千差万別だろう。
筆者にとってメタルと聴いて直ぐに連想するのはスラッシュ・メタルなのである。
スラッシュ・メタルと言えば、今回取り上げたANTHRAXと、METALLICA〔メタリカ〕、MEGADETH〔メガデス〕、SLAYER〔スレイヤー〕の4バンドがThe Big 4(スラッシュ・メタル四天王)と呼ばれているのは有名な話だ。
好きな順番はそれこそ人それぞれだが、筆者の中の序列としては、
ANTHRAX = SLAYER = MEGADETH > METALLICA
である。
METALLICAは果敢にシーンに挑戦していったバンドであり、勇気のあるバンドだと思うのだが、何となく「キッズを裏切ったバンド」という印象もある(METALLICAのファンの方、ごめんなさい)。
筆者が今でも聴いてるMETALLICAのアルバムは3rd「MASTER OF PUPPETS」迄であり、極めて保守的なMETALLICAのリスナーであると言えるだろう。
ANTHRAX、SLAYER、MEGADETHの3バンドについては、思い入れが強すぎて序列が付けられない。
SLAYERとMEGADETHについてはそれぞれのバンドを取り上げる時に書くとして、とにかく今日はANTHRAXだ。
ANTHRAXの「AMONG THE LIVING」は、METALLICAの「MASTER OF PUPPETS」とSLAYERの「REIGN IN BLOOD」より後に聴いたのだが、METALLICAやSLAYERと比較して強烈に印象深かったのはシンガーであるJoey Belladonna〔ジョーイ・ベラドナ〕の歌の上手さだ。
Joey Belladonnaはスラッシュ・メタルには不必要なほど、上手すぎるシンガーなのである。
某有名動画サイトでJOURNEY〔ジャーニー〕の"Don't Stop Believin'"を歌うJoey Belladonnaの動画を見たことがあるのだが、これがメチャメチャ上手い。
この人はスラッシュ・メタル・バンドではなく、ポップ・メタル・バンド、或いは、もっとオーセンティックなロック・バンドのシンガーになっていたとしても成功していたような気がする。
ある意味、Joey Belladonnaの歌の上手さのせいでANTHRAXの曲はスラッシュ・メタルっぽく聴こえないときがある。
たぶん、四天王の中ではANTHRAXの人気が一番低いような気がするのだが、Joey Belladonnaの歌がスラッシュ・メタル原理主義者を遠ざけているのかもしれない。
更にこのバンドはヒップ・ホップ・グループのPUBLIC ENEMYと共演したりするので、それもまたスラッシュ・メタル原理主義者を遠ざけているのかもしれない。
筆者のような雑食系ロック・リスナーからすると、そこがANTHRAXの魅力なのだが。
「AMONG THE LIVING」というアルバムは、そんな雑食系としてのANTHRAXの魅力が最も色濃く出たアルバムだ。
ネイティヴ・アメリカンの血を引くJoey Belladonnaの社会性を強く打ち出しながらも、シリアスになり過ぎず、どこかファニーな印象を与えるのはこのバンド独特の個性だろう。
聴けばモッシュせずにはいられない強烈なグルーヴにJoey Belladonnaの上手すぎるヴォーカルが乗る。
冒頭に書いた通り、筆者はカッコ良いメタルが聴きたくなった時にこのアルバムを聴く。
Joey Belladonnaのことばかり書いてしまったが、このバンド、ギターもベースもドラムも全員が上手い名手揃いである。