バンド名がTHE MARSHALL TUCKER BAND〔ザ・マーシャル・タッカー・バンド〕だと、何となくメンバーにMarshall Tucker〔マーシャル・タッカー〕という人が居るような気がしてしまうが、このバンドにはその名を持つ人は居ない。
Marshall Tuckerとは、このバンドが練習のために使っていた部屋の家主だそうだ。
こういうバンド名の付け方は、「曲と演奏が良ければバンド名なんて何でもいい」という感じがして、筆者としてはけっこう好きなバンド名の付け方である。
THE MARSHALL TUCKER BANDはカプリコーン・レコードがTHE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド〕に続き送り出した第2弾となるサザン・ロック・バンドであり、今回はそんな彼らの1stアルバム「THE MARSHALL TUCKER BAND」を取り上げてみる。
一口にサザン・ロックと言っても色々なバンドがあるわけだが、このバンドはサザン・ロックと言うよりは、カントリー・ロックと言った方がしっくりくるのではないだろうか?
所謂サザン・ロックと聞いて連想させられる豪快で荒くれた印象はなく、アルバムの始まりから終わりまで牧歌的で穏やかな印象の曲で統一されている。
聴く者に牧歌的な印象を与える要因はシンガーのDoug Gray〔ダグ・グレー〕の声質によるところもあると思うのだが、最も大きな要因はJerry Eubanks〔ジェリー・ユーバンクス〕が奏でるフルートによるものだろう。
同じ木管楽器でもサクソフォーンはロック・バンドでもよく使われるが、フルートがロック・バンドで使われることは少ない。
ロック・バンドのフルート奏者として、Jerry Eubanks以外で直ぐに思い浮かぶのはJETHRO TULL〔ジェスロ・タル〕のIan Anderson〔イアン・アンダーソン〕が居るが、Ian Andersonはフルートも演奏するシンガーだが、Jerry Eubanksはメインの担当楽器がフルートであり(ただし、サクソフォーンも演奏する)、これはけっこう珍しいのではないだろうか?
筆者は、このアルバムを休日の朝に聴くことが多い。
牧歌的でカントリー・テイスト溢れる曲調、そして、小鳥のさえずりの様なフルートの音がけだるい休日の朝にぴたりとマッチする。
そして、このアルバムを聴きながら、しばし、ウィークデイの少し厳しい現実から逃避するのである。