BUSHというバンドは1994年に1stアルバムの「SIXTEEN STONE」をリリースしているので、グランジ/オルタナティヴのムーヴメントが沈静化した頃のデビューと言って差し支えないだろう。
「SIXTEEN STONE」はマルチプラチナに認定されたアルバムなので、BUSHはかなり大きな成功を収めたバンドなのだが、彼らのデビュー当時、ここ日本では洋楽雑誌で殆ど取り上げられていなかったように記憶している。
筆者は毎月、洋楽雑誌を買って、かなり細かくチェックするロック・リスナーだったのだが、彼らがデビューした1990年代中期と言えば筆者が徐々にロックへの興味を失いつつあった時期と重なっている。
故に、BUSHというバンドのことを知ってはいたのだが音源をチェックするまでには至らなかったのだろう。
筆者がBUSHを聴くようになったのは、この一年くらいのことである。
切っ掛けは、愛読しているブログ「SMELLS LIKE PUNK SPIRIT」で彼らの音源を聴いたからである。
「カッコ良いバンドを見逃していたな」という痛恨の思いだった。
BUSHのことを知りたいのであれば、筆者のブログを読むよりも「SMELLS LIKE PUNK SPIRIT」にBUSHの1stから4thまでのアルバムに関する記事があるのでそちらを読んで頂いた方が良い。
1stアルバム「SIXTEEN STONE」
2ndアルバム「RAZORBLADE SUITCASE」
3rdアルバム「THE SCIENCE OF THINGS」
4thアルバム「GOLDEN STATE」
まぁ、それでは味も素っ気もないので自分なりの文章を書くことにする。
このバンドはデビュー当時にNIRVANA〔ニルヴァーナ〕フォロワーという扱われ方をされて、けっこう音楽評論家から叩かれたらしい。
Googleで検索すると、けっこう辛辣なことを書いてあるサイトもあった。
Amazonで1stアルバムの「SIXTEEN STONE」をさほど高くない価格で購入出来たので聴いてみたのだが、筆者の感想としては、「NIRVANAからの影響はありそやけど、そこまで似てへんやないか」である。
ロック・バンドを始めると、先人からの影響を受けるのはもちろんだが、同時代の優れたバンドからの影響も受けるものである。
デビュー当時のTHE CHARLATANS〔ザ・シャーラタンズ〕はどう聴いてもTHE STONE ROSES〔ザ・ストーン・ローゼズ〕の影響を受けていたし、世界的なスターになる前のU2〔ユートゥー〕は間違いなくECHO & THE BUNNYMEN〔エコー&ザ・バニーメン〕を意識していた。
そもそもロック・バンドなんて、最初は誰かのエピゴーネンから始まるものだ。
真似をしたら偽物だと言うのなら、ロックはChuck Berry〔チャック・ベリー〕以外は全て偽物ということになってしまう。
それを踏まえてあえてもう一度書くが、デビュー当時のBUSHはNIRVANAからの影響はあるが、叩かれるほどNIRVANAに似ていないし、既にオリジナテイティも確立されている。
それでも「NIRVANA云々」と言うのであれば、今回取り上げた4thアルバムの「GOLDEN STATE」を聴いてほしい。
BUSHのアルバムは4thまでは聴いているのだが、その中では「GOLDEN STATE」が一番気に入っている。
"Reasons"の不安と心地よさを行ったり来たりするような不思議な音階には鳥肌が立つほどの凄まじさがあり、"Float"の心の暗部をえぐるような深みのあるヴォーカルを聴いていると、このアルバムを聴き終えた後に現実に引き戻されるのが辛くなる。
これはもう、2000年代を代表する名盤であり、BUSHというバンド、そして、Gavin Rossdale〔ギャヴィン・ロスデイル〕というソングライターが辿り着いた到達点のようなアルバムである。
このアルバムについて語るとき、「NIRVANA云々」という話は不要である。