1980年代後半、英国で一瞬だけブロンド・ムーヴメントというものがあった。
そういう呼ばれ方をしていたかどうかも今となっては記憶が曖昧だし、そもそもムーヴメントと呼べるほどの盛り上がりも無かったような気もする。
その名のとおり、当時、登場した「ブロンド」の女子をフロントに立てたアイドル性の高いポップ・ロック・バンドを一括りにしてそう呼んでいたムーヴメントである。
もっと解り易く言えば、BLONDIE〔ブロンディ〕のエピゴーネンのようなバンドが同時期にいくつか登場したわけだ。
代表的なバンドがTRANSVISION VAMP〔トランスヴィジョン・ヴァンプ〕とTHE PRIMITIVES〔ザ・プリミティヴズ〕とTHE DARLING BUDS〔ザ・ダーリン・バッズ〕なのだが(というか、この3バンドだけである)、とりわけ筆者がよく聴いたのがTRANSVISION VAMPだった。
一番よく聴いた理由はというと、音楽性だけ取り上げれば上記の3バンドの中でTRANSVISION VAMPだけが飛びぬけて良いわけではないのだが、ヴォーカルのWendy James〔ウェンディー・ジェームス〕のやんちゃな歌い方が筆者の好みに一番マッチしたからだ。
1988年に1stアルバムの「POP ART」がリリースされた時はけっこう愛聴していて、ポップだし、キュートだし、よくできた曲だなと思いながら聴いていたのだが、その反面、こういうバンドはきっとこの1枚でネタ切れになって終わるんだろうなとも感じていた。
ところがけっこう短いインターバルでその翌年の1989年に今回取り上げた2ndアルバムの「VELVETEEN」がリリースされ、聴いてみてちょっと驚いた。
ネタ切れになっておらず、1st同様のポップでキュートな曲が収録されていて、ちょっと懐の深さを感じさせるシリアスな曲まで収録されている。
これは、もしかするとこれから先もこの調子で活動を続けていければ90年代のBLONDIEになるかもしれないと思ったのだが、やはりというとTRANSVISION VAMPに失礼なのだが、この2ndでネタを使い尽くしたようで、1991年に次作(3rdアルバム)をリリースした後、解散してしまった。
それでも、この2ndアルバム「VELVETEE」はかなり高性能なポップ・ロック・アルバムである。
未だにWendy Jamesのやんちゃな歌声が聴きたくてこのアルバムを引っ張り出す時がある。
余談だが、こういうバンドの男子の存在というのは甚だ希薄である。
このバンドのベーシストであるDave Parsons〔デイヴ・パーソンズ〕がTRANSVISION VAMP解散後、英国グランジの雄であるBUSH〔ブッシュ〕に加入していたことを先週初めて知った。