Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0178) A NEW FLAME / SIMPLY RED 【1989年リリース】

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#0176でJoe Cocker〔ジョー・コッカー〕を取り上げた時に「40歳を過ぎた頃からブルー・アイド・ソウル系の男性ソロ・シンガーを聴く回数が増えた」と書いた。


今回取り上げるSIMPLY REDシンプリー・レッド〕もバンドの体裁をとってはいるものの、殆どMick Hucknall〔ミック・ハックネル〕のソロ・プロジェクトのようなものであり、ブルー・アイド・ソウル系の男性ソロ・シンガーに限りなく近い。


ただし、SIMPLY REDはデビュー当時(筆者が高校一年の頃)から聴いていたアーティストだ。


1980年代に登場したシンガーの中で筆者が最も歌が上手いと思っているのは#0086で取り上げたPaul Young〔ポール・ヤング〕なのだが、Mick Hucknallもそれに匹敵するほどの上手いシンガーだと言えるだろう。


Paul Youngはどこか田舎臭い野暮ったさのあるシンガーであり、それが彼の魅力なのだが、Mick Hucknallは都会的で洗練されたシンガーだ。


SIMPLY REDと言えば今でもラジオでよくオンエアされるヒット曲"Stars"が有名であり、それが収録されている4thアルバム「STARS」が代表作なのかもしれない。


しかし、実際にはHAROLD MELVIN & THE BLUE NOTESハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ〕のカヴァー"If You Don’t Know Me By Now (二人の絆)"が最も成功したシングルであり、筆者にとってはこれが収録されている3rdアルバム「A NEW FLAME」が代表作だという認識がある。


SIMPLY REDは、この「A NEW FLAME」というアルバムで一気に突き抜けた感があり、それまでに試行錯誤を繰り返した英国人流のブルー・アイド・ソウルをこのアルバムで終に完成させた。


英国のアーティストはブラック・ミュージックへの憧憬のある人が多く、1980年代に英国から登場したアーティストにもそれが顕著だ。


既にその名を挙げたPaul Young や、THE STYLE COUNCIL〔ザ・スタイル・カウンシル〕、THE BLOW MONKEYS〔ザ・ブロウ・モンキーズ〕等、ブラック・ミュージックへの憧憬を隠さないアーティストの名を挙げるときりがないのだが、本家の黒人ソウル・シンガーにも肉薄できるほどの歌唱力を持ったシンガーはPaul Young とSIMPLY REDのMick Hucknallがずば抜けている。


「A NEW FLAME」というアルバムは、英国のインディー・バンド風の内省的なメンタリティを捨て去り、まるで開き直ったかのようにメジャー感が溢れるブルー・アイド・ソウルの傑作となった重要な一枚である。