Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0329) MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS / THE SMASHING PUMPKINS 【1995年リリース】

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今回はTHE SMASHING PUMPKINS〔ザ・スマッシング・パンプキンズ〕の3rdアルバム「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」を取りあることにした。


1990年代初頭に勃発したグランジ・ムーヴメントにおけるこのバンドの傑作という意味では2ndアルバムの「SIAMESE DREAM」を取り上げた方が妥当なのかもしれない。


しかし、筆者がこのバンドを真剣に聴いたのは「MELLON COLLIE~」からなので、どうしてもこのアルバムへの思い入れが深くなってしまう。


THE SMASHING PUMPKINSは1stアルバムの「GISH」をリリーした時に話題のバンドとして日本の音楽雑誌に取り上げられていたので聴いてはいたのだが、Billy Corganビリー・コーガン〕のガチョウのような声がどうにも好きになれなかった。


大物と言われているシンガーでも歌うことに適していない声を持つ人はいると思う。


例えば、Mick Jaggerミック・ジャガー〕、David Bowieデヴィッド・ボウイ〕、Bryan Ferry〔ブライアン・フェリー〕あたりは歌うのに適していない声だと思うし、むしろ最初に聴いた時は気色悪くて好きになれなかった。


今でも同じ英国のシンガーならSteve Marriott〔スティーヴ・マリオット〕、Rod Stewart〔ロッド・スチュワート〕、Paul Rodgers〔ポール・ロジャース〕の方が、圧倒的に歌唱力が高い上に表現力もあり、こちらの方が断然好きなのである。


しかし、Mick JaggerDavid Bowie、Bryan Ferryの凄いところは、彼等の持つ独創性やアイデアにより、あまり歌うことに適していない声さえも武器にして唯一無二の音楽を創造したことである。


そして、Billy CorganおよびTHE SMASHING PUMPKINSもこの3rdアルバム「MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS」で、とうとうその域に到達したのだ。


CD2枚組、収録時間120分を超える大作でありながら、オープニングの"Mellon Collie and the Infinite Sadness"、"Tonight, Tonight"(筆者の中ではこれは2曲で1つの組曲だ)で高らかに物語の始まりが宣言され、ポップな曲、ジャンクな曲、メタリックな曲、グランジ―な曲、そして、メランコリックな曲が次から次へと飛び出し、全く飽きることなく最後まで聴き続けることが出来る稀代の大傑作アルバムなのである。


蛇足になるが、このバンドのベーシストであるD'arcy Wretzky〔ダーシー・レッキー〕は、バンドへの音楽的な貢献はあまりなさそうだが、グランジ/オルタナ系のバンドにはあまりいなさそうなタイプの美人さんであり、若い頃の筆者は彼女のことを、ちょっとアイドル視していたのである。

 

#0328) GOD'S OWN MEDICINE / THE MISSION 【1986年リリース】

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1980年代はロック不毛の時代と言われているようだが本当にそうなのだろうか?


1980年代のロックの中でも特に馬鹿にされる傾向があるのはグラム・メタルだと思うのだが、今でも筆者はグラム・メタルを好んで聴くし、極めて優れた音楽だと思っている。


そして、グラム・メタルほどではないが「あれは何だったんだろう」的な扱いをうけているのがゴシック・ロックではないだろうか?


今回取り上げているTHE MISSION〔ザ・ミッション〕は、1980年代における英国のゴシック・ロック・シーンから登場したバンドとしては最も大きな成功を修めたバンドである。


THE MISSIONの英国における現在の地位というのはよく分からないのだが、少なくともTHE SMITHSザ・スミス〕はもちろん、THE JESUS AND MARY CHAIN〔ザ・ジーザス&メリーチェイン〕にも遠く及ばないような気がする。


ここ日本においても、インターネットでかつてTHE MISSIONを聴いていた人が書いたであろうと思われるTHE MISSIONへの評価を検索すると「今聴くと大袈裟で笑ってしまう」とか「今聴くと面白みの無いハード・ロック」のような、どちらかと言うとネガティブな評価が多い。


筆者は一度好きになった音楽に対しては、確かに当時と同じ気持ちで聴けない場合もあるが、自分にとっては全て大切な音楽なので、上記のように、その音楽を馬鹿にしたような言い方はとてもじゃないが出来ない。


筆者はゴシック・ロックとはポストパンクの流れから派生したジャンルだと認識しているのだが、多くのポストパンク・バンドが前世代の音楽であるハード・ロックを完全否定していたことに対し、そこから派生したゴシック・ロックは巧みにハード・ロックを取り入れることに成功したジャンルだと思っている。


THE MISSIONはゴスの帝王THE SISTERS OF MERCY〔ザ・シスターズ・オブ・マーシー〕に在籍していたWayne Hussey〔ウェイン・ハッセイ〕(guitar)とCraig Adams〔グレッグ・アダムス〕(bass)がAndrew Eldritch〔アンドリュー・エルドリッチ〕(vocals)と喧嘩別れしたことにより生まれたバンドだ。


Wayne HusseyはTHE SISTERS OF MERCYで作曲の中核を担っていたメンバーなのだが、THE SISTERS OF MERCYでは抑え気味だったハード・ロック指向を、今回取り上げているTHE MISSION の1stアルバム「GOD'S OWN MEDICINE」ではリミッターを解除している。


ヴォーカルも担当するようになったWayne Husseyの声は逞しく、美しく、ゴスというよりは由緒正しいハード・ロック・シンガーなのである。

 

#0327) THE YEARS OF DECAY / OVERKILL 【1989年リリース】

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米国産スラッシュ・メタルと言えばMETALLICAメタリカ〕、MEGADETHメガデス〕、SLAYER〔スレイヤー〕、ANTHRAXアンスラックス〕というスラッシュ・メタル四天王の存在が絶大である。


しかし、実はこの四天王は、SLAYER以外は意外と早くスラッシュ・メタルから離れた。


筆者はMEGADETHANTHRAXに関してはその音楽性の変化に違和感を覚えることなく着いていけたのだが、METALLICAに関しては4thアルバムの「...AND JUSTICE FOR ALL」に違和感を覚え、5thアルバムの「METALLICA」で一旦持ち直したのだが「LOAD」以降は一応アルバムを買うものの果敢に新しい音楽に挑戦する彼らに着いていけなくなった。


そうなると、大抵のロック・ファンは、好きだったバンドの不在を埋めてくれる新しいバンドを探すことになる。


米国産スラッシュ・メタルには四天王より後に登場した第2世代と呼ばれるバンドがあり、NUCLEAR ASSAULT〔ニュークリア・アソルト〕、TESTAMENT〔テスタメント〕、DEATH ANGEL〔デス・エンジェル〕、ANNIHILATOR〔アナイアレイター〕等がそれにあたり、バンド名を挙げていくとキリがないのだが、今回取り上げているOVERKILL〔オーヴァーキル〕も第2世代の代表的なバンドだ。


ちなみにEXODUS〔エクソダス〕も第2世代に入れられることがあるのだが、彼らの場合は1stアルバムのリリースが遅かっただけで、バンドとしてのキャリアは四天王と同じである。


筆者はこの第2世代のアルバムも新作がリリースされる度にアホの如く買っていたのだが、正直、四天王ほど熱心には聴いていなかった。


ところが現金なもので、METALLICAが不在となり、四天王が少しずつ変わり始めると、第2世代に俄然魅力を感じ始めるのである。


中でも、今回取り上げているOVERKILLの4thアルバム「THE YEARS OF DECAY」はかなり聴き込んだアルバムであり私的スラッシュ・メタルの大名盤だ。


第2世代を真剣に聴き始めた頃、「もしかすると四天王よりも第2世代の方が、スラッシュ・メタルらしいのでは?」と感じ始めた。


四天王と比べると第2世代は洗練されていないバンドが多いのだが、そこが良いのである。


この「THE YEARS OF DECAY」は初期OVERKILLのパワー・メタル的な要素を残しつつ、スラッシュ・メタルらしい切れ味の鋭い1枚であり、改めてこのアルバムを聴き直した時に、自分がスラッシュ・メタル・バンドに求めるものは「...AND JUSTICE FOR ALL」ではなく、この「THE YEARS OF DECAY」だと明確に気付かされたのである。

 

#0326) G. LOVE & SPECIAL SAUCE / G. LOVE & SPECIAL SAUCE 【1994年リリース】

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今回取り上げているG. LOVE & SPECIAL SAUCE〔G・ラヴ&スペシャル・ソース〕の1stアルバム「G. LOVE & SPECIAL SAUCE」は1994年のリリースだ。


同じ年にはBeck〔ベック〕のメジャー第1弾アルバム「MELLOW GOLD」がリリースされている。


当時、Beckは注目のアーティストとしてrockin'on やCROSSBEAT等の洋楽雑誌で大きく取り上げられていて、筆者は「MELLOW GOLD」を買おうか、買うまいかを1ヶ月ほど悩んでいた。


結局、「MELLOW GOLD」を買うことに決めたのだが、同時に何となくアルバム・カヴァーがカッコ良かったこともあって、気になっていた「G. LOVE & SPECIAL SAUCE」も一緒に買うことにした。


買ってきた上記2枚のアルバムのうち、先ずはBeckの「MELLOW GOLD」から聴き始めたのだが、確かにヒット曲"Loser"の良さはもちろんのこと、エクスペリメンタルでローファイなこのアルバムからは新世代によるオルタナティヴ・ロックの新しい息吹を感じることが出来た。


そして、次は当然のことながら「G. LOVE & SPECIAL SAUCE」を聴くことになるわけだが、このアルバムのカッコ良さに、さっき聴いたばかりの「MELLOW GOLD」が霞んでしまったのである。


「G. LOVE & SPECIAL SAUCE」は、そのアルバム・カヴァーのセンスの良さに「これは何かありそうだ」と直感的に感じていたのだが、その時はそれが見事なまでに的中した。


1曲目の"The Things That I Used to Do"からG. Loveのブルージーで軽やかなギターに持っていかれるのだが、Jimmie Prescott〔ジミー・プレスコット〕のベースとJeffrey Clemens〔ジェフリー・クレメンズ〕が奏でるジャジーで達者なリズムが素晴らしいグルーヴを生み出しているのだ。


筆者としては、一緒に買った「MELLOW GOLD」よりも「G. LOVE & SPECIAL SAUCE」の方にロックン・ロールを感じてしまい、「MELLOW GOLD」を効く回数が日に日に減っていくのと反比例する形で「G. LOVE & SPECIAL SAUCE」ばかりを聴くようになっていた。


「G. LOVE & SPECIAL SAUCE」をWikipediaで調べるとオルタナティヴ・ヒップ・ホップと書かれている。


確かにオルタナティヴ・ヒップ・ホップと言われればそうなのだが、筆者はこのバンドのことをブルース・バンドだと思っている。


理想的な3ピースのブルース・バンドであり、非常に美しい正三角形が描かれているのだ。


このバンドはサーフ・ミュージック・シーンの代表という側面もあるらしいのだが、それについては、筆者はよく分かっていない。

 

#0325) WILD-EYED SOUTHERN BOYS / 38 SPECIAL 【1981年リリース】

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今回取り上げるのは、これもまた筆者の大好きなバンド、38 SPECIAL〔サーティーエイト・スペシャル〕だ。


38 SPECIALはロックを聴き始めた頃(1980年代前半)に知ったバンドだ。


その切っ掛けは知り合いのバンドマンのお兄さんが今回取り上げている38 SPECIALの4thアルバム「WILD-EYED SOUTHERN BOYS」を貸してくれたからだ。


筆者が中学生の頃、知り合いのバンドマンやロック好きのお兄さん達はLYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕とDEEP PURPLE〔ディープ・パープル〕を好む人が多かった。


同じサザン・ロックでもTHE ALLMAN BROTHERS BAND〔ジ・オールマン・ブラザーズ・バンド〕よりも、何故か圧倒的にLYNYRD SKYNYRDなのである。


同じハード・ロックでもLED ZEPPELINレッド・ツェッペリン〕よりも、何故か圧倒的にDEEP PURPLEなのである。


そして、LYNYRD SKYNYRDが好きな人となると、その繋がりでLYNYRD SKYNYRDのシンガーRonnie Van Zant〔ロニー・ヴァン・ザント〕の弟であるDonnie Van Zant〔ドニー・ヴァン・ザント〕がシンガーを務める38 SPECIALのことも好きなのである。


まぁ、そんなわけで、ロックを聴き始めでロックに飢えていた筆者は貸してもらった38 SPECIALの4thアルバム「WILD-EYED SOUTHERN BOYS」をカセットテープに録音し、毎晩のように聴きまくったのである。


38 SPECIALはサザン・ロックに分類されることもあるようだが、ド直球なサザン・ロック・バンドのような泥臭さは無い。


カントリーやブルースからの影響はもちろんあるのだが、それはかなり控えめであり、どちらかと言うとコマーシャル性の高いキャッチーなアリーナ・ロックと言った方が38 SPECIALの音楽性を伝え易い。


車の免許を取ってからは、よく晴れた日にこのアルバム聴きながら、高速道路をドライヴするのが楽しくて仕方がなかった。


曲のイメージを伝える言葉として「ノリノリ」という言い方があるが、38 SPECIALの曲は正にこの「ノリノリ」なのでる。


スローテンポの曲ですら「ノリノリ」な感じがするから不思議だ。


巨大なスタジアムでのライヴが似合う音であり、レコードを聴いているとスタジアムでの演奏風景が目に浮かぶのである。