Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0389) LATERALUS / TOOL 【2001年リリース】

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今回取り上げるのは米国のプログレッシヴ・メタル・バンド、TOOL[トゥール]の3rdアルバム「LATERALUS」だ。


TOOL、凄い、最高、以上。


これで終わりにしたいくらい、TOOLというバンドは1990年代以降のロック・シーンにおいて、桁違いの存在感を放つ。


TOOLについては、正直なところ、どういった文章を書いていいのかが分からない。


そもそも文章力が無いので、これまで取り上げてきた他のアーティストに関しても大した文章が書けていないわけだが、TOOLに関しては、もうお手上げという感じだ。


TOOLが繰り出す、凄まじくテクニカルな演奏には、それだけで既に充分な価値がある。


メンバー全員が高度な演奏技術の持ち主なのだが、ドラムなんて、どうやって叩いているの分からないくらい凄い。


そして、演奏技術も凄いのだが、曲がまたその上をいく恐ろしいほどの凄さなのである。


今回の記事の冒頭では、便宜上、プログレッシヴ・メタル・バンドと書いてはみたが、彼らの音楽性は、とてもその範疇だけに納まり切れるものではない。


28年前(1993年)に1stアルバムの「UNDERTOW」を聴いた時からこのバンドのアルバムはずっと買い続けてきたのだが、中でも、今回取り上げている3rdアルバムの「LATERALUS」を聴いた時の衝撃は凄まじかった。


静と動のコントラストが鮮やかであり、静の時の良い意味でのダレっぷりと、動の時の手の付けられないキレっぷりは、このバンドでしか味わえない個性であり、その個性が最も味わえる傑作が「LATERALUS」なのだ。


このアルバム「LATERALUS」は2001年にリリースされた作品である。


つまり、21世紀の最初の年にリリースされたアルバムということである。


当時はミレニアムという言葉があちこちで安売りされていたのだが、筆者はこのアルバムを聴いた時に、新しく始まる世紀の幕開けを感じることができた。


ちなみに、このアルバム、下に貼った画像の外ジャケットからCDケースを取り出すと、冒頭に貼った画像の内ジャケットが出てくるという凝った作りになっている。

 

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#0388) BUILT TO BREAK / NATIONAL PASTIME 【1985年リリース】

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もし、今回取り上げているNATIONAL PASTIME[ナショナル・パスタイム]というバンドを知っている人が居れば、その人は筆者と同世代(2021年現在でアラフィフ)で、1980年代の洋楽雑誌を読み漁っていた人ではないだろうか。


このブログで取り上げてきたアーティストの中でもダントツにマイナーなバンドである。


筆者がこのバンドを知った切っ掛けは、当時毎月買っていた「ROCK SHOW」という洋楽雑誌だ。


「ROCK SHOW」とは、1980年代当時、おそらく最も洋楽ファンへの影響力を持っていた総合洋楽雑誌「MUSIC LIFE」の姉妹誌として1977年に創刊されたヴィジュアル嗜好の洋楽雑誌であり、取り上げるアーティストはアイドル性の高いバンドやシンガーに限定されていた。


その「ROCK SHOW」でG.I. ORANGE[ジー・アイ・オレンジ]と共に見開き2ページを使って紹介されていたのが今回取り上げているNATIONAL PASTIMEなのである。


当時(1980年代中期)の英国では「音楽性」、「アイドル性」共に極めて高いスペックを持つDURAN DURANデュラン・デュラン]の人気が凄まじく、G.I. ORANGEとNATIONAL PASTIMEは「DURAN DURANに続く次世代のスター」として「ROCK SHOW」で大々的に紹介されていたのである。


筆者はその当時から洋楽雑誌の煽りに簡単に踊らされるミーハーな人間だったので、貯金していたお年玉を次ぎ込んでG.I. ORANGEとNATIONAL PASTIMEのレコードを買ったのだが、圧倒的に聴く回数が多かったのはNATIONAL PASTIMEの方だった。


今回取り上げているのは、そんなNATIONAL PASTIMEの最初で最後のアルバム「BUILT TO BREAK」である。


G.I. ORANGEもNATIONAL PASTIMEも、ニューロマンティックの影響下にあるヴィジュアルを持つシンセポップ・バンドなのだが、明るく弾けた感じのG.I. ORANGEの曲よりも、大人びた哀愁を感じさせるNATIONAL PASTIMEの曲に筆者は魅かれたのだ。


彼らの曲にはサックスが効果的に使われていることが多く、そこが筆者の好きなSPANDAU BALLETスパンダー・バレエ]に似ていたので、その辺りも筆者がNATIONAL PASTIMEを好んだ理由である。


このアルバムには「愛なき嵐」という、原題の「BUILT TO BREAK」とは全く関係のない邦題が付けられているのだがそれも1980年代的で面白い。


そして、レコード会社が主導で作ったと思われるアルバム・カヴァーが素晴らしい。


たぶん、このアルバム・カヴァーを気に入っているメンバーはバンドの中に一人もいないのではないだろうか。

 

#0387) REGULAR URBAN SURVIVORS / TERRORVISION 【1996年リリース】

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TERRORVISION[テラーヴィジョン]は、英国、ウェスト・ヨークシャー出身のロック・バンドだ。


TERRORVISIONは1993年に1stアルバムの「FORMALDEHYDE」をリリースしており、筆者はそれをリアルタイムで購入して聴いたのだが、予想していた音とだいぶ違っていたので、結局、数回聴いただけでCDラックの中に眠らせることになった。


デビュー当時のTERRORVISIONのヴィジュアルを見て、筆者は彼らにグラム・メタルっぽい音を期待していたのだが、「FORMALDEHYDE」は当時流行していたグランジオルタナティヴ・ロックに影響を受けたハード・ロックだったのである。


当時の筆者はグランジオルタナティヴ・ロックも好んで聴いていたのだが、その手の音楽なら、もっと上手にそれを出来るバンドが他に沢山いたので、それらのバンド以上とも思えず、同等とも思えないTERRORVISIONに対し、特別な興味を持つことができなかったのだ。


しかし、何故か、筆者は、翌年の1994年にリリースされたTERRORVISIONの2ndアルバム「HOW TO MAKE FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE」を買ってしまったのである。


そして、この2ndアルバム「HOW TO MAKE FRIENDS AND INFLUENCE PEOPLE」が以外なほど(と言うとTERRORVISIONに失礼なのだが)良かったのである。


中途半端にグランジ/オルタナに寄せたハード・ロックだった1stとは異なり、2ndでは変幻自在なメロディがしつこいくらい耳に残るポップ・ロックに変貌していたのである。


当時はこの2ndをヘヴィ・ローテーションで聴いていたのだが、筆者には熱し易くて冷め易いところがある上に、1990年代半ばには興味の対象がロックからドラムン・ベースに移ってしまったので、TERRORVISIONのことも時の経過と共にすっかり忘れてしまったのである。


今回取り上げている3rdアルバムの「REGULAR URBAN SURVIVORS」は1996年以リリースされているのだが、筆者がこのアルバムを聴いたのは2000年代の後半になってからだ。


某通販サイトでこのアルバムを見かけ、「あっ、TERRORVISIONって、昔、2nd好きやったなぁ~」、「かっこえぇアルバム・カヴァーやなぁ~」と思って見ているうちに気まぐれで買ったのだが、これが2ndを更に先に推し進めた強力なポップ・ロックになっており最高なのである。


そして、実は、4thアルバムの「SHAVING PEACHES」も3rdに匹敵する名盤であり、1990年代の英国において、TERRORVISIONほどブリットポップやインディー・ロックから離れた場所で、これほどユニークなメインストリーム型のロックをやっていたバンドはなかなか居ないのである。

 

#0386) + / Ed Sheeran 【2011年リリース】

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Ed Sheeranエド・シーラン]は間違いなく今世紀にその名を遺す天才ソングライターだ。


彼がデビュー・アルバムの「+」をリリースしたのは2011年である。


このブログで度々書いてきたとおり、筆者は2000年以降に登場したアーティストを積極的に聴いてこなかった。


それ故、「+」がリリースされた当時、Ed Sheeranの名前は洋楽雑誌で知っていたものの「+」を買って聴くまでには至らなかった。


しかし、それから数年が経ち、FMから流れてきた彼のデビュー・シングル、"The A Team"を偶然聴くことになり、あまりの曲の良さにノックアウトされてしまったのである。


それはもう、"The A Team"を聴いている間、頭がクラクラするほどの衝撃を受け、「このままこの曲が終わらないで欲しい」と望んだほどだ。


その後、デビュー・アルバムの「+」を聴き、一聴すると素朴ながらも、実は緻密に構築された収録曲の美しさに再びノックアウトされることになったのである。


筆者はよほど好きなアーティストでない限り歌詞には無関心なのだが、Ed Sheeranの場合は歌詞が知りたくなり、訳詞を読んでみたのだが、筆者の好きなラヴ・ソングが多かったので更に彼の曲を好きになることができた。


結局のところ、筆者が最も好きな曲は、いつだってラヴ・ソングなのである。


メッセージ性の強い曲も、それはそれで有りだと思うし、そういったアーティストの曲も聴くのだが、英語力が無さすぎて歌を聴きながら歌詞を理解することが出来ないので、結局は歌詞ではなく曲を聴いているのである。


その点、ラヴ・ソングなら筆者でも理解できる単語が出てくることもあるので、歌詞も少しだけ楽しむことができるのが良い。


Ed Sheeranは日常の風景を切り取るのが上手い。


Ed Sheeranは顔だけ見ると素朴な青年に見えるのだが、刺青だらけの彼の体を見ると「この人も9時-6時の仕事はできひん人なんやろなぁ」と思えるし、たぶん実際もそうなのだろう。


そんな、所謂「普通」と呼ばれる日常から遠くはなれた場所にいる彼のような人が、普通ではない感性で巧みに日常の風景を切り取り、それを筆者のような普通の人に寄り添うように歌ってくれるところが、リスナーを惹き付けて止まない彼の最大の魅力なのだろう。

 

#0385) GRAND FUNK / GRAND FUNK RAILROAD 【1969年リリース】

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筆者は自分のブログに「ロックン・ロール・プリズナーの憂鬱」というタイトルを付けているが、実はそれほどロックン・ロールをネタとして取り上げていない。


筆者がブログを始めた理由は、文を書く習慣を付け、文を書く練習をしたかったからだ。


筆者は仕事上、文書(文章ではない)を作成することが多い。


仕事をしている時間の三分の一は文書作成に充てられているような気がする。


そのような背景があり、「文を書く習慣を付けること」と「正しい文を書く練習」を目的としてこのブログを書き始めたのである。


それ故、三日坊主になることは避けたかった。


自分の好きなことをテーマにすれば永く続けられるのではないかと思い、ロックをテーマにしたのだが、書き始めてみると自分がロック以外の音楽も好きだったことに遅まきながら気付き、ロック以外の音楽を取り上げることが増えてしまい、結果的に「看板に偽りあり」のブログになってしまったのである。


実は1月に入ってから、ロックへの情熱を少しばかり失いかけている。


前回の記事で取り上げたのはドラムン・ベース、前々回の記事で取り上げたのはクラシックであり、ロックから離れてしまっている。


そろそろガツンとくるロックを聴いておかなければいけないような気がしたので、今日はGRAND FUNK RAILROADグランド・ファンク・レイルロード]の2ndアルバム「GRAND FUNK」を聴いている。


筆者にとっての「ガツンとくるロック」と言えば、反射的に思い浮かぶのは、英国ならDEEP PURPLE[ディープ・パープル]、米国ならGRAND FUNK RAILROAD(以下、GFR)なのである。


DEEP PURPLEは既に取り上げているので、今回はGFRを取り上げることにした。


阿保みたいなことを書いてしまうが、GFRを聴いていると「やっぱりロックはかっこえぇな~」と思えてくるのである。


多くの人がロックに対して持っている最大公約数的なイメージがGFRの奏でるロックなのではないだろうか。


ブルージーでありながら渋くなり過ぎず、カラッと激しいハード・ロックは「これがロックでないなら何がロックなんだ」と言えるくらい、実に正しいロックなのである。