Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0394) COLOURS / Adam F 【1997年リリース】

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このブログでは何度かドラムン・ベースの名盤を取り上げてきたが、今回取り上げているAdam F[アダム・エフ]の1stアルバム「COLOURS」も1990年代におけるドラムン・ベースの名盤だ。


改めて1990年代という時代を振り返ってみると、筆者にとっての1990年代とはドラムン・ベースの時代だったなと思う。


筆者は1980年代初頭からロックを入り口として洋楽を聴き始めた人間なのだが、元来の節操の無さが幸いしたのか災いしたのか、色々な音楽(と、言っても多くは西洋の音楽)を聴くようになった。


1980年代にヒップ・ホップに出会った時は大きな衝撃を受け、「もう、ロックは要らない」と思ったのだが、その後はまたロックに戻り、ロックをメインとして聴きつつも、ヒップ・ホップにも聴くという状態になった。


しかし、1990年代にドラムン・ベースに出会った時の衝撃はちょっと違っていた。


本当に聴きたくて聴いているのはドラムン・ベース、惰性で聴いてるのがロック、という状態になり、その頃の筆者は殆どロックを捨てていたのである。


そんな時期に聴きまくっていたのが今回取り上げているAdam Fの「COLOURS」なのだ。


このアルバムの収録曲は、どこまでも広がっていくような音の連鎖を感じられるものが多く、聴いていると何とも言えない心地良い気分にさせられる。


ドラムン・ベースの中でも、かなりハウス・ミュージックの影響が強いアルバムであり、数あるドラムン・ベースの名盤の中でも特にキャッチーな作品なのではないだろうか。


更に、このアルバムはゲストが豪華であり、"Colours" ではRonny Jordan[ロニー・ジョーダン]がギターを、"The Tree Knows Everything" ではEVERYTHING BUT THE GIRLエヴリシング・バット・ザ・ガール]のTracey Thorn[トレイシー・ソーン]がヴォーカルを担当している。


豪華と言えば、Adam F自身が英国の有名なロック・シンガーAlvin Stardust[アルヴィン・スターダスト]の息子なので、血統を貴ぶ人にとってはこれもまた豪華な一面と言えるだろう。


ちなみに、Alvin Stardustは、あのDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]が創り出した架空のロック・シンガーZiggy Stardust[ジギー・スターダスト]のモデルの一人という説があり、その息子のAdam FDavid Bowieのシングル"Telling Lies"のリミックスを手掛けている。

 

#0393) MAXWELL'S URBAN HANG SUITE / Maxwell 【1996年リリース】

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今回取り上げているMaxwell[マックスウェル]の1stアルバム「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」がリリースされたのは1996年だ。


当時の筆者は27歳だったのだが、それまで好きだったロックから離れ始めた時期に出会ったアルバムである。


このアルバムの前年(1995年)にはD'Angelo[ディアンジェロ]の1stアルバム「BROWN SUGAR」がリリースされており、「BROWN SUGAR」に嵌りまくった筆者は、所謂ネオ・ソウルと呼ばれるアーティスト達のCDを買い漁っていたのだが、その中で「BROWN SUGAR」と同じくらい嵌ったのが「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」だった。


ちょっと恥ずかしい言い方になるが、このアルバムはメチャメチャお洒落だ。


Maxwellを語る時に最も多く引き合いに出されるのはMarvin Gayeマーヴィン・ゲイ]だと思うのだが、筆者が初めて「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」を聴いた時に思い浮かんだのはSADEシャーデー]の1stアルバム「DIAMOND LIFE」だった。


MaxwellSADEでは、国も性別も世代も音楽性も違うのだが、両者の音楽には筆者が憧れるお洒落な世界観が共通しており、「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」に「DIAMOND LIFE」と同じ匂いを感じたのだ。


このアルバムのオープニングを飾るインストゥルメンタルの"The Urban Theme"は都会の夜の始まりを感じさせる曲であり、この曲が始まった瞬間、これから始まる至福の一時を期待せずにはいられなくなるのである。


このアルバムは女の子からの受けも良く、普段、洋楽なんて全く聴かない女の子にこのアルバムを聴かせると、大抵の女の子は「お洒落な曲ね」と言って、気に入ってくれることが多かった。


当然、筆者としては下心ありで、このアルバムを女の子に聴かせていたわけだが、雰囲気づくりには鉄板の一枚だったのである。


ブラック・ミュージックのシンガーにはファルセットの達人が多いと思うのだが、Maxwellもその一人であると言えるだろう。


気の効いた心地良いアレンジの曲にMaxwellのファルセットが絡み、バースからコーラスに入っていく時の盛り上がり方は絶品である。


ソロ・アーティストのアルバムなので、どうしてもヴォーカルが中心となる曲が多いのだが、ギターもリズム隊も鍵盤も管楽器も気の効いた演奏を聴かせてくれるアルバムであり、もう25年も前のアルバムでありながら全く古さを感じない名盤なのである。

 

#0392) ヴィヴァルディ:協奏曲集「四季」 / シュヴァルベ[ヴァイオリン]、カラヤン[指揮]&ベルリン・フィル[演奏]

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今回取り上げているアントニオ・ヴィヴァルディ[Antonio Vivaldi]のヴァイオリン協奏曲集「四季」と言えば、バロック音楽のみならずクラシック音楽の定番だろう。


とりわけ、この曲の幕開けとなる「」の第1楽章で奏でられるヴァイオリンのメロディは多くの人が口ずさめるのではないだろうか。


今週は、通勤電車の中で、ずっとこの曲を聴いていた。


ここ最近は、かなりの前倒しで、夜が明けきる前に出勤しているため、アホみたいな混み方の電車に乗らずに済んでいる。


そんな穏やかな電車の中では無性にクラシック音楽が聴きたくなるのだ。


とにかく、ヴィヴァルディの「四季」と言えば、多くの人が学生時代の音楽の授業で聴いた経験があるのではないだろうか。


いずれにしても名曲中の名曲なので、誰しも何処かで無意識のうちに聴いていると思うのだが、筆者がこの曲を意識して聴いたのは、中学生の頃に従姉の女の子からこの曲のレコードを貸してもらった時だと思う。


上述した従姉はピアノを習っていたせいか、彼女の家にはクラシック音楽のレコードを沢山あり、音楽好きの筆者のために何枚かのレコードを見繕って貸してくれたのだ。


その中の一枚だったヴィヴァルディの「四季」を聴いた瞬間、「あっ、この曲、知ってる」となったわけである。


この曲はイタリアの室内楽団であるイ・ムジチ合奏団[I Musici]によるレコードが有名で、従姉が貸してくれたのもイ・ムジチだったような気がするが、古い記憶なので朧気だ。


筆者もこの曲はずっとイ・ムジチで聴いていたのだが、最近になって今回取り上げている、ヘルベルト・フォン・カラヤンHerbert von Karajan]指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団[Berliner Philharmoniker]演奏によるレコードがあることを知り、それ以降、「四季」はカラヤンベルリン・フィルで聴くことが多い。


室内楽としてこの曲を奏でるイ・ムジチも良いのだが、カラヤンベルリン・フィルという鉄壁の組み合わせによるオーケストラのダイナミズムにもまた格別な良さがある。


目を閉じてこのレコードを聴いていると、タクトを振るカラヤンと、彼にコントロールされたベルリン・フィルの演奏が頭の中に浮かび上がってくるのである。

 

#0391) STAY WITH THE HOLLIES / THE HOLLIES 【1964年リリース】

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筆者は、ここ数ヶ月でロックへの情熱がジワジワと無くなりつつある。


休日にはロックよりもクラシックやエレクトロニカを聴くことが多くなり、この状態が続くと数年後には日常的にロックを聴かなくなる日が来るような気がしてならない。


それ故、ロックへの情熱が残っているうちに、「これからロックを聴き始めようとしている人に向けたお薦めロック・アルバム」をピックアップしておこうと考えるようになった(こういうことを考えている間は、たぶん、まだロックへの情熱が残っているのだろう)。


例えば、THE BEATLESザ・ビートルズ]の全てのアルバム、これはもう鉄板中の鉄板だろう。


THE BEATLESほど初心者に優しく熟練者も唸らせるバンドは実際にはいそうでいないのである。


しかしながら、「これからロックを聴き始めようとしている人に向けたお薦めロック・アルバム」として、THE BEATLESのアルバムを挙げるのは鉄板過ぎて少々面白みに欠ける気がする。


では、THE BEATLESと並ぶブリティッシュ・ビートの、もう一方の雄、THE ROLLING STONESザ・ローリング・ストーンズ]はどうかと言うと、筆者は、THE ROLLING STONESは好きなのだが初心者には、あまり向かないのではないかと思っている。


特に初期のTHE ROLLING STONESは渋めのブルースやR&Bのカヴァーが多く、演奏も「上手い」というよりは「味がある」という感じで、意外なほど取っ付きにくいような気がする。


そこで筆者がお薦めしたいのは、今回取り上げているTHE HOLLIES[ザ・ホリーズ]であり、彼等の1stアルバム「STAY WITH THE HOLLIES」なのである。


THE HOLLIESの日本での知名度は、THE BEATLESTHE ROLLING STONESと比べると不思議なほど低いのだが、筆者はTHE HOLLIESを強く推したい。


THE HOLLIESの初期のアルバムも他のブリティッシュ・ビートのバンドと同様に収録曲の殆どがカヴァーなのだが、このバンドはAllan Clarke[アラン・クラーク](lead vocals, harmonica)、Graham Nash[グラハム・ナッシュ](rhythm guitar, vocals)、Tony Hicks[トニー・ヒックス](lead guitar, vocals)によるハーモニーが抜群に美しいのである。


演奏も非常にタイトで、この時代としては、かなりラウドな演奏なのではないだろうか。


何となく三番手のバンドという印象があるのだが、実は相当な実力派であり、彼等の美しいハーモニー・ワークとキャッチーな楽曲は、ロック初心者にとても向いているのである。

 

#0390) GLORIOUS / Foxes 【2014年リリース】

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去年、2020年は、英国・サウサンプトン出身の女性シンガー、Foxes[フォクシーズ]が久々の音源となるシングル"Love Not Loving You"をリリースしてくれた年である。


2016年の2ndアルバム「ALL I NEED」以来なので、約4年ぶりの音源リリースとなるわけだ。


2020年には、上記の"Love Not Loving You"以降も、"Woman"、"Friends in the Corner"、"Hollywood"と、立て続けに4枚ものシングルがリリースされ、精力的に活動してくれているので、彼女のファンとしては嬉しい1年になった。


日本におけるFoxes知名度とは、如何ほどのものなのだろうか?


この記事を書いている2021年2月現在ではWikipediaに日本語版ページが無いので、たぶんそれほどメジャーな存在ではないのだろう。


ここ数年、新しいアーティストを知る切っ掛けの99%くらいはインターネットであり、Foxesも何らかの形でインターネットを介して知ったアーティストのはずだ。


昔は新しいアーティストを知る切っ掛けの殆どが洋楽雑誌であり、手元にバックナンバーが残っているのでトレースし易かったのだが、インターネットで新しいアーティストを知るようになってからは、そのアーティストを知った切っ掛けを憶えられなくなった。


Foxesもインターネットで知ったはずなのだが、どのサイトだったのかは全く憶えていない。


しかし、何故Foxesを聴いてみたいと思ったのかは、はっきりと憶えている。


それは、Foxesが可愛かったからである。


「見た目かよ!」と言われると、「そうです、見た目です」としか返せないのだが、殆どの男が女性アーティストに興味を持つ切っ掛けは、とどのつまり、見た目なのである。


2020年にリリースされたシングルは大人の女性らしい、しっとりとした曲が多かったのだが、今回取り上げている1stアルバムの「GLORIOUS」は若い女の子らしさが伝わってくる実に可愛らしいシンセポップ・アルバムだ。


GLORIOUS」は一人のプロデューサーが丸ごとプロデュースしているのはなく、合計9人ものプロデューサーが関わっており、それぞれがFoxesというシンガーの魅力を違った形で引き出すことに成功している。


若い女性シンガーのデビュー・アルバムとしてはパーフェクトな作品である。