今回取り上げているMaxwell[マックスウェル]の1stアルバム「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」がリリースされたのは1996年だ。
当時の筆者は27歳だったのだが、それまで好きだったロックから離れ始めた時期に出会ったアルバムである。
このアルバムの前年(1995年)にはD'Angelo[ディアンジェロ]の1stアルバム「BROWN SUGAR」がリリースされており、「BROWN SUGAR」に嵌りまくった筆者は、所謂ネオ・ソウルと呼ばれるアーティスト達のCDを買い漁っていたのだが、その中で「BROWN SUGAR」と同じくらい嵌ったのが「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」だった。
ちょっと恥ずかしい言い方になるが、このアルバムはメチャメチャお洒落だ。
Maxwellを語る時に最も多く引き合いに出されるのはMarvin Gaye[マーヴィン・ゲイ]だと思うのだが、筆者が初めて「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」を聴いた時に思い浮かんだのはSADE[シャーデー]の1stアルバム「DIAMOND LIFE」だった。
MaxwellとSADEでは、国も性別も世代も音楽性も違うのだが、両者の音楽には筆者が憧れるお洒落な世界観が共通しており、「MAXWELL'S URBAN HANG SUITE」に「DIAMOND LIFE」と同じ匂いを感じたのだ。
このアルバムのオープニングを飾るインストゥルメンタルの"The Urban Theme"は都会の夜の始まりを感じさせる曲であり、この曲が始まった瞬間、これから始まる至福の一時を期待せずにはいられなくなるのである。
このアルバムは女の子からの受けも良く、普段、洋楽なんて全く聴かない女の子にこのアルバムを聴かせると、大抵の女の子は「お洒落な曲ね」と言って、気に入ってくれることが多かった。
当然、筆者としては下心ありで、このアルバムを女の子に聴かせていたわけだが、雰囲気づくりには鉄板の一枚だったのである。
ブラック・ミュージックのシンガーにはファルセットの達人が多いと思うのだが、Maxwellもその一人であると言えるだろう。
気の効いた心地良いアレンジの曲にMaxwellのファルセットが絡み、バースからコーラスに入っていく時の盛り上がり方は絶品である。
ソロ・アーティストのアルバムなので、どうしてもヴォーカルが中心となる曲が多いのだが、ギターもリズム隊も鍵盤も管楽器も気の効いた演奏を聴かせてくれるアルバムであり、もう25年も前のアルバムでありながら全く古さを感じない名盤なのである。