Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0416) MIND'S EYE / Vinnie Moore 【1986年リリース】

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ロック・ギタリストでMooreと言えば、先ずはGary Moore[ゲイリー・ムーア]なのかもしれないが、今回取り上げているVinnie Moore[ヴィニー・ムーア]も凄いギタリストなのである。


今回取り上げているVinnie Mooreの1stアルバム「MIND'S EYE」は、学生時代(1980年代後半)にバイト先で知り合ったU君が貸してくれたアルバムであり、筆者の想い出の1枚だ。


U君は生粋のメタル・マニアだったので、筆者は彼から色々なメタル系アーティストを教えてもらったのだが、現在でも筆者が聴いている速弾き系ギタリストの95%くらいはU君から教えてもらったと言っても過言ではない。


ちなみに、U君のお兄さんは筋金入りのプログレッシヴ・ロック・マニアで、且つ、膨大な量のプログレのレコードを所蔵しており、現在でも筆者が聴いているプログレ系アーティストの95%以上はU君のお兄さんから教えてもらったと言っても過言ではない。


今回の記事を書いていて、その頃のことを、ふと思いだしたのだが、筆者の音楽リスナーとしての経歴は、実に多くの友人・知人から受けたインプットで成立しているのである。


ノスタルジアに浸ってしまい、話が横道に逸れてしまったが、Vinnie Mooreは、Mike Varney[マイク・ヴァーニー]によって発掘された速弾き系のギタリストだ。


Mike Varneyは、Yngwie Malmsteenイングヴェイ・マルムスティーン]、Paul Gilbert[ポール・ギルバート]、Marty Friedmanマーティ・フリードマン]等を発掘したことで有名な米国の音楽プロデューサーであり、1980年代における「速弾き系ギタリスト」というムーヴメントを作った人物だ。


速弾き系ギタリストと言っても様々なタイプがあるのだが、乱暴に大きく分けるなら「豪快なタイプ」と「丁寧なタイプ」に分かれるのではないかと筆者は感じている。


Vinnie Mooreは後者、つまり、「丁寧なタイプ」だ。


後々、その音楽性の幅を広げていくVinnie Mooreだが、1stアルバム「MIND'S EYE」の時点ではネオ・クラシカルメタルからの影響が強いインストゥルメンタル・ロックを演奏している。


筆者のポンコツな耳では、このアルバムで聴ける超絶テクニックによる難しいギターをどのように弾いているのか全く分からないのだが、速弾きにしろ、スウィープにしろ、弾き方が丁寧なことくらいは辛うじて分かる。


MIND'S EYE」とは、丁寧にギターを弾いているネオ・クラシカルメタルの名盤なのである。

 

#0415) TEXAS FLOOD / Stevie Ray Vaughan & DOUBLE TROUBLE 【1983年リリース】

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Stevie Ray Vaughanスティーヴィー・レイ・ヴォーン]を聴かずして、ブルースを語るなかれ」と言うと、乱暴な言い方に聴こえるかもしれないが、そういうことなのである。


筆者が初めて聴いたStevie Ray Vaughanのレコードは、専門学生時代(1988年頃)にバイト先で知り合い、その後一緒にバンドをやることになるA君が「これ、聴いてみなはれ」と言って貸してくれた、Stevie Ray Vaughan & DOUBLE TROUBLEスティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル]の1stアルバム「TEXAS FLOOD」だ。


Stevie Ray Vaughanのことは、THE FABULOUS THUNDERBIRDS[ザ・ファビュラス・サンダーバーズ]のギタリストJimmie Vaughan[ジミー・ヴォーン]の弟であるということや、David Bowieデヴィッド・ボウイ]の大ヒットアルバム「LET'S DANCE」に参加しているという事前情報は持っていたのだが、何となく敷居の高さを感じていて、A君が貸してくれるまでは一度も聴いたことがなかった。


しかし、A君が貸してくれた「TEXAS FLOOD」を聴いた瞬間、「もっと早く聴いておくべきだった」と後悔したのである。


筆者は、このアルバムを聴くことで、初めて「ブルースとは何か」を理解できた気がする。


例えば、ブルースを聴いたことがない人に、いきなりRobert Johnson[ロバート・ジョンソン]を聴かせたところで、ブルースを理解してもらえることは殆どないと思うが、Stevie Ray Vaughanなら多くの人がブルースを理解できるだろう。


当時(1980年代後半)の筆者は、Steve Vaiスティーヴ・ヴァイ]やJoe Satrianiジョー・サトリアーニ]等、テクニカルなギタリストを好んで聴いていたので、それまでに何度か聴いたことのあるフォーク・ブルースのレコードで聴けるアコースティック・ギターの良さにはまだ気づいておらず、ただただ「ブルースって地味やなぁ~」としか思っていなかった。


ところが、Stevie Ray Vaughanはエレクトリック・ギターをギンギンに弾きまくってくれるので、一瞬にして彼のギターの虜になったのだ。


そして、Steve VaiJoe Satrianiとは違う「ギターの上手さ」があることに気付いたのである。


後に分かったことなのだが、Stevie Ray Vaughanはブルース・ギタリストだけではなく、Wes Montgomeryウェス・モンゴメリー]やDjango Reinhardtジャンゴ・ラインハルト]といったジャズ・ギタリストからも影響を受けており、彼が極太の弦から鳴らす濁りの無い美しい音はジャズ・ギタリストからの影響なのかもしれない。


陳腐な言い方になるが、Stevie Ray Vaughanとは、ブルース・ギタリストの最高峰なのである。

 

#0414) HOW MEN ARE / HEAVEN 17 【1984年リリース】

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#0404でERASURE[イレイジャー]を取り上げた時にも書いたのだが、母体のバンドやグループよりも、そこから派生したバンドやグループの方が好きになるケースがけっこうな頻度であったりする。


ERASUREはDEPECHE MODEデペッシュ・モード]を脱退したVince Clarke[ヴィンス・クラーク]が立ち上げたシンセポップ・グループだが、今回取り上げているHEAVEN 17[ヘヴン17]はTHE HUMAN LEAGUE[ザ・ヒューマン・リーグ]を脱退したMartyn Ware[マーティン・ウェアー]とIan Craig Marsh[イアン・クレイグ・マーシュ]が立ち上げたシンセポップ・グループだ。


何となくだが、THE HUMAN LEAGUEよりもHEAVEN 17の方が音楽的にキャッチーであり、且つ、音楽的な素養がしっかりしているような気がする(これは、DEPECHE MODEとERASUREの関係にも当て嵌まる)。


今回取り上げているのはHEAVEN 17の3rdアルバム「HOW MEN AREであり、筆者が初めて聴いたHEAVEN 17のアルバムだ。


英国産シンセポップ・グループのシンガーは個性的で癖の強い声の持ち主が多いのだが、HEAVEN 17のシンガーGlenn Gregory[グレン・グレゴリー]は他のシンセポップ・グループのシンガーとは一線を画しているのではないだろうか。


筆者は、Glenn Gregoryの声をあまり個性的だと思っておらず、どちらかと言うと癖が無く主張をしない声だと思っている。


しかし、それがダメなのかと言うと全くそうではなく、むしろその癖の無い彼の声がHEAVEN 17のシンセポップをキャッチーで聴き易い音楽にしているのだ。


HEAVEN 17のライヴは観たことが無いのだが、Glenn Gregoryは見た目もハンサムなので、きっとステージ映えするのではないかと思う。


筆者はHEAVEN 17を先に知って、その後、THE HUMAN LEAGUEの大ヒット曲"Don't You Want Me (邦題:愛の残り火)"のミュージック・ビデオを見たのだが、Philip Oakey[フィリップ・オーキー]のヴィジュアルと声に(申し訳ないのだが)「ウェッ」となってしまい、その後は"Human"を聴くまでTHE HUMAN LEAGUEの良さが分からなかった。


HEAVEN 17はTHE HUMAN LEAGUEに比べると、比較的、誰でもスッと入り込めるシンセポップ・グループなのではないだろうか。


HEAVEN 17のMartyn WareとIan Craig MarshはB.E.F.というチーム名でプロデューサーとしても成功を修めているが、実のところ、彼らはミュージシャンというよりもプロデューサーとしての資質の方が大きいのではないかと思うことがある。

 

#0413) AHH... THE NAME IS BOOTSY, BABY! / BOOTSY'S RUBBER BAND 【1977年リリース】

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Bootsy Collinsブーツィー・コリンズ]と言えば、御大James Brownジェームス・ブラウン]のバック・バンドや、George Clintonジョージ・クリントン]率いるPファンクでの活動で有名な凄腕ベーシストだ。


今回は、そのBootsy CollinsBOOTSY'S RUBBER BAND[ブーツィーズ・ラバー・バンド]としてリリースした2ndアルバムの「AHH... THE NAME IS BOOTSY, BABY!」を取り上げている。


いきなり話は逸れるが、筆者の人間関係は広くて浅い。


若い頃は、その傾向が殊の外、顕著だった。


それ故、自分と同じように音楽を好む人達とも、広くて浅い付き合いをするため、様々な音楽に精通している人との交流が、知らず知らずのうちに広がっていく。


Bootsy Collinsに関しては、筆者が若い時にブラック・ミュージックの先生として師事していたバンドマンのお兄さんから教えてもらった。


そのバンドマンのお兄さんが「これを聴け」と言って貸してくれた1枚が、今回取り上げている「AHH... THE NAME IS BOOTSY, BABY!」なのである。


このアルバムがリリースされたのは1977年なので、1969年生れで1982年頃から洋楽を聴き始めた筆者にとっては、完全に後追いの作品である。


当時の筆者にとって、1970年代とは名盤の宝庫という印象があり、1970年代の名盤と言われるアルバムを聴き漁っていたのだが、Bootsy Collinsというミュージシャン、そして、このアルバムのことは全く知らない状態だった。


未知の状態で出会ったアルバムなので、恐る恐る聴いてみたのだが、スピーカーから飛び出してきたクールなカッコ良さに筆者は一発でノックアウトされたのである。


ファンクに対し、筆者は濃厚で熱いというイメージを持っていたのだが、このアルバムによって、そのイメージを覆されたのだ。


確かに、このアルバムにも「濃厚で熱い」部分はあるのだが、それよりもクールなカッコ良さがの方が際立っているのである。


収録されている全てが名曲・名演なのだが、中でも6曲目(B面2曲目)の"Munchies for Your Love"は鼻血が吹き出すほどのカッコ良さだ。


この曲は9分を超える長尺の曲なのだが、この曲を聴いている時間があまりにも幸せ過ぎるので、恍惚としている間に、一瞬にして時間が過ぎてしまうのである。

 

#0412) AGENTS OF FORTUNE / BLUE OYSTER CULT 【1976年リリース】

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ニューヨークっぽいバンドと訊かれて思い浮かぶのはどんなバンドだろう?


THE VELVET UNDERGROUND[ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド]?RAMONESラモーンズ]?TELEVISION[テレヴィジョン]?TALKING HEADSトーキング・ヘッズ]?その名もズバリのNEW YORK DOLLSニューヨーク・ドールズ]か?


筆者の場合、リアルタイムで出会って大好きになったTWISTED SISTER[トゥイステッド・シスター]と、今回取り上げている「元祖ヘヴィ・メタル」のBLUE ÖYSTER CULTブルー・オイスター・カルト]が真っ先に思い浮かぶバンドだ。


初めて筆者が聴いたBLUE ÖYSTER CULTのアルバムは8thアルバムの「FIRE OF UNKNOWN ORIGIN」(1981年リリース)なのだが、曲が良いのでアルバム自体は好きになったものの、「元祖ヘヴィ・メタル」に関しては全くピンとこなかった。


その後、BLUE ÖYSTER CULTのアルバムはCD時代になってからジワジワと買い始めたのだが、やはり、「元祖ヘヴィ・メタル」というのがピンとくることはなく、かろうじてライブ・アルバムの「ON YOUR FEET OR ON YOUR KNEES」(1975年リリース)で聴けるハードな演奏にその片鱗が垣間見れるくらいである。


今回取り上げているのはBLUE ÖYSTER CULTの代表作であり、名盤として誉れ高い4thアルバムの「AGENTS OF FORTUNE」(邦題「タロットの呪い」)なのだが、確かにこのアルバムは評判通り、看板に偽りなしの名盤である。


「元祖ヘヴィ・メタル」というのはマネジメントかレコード会社によって付けられと予想されるが、BLUE ÖYSTER CULTの音楽性はハード・ロックプログレッシヴ・ロック、ロックン・ロール、サイケデリック・ロック等、曲によってテイストがかなり変わるので一つのジャンル名でこのバンドの音楽性を説明するのは困難だ。


今回取り上げている名盤「AGENTS OF FORTUNE」も、上記したそれぞれのジャンルのテイストを持つ曲が次から次へと繰り出されるのだが、不思議とアルバムとしての統一感があり、「ごった煮」的な感じはない。


どの曲にも共通して言えるのは「ニューヨークっぽい」ということであり、非常に洗練されていて、田舎臭い部分が全く無いのである。


BLUE ÖYSTER CULTはニューヨークのバンドで且つオリジナル・メンバー全員がニューヨーク出身だ。


AGENTS OF FORTUNE」もオリジナル・メンバーで制作されており、ニューヨークが放つ冷めた炎のような演奏が、このアルバムのリスナーを惹き付けて止まない魅力なのである。