第一回と第二回に英国のミュージシャンを取り上げたので、第三回(今回)は米国のミュージシャンを取り上げようと思う。
Robert Johnson〔ロバート・ジョンソン〕の「KING OF THE DELTA BLUES SINGERS, VOL. II」。
1911年に誕生し、1938年に享年27歳で死没したブルース・マンのコンピレーション・アルバムだ。
日本の元号で言うと、明治44年誕生、昭和13年死没ということになる。
もう歴史的過去の人物だ。
初めて聴いたのは、たぶん18歳頃。
行きつけの輸入レコード店のオーナーから薦められて購入したレコードだ。
オーナーから、「ロックが好きならブルースも聴きなさい」と言われ、ブルースが何かもよく解らず、うやむやの内に買わされた感じだった。
家に帰って、レコードに針を落とし、聴こえてきた情念の塊のような歌とギターに、しばし戦慄した。
聴いていて、「怖いな」と感じながらも、泥沼にはまるように繰り返し聴いてしまい、その後、40代後半の現在に至るまで、聴き続けるレコードになった。
このレコードを買って、だいぶ経ってからRobert Johnsonがデルタ・ブルースの伝説のシンガー/ギタリストだということを知った。
十字路で悪魔と出会ったRobert Johnsonが、自分の魂と引き換えに、歌とギターのテクニックを悪魔から貰い受けたという伝説(作り話)も後になって知り、彼のレコードを聴いた時に感じる「怖い」という感覚はここから来るのかなと思ったりもした。
デルタ・ブルースは、アコースティック・ギターによる弾き語りだ。
はっきり言って、普段、ロックを聴いている耳には取っ付きにくい。
ロック・リスナーがブルースに入門するなら、エレキ・ギターを取り入れたバンド・サウンドのシカゴ・ブルースの方がはるかに取っ付きやすいはずだ。
あの輸入レコード店のオーナーは、当時、幼気(いたいけ)な少年だった筆者に、よくもこんな劇薬なレコード勧めてくれたものだ。
お陰様で、毒にも薬にもならない音楽は聴けない体になってしまった。