筆者がロックを聴き始めた時期はJAPAN〔ジャパン〕が解散した時期と重なる。
このバンドは、とにかく女子からの人気が凄かった。
クラスのロックを聴いていた女子のほぼ全てがJAPANのファンだった。
正確に言うと、ヴォーカルのDavid Sylvian〔デヴィッド・シルヴィアン〕のファンだった。
まるで少女漫画からそのまま抜け出てきたようなSylvianの容姿は思春期の女子のアイドルとして必要なものが全て揃っていた。
それ故、解散してもなお、女子からのJAPANの人気は衰えることがなく、レコード店でも彼らの在庫は充実していた。
筆者が初めて買ったロックのレコードもJAPANの3rdアルバム「QUIET LIFE」であり、何故それを買ったのかと言えば、知っているバンドであり、当時のレコード店で容易に入手することが出来たからだ。
その後、「QUIET LIFE」から遡って、かなり早いスピードで今回取り上げた1stアルバム「ADOLESCENT SEX」に辿り着いた。
このアルバムを聴いて、ちょっと不思議に感じたのは、とてもじゃないが日本の女子からアイドル視されるような解り易い音ではないということだった。
ブラック・ミュージックを白人流に解釈した捻じれたフェイク・ファンクの上に、顕かにBryan Ferry〔ブライアン・フェリー〕から影響を受けているであろうSylvianのねちっこいヴォーカルが乗るそのサウンドは、女子が熱狂するようなバブルガム・ポップとはかけ離れた音楽性だった。
筆者は男なのでJAPANの、或いは、Sylvianの容姿なんてどうでもよかったが、一筋縄ではいかない彼らの深い音楽性には強烈に魅かれた。
特に一聴して彼だと判るMick Karn〔ミック・カーン〕のうねりまくるフレットレス・ベースには完全にやられてしまい、JAPANのレコードを聴く時はヴォーカルよりもベースを耳で追うようになっていた。
JAPANというバンドの歴史において、評価の高い時期は前期より後期だろう。
JAPANの殆どの曲を書いているSylvian自身も、3rd「QUIET LIFE」以降が自分のミュージシャンとしてのキャリアであり、今回取り上げた1st「ADOLESCENT SEX」と2nd「OBSCURE ALTERNATIVES」を黒歴史のように扱っているふしがある。
確かに、バンドの後期にリリースされた4th「GENTLEMEN TAKE POLAROIDS」と、5th「TIN DRUM」は芸術性の高いアート・ロックであり、それはそれで素晴らしい作品である。
しかし、筆者は、初期の2枚、特に今回取り上げた「ADOLESCENT SEX」で鳴らされている未完成で粗削りなロック・サウンドにも、JAPANというバンドの魅力が間違いなく宿っていると言いたい。