Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0452) 好きなバラード(80年代・日本のロック・バンド)

Lovely Girl / G.D. Flickers

[曲名]
 Lovely Girl

[アーティスト名]
 G.D. Flickers [ジー・ディー・フリッカーズ]

[収録アルバム]
Some Girls


 2ndミニ・アルバム [リリース: 1987年]

[コメント]
 この曲は、作曲がギターの HARA、作詞が Y. YORIMOTO というバンド外の人であり、ヴォーカルの JOE は作詞していないのだが、JOE の無愛想な歌い方が絶妙に嵌っているバラードだ。
 ラヴ・ソングなのだが、この曲に登場する男は自分を愛してくれている女を受け入れることを躊躇っており、それは行くあてなく破滅に向かっている自分に女を巻き込んでしまうかもしれないからだ。
 このバンドは、とても不器用なところがあり、ヒットチャートの上位に送り込めるような曲を絶対に書かないのだが、この曲はそんなバンドのキャラにとても合っている。
 2023年も現役で活動している彼らには、この名曲を埋もれさせることなく、ぜひ現在のライヴでも演奏してほしいものである。


Party Is Over / Red Warriors

[曲名]
 Party Is Over

[アーティスト名]
Red Warriors [レッド・ウォーリアーズ]

[収録アルバム]
King's


 3rdアルバム [リリース: 1988年]

[コメント]
 この曲の歌詞は、ヴォーカルのダイアモンド☆ユカイが主演した日米合作映画『TOKYO-POP』、および、その主演女優だったCarrie Hamilton[キャリー・ハミルトン]との思い出をベースにして書かれている(ユカイの星は本当は六芒星だ)。
 ギターの木暮武彦Frank Sinatraフランク・シナトラ]を意識して書いた曲は、50年代のハリウッド映画のエンディングに流れそうなメロデイーが印象的であり、上述の歌詞と相まって、とてもロマンティックだ。
 別れを決めた男と女の最後の夜を歌った曲であり、「ユカイとキャリーの間には何かあったのかもしれない」と想像させられる。
 この曲のような「ベタな男女の物語」を歌った曲は、最近の日本のロックには無くなってしまったような気がする(筆者が知らないだけか?)。


Sing a Song / Shady Dolls

[曲名]
Sing a Song

[アーティスト名]
 Shady Dolls [シェイディ・ドールズ]

[収録アルバム]
Get The Black


 1stアルバム [リリース: 1987年]

[コメント]
 この曲はバラードではなく、スローなロックン・ロールなのかもしれない。
 デビュー・アルバムの1曲目なら、アップ・テンポで激しめの曲を持ってきた方が聴く人の心を掴みやすいと思うのだが、あえて、スローでグルーヴィーなこの曲で始めるというのは、このバンドの自信の表れなのだろう。
 このバンドはインディー・レーベルからのリリースが無いまま、いきなりメジャー・デビューしているのだが、当時の平均年齢が19歳だったというのが信じられないくらい、良い意味での「枯れた」演奏と歌が素晴らしい。
 パンクでもメタルでもない、こういう「明日のことさえ分からないオイラ」みたいなカッコ良いロックン・ロール・バンドって、今の日本にいるのだろうか?


Who's Gonna Win? / Tilt

[曲名]
 Who's Gonna Win?

[アーティスト名]
 Tilt [ティルト]

[収録アルバム]
Tilt Trick


 2ndアルバム(メジャー・デビュー・アルバム) [リリース: 1988年]

[コメント]
 このバンドは名古屋出身で、初期はプログレッシヴ・ロック・バンドだったのだが、メンバー・チェンジを繰り返すうちにロックン・ロール・バンドになった。
 今回取り上げた中では最も洋楽嗜好の強いバンドであり、その音楽性は70年代の Aerosmith と80年代のグラム・メタルをミックスした感じだ。
 この "Who's Gonna Win?" という曲は歌詞が英語であり、Aerosmith、Mötley Crüe、Bon Jovi あたりがカヴァーしても違和感を感じさせない非常にスケールの大きい大陸的なバラードである。
 聴いているときに思い浮かぶ風景は日本ではなくロサンゼルスであり、日本のラジオ局よりも、ロサンゼルスの KNAC の方が似合うバラードと言えば、どのようか曲かをイメージしてもらえるのではないだろうか?


Burnin' Love / Ziggy

[曲名]
 Burnin' Love

[アーティスト名]
Ziggy [ジギー]

[収録アルバム]
それゆけ! R&R Band


 1stミニ・アルバム [リリース: 1987年]

[コメント]
Ziggy がリリースした最初のアルバム(ミニ・アルバム)のラストを飾るバラードなのだが、初めて聴いたときはブッ飛んでしまった。
 当時それほど日本のロックを聴き込んでいなかった筆者にとって、Aerosmith の "You See Me Crying" や "Home Tonight"、Hanoi Rocks の "Don't You Ever Leave Me"、Mötley Crüe の "Home Sweet Home" に匹敵するクオリティーを持つバラードが、日本のインディー・レーベルのレコードからから流れてきたときの新鮮な驚きは今でも鮮明に記憶している。
 そして、それは、筆者が日本のロックに本格的に嵌り始めた瞬間でもあった。
 このミニ・アルバムの直ぐ後、Ziggyはメジャー・デビューするのだが、しばらくの間、このバンドのアルバムのラストはバラードが定番となる。

総括

 筆者がロックを聴き始めたのは1982年(中学1年)からなのだが、その頃は漠然と「ロックとは洋楽」であり「日本のロックなんて聴けるか!」という、今にして思うとアホみたいな拘りがあった。

 そんな筆者が、日本のロックを初めて「良いな」と思った瞬間は Red Warriors の "John" を聴いたときだ。

 先輩の車(スカイライン・ジャパン)に載せてもらっているときに、同級生のK君がカーステレオに入れたカセットテープが Red Warriors の 2ndアルバム Casino Drive であり、その B面の1曲目が "John" だったのである。

 つまり、K君のカセットテープの状態がB面に巻かれていたということなのだが、レコードやカセットテープはA面/B面という表裏を持つメディアであり、当時は必ずしも毎回A面から聴くということはなく、全部聴くつもりがA面だけ聴いて止めたり、あえてB面だけ聴いたり、B面だけ聴くつもりが続けてA面も聴いたりという具合に、変則的な聴き方も面白かった。

 その後、メディアが CD になってからは、聴きたい曲だけをチョイスして聴くことが多くなったような気がする。

 話が横道に逸れたが、とにかく、カーステレオから流れてきた Red Warriors の "John" に筆者は心惹かれたのである。

 そのときは曲名が "John" だということも知らず、レコード店に行って「これに入ってるんちゃうん?」と、あてずっぽうで買ったアルバムが 1stアルバムの Lesson 1 だったので "John" は入ってなかったのだが、結果的には Lesson 1 は素晴らしいアルバムだったので、筆者は Red Warriors を好きになったのである。

 結局のところ、筆者は、自分が日本人のくせに、日本のロックに対して差別的な意識や偏見を持っているという、最低最悪な、しょーもない人間だったのである(ちなみに、この「日本のロック」という言い方も嫌いなのだが、この言葉を使わずに文章を書く能力がないので妥協して使っている)。

 とにかく、自分の中にある、この意識に気付いたときは、本当に愕然としてしまい、悲しい気持ちになった。

 そもそもロックとは自由を標榜し、不当な偏見や差別に No という姿勢を持つ音楽であり、白とか黒とか黄色なんていうことに拘ることには何の意味もないということを教えてくれたロックを聴いていながら、筆者の中には上述した意識があったのだから、本当に「しょーもない人間」としか言いようがない。

 その後、K君とは、洋楽ロックを筆者からK君に、日本のロックをK君から筆者に、という具合にカセットテープを交換する仲になった(これはお金の面でとても助かった)。

 今回は、80年代の日本のロック・バンドの曲の中でも、特に好きなバラードを5曲取り上げたのだが、87年と88年の曲に集中しており、いずれもバッド・ボーイズ・ロックン・ロールというジャンルにカテゴライズ可能なバンドの曲である。

 何故こうなったのかは簡単に説明できる。

 87年は、米国で Guns N' Roses のデビュー・アルバム Appetite for Destruction がリリースされた年であり、そのインパクトが日本に上陸してバッド・ボーイズ・ロックン・ロールというムーヴメントが興った。

 当時、筆者が最も好きだった日本のロックが Guns N' Roses 等、米国の後期グラム・メタルの影響を受けたバッド・ボーイズ・ロックン・ロールであり、この手のバンドのレコードを買い漁っていたのだ。

 それにしても、今回この文章を書いていて思ったのは、バッド・ボーイズ・ロックン・ロールというジャンル名のカッコ悪さだ。

 誰が付けたのかは知らないが、もう少し、ましなジャンル名を付けることはできなかったのだろうか?