今回取り上げている村八分は、筆者が生まれ育った街「京都」で結成された伝説のロックン・ロール・バンドである。
筆者は1969年生れ、村八分の結成も1969年なので、当然のことながら、リアルタイムで体験したバンドではない。
13歳(中1)でロックを聴き始めた筆者は、ロックと言えば洋楽(というか、アメリカ、イギリス、そして少しだけドイツと北欧)だと思っていたのだが、高校で出会ったK君という同級生から様々な日本のロック・バンドを聴かせてもらうようになり、それからは彼がカセットテープに録音してくれた日本のロック・バンドを熱心に聴くようになった。
その中でも筆者が特に好きになったのは、RED WARRIORS[レッド・ウォーリアーズ]、ZIGGY[ジギー]、G.D.FLICKERS[ジー・ディー・フリッカーズ]、SHADY DOLLS[シェイディ・ドールズ]、MARCHOSIAS VAMP[マルコシアス・バンプ]といった、所謂バッド・ボーイズ・ロックン・ロール・バンドであり(MARCHOSIAS VAMPはちょっと違うかな?)、彼らのルーツを掘り下げていくことで出会ったバンドの一つが村八分だったのである。
当時(1980年代後半)は、リリースされる音楽の記録媒体が、レコードからCDに移り変わっていた時代なのだが、村八分が、その活動期間中(1969年~1973年)に、正式にリリースした唯一のアルバムである「ライブ」も復刻版としてCDでリリースされていた。
当時の筆者は、街中のレコード店をハシゴして、掘り出し物を見つけることを楽しみにしていたのだが、村八分の「ライブ」を見つけた時は驚きと興奮で眩暈がしたものである。
当然、即買いしたわけだが、家に帰って「ライブ」を聴いた時は別な意味で眩暈がした。
全然、良くなかったのである。
この「ライブ」というアルバムは、京都大学西部講堂で行われたライブを録音したライブ・アルバムなのだが、前述した1980年代後半のバッド・ボーイズ・ロックン・ロール・バンドとは、似ても似つかぬ歪な音だったのだ。
村八分というバンドは、THE DYNAMITES[ザ・ダイナマイツ]でメジャー・デビュー経験のある山口冨士夫のギターだけは、ずば抜けて上手いのだが、他のメンバーの技量は、ほぼアマチュアであり、かなり聴きにくく、楽曲にもキャッチーな要素が全くない。
その後、時が流れて2000年代に入り、筆者は騒音寺というバンドを聴くことになる。
騒音寺も、京都で結成され、京都で活動するロックン・ロール・バンドだ。
騒音寺は既にこのブログでも取り上げているのだが、「京都には凄いロックン・ロール・バンドがいる」と自慢したくなるくらい、カッコ良いバンドなのである。
そして、騒音寺の曲が放つ「京都感」に触れた時に、村八分のことを思い出したのである。
「今なら、村八分の良さが分かるかもしれない」と思い、再び「ライブ」を聴き直してみたところ、勝手な話だが、良かったのである。
やはり、山口冨士夫のギター以外は下手なのだが、彼らが奏でる京都っぽい和のテイストを持つロックン・ロールは極めて独創的であり、このテイストは村八分というバンド以外では味わうことの出来ない個性なのである。