大好きなアーティストであるにも関わらず、音源を入手し難いため、ブログでそのアーティストを取り上げることを躊躇う場合がある。
例えば、今回取り上げるTHE CHERRY BOMBZ〔ザ・チェリー・ボムズ〕はそれに該当するアーティストだ。
このTHE CHERRY BOMBZというバンドは、EPを数枚リリースしただけで、一瞬にして解散してしまったバンドであり、音源の入手が極めて困難なバンドなのである。
ところが、最近、Amazon Music UnlimitedでTHE CHERRY BOMBZの「LIVE FROM LONDON」というライヴ・アルバムを見つけたので、今回はTHE CHERRY BOMBZ並びに「LIVE FROM LONDON」を取り上げてみる。
このアルバムは、元々はライヴDVDであり、たぶん、そこから落とした音であるためか、録音レベルが低く、かなり音質も悪いのだが、とりあえずこのアルバムでTHE CHERRY BOMBZの全貌を知ることが出来る。
こういう音源を取り上げるのは反則かもしれないし、このブログでは、出来ればライヴ・アルバムは取り上げたくないのだが、これ以外に簡単に入手可能なTHE CHERRY BOMBZの音源が無いので致し方ない。
THE CHERRY BOMBZとは、1985年に解散したHANOI ROCKS〔ハノイ・ロックス〕のギタリストでありメイン・ソングライターだったAndy McCoy〔アンディ・マッコイ〕がTOTO COELO〔トト・コエロ〕のAnita Chellemah〔アニタ・シェラマー〕という女性シンガーと共に結成したバンドである。
このバンドには同じくHANOI ROCKSのギタリストであるNasty Suicide〔ナスティ・スーサイド〕や解散直前のHANOI ROCKS に参加していたドラマーのTerry Chimes〔テリー・チャイムス〕、THE LORDS OF THE NEW CHURCH〔ザ・ローズ・オブ・ザ・ニュー・チャーチ〕のベーシストであり、後にAndy McCoy のバンドSHOOTING GALLERY 〔シューティング・ギャラリー〕にも加入するDave Tregunna〔デイヴ・トレガンナ〕も参加しており、HANOI ROCKSと縁の深いミュージシャンで結成されたバンドだ。
ちなみに、Dave Tregunnaの前任ベーシスト(初代ベーシスト)は、後にNasty SuicideのバンドCHEAP AND NASTY〔チープ・アンド・ナスティ〕に加入するTimo Kaltio〔ティモ・カルティオ〕である。
1980年代前半において、筆者が最も愛したバンドはHANOI ROCKSだった。
そんなHANOI ROCKSが、ドラマーであるRazzle〔ラズル〕の事故死が引き金となって解散してしまったため、当時の筆者は深く落ち込んでいた。
そんな筆者がHANOI ROCKSを喪失したショックから立ち直る切っ掛けとなったのがTHE CHERRY BOMBZだった。
THE CHERRY BOMBZの曲"House Of Ecstasy"を聴いた時、「このバンドがあれば、HANOI ROCKSが無くても、もう大丈夫だ」と思ったのである。
筆者は、HANOI ROCKSのファンであることに間違いは無かったのだが、それ以上にソングライターとしてのAndy McCoyが書く曲のファンだったのだ。
故に、Andy McCoyが曲を書くのであれば、ヴォーカルがMichael Monroe〔マイケル・モンロー〕であることへの拘りは殆ど無い。
むしろ、シンガーとしては、Michael MonroeよりもAnita Chellemahの方が好みに合う。
そう言えば、THE CHERRY BOMBZはHANOI ROCKSの曲をライヴで演奏しているのだが、これをMichael Monroeは快く思っていなかったようで、当時の洋楽雑誌に掲載されたMichael Monroeのインタビューで、彼がTHE CHERRY BOMBZやAndy McCoy、Anita Chellemahについてけっこう辛辣なことを言っていた。
筆者は、これが、その後の永きに渡るAndy McCoyとMichael Monroeの確執に繋がったのではないかと思っている。
「LIVE FROM LONDON」では、最も脂がのった絶頂期のAndy McCoyが書いた曲と、Anita Chellemahの淫らで猥雑なヴォーカルがこれでもかとばかりに聴き手の眼前に押し寄せてくる。
THE CHERRY BOMBZは、これほど良いバンドであったにも関わらず、Andy McCoyとAnita Chellemahの痴情の縺れによりあっけなく解散してしまう(一説によると、これにはBilly Idol〔ビリー・アイドル〕が深く関係しているらしい)。
このアルバムは残念ながら極めて音質が悪いのだが、それを差し引いてでもTHE CHERRY BOMBZというバンドに興味を持ってもらいたかったので、今回はこのような変則的な作品を取り上げてみた。