ファンク・メタルの先駆者と言えば、RED HOT CHILI PEPPERS〔レッド・ホット・チリ・ペッパーズ〕、或いは、FISHBONE〔フィッシュボーン〕あたりになるのだろうか。
RED HOT CHILI PEPPERSはアルバムをリリースする毎にジワジワとトップ・バンドに登り詰め、FISHBONEは登り詰めることはなかったがコアなファンを獲得した。
それに比べると、JANE'S ADDICTION〔ジェーンズ・アディクション〕の登場は衝撃的だった。
既にRED HOT CHILI PEPPERSやFISHBONE等の先人が造り上げてくれたファンク・メタルが受け入れられ易い地盤が出来ていたとは言え、このバンドは瞬く間にシーンの最重要バンドになったような印象がある。
今回取り上げるJANE'S ADDICTIONの2ndアルバム「RITUAL DE LO HABITUAL」は商業的に大きな成功を修めると共に、彼らをロック・レジェンドとして決定付けた名盤である。
このバンドはファンク・メタルとしてカテゴライズされることが一般的だが、筆者の聴いた感触ではRED HOT CHILI PEPPERSやFISHBONEほどファンキーではない。
RED HOT CHILI PEPPERSやFISHBONEに比べると、圧倒的にメタルの要素が強いと感じている。
もちろん、正統派のヘヴィ・メタルと比べれば、かなりファンキーな音なのだが、普段ファンク等ブラック・ミュージック由来のリズムが強調された音楽を積極的に聴かないリスナーでも十分に楽しめるメタリックな鋭さがある。
その鋭さを牽引しているのがDave Navarro〔デイヴ・ナヴァロ〕のギターだ。
器用なギタリストなのでどんな曲でも弾きこなしてしまう人なのだが、この人のルーツにはファンクと同じくらいか、或いは、それ以上に王道ハード・ロックがあるのではないだろうか。
それを裏付けるかのように、JANE'S ADDICTIONが解散している時にDave Navarroが結成したTHE PANIC CHANNEL〔ザ・パニック・チャンネル〕は、かなりストレートな王道ハード・ロックだった。
「RITUAL DE LO HABITUAL」には10分を超える"Three Days"という大作が収録されているが、この曲などはゴシック・ロックの要素すら感じさせる曲であり、ファンク・メタルからはかなり遠い位置にある曲と言えるだろう。
ファンク・メタルというジャンルにカテゴライズされるバンドは、個々のメンバーの演奏者としての技術力が高いため、実は単純にファンク・メタルという言葉で片付けられない音楽性を持っている場合が多い。
JANE'S ADDICTIONというバンドも正にそれであり、「RITUAL DE LO HABITUAL」というアルバムも、一言では到底説明しきれない音楽性を備えている。
このアルバムはJANE'S ADDICTIONに急速な成功をもたらせたのだが、いつの時代でも急速な成功はバンド内の人間関係を崩壊させる場合が多い。
JANE'S ADDICTIONも人間関係をもつれさせ、このアルバムを最後に、最初の解散を向かえた。
そして、再結成後に発表されたアルバムもかなりクオリティの高い出来になってはいるものの、今のところ「RITUAL DE LO HABITUAL」を超えるアルバムは作れていない。