Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0454) Guns N' Roses 以降(80年代後期・米国)

1987

Faster Pussycat [ファスター・プッシーキャット]

origin: Los Angeles, California, U.S.

[comment]
 今回のタイトルは「Guns N' Roses 以降」なのだが、実は、このバンド Faster Pussycat は Guns N' Roses よりも先にメジャー・デビュー・アルバムをリリースしている(Faster Pussycat が 1987年7月7日、Appetite for Destruction が同年7月21日)。
 Faster Pussycat のバックグラウンドには、間違いなく Aerosmith と New York Dolls が存在するはずなのだが、この2つの70年代におけるロックン・ロール・レジェンドをミックスさせることに成功したバンドは、彼らが初めてだったのではないだろうか?

【1987】Faster Pussycat [ファスター・プッシーキャット生誕!]
1st

【1989】Wake Me When It's Over [ウェイク・ミー・ホエン・イッツ・オーヴァー]
2nd

【1992】Whipped! [ホイップ!]
3rd

 


1988

L.A. Guns [エルエー・ガンズ]

origin: Los Angeles, California, U.S.

[comment]
 このバンドのデビュー時のメンバーは、元 Girl の Phil Lewis (vo)、元 Guns N' Roses の Tracii Guns (lead gt)、元 Faster Pussycat の Kelly Nickels (ba) という顔ぶれで、デビュー直後には元 Keel ~ 元 W.A.S.P. の Steve Riley (dr) も加入したので、初っ端からスーパー・グループ的な存在感があった(rhythm gt の Mick Cripps だけは経歴が不明)。
 ちなみに、Guns N' Roses の Axl Rose は 元 L.A. Guns で、L.A. Guns の Tracii Guns は 元 Guns N' Roses なので、2つのバンドの関係はややこしい。
 G N' R 以降のバンドは、メタルよりもR&Rの成分の方が多いのだが、このバンドはR&Rよりもメタルの成分の方がが多い。

【1988】L.A. Guns [L.A.ガンズ "砲"]
1st

【1989】Cocked & Loaded [コックド・アンド・ローディド]
2nd

【1991】Hollywood Vampires [ハリウッド・ヴァンパイアーズ]
3rd

 


Jetboy [ジェットボーイ]

origin: San Francisco, California, U.S.

[comment]
 Jetboy というバンド名は New York Dolls の曲名と同じなのだが New York Dolls っぽさはなく、ベーシストの Sami Yaffa は元 Hanoi Rocks なのだが Hanoi Rocks っぽさはなく、シンガーの Mickey Finn はモヒカン刈りなのだが GBH っぽさはなく、結局のところ一番似ているのは AC/DC なのである。
 そもそも80年代のグラム・メタル・バンドの場合、AC/DC の影響を受けていないバンドを探す方が難しいのだが、良い意味で本家ほどの切れ味が無い適度にブルージーなR&Rは、同時代の AC/DC 系バンドの中では頭一つ抜けた作曲センスを持っていた。

【1988】Feel the Shake [フィール・ザ・シェイク]
1st

【1990】Damned Nation [ダムド・ネイション]
2nd

 


Circus of Power [サーカス・オブ・パワー]

origin: New York City, U.S.

[comment]
 このバンドがデビューしたとき、日本の洋楽雑誌では「ロサンゼルス の Guns N' Roses に対するニューヨークからの回答」という謳い文句で紹介されていた記憶がある。
 確かに、Guns N' Roses も Circus of Power も、ハード・ロックの要素を多分に持つロックン・ロールが基盤となっているので、上述の謳い文句も分からくはないのだが、Circus of Power の曲は G N' R ほどキャッチーではない。
 引き摺るようなミドルテンポの曲が多く、今あらためて聴いてみると、G N' R よりも、90年代に登場した Kyuss や Monster Magnet あたりのストーナー・ロックに近いような気がする。

【1988】Circus of Power [狼たちの夜]
1st

【1990】Vices [悪徳の街]
2nd

【1993】Magic & Madness [マジック&マッドネス]
3rd

 


Rock City Angels [ロック・シティ・エンジェルス]

origin: Florida, U.S.

[comment]
 明確に Guns N' Roses の二番煎じ的な形で登場したのは、このバンドが最初だったような気がする。
 レコード会社がゲフィン、メンバーのルックスもバッド・ボーイ風であり、どうしても G N' R を彷彿とさせる要素が多すぎて、当時の洋楽雑誌に載ったプロフィールを読んだときには単なるフォロワーとしか思えなかったのが正直な感想だった(たぶん、ゲフィンも「二匹目のドジョウ」のつもりで契約したと思う)。
 しかし、そんな思い込みは、デビュー曲の "Deep Inside My Heart" を聴いた瞬間に吹っ飛んでしまうのだが。

【1988】Young Man's Blues [ヤング・マンズ・ブルース]
1st

 


1989

Skid Row [スキッド・ロウ]

origin: Toms River, New Jersey, U.S.

[comment]
 Guns N' Roses の登場以降、米国のレコード会社はメタル系バンドの青田買いを激化させたのだが、G N' R の Appetite for Destruction に拮抗し得る完成度を持つデビュー・アルバムをリリースできたのは、このバンドだけだ。
 デビュー時における、同郷ニュージャージーの先輩 Jon Bon Jovi の支援は少なからずプラス作用があったはずだが、この支援がなかったとしても Skid Row というバンド名はロックの歴史に深く刻み込まれていたはずである。

【1989】Skid Row [スキッド・ロウ]
1st

【1991】Slave to the Grind [スレイヴ・トゥ・ザ・グラインド]
2nd

【1992】B-Side Ourselves [ビーサイズ・アワーセルヴズ]
EP

 


Bang Tango [バング・タンゴ]

origin:Los Angeles, California, U.S.

[comment]
 Bang Tango はグラム・メタルにカテゴライズされるバンドだが、ファンク・メタルにカテゴライズされることもある。
 特に、2nd の Dancin' on Coals は、このバンドのファンキーな要素が色濃く表れたアルバムなのだが、Red Hot Chili Peppers や Primus ほどファンクに軸足を置いているわけではなく、このバンドの軸足はメタルに置かれている。
 このバンドの音を、もう少しアーティスティックに、或いは、エキセントリックにすると、Jane's Addiction のようなバンドに近づくのではないだろか?

【1989】Psycho Café [サイコ・カフェ]
1st

【1991】Dancin' on Coals [ダンシン・オン・コールス]
2nd

 


Vain [ヴェイン]

origin: San Francisco Bay Area, California, U.S.

[comment]
Skid Row のことを「Guns N' Roses 以降、Appetite for Destruction に拮抗しうるデビュー・アルバムをリリースした唯一のバンド」と書いたが、実は、この Vain のデビュー・アルバム No Respect も、かなりそれに近いところまで行っている。
 Davy Vain の声質が粘着質で爬虫類的なことや、妖艶でダークな曲調は一般受けしにくいとは思うのだが、シーンが飽和し、似たような曲を書くバンドが多発したこの時代において、強すぎるほどの癖を持つ Vain というバンドにはメタル・ファンを惹き付ける輝きがあった。

【1989】No Respect [ノー・リスペクト]
1st

【1991】All Those Strangers [オール・ゾーズ・ストレンジャーズ]
2nd (Released in 2009)

【1993】Move On It [ムーヴ・オン・イット]
3rd

 


Junkyard [ジャンクヤード]

origin: Los Angeles, California, U.S.

[comment]
 ゲフィン・レコードは Guns N' Roses の二匹目のドジョウとして Rock City Angels を発掘したが、この Junkyard は、同じくゲフィン・レコードが発掘した三匹目のドジョウだ。
 こう書いてしまうと如何にも偽物っぽく感じてしまうかもしれないが、Minor Threat、Big Boys、Dag Nasty といった、その筋では有名なハードコア・パンク・バンド出身のメンバーによって結成されたバンドなので楽曲と演奏の質は高い。
 2nd の Sixes, Sevens & Nines は、オーセンティックなアメリカン・ハードR&Rであり、なかなかの名盤だと思う。

【1989】Junkyard [ジャンクヤード]
1st

【1991】Sixes, Sevens & Nines [シックスィズ、セヴンズ&ナインズ]
2nd

 


Dangerous Toys [デンジャラス・トイズ]

origin: Austin, Texas, U.S.

[comment]
 Guns N' Roses の四匹目のドジョウは、ゲフィン・レコードではなく、コロムビア・レコードから登場した。
スラッシュ・メタル/プログレッシヴ・メタル界隈では古株で且つ大物だった Watchtower を脱退したシンガー、Jason McMaster を中心に結成されたバンドなのだが、Watchtower とは大きく音楽性を変えているのでブームに便乗しようとした感じは否めない。
 ただし、曲の完成度は高く、変化に富んでおり、演奏もタイトで、「~目のドジョウ」のデビュー・アルバムの中では、このバンドのアルバムが一番飽きずに聴くことができる。

【1989】Dangerous Toys [デンジャラス・トイズ]
1st

【1991】Hellacious Acres [悪魔の遊園地]
2nd

 


Johnny Crash [ジョニー・クラッシュ]

origin: Los Angeles, California, U.S.

[comment]
 Guns N' Roses の四匹目のドジョウも、ゲフィン・レコードではなく、コロムビア・レコードから登場した。
 Johnny Crash は、New Wave of British Heavy Metal の中堅バンドだった Tokyo Blade のシンガー Vicki James Wright が、英国から米国のロサンゼルスに渡って結成したバンドだ。
 ただし、ブリティッシュヘヴィ・メタル的な湿り気を帯びた憂いは皆無であり、カラッカラに乾いた縦ノリのハードR&Rは AC/DC の優秀なエピゴーネンである(貶していない、褒めている)。

【1990】Neighbourhood Threat [ネイバーフッド・スレット]
1st

 


~ 総括 ~

 筆者がロックを聴き始めたのは、1982年、中学校1年生のときなのだが、リアルタイムで出会ったバンドの中で、最も衝撃を受けたバンドは Guns N' Roses (以下、G N' R) である。

 G N' R よりも少し前に、Mötley Crüe、Ratt、Poison、Cinderella といった、米国のグラム・メタル・バンドを好んで聴いていたのだが、G N' R は前出のバンドと比べると、もっとプリミティヴな印象があり、ギラギラと妖しく輝いていた。

 G N' R のギタリスト、Slash は Poison のオーディションに落ちているのだが、たぶん、その理由は技術的なことではなく、ヴィジュアル的に無理があるからではないだろうか?

 やはり、Poison のギタリストは、C.C. DeVille の方がヴィジュアル的に合っている。

 横道に逸れたので話を G N' R に戻す。

 筆者が G N' R を知ったのは、彼らのデビュー・アルバム Appetite for Destruction がリリースされる直前に、洋楽雑誌 MUSIC LIFE に掲載された特集記事だ。

 その記事は「今、ロサンゼルスの新世代バンドが熱い!」的な内容であり、G N' R、Faster Pussycat、L.A. Guns、Jetboy、Brunette が紹介されていて、Brunette 以外はメジャー・デビューしている(Brunette はレコード会社とのトラブルがあったようで、2014になって漸くデモ音源がリリースされた)。

 この記事は今でも鮮明に憶えていて、「新世代バンドは、70年代の Aerosmith や KISS に影響を受けていて、メタルよりもR&Rからの影響が大きい」ということが書かれていた。

 そして、当時、低迷していた Aerosmith と KISS も、これら新世代バンドとの相乗効果により復活の兆しがあるということも書かれており、実際、Aerosmith と KISS は、この時期を境に復活した。

 今回、紹介したバンドの中で、今でも大物として君臨しているのは G N' R だけであり、他のバンドはグランジ/オルタナティヴ・ロックの隆盛により、失速を余儀なくされた(G N' R も、けっこう失速した)。

 当時の筆者は、それを悲しく感じていたのだが、筆者自身、Alice in Chains、Stone Temple Pilots、Pearl JamSoundgardenNirvanaSoul AsylumGoo Goo Dolls あたりを聴きまくっていたので、ロック・リスナーの気持など、移ろいやすいものなのである。

 ただし、よく分からず、且つ、腹立たしかったのは、当時の、いくつかのグランジ/オルタナ系バンドのメンバーや、そのファンが言っていた「メタルは商業主義だから、けしからん!」という、子供っぽくて青臭い理屈だ。

 商業主義というのであれば、全てのロックは商業主義だ。

 インディー・バンドでも、レコードに価格を付けて、流通に乗せて販売し、そこから報酬を得ているのだから商業主義なのである。

 当時、「メタルは商業主義だから、けしからん!」という、しょーもない批判の矛先の矢面に最も立たされたバンドは、たぶん、G N' R だったような気がする。

 しかし、結果を見ると、G N' R は、今もなおロックの大物として君臨し、全盛期のメンバーに近い状態で復活してからは、大規模なツアーを継続しているので、そのタフネスぶりには凄いとしか言いようがない(ただし、アルバムのリリースが無いのは、けしからん!とは思う)。

 そして、全盛期の人気曲の殆どを作曲したギタリストの Izzy Stradlin が、「ギャラが気に食わないから俺は参加しない」というのも、プロらしくて好きだ(Izzy は、筆者が最も好きな G N' R のメンバーだ)。

 筆者は、「Izzy、君は正しいよ」と言って、彼に拍手を送りたい。