ハートランド・ロックというジャンルにカテゴライズされるアーティストの作品の中で筆者が最初に聴いたのは、中学の同級生だったI君から借りたBruce Springsteen〔ブルース・スプリングスティーン〕の「BORN IN THE U.S.A.」だ。
この「BORN IN THE U.S.A.」でBruce Springsteenに興味を持ち、その後はボスの旧譜をレンタル・レコード店で借りたり、輸入レコード店で買ったりという具合に、いつの間にかハートランド・ロックに傾倒していった。
筆者がロックを聴き始めた頃(1980年代初期)、ハートランド・ロックというジャンル名は無かったような気がする。
「heartland」とは「中心地」という意味であり、確かにソウルやR&Bからの影響を強く感じさせる米国らしさの際立ったこのジャンルの音にピッタリな名前だなと思う。
このハートランド・ロックというジャンル名が最もよく似合うアーティストは誰だろうか?
そんなものは人それぞれだと思うのだが、筆者の中ではSouthside Johnny〔サウスサイド・ジョニー〕が最もハートランド・ロックというジャンル名が似合うのではないかと思っている。
今回は、そんなSouthside Johnnyが率いるSOUTHSIDE JOHNNY & THE ASBURY JUKES〔サウスサイド・ジョニー&ジ・アズベリー・ジュークス〕の3rdアルバム「HEARTS OF STONE」を取り上げることにする。
筆者の中でのSouthside Johnnyというアーティストは「歌手」という印象が強い。
この「HEARTS OF STONE」には9曲収録されているが、Southside Johnnyが作曲に名を連ねているのは1曲のみであり、他の曲は同郷ニュージャージーの盟友であるBruce Springsteen とLittle Steven〔リトル・スティーヴン〕からの提供曲だ(Little Stevenはマサチューセッツ生れだが、心はニュージャージーにあると言えるだろう)。
THE BEATLES〔ザ・ビートルズ〕の登場以降、自作自演がロック・ミュージシャンのルールのようになってしまった感があるが、他人から提供された曲を自分のものにして歌い上げるというのも立派な芸である。
ニュージャージーという都市に育まれたボスやLittle Stevenが描く曲を、同じニュージャージーという都市に育まれたSouthside Johnnyという歌手が歌い上げる、このアルバムを聴いていると、そんな男の友情が心に沁み込んでくるのだ。
「男の友情」なんてダサいと言われたって、「だからどうした」と言いたくなるのである。