2019年現在において、現代のPINK FLOYD〔ピンク・フロイド〕と言えばPORCUPINE TREE〔ポーキュパイン・トゥリー〕だ。
今回取り上げる彼らの3rdアルバム「THE SKY MOVES SIDEWAYS」を聴くにつけ、その認識が深まる。
PORCUPINE TREEの曲がPINK FLOYDの曲に酷似している訳でない。
PORCUPINE TREEのロックに対するアプローチが、PINK FLOYDの提示してきた方法論と似ているのである。
プログレッシヴ・ロック・バンドでありながら、PORCUPINE TREEはPINK FLOYDと同様に演奏技術の高さでグイグイとくるタイプではない。
否、もちろん、演奏技術は高いのだ。
PORCUPINE TREEの曲は、昨日今日、楽器を始めたような輩に演奏できるような代物ではない。
PORCUPINE TREEは、高度な演奏技術を持ちながらも、それだけに頼ることはなく、深遠な精神世界をテーマとして描かれた楽曲の奥深さでリスナーを魅了するタイプのバンドなのだ。
このような曲作りに対するアプローチが極めてPINK FLOYD的なのである。
今回取り上げた「THE SKY MOVES SIDEWAYS」は、ヴォーカルの入った曲も多少はあるのだが、ほぼインストゥルメンタル・アルバムであると言い切ってしまっても差し支えないだろう。
インストゥルメンタル・アルバムである上に、キャッチーなメロディも無いので、このアルバムはPORCUPINE TREEのアルバムの中でも、かなり取っ付きにくい作品である。
しかし、このアルバムは、ヴォーカルが(殆ど)無いことや、キャッチーなメロディが無いことが全くマイナスになっていない。
むしろ、それらを極限まで抑えることで人間の複雑な精神世界を描くことに成功しており、プログレッシヴ・ロック・アルバムとしての価値を高めている。
しかし、これは、筆者がインストゥルメンタルも好んで聴くリスナーであるといことで、多少のバイアスが掛かった感想になっているのかもしれない。
このアルバムは、「これからロックを聴き始めたい」という人にお薦めできるアルバムではないのだが、1970年代に隆盛を極めたあのプログレッシヴ・ロックをもう一度味わいたい人にとっては垂涎の一枚となるはずである。