Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0335) FLIRTIN' WITH DISASTER / MOLLY HATCHET 【1979年リリース】

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サザン・ロックが好きだ。


ロックを聴き始めた1980年代初期、好んで聴いていた米国のアーティストはDaryl Hall & John Oates〔ダリル・ホール&ジョン・オーツ〕、CHEAP TRICK〔チープ・トリック〕、TOTO〔トト〕等、洗練されたポップ・センスを持つグループだった。


当時の筆者は中学生であり、買う、或いは、レンタルするレコードの情報は洋楽雑誌の「MUSIC LIFE」と「音楽専科」から仕入れていた。


そのうち、ロックが好きな大人のお兄さん、お姉さん連中と仲良くなり、ロックの英才教育を受け始めるのだが、お兄さん連中にはサザン・ロック好きが多かった。


そして、サザン・ロックの中でもお兄さん連中から圧倒的な人気を得ていたのがLYNYRD SKYNYRDレーナード・スキナード〕だった。


従って、お兄さん連中が筆者に対し、真っ先に薦めてくるくるバンドはLYNYRD SKYNYRD、および、その周辺のバンドなのである。


「その周辺のバンド」の一つが当ブログの#0325で取り上げた38 SPECIAL〔サーティーエイト・スペシャル〕であり、このバンドはLYNYRD SKYNYRDのシンガーRonnie Van Zant〔ロニー・ヴァン・ザント〕の実弟、Donnie Van Zant〔Donnie Van Zant〕がシンガーを務めるバンドだ。


そして、もう一つの「その周辺のバンド」が今回取り上げているMOLLY HATCHET〔モリー・ハチェット〕であり、このバンドはLYNYRD SKYNYRDのRonnie Van Zantに見出されたバンドなのである。


これはもう40年近い昔のことだが、サザン・ロックを初めて聴いた時、そのカッコ良さに痺れたことを今でもはっきりと憶えている。


タフで、むくつけき、南部の男たちに筆者は憧れ、彼らの奏でる荒々しくも情感たっぷりのロックに痺れたのである。


今回取り上げている「FLIRTIN' WITH DISASTER」はMOLLY HATCHETの2ndアルバムであり、トリプル・ギターが炸裂する「これぞサザン・ロック」と呼ぶべき豪快な一枚である。


このバンドは数あるサザン・ロック・バンドの中でもハード・ロックに通じるラウドな音が特徴的であり、後のCORROSION OF CONFORMITY〔コロージョン・オブ・コンフォーミティ〕辺りのサザン・メタルにも影響を与えている。


「FLIRTIN' WITH DISASTER」はダブル・プラチナムを獲得した商業的に最も大きな成功を修めた彼らのアルバムであり、MOLLY HATCHETを聴くなら先ずはこのアルバムからなのである。

 

#0334) HEAVY AS A REALLY HEAVY THING / STRAPPING YOUNG LAD 【1995年リリース】

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インダストリアル・メタルの大御所アーティストと言えばMINISTRY〔ミニストリー〕とNINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ〕である。


筆者もこの二つはかなり聴き込んだ時期があったのだが、最も好きなインダストリアル・メタルのアーティストは、今回取り上げているSTRAPPING YOUNG LAD〔ストラッピング・ヤング・ラッド〕...と言うよりはDevin Townsend〔デヴィン・タウンゼンド〕のような気がする。


Devin Townsendは色々な名義を使い分けて様々な音楽をリリースしているので、純粋なインダストリアル・メタルのアーティストではなく、彼の音楽の表現手段の一つとしてインダストリアル・メタルがあるだけなのかもしれない。


筆者は、Steve Vaiスティーヴ・ヴァイ〕が1993年にVAIというバンド名義でリリースした「SEX & RELIGION」において、Devin Townsendがシンガーとしてデビューした時から「この人は只者ではない」と感じていた。


バンド名がVAIなので当然ながらSteve Vaiというスーパー・ギタリストのリーダー・アルバムなのだが、このVAIというバンドはベースがT. M. Stevens〔T.M.スティーヴンス〕、ドラムがTerry Bozzio〔テリー・ボジオ〕なのである。


この顔ぶれの中で、当時無名の新人だったDevin Townsendが全く物怖じすることなく歌いまくっている「SEX & RELIGION」を聴いて「只者でない」と感じない人は少ないだろう。


VAIの「SEX & RELIGION」以降、THE WILDHEARTSザ・ワイルドハーツ〕のツアーにギタリストとして参加していたDevin Townsendが、STRAPPING YOUNG LAD名義でリリースしたインダストリアル・メタル・アルバムが今回取り上げている「HEAVY AS A REALLY HEAVY THING」である。


この時点でのSTRAPPING YOUNG LADはまだDevin Townsendのソロ・プロジェクトのようなものだが、当時の筆者は「待ってました」とばかりに、このアルバムに飛びつき、Devin Townsendの才能に改めて感嘆させられたのである。


このアルバムはインダストリアル・メタルなので、かなり激烈な部分もあるのだが、意外なほどキャッチーな面もあり、聴いていると不意に意表を突かれる瞬間がある。


インダストリアル・メタルというジャンルは、ともするとMINISTRYやNINE INCH NAILSエピゴーネンに陥り易いのだが、Devin Townsendはこの開始時点において既に STRAPPING YOUNG LADとしか言いように無い音を構築している。


これ以降、様々な名義を使い分けながらDevin Townsendの名盤の乱発が開始されるのである。

 

#0333) BLUFUNK IS A FACT / Keziah Jones 【1992年リリース】

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筆者は音楽を聴くことを趣味の一つとしているが、その割には聴く音楽に関する嗜好というものが殆ど無い。


聴く音楽の中心はロックだが、ロックと言ってもロックン・ロール、ブルース・ロック、ハード・ロックヘヴィ・メタル、パンク、インディー・ロック、グランジオルタナティヴ・ロック等々、様々なサブ・ジャンルがあり、列挙し始めるとキリが無くなるのだが、このジャンルは聴くが、このジャンルは聴かないというようなことは無い。


ロック以外でも、クラシック、ジャズ、ブルース、R&B、ファンク、カントリー、ブルーグラス、テクノ、エレクトロニカ、ヒップホップ、歌謡曲、アイドル・ソング等もロックほどではないが比較的好んで聴いている。


聴く音楽に関する嗜好的なものがあるとするなら西洋音楽、或いは、その影響下にある音楽ということになるのだろう。


とにかく「音楽は無節操に聴きまくる」ということが筆者の「嗜好」なのだが、歳を取るにつれてブラック・ミュージックを聴く頻度が上がってきているような気がする。


今回取り上げているKeziah Jones〔キザイア・ジョーンズ〕はナイジェリア出身のギタリスト/シンガー・ソングライターであり、自らが編み出したブルースとファンクを融合させたブルーファンクを標榜するミュージシャンだ。


2020年7月現在におけるKeziah Jonesの最新アルバムは2013年にリリースされた「CAPTAIN RUGGED」でありこれも素晴らしいアルバムなのだが、この人を取り上げるにあたり、どうしても選びたくなるのは1992年にリリースされた1stアルバム「BLUFUNK IS A FACT」なのである。


しばしば「衝撃のデビュー・アルバム」という言葉が使わることがあるが、この「BLUFUNK IS A FACT」こそは、まさに「衝撃のデビュー・アルバム」と呼ぶに相応しい一枚なのである。


多少なりともギターをかじったことのある人がこのアルバムを聴いたときは間違いなく度肝を抜かれたはずである。


筆者も、その躍動感溢れるパーカッシブなギターを聴いた時は「どうやって弾いてるの?」と思ったものである。


Keziah Jones自身はブルースとファンクを融合させたと言っているが、彼の音楽から聴こえてくる要素はとてもじゃないがその二つだけはなく、これぞまさにジャンルを超越した1990年代におけるソウル・ミュージックの金字塔と呼べるアルバムなのではないだろうか。

 

#0332) ONCE AROUND THE WORLD / IT BITES 【1988年リリース】

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英国におけるプログレッシヴ・ロックの最盛期は間違いなく1970年代だろう。


所謂5大バンドと言われているPINK FLOYDピンク・フロイド〕、KING CRIMSONキング・クリムゾン〕、YES〔イエス〕、GENESISジェネシス〕、Emerson, Lake & Palmer〔エマーソン・レイク・アンド&パーマー〕が特に有名だ。


筆者は1980年代からロックを聴き始めたので上記の5大バンドは当時の筆者にとって、10年くらい前に活躍していたロック界における大御所中の大御所という存在だった。


それでは、1980年代にはプログレッシヴ・ロックは完全に過去の音楽になっていたのか言うと実はそうではない。


1980年代にはMARILLION〔マリリオン〕、IQ〔アイキュー〕、PENDRAGON〔ペンドラゴン〕、そして、今回取り上げているIT BITES〔イット・バイツ〕等が登場し、英国ではそれなりの盛り上がりを見せていたと記憶している。


今回はIT BITESの2ndアルバム「ONCE AROUND THE WORLD」を取り上げているが、このアルバムは1980年代におけるプログレッシヴ・ロックの大名盤だ。


アルバム・カヴァー以外には全く付け入る隙を与えない、一つ一つの音の細部まで研ぎ澄まされた完璧なアルバムだ。


これだけ凄いアルバムでありながら、メンバーの写真が使われているつまらないアルバム・カヴァーは実に勿体ない。


もっとアルバムの内容にあった絵画や写真をカヴァーにしてほしかったものである。


IT BITESは1980年代に登場した他のプログレ・バンドと比べると少し趣を異にしている。


MARILLION、IQ、PENDRAGONはPomp Rock〔ポンプ・ロック〕とも呼ばれ、彼らの音はその名のとおり「華麗」や「荘厳」という言葉が似合っており、1970年代的なエッセンスが強い。


それに対し、IT BITESの音は1970年代のプログレッシヴ・ロックからの影響を取り入れながらも、1980年代的なポップ・ミュージックのモダンなセンスを持っていたのである。


曲によっては、ヒット・チャートで活躍するソロ・シンガーに提供して歌わせたとしても違和感の無いキャッチーなものさえある。


アルバムのラストを飾る曲、"Once Around the World"は14分を超える大作なのだが「終わるのが速すぎる」、「もっと聴いていたい」と思えるほど長さを感じさせないポップな曲なのである。

 

#0331) FAVOURITE ENEMY / TRASHMONKEYS 【2006年リリース】

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今回取り上げるTRASHMONKEYS〔トラッシュモンキーズ〕はドイツのガレージ・ロック・バンドだ。


筆者は1980年代初期からロックを聴き始めたので、当時よく聴いていたドイツのバンドと言えばSCORPIONSスコーピオンズ〕、ACCEPT〔アクセプト〕、HELLOWEEN〔ハロウィン〕なのである。


その後はSODOM〔ソドム〕、KREATOR〔クリエイター〕、DESTRUCTION〔デストラクション〕等を好んで聴いてきた。


筆者の中におけるドイツとは、上記のとおりメタルのイメージが強い国なので今回取り上げているTRASHMONKEYSの4thアルバム「FAVOURITE ENEMY」を聴いた時は驚いた記憶がある。


その理由は簡単で、TRASHMONKEYSのようなガレージ・ロック・バンドが自分の中のドイツのイメージと全く結びつかなかったからだ。


TRASHMONKEYSは1998年に1stアルバムをリリースしているので、THE STROKESザ・ストロークス〕やTHE WHITE STRIPES〔ザ・ホワイト・ストライプス〕の登場によって2000年頃から盛り上がりを見せ始めたガレージ・ロック・リヴァイヴァルのムーヴメントと多少リンクしてる部分もある。


しかし、今回取り上げている「FAVOURITE ENEMY」は2006年のリリースであり、日本盤もリリースされているはずなのだが、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルのムーヴメントには上手い具合にリンクしきれなかった感もある。


しかしながこのアルバム、個人的にはTHE HIVES〔ザ・ハイヴス〕の「YOUR NEW FAVOURITE BAND」、TOKYO SEX DESTRUCTIONの「LE RED SOUL COMUNNITTE」と並ぶ、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルの愛聴盤である。


実のところ、ガレージ・ロック・リヴァイヴァルの頃の筆者はBACKYARD BABIES〔バックヤード・ベイビーズ〕、THE HELLACOPTERS〔ザ・ヘラコプターズ〕、HARDCORE SUPERSTAR〔ハードコア・スーパースター〕、BUCKCHERRY〔バックチェリー〕、BULLETS AND OCTANE〔ブレッツ・アンド・オクタン〕等バッド・ボーイズ・ロック・リヴァイヴァル(というムーヴメントがあるか否かは不明だが)を好んで聴いていたので、THE STROKESはちゃんと聴けていないし、THE WHITE STRIPESは現在も未聴である。


そんな筆者がTRASHMONKEYSには何故か惹きつけられるものがあり、購入したくなったのである。


この「FAVOURITE ENEMY」というアルバムはガレージ・ロックと呼ぶにはかなりメロディアスであり、聴いていると「これはガレージ・ロックではないのかも」という気がしてくる。


しかしこのバンド、何度聴いてもドイツのイメージと結びつかない不思議なバンドである。