Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0374) PHALLUS DEI / AMON DUUL II 【1969年リリース】

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昨日はヒップ・ポップを取り上げたが、今日はクラウトロックを取り上げている。


何故なら、12月以降、筆者の聴く音楽のジャンルが、その二つに集中しているからだ。


今回取り上げているのは、1968年にドイツ(当時は西ドイツ)のミュンヘンで結成されたAMON DÜÜL II[アモン・デュール・ツー]が、1969年にリリースした1stアルバムの「PHALLUS DEI」だ。


もし、筆者のブログをずっと読んでくれている方がおられるなら「またか」と思われるかもしれないが、このアルバムも筆者が学生時代のバイト先で知り合ったU君のお兄さんに教えてもらった1枚なのである。


U君のお兄さんは大のプログレッシヴ・ロック・マニアであり、そもそもご実家が裕福な上に、ご本人も高給取りだったので膨大な量のプログレのレコードやCDを所蔵していた。


どういう訳か、U君のお兄さんに気に入られた筆者は、プログレの名盤を次から次へと聴かされ、彼からの英才教育を受けたのだが、その中で大きな衝撃を受けたアルバムの一つがこの作品なのである。


#0364で、同じクラウトロックであるASH RA TEMPEL[アシュ・ラ・テンペル]の1stを取り上げた時にも書いたのだが、この時代、英国と米国以外の出身で、ここまで個性を確立させたロックをやっていたというのは驚異的だ。


ASH RA TEMPELの1stは1971年のリリースだが、今回取り上げているAMON DÜÜL IIの1stは1969年のリリースであり、THE BEATLESザ・ビートルズ]のデビューから、たった7年しか経っていない。


当時の西ドイツの音楽誌はAMON DÜÜL IIのことを「PINK FLOYDピンク・フロイド]やTHE VELVET UNDERGROUND[ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド]と比較しても劣らない」と言ったそうだが、AMON DÜÜL IIがこの1stで創り上げたフリーキーなサウンドを聴いた後で、PINK FLOYDの1stを聴くと王道のサイケデリック・ロックに聴こえてしまい、VELVETSの1stを聴くと古典的なフォーク・ロックに聴こえてしまうのである。


ドイツ(西ドイツ)はクラウトロックの誕生以降、1970年代に入りSCORPIONSスコーピオンズ]、Michael Schenker[マイケル・シェンカー]、ACCEPT[アクセプト]等を、1980年代にはHELLOWEEN[ハロウィン]、GAMMA RAYガンマ・レイ]等を輩出し、日本では高い人気を得るようになる。


日本とドイツは近代国家成立の歴史に似ている部分が多いのだが、ことロックに関しては、日本はドイツに完敗しており、これはこの先、何年経っても変わらないような気がする。

 

#0373) STRAIGHT OUTTA COMPTON / N.W.A 【1988年リリース】

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最近はヒップ・ホップを聴くことが多い。


今回取り上げているN.W.A[エヌ・ダブリュ・エー]は、米国カリフォルニア州コンプトン出身のヒップ・ホップ・グループであり、西海岸ヒップ・ポップのレジェンドである。


そして、Ice-T[アイス・ティー]と並ぶギャングスタ・ラップの始祖でもある。


筆者は1969年生れであり、中1(1982年)から本格的にロックを聴き始め、時の経過と共に一端のロック・ファンになった。


しかし、後10年、生まれるのが遅かったら、筆者はロック・ファンではなく、ヒップ・ホップ・ファンになっていたような気がする。


とにかく、ロックを含む洋楽を聴いてきた人生において、RUN-DMC[ラン・ディーエムシー]、LL Cool J[エル・エル・クール・ジェイ]、BEASTIE BOYSビースティ・ボーイズ]、PUBLIC ENEMYパブリック・エナミー]といったヒップ・ポップ系アーティストの登場は衝撃的だったのである。


N.W.Aを聴く切っ掛けは、筆者の大好きなバンドであるGUNS N' ROSES[ガンズ・アンド・ローゼズ]のAxl Rose[アクセル・ローズ]がN.W.Aをお気に入りに挙げていたからだ。


当時の筆者はAxl Roseの「推し」を片っ端から聴いてたので、今回取り上げているN.W.Aの1stアルバム「STRAIGHT OUTTA COMPTON」も直ぐに買ったわけだが、所謂Gファンクの先駆けとも言えるハードコアでタフなサウンドのカッコ良さに一発でKOされてしまったのである。


ヒップ・ホップは英語が分かる人でなければ、その良さを本当に理解することはできないと言う人もいるが、それについては筆者も確かに一理あると思っている。


N.W.Aがこのアルバムで主張している人種差別への怒りは、英語が分からなければその本質は理解できないのかもしれない。


しかし、英語が分からなくても、ヒップ・ポップをサウンドとして楽しむことは出来るのではないだろうか。


これを言うと、ヒップ・ポップ・ファンからも、ロック・ファンからも、お叱りを受けそうだが、そもそも筆者は音楽を聴く時に歌詞をさほど重要視していないので、ヒップ・ポップのラップも、ロックのヴォーカルも、楽曲を構成する楽器の一つとして楽しんでいる。


英語が分からない筆者がだが、N.W.Aが生み出した、このカッコ良すぎる歴史的名盤を、もう既に30年も楽しんで聴いているのである。

 

#0372) TIN MACHINE / TIN MACHINE 【1989年リリース】

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筆者が初めてリアルタイムで聴いたDavid Bowieデヴィッド・ボウイ]のアルバムは「LET'S DANCE」であり、このアルバムのリリースは1983年なので、たぶん翌年には聴いていると思う。


当時、ロック初心者の筆者が好んで聴いていたのは、SPANDAU BALLETスパンダー・バレエ]、DURAN DURANデュラン・デュラン]、ABC[エービーシー]、CULTURE CLUBカルチャー・クラブ]、KAJAGOOGOO[カジャグーグー]といったニュー・ロマンティックのアーティスト達だった。


そんな彼等の大きな影響源の一つが1970年代のグラム・ロックであることを彼等のインタビュー記事で知り、David Bowieが、T. Rex[T・レックス]のMarc Bolanマーク・ボラン]、ROXY MUSICロキシー・ミュージック]のBryan Ferry[ブライアン・フェリー]と並ぶグラム・ロックの大スターであることもその時期に知った。


「そんな凄い人なら絶対に聴いておかなければ」と思い買ったのが「LET'S DANCE」だったのだが、これが全くピンとこなかったのである。


こういったソフィスティ・ポップなら、上記したSPANDAU BALLETDURAN DURAN、ABC、CULTURE CLUB、KAJAGOOGOOといった、David Bowieから影響を受けた後輩アーティスト達の方が完成度の高い楽曲を作っていたし、圧倒的に音楽としての商品価値が高いと感じたのである。


これらの後輩アーティスト達に比べるとDavid Bowieの「LET'S DANCE」は、どうにも中途半端な感じがして、何よりも歌の下手さに辟易した。


この時代のニューロマ系バンドのシンガーは、ボウイッシュ(David Bowieっぽい)かフェリーッシュ(Bryan Ferryっぽい)に分類される人が多いのだが、多くのシンガーは本家であるDavid BowieやBryan Ferryよりも歌の上手い人が多いし、バンドとしても楽器の演奏技術に長けた人が多いのである(もちろん、下手なところまで本人にそっくりなシンガーもいた)。


その後、1970年代のDavid Bowieのアルバムを聴くようになって初めて彼の作曲家としての偉大さを思い知ったのだが、「LET'S DANCE」の後にリリースされた「TONIGHT」、「NEVER LET ME DOWN」は、やはり全くピンとこなかったのである。


「LET'S DANCE」以降、精彩を欠いたDavid Bowieが一瞬復活の兆しを見せたと感じたのが、今回取り上げているバンドTIN MACHINE[ティン・マシーン]としてリリースしたセルフタイトルのデビュー・アルバムだ。


「何で今更バンドやねん!」という気もしたし、「もうソロ時代の曲は歌わない」と言っているのを聞いて「そんなん嘘に決まっとるやないか!」とも思っていたが、「TIN MACHINE」では「LET'S DANCE」以降の生温い中途半端な感じが影を潜め、David Bowieがバンドと共に、かなりタイトにロックン・ロールしているのである。


もちろん、1970年代の「LOW」や「"HEROES"」といったキレッキレの名盤には及ばないものの、「TIN MACHINE」から「TIN MACHINE II」、ソロに戻っての1作目である「BLACK TIE WHITE NOISE」まではけっこう楽しんで聴けたのだが、その後、インダストリアル・ロックの影響を受けた「OUTSIDE」、ドラムン・ベースの影響を受けた「EARTHLING」あたりから再びガス欠を起こし始めた感がある。


MINISTRY[ミニストリー]、NINE INCH NAILSナイン・インチ・ネイルズ]、APHEX TWINエイフェックス・ツイン]、4HERO[4ヒーロー]、Goldie[ゴールディー]といったこの手のパイオニアを先に知ってしまった耳で聴くDavid Bowieのインダストリアル・ロックやドラムン・ベースは、どうしても生温くて聴こえてしまうのである。

 

#0371) YOUNG, LOUD AND SNOTTY / DEAD BOYS 【1977年リリース】

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中1で洋楽を聴き始め、齢50を超える2020年の今日までロックを聴いてきた筆者だが、パンクにはそれほど深く傾倒してこなかった。


そんな筆者だが、初めて聴いたロックのレコードは同級生のH君が貸してくれたSEX PISTOLSセックス・ピストルズ]のコンピレーション・アルバム「FLOGGING A DEAD HORSE」だった。


SEX PISTOLSは、異常にクセの強いヴォーカルを別にすれば、曲はストレートなロックン・ロールだったので、「パンクってこういう音楽なんやぁ~」という印象を、当時の筆者はこのアルバムにより植え付けられたのである。


その後、様々な洋楽聴きながら数年が経過し、勉強のために他のパンク・バンドも聴いてみようと思い立って購入したのがTHE CLASHザ・クラッシュ]の「LONDON CALLING」、THE DAMNEDザ・ダムド]の「PHANTASMAGORIA」、THE STRANGLERS[ザ・ストラングラーズ]の「DREAMTIME」、THE JAMザ・ジャム]の「THE GIFT」だったのだが、直ぐに好きになれたのはTHE JAMだけであり、他は「えっ、これってパンクなん?」という感じで、正直なところ全くピンとこなかったのである。


THE JAMも、ラスト・アルバムである「THE GIFT」の頃は半分くらいTHE STYLE COUNCIL[ザ・スタイル・カウンシル]になっていたので、パンクというよりも、優れたポップ・ミュージックを演奏するスタイリッシュなポップ・バンドだったので好きになれたのだと思う。


筆者の場合、オリジナルのロンドン・パンクよりも、その後に登場したDISCHARGE[ディスチャージ]、GBH[ジー・ビー・エイチ]、THE EXPLOITED[ジ・エクスプロイテッド]等のハードコア・パンクを聴いた時の方が「めっちゃパンクっぽい」と感じ、一発で嵌ったのである。


それ故、ニューヨーク・パンクに至っては、RAMONESラモーンズ]はパンクっぽいと感じたが、TELEVISION[テレヴィジョン]、TALKING HEADSトーキング・ヘッズ]、Richard Hell & THE VOIDOIDS[リチャード・ヘル&ヴォイドイズ]、Patti Smithパティ・スミス]あたりは「えっ、これのどこがパンクやねん!」と驚いたものである。


そんな中、ニューヨーク出身ではないが米国産パンク・バンドとして一発で好きになったのが、今回取り上げているDEAD BOYS[デッド・ボーイズ]の1stアルバム「YOUNG, LOUD AND SNOTTY」だ。


このアルバム1曲目の "Sonic Reducer"はディストーション・ギターの効いたパンク中のパンクとでも言うべきロックン・ロールであり、他の曲も早い曲ばかりではないのだが、時に切なさすら感じさせる秀逸なロックン・ロールは、パンクらしさが確実に担保された安心して聴ける優秀なパンク・アルバムなのである。

 

#0370) RIBBED MUSIC FOR THE NUMB GENERATION / SOHODOLLS 【2007年リリース】

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筆者は2000年以降、仕事から受ける負荷により生活の仕方が大きく変わったので、2000年以降に登場したロックを積極的に聴いてこなかったのだが、最近は2000年以降に登場したロックを掘り起こして楽しんでいることを何時ぞやの記事に書いた。


今回取り上げているSOHODOLLS[ソーホードールズ]の1stアルバム「RIBBED MUSIC FOR THE NUMB GENERATION」もリリースが2007年なので、2000年以降に登場したアーティストのアルバムなのだが、これに関しては、たぶんリリースの2~3年後くらいには聴いている。


その切っ掛けは、筆者の大好きなHANOI ROCKSハノイ・ロックス]の名曲、"Dead By X-Mas"をSOHODOLLSがカヴァーしていたからだ(SOHODOLLSはタイトルを"Dead by Christmas"としている)。


HANOI ROCKSはロックン・ロール・バンド、SOHODOLLSはシンセポップ・バンドなので、繋がりは無さそうなのだが、実は、筆者はHANOI ROCKS の"Dead By X-Mas"を初めて聴いた時から「この曲はシンセポップのアレンジでも絶対にイケるはずだ」と思っていた。


後出しジャンケンやないか」と言われると、証拠がある訳ではないので何も言えなくなるのだが、そもそもHANOI ROCKSのAndy McCoy[アンディ・マッコイ]は稀代の天才ソングライターなので、彼の書く曲はロックン・ロールという範疇に納まり切れるものではないのだ。


兎にも角にも"Dead by Christmas"のミュージック・ビデオを見てSOHODOLLSに興味を持った筆者は、その後、今回取り上げている「RIBBED MUSIC FOR THE NUMB GENERATION」にも収録されている"Stripper"のミュージック・ビデオを見て、女性シンガーのMaya von Doll[マヤ・ヴォン・ドール]の妖艶なヴィジュアルと官能的な歌声に嵌ったのである。


当然のことながらアルバム「RIBBED MUSIC FOR THE NUMB GENERATION」も購入したのだが、このアルバムで聴けるMaya von Dollのウィスパー・ヴォイスがゴシック風のシンセポップと絶妙にマッチし、何ともエロティックで良いのだ。


Maya von Dollに限らず、バンドのフロントに立つ女の子というのは容姿が美しいだけでも相当なアドヴァンテージがあると思うのだが、自らバンドのフロントに出てくる女の子は自分の魅せ方を明確に分かり切っている人が多いような気がする。


ちなみに「RIBBED MUSIC FOR THE NUMB GENERATION」のオリジナル・カヴァーはこの記事の冒頭に貼ったものなのだが、日本盤カヴァーは下に貼ったものであり、どう見ても日本盤カヴァーの方がSOHODOLLSMaya von Dollの魅力が伝わり易いと思えるのは筆者だけなのだろうか?

 

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