今回はT. REX〔T・レックス〕の「ELECTRIC WARRIOR」を取り上げてみようと思う。
T. REXとしては2ndアルバム、前身となるTYRANNOSAURUS REX〔ティラノザウルス・レックス〕時代からカウントすると6thアルバムとなる。
T. REXはバンドなので、一応、
・Marc Bolan〔マーク・ボラン〕(vocals, guitars)
・Mickey Finn〔ミッキー・フィン〕(percussion)
・Steve Currie〔スティーヴ・カーリー〕(bass)
・Bill Legend〔ビル・レジェンド〕(drums)
というメンバー構成になってはいるが、実際にはMarc Bolanのソロに限りなく近い。
現在で言うと、Al Jourgensen〔アル・ジュールゲンセン〕のMINISTRY〔ミニストリー〕や、Trent Reznor〔トレント・レズナー〕のNINE INCH NAILS〔ナイン・インチ・ネイルズ〕等、「バンドの体裁をとってはいるが、実際はソロ・プロジェクト」というアーティストの元祖かもしれない。
筆者は1980年代前半からロックを聴き始めたのだが、最初の頃はリアルタイムか、その少し前にリリースされたアルバムを聴いていた。
そのうち、当時読んでいた雑誌「音楽専科」に掲載されていたグラム・ロック特集でT. REXやDavid Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕の過去のカタログに興味を持ち、レコード店に頼んで取り寄せてもらって買ったのが、T. REXの「ELECTRIC WARRIOR」とDavid Bowieの「THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERS FROM MARS」だった。
グリッター感を全開にしたグラム・ロック・スターとしてのT. REXを聴きたいのであれば次作の「THE SLIDER」だと思うのだが、Marc Bolanの書く美しい曲を堪能したいのでれば「ELECTRIC WARRIOR」だろう。
このアルバムは、とにかく美しい。
グリッター感を全開にしたグラム・ロック・ナンバーは、"Jeepster"と"Get It On"くらいではないだろうか?
エレクトリック・ギターが鳴ってはいるが、全体的にはフォーク・ロック的な儚げな曲が多い。
このアルバムに収録された曲の美しさは、所謂美メロというものとはちょっと違う。
なにかこう、優しい手でハートをきゅっと掴まれるような感覚だ。
グラム・ロックの衰退とともにT. REXの人気も下降していくのだが、実は人気が下降してから書かれた曲も美しい。
良い曲を書けば必ず売れるという単純な図式が成り立たない。
これがロックというショー・ビジネスの難しさなのだろう。