■ 第10位
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title | ALADDIN SANE[アラジン・セイン] |
artist | David Bowie[デヴィッド・ボウイ] |
released | 1973年 |
origin | London, England, UK |
comment | David Bowieは、T. REX[T・レックス]のMarc Bolan[マーク・ボラン]と双璧を成すグラム・ロックのアイコンなので、10位というのは低すぎると感じる人も多いだろう。 しかし、この稀代の天才総合芸術家の神髄は、グラム・ロックが完全に終わった後に制作した「LOW」と「"HEROES"」の2枚だ。 極論すると、筆者にとってのDavid Bowieは「LOW」と「"HEROES"」という、ロックの歴史に刻まれた2枚の大傑作があれば充分なのである。 筆者は、グラム・ロックと呼べるDavid Bowieのアルバムは「ZIGGY STARDUST(長いので省略)」と「ALADDIN SANE」の2枚だけだと思っているのだが、グラム・ロック期のDavid Bowieは、彼自身が本当にやりたい音楽をやっていないのではないかと感じている。 「ZIGGY STARDUST」と「ALADDIN SANE」のどちらか1枚を選ぶのであれば「ALADDIN SANE」だ。 抒情的な"Five Years"で始まる「ZIGGY STARDUST」よりも、グルーヴィーでノリの良い"Watch That Man"で始まる「ALADDIN SANE」の方が聴いていてテンションが上がる。 |
■ 第9位
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title | ROXY MUSIC[ロキシー・ミュージック] |
artist | ROXY MUSIC[ロキシー・ミュージック] |
released | 1972年 |
origin | County Durham/London, England, UK |
comment | 「ROXY MUSIC」は、ROXY MUSICの1stアルバムだが、これは彼らのアルバムの中で、唯一グラム・ロックと呼べるのアルバムだ。 筆者の中では、ROXY MUSICのアルバムとして上位に入るものではないのだが、非常によく出来たデビュー・アルバムである。 実に上手にグラム・ロックというフォーマットを使って、自分達を売り出すことに成功している。 しかし、このバンド(というか、Bryan Ferry[ブライアン・フェリー])も、David Bowie同様、グラム・ロックが完全に終わった後に最高傑作アルバム「AVALON」をリリースしている。 Brian Eno[ブライアン・イーノ]が参加している1stと2nd「FOR YOUR PLEASURE」を特別視する傾向もあるが、Brian Enoが脱退し(クビ?)、Eddie Jobson[エディ・ジョブソン]が加入した3rd「STRANDED」以降にROXY MUSICの神髄はある。 このデビュー・アルバム「ROXY MUSIC」は、Bryan Ferryが本当にやりたい音楽ではないと思うのだが、ここからラスト・アルバム(8th)の「AVALON」に登り詰めていく中で、Bryan Ferryは駄作を1枚も作らなかった稀有な存在なのである。 |
■ 第8位
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title | WOULDN'T YOU LIKE IT?[青春のアイドル] |
artist | BAY CITY ROLLERS[ベイ・シティ・ローラーズ] |
released | 1975年 |
origin | Edinburgh, Scotland, UK |
comment | 「BAY CITY ROLLERSって、グラム・ロックなん?」そう思う人も多いと思うが、欧米でリリースされているグラム・ロックのコンピレーション・アルバムにはBAY CITY ROLLERSの曲が入っていることが多いらしい。 Glam RockのGlamとは、Glamorous(魅惑的)の意味なので、タータン・チェックの衣装を身に纏ったBAY CITY ROLLERSは魅惑的であり、グラム・ロックの範疇に入るアーティストだと思っている。 グラム・ロックには音楽的な共通性は無いと言われているが、筆者の中では「ポップなロック」あるいは「わかりやすいロックン・ロール」が基本であり、そこに「イミテーションっぽさ」が加味されたものがグラム・ロックなのかなと思っている。 BAY CITY ROLLERSの曲はベスト・アルバムで聴いた方が良いと思うのだが、こういう企画でベスト・アルバムを挙げるのは反則だと思うので、彼らの転機ともなり、全12曲中、11曲がメンバーのオリジナル曲となった3rdアルバムの「WOULDN'T YOU LIKE IT?」を挙げることにする。 Leslie McKeown[レスリー・マッコーエン]の声が意外なほど男っぽいところも、このバンドの魅力の1つである。 |
■ 第7位
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title | SUZI QUATRO[サディスティック・ロックの女王] |
artist | Suzi Quatro[スージー・クアトロ] |
released | 1973年 |
origin | Detroit, Michigan, US |
comment | 引き続き、「Suzi Quatroって、グラム・ロックなん?」そう思う人も多いと思うが、欧米でリリースされているグラム・ロックのコンピレーション・アルバムにはSuzi Quatroの曲が入っていることが多いらしい。 そんな前置きは不要なくらい、このグラマラスで、分かり易くて、ご機嫌なロックン・ロールは、筆者がイメージするグラム・ロックそのものである。 アルバムの完成度は2nd「QUATRO」の方が上だと思うのだが、グラム・ロックっぽさで選ぶのであれば、この1st「SUZI QUATRO」の方が上だ。 音楽性とは全く関係が無いのだが、筆者は小柄な女性とベースを弾く女性が好きなので、その両方が揃っているSuzi Quatroには、ちょっと特別な感情移入があったりもする。 動くSuzi Quatroを見たのは、インターネットが一般化してからなのだが、小柄な彼女が大きいベースを弾きながら歌う姿にはグッとくるものがある。 この人の登場が、後に現れるTHE RUNAWAYS[ザ・ランナウェイズ]、THE GO-GO'S[ザ・ゴーゴーズ]、THE BANGLES[ザ・バングルス]といった女性ロッカー達への道を切り開いたであろうことは想像に難くない。 |
■ 第6位
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title | WIZZARD BREW[ウィザード・ブリュウ] |
artist | WIZZARD[ウィザード] |
released | 1973年 |
origin | Birmingham, England, UK |
comment | 1位から10位の中でWIZZARD以外は1980年代からレコードで聴いているのだが、WIZZARDだけは2000年代に入ってから配信で聴くようになった。 WIZZARDのことは、1990年代に洋楽雑誌の旧譜を取り扱うような企画で知ったと思うのだが、Roy Wood[ロイ・ウッド]の奇抜なヴィジュアルから色物的な音を想像してしまい、ちょっとCDを買うことに躊躇いがあった。 定額で聴き放題という音楽配信サービスは、そういう「買うのはちょっと...」と思うようなアーティストを躊躇いなく聴くことができるのでありがたい。 聴いてみて驚いたのは、音楽的にはかなり正統派のロックであり、言うなれば、THE BEATLES[ザ・ビートルズ]やTHE BEACH BOYS[ザ・ビーチ・ボーイズ]の系譜なのである。 とにかく曲が良いので、一時期ドハマりしたアルバムだ。 しかし、思い込みがあるのかもしれないが、バンド名をWIZZARDと名乗るだけあり、Roy Woodの書くの曲はどこか「魔法使いっぽい」のである。 |
■ 第5位
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title | SLAYED?[スレイド?] |
artist | SLADE[スレイド] |
released | 1972年 |
origin | Wolverhampton, England, UK |
comment | これ以降、5位から1位までは、一応、順位は付けたが、殆ど同列であり、筆者にとっての「グラム・ロックとはこれだ!」というアルバムである。 否、アルバムというよりは、筆者にとってのグラム・ロックとは、5位から1位までのアーティストなのである。 1970年代に興ったグラム・ロックは、後の1980年代にグラム・メタルとしてアップデートされるのだが、SLADEはそのロールモデルなのではないだろうか? 事実、グラム・メタル・バンドのQUIET RIOT[クワイエット・ライオット]は、SLADEの"Cum On Feel The Noize"をカヴァーして大ヒットを記録している。 そして、2匹目のドジョウを狙って、"Mama Weer All Crazee Now"もカヴァーしたのだが、こちらはどういうわけ"Cum On Feel The Noize"ほどのヒットには至らなかった。 このアルバム「SLAYED?」は3rdアルバムであり、"Mama Weer All Crazee Now"が収録されており、今ではボーナス・トラックとして、"Cum On Feel The Noize"も収録されている。 この2曲に限らず、SLADEはヒット曲が多いので、実のところ一番よく聴くのは、このアルバムではなく、ベスト・アルバム「SLADEST」の方である。 |
■ 第4位
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title | DESOLATION BOULEVARD[危険なブールヴァード] |
artist | SWEET[スウィート] |
released | 1974年 |
origin | London, England, UK |
comment | このバンドも間違いなく、後の1980年代に興るグラム・メタルのロールモデルになっているはずだ。 SWEETらしさという点では、彼らに曲を提供していたMike Chapman[マイク・チャップマン]とNicky Chinn[ニッキー・チン]の手を離れた4th「GIVE US A WINK」だと思う。 しかし、グラム・ロックらしさとなると、この3rd「DESOLATION BOULEVARD」なのである。 初めてSWEETを聴いた時に驚いたのは、当時リアルタイムで聴いていたグラム・メタルに物凄く似ていたことである(実際にはグラム・メタル・バンドがSWEETに似ているのだが)。 とにかくSWEETの曲は、当時聴いていたSTRYPER[ストライパー]、BLACK 'N BLUE[ブラック・アンド・ブルー]、KING KOBRA[キング・コブラ]あたりのグラム・メタル・バンドの曲とイメージが重なるのだ。 このアルバムの収録曲では無いが、2nd「SWEET FANNY ADAMS」収録の"Set Me Free"は完全にグラム・メタルであり、初めて聴いたときはRATT[ラット]の曲に聴こえてしまった。 |
■ 第3位
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title | SCHOOL'S OUT[スクールズ・アウト] |
artist | ALICE COOPER[アリス・クーパー] |
released | 1972年 |
origin | Detroit, Michigan, US |
comment | このリストに入れたアーティストの中で、ALICE COOPERは「どのアルバムを選ぶか」を最も迷ったアーティストだ。 バンドALICE COOPERとしての3rd「LOVE IT TO DEATH」から7th「MUSCLE OF LOVE」、ソロ・アーティストAlice Cooperとしての1st「WELCOME TO MY NIGHTMARE」、この範囲のアルバムは全て好きだ。 1980年代にグラム・メタルの波に乗って復活してから制作したアルバムにも名盤が多い。 一番好きなアルバム(一番聴いた回数の多いアルバム)は「WELCOME TO MY NIGHTMARE」だが、グラム・ロックらしさとなると「SCHOOL'S OUT」だと思う。 音楽的にはハード・ロックの要素が強いのだが、ALICE COOPERの曲には何とも言えない「いかがわしさ」がある。 そして、Alice Cooperという人はグラム・ロックのみならず、ショック・ロックの始祖でもある。 この人の存在が無かったら、KISS[キッス]、W.A.S.P.[ワスプ]、LIZZY BORDEN[リジー・ボーデン]、MARILYN MANSON[マリリン・マンソン]の登場は無かったかもしれない...というのは言い過ぎだろうか? |
■ 第2位
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title | NEW YORK DOLLS[ニューヨーク・ドールズ] |
artist | NEW YORK DOLLS[ニューヨーク・ドールズ] |
released | 1973年 |
origin | New York City, New York, US |
comment | このアルバムにつていは、殆ど書くことが無い。 一言「ロックン・ロール」、それだけで充分な気がする。 ロックン・ロール・バンドと呼ばれているバンドでも、実はロックン・ロール以外の成分を多く含んでいることがある。 世界最高峰のロックン・ロール・バンドTHE ROLLING STONES[ローリング・ストーンズ]も、時期によってサイケデリック・ロック、スワンプ・ロック、ファンク、レゲイ、ディスコ等、色々なジャンルの成分を取り入れている。 NEW YORK DOLLSの場合、殆どロックン・ロール一本なのである。 NEW YORK DOLLSは、この1st「NEW YORK DOLLS」と2nd「TOO MUCH TOO SOON」の2枚のみで、早々に解散(空中分解?)してしまったため、他の成分を取り入れる時間が無かったというのもあるだろう。 筆者は、このアルバムを聴かなかったら、ここまでロックに嵌ることは無かったような気がする。 言うなれば、筆者の人生を狂わせたアルバムなのである。 |
■ 第1位
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title | THE SLIDER[ザ・スライダー] |
artist | T. REX[T・レックス] |
released | 1972年 |
origin | London, England, UK |
comment | 結局のところ、1位はこのアルバムになった。 「5位から1位までは、一応、順位は付けたが、殆ど同列」と書いたものの、やはり、1位はT. REXでありMarc Bolan[マーク・ボラン]なのである。 前身のTYRANNOSAURUS REX[ティラノザウルス・レックス]には、それほど嵌らなかったのだが、T. REXのアルバムは全部好だ。 一番好きなのは2nd「ELECTRIC WARRIOR」なのだが、グラム・ロックらしさで選ぶとなると、この3rd「THE SLIDER」になる。 このアルバムに収録されているギラギラに輝く曲達こそ、グラム・ロックなのである。 もしかすると、真のグラム・ロックと言えるのはT. REXだけなのかもしれない。 そして、これもまた、もしかすると、Marc Bolanが本当にやりたかったのは、TYRANNOSAURUS REXでやっていたようなサイケデリックなフォーク・ロックの方なのかもしれない。 奥さんの運転する車の事故により、29歳という若さで亡くなってしまうとは、何とも儚い人である。 |
【総括】
筆者は13歳(1982年)でロックを聴き始めたのだが、初めてリアルタイム以外のロックを掘り下げて聴いたジャンルがグラム・ロックだ。
切っ掛けは、当時、読んでいたロック雑誌「音楽専科」に掲載されていた「グラム・ロックをふりかえる」的な記事である。
いつも、このようなランキング・リストを作る時に感じることは「難しい」ということだ。
通勤電車の中で、改めて色々なアルバムを聴き直し、文章を書くのには1週間くらいかかっている。
実質的な使用時間は「2時間×7日=14時間」くらいだと思う。
今回、グラム・ロックをテーマにして個人的なベスト10を作ったわけだが、一般的にグラム・ロックとして扱われているアーティストでも、自分にとってはグラム・ロックらしくないアーティストが多いことにも気付いた。
David BowieやROXY MUSICは大好きなのだが、筆者にとっては、グラム・ロックというよりはアート・ロックなのである。
David BowieとROXY MUSICではなく、もっとグラム・ロックらしいMUD[マッド]とHELLO[ハロー]を入れようかと思ったのだが、ちょっとマニアックすぎるので入れなかった。
COCKNEY REBEL[コックニー・レベル]も頭の中にあったのだが、これもグラム・ロックというよりはアート・ロックなのである。
MOTT THE HOOPLE[モット・ザ・フープル]やSILVERHEAD[シルヴァーヘッド]も大好きなのだが、音楽的にはあまりにも王道のハード・ロックであり、グラム・ロックを意識して聴いたことがない。
グラム・ロックは、ハード・ロックやプログレッシヴ・ロックと異なり、音楽的な共通性が殆どない。
人によって、グラム・ロックの定義は様々だろう。
今回は筆者自身の「私の好きなグラム・ロックのアルバム」を選んだのだが、他の人が選ぶ「私の好きなグラム・ロックのアルバム」を見てみたくなった。