「グラム・メタル・バンドは女やセックスのことばかり歌っていて、実にけしからん!」という輩がいるが、そんな批判はお門違いも甚だしいことだと筆者は思っている。
そもそも、ロックン・ロールとは、女やセックスのことを歌うところから始まっている。
ロックン・ロールを始めるの人の多くは10代の男、つまり、思春期の男であり、思春期の男の頭の中なんて、99%は女とセックスのことで一杯なのである。
残りの1%で、どうにかこうにか、生命維持活動に必要なことをしているようなものだ。
思春期の男なんていうものは、可愛いあの娘に近づくにはどうしたらいいのか、そして、可愛いあの娘とセックスする方法はないものか、そんなことばかり考えているのである。
女性からはお叱りをうけること覚悟で書くなら、可愛いあの娘が無理なら、そこまで可愛くないあの娘でもいいという不埒なことを考えているのである。
「いや、オレはそんなことを考えたことはない」という男がいたなら、そんな奴は間違いなく100%の大嘘つきである。
グラム・メタルとは思春期の男のリビドーをストレートに表現したロックン・ロールであり、それ故、多くの共感を得られたのである。
今回取り上げているWARRANT〔ウォレント〕の2ndアルバム「CHERRY PIE」は、そんな素晴らしきグラム・メタルの大傑作アルバムだ。
ローラースケートを履いたミニスカートのウエイトレスのアルバム・カヴァーも最高だし、「CHERRY PIE」というアルバム・タイトルも最高だし、収録曲はどれもこれもフック満載のキャッチーなハード・ロックであり、ちょっとした軽薄さも含めて非の打ち所がない。
何よりも、このアルバムに「いけないチェリー・パイ」という邦題を付けた人は天才だ。
WARRANTは1stアルバムのリリースが1989年であり、「LAメタル最後の大物」という触れ込みで紹介されていた記憶がある(グラム・メタルのことを当時の日本ではLAメタルと言った)。
WARRANT以降も、SLAUGHTER〔スローター〕やFIREHOUSE〔ファイアーハウス〕等、商業的に大きな成功を修めたグラム・メタルの大物はいる。
しかし、何故か、筆者にとって、グラム・メタルの繁栄と衰退を最も感じさせてくれる最後のバンドと言えば、それはWARRANTなのである。