Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

#0440.2) 好きなグラム・メタルのアルバム10選(1980-1984)

■ 第10位

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title METAL HEALTH[メタル・ヘルス?ランディ・ローズに捧ぐ?]
artist QUIET RIOT[クワイエット・ライオット]
released 1983年
origin Los Angeles, California, US
comment  これはQUIET RIOT名義としては3rdアルバムなのだが、1stと2ndは日本でしかリリースされていないため、母国の米国ではこれがデビュー・アルバムにあたる。
 収録曲の"Cum on Feel the Noize"は、70年代に人気を博した英国のグラム・ロック・バンドSLADE[スレイド]が放ったヒット曲のカヴァーであり、QUIET RIOTにとっても全米チャート5を記録したキャリア最大のヒット曲である。
 アルバム自体も全米チャート1位を記録しており、メタル系としては初の快挙らしい。
 ただし、ジャンルの捉え方は様々なので諸説入り乱れている。
 はっきりと言い切れるのは、これこそが80年代に勃発するメタル・バブルの切っ掛けを作ったアルバムであるということだ。
 このアルバムがなければ、MÖTLEY CRÜE、RATTDOKKENといった後続バンド達の成功への道のりは、もう少し苦戦を強いられたのではないだろうか?

■ 第9位

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title STAKK ATTAKK[スタック・アタック]
artist WRATHCHILD[ラスチャイルド]
released 1984
origin Evesham, Worcestershire, England, UK
comment  このアルバム・カヴァーを見て、ひくようならロック・ファンとしては、まだまだである(ただし、これは日本盤のアルバム・カヴァーらしい)。
 グラム・メタルは米国のバンドがムーヴメントの中心であり、LAに活動の拠点を置くバンドが多かったため、当時の日本では「LAメタル」と呼ばれていた。
 そのような状況下にあって、英国から登場したWRATHCHILDは異色のバンドだった。
 当時の技術に鑑みても相当チープな録音なのだが、それと反比例するかの如く収録曲はポップでキャッチーで楽曲としての完成度が高い。
 当時の英国は、ニューロマンティックや第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンのようなシンセポップ、ポストパンク以降のインディー・ロックがシーンの中心だったので、WRATHCHILDが正当に評価されることはなかった。
 グラム・メタル・ムーヴメントにおける徒花のようなバンドだが、筆者にとって、このアルバムは忘れられない1枚なのである。

■ 第8位

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title SIGN IN PLEASE[サイン・イン・プリーズ]
artist AUTOGRAPH[オートグラフ]
released 1984
origin Pasadena, California, US
comment  AUTOGRAPHは、今回のリストに入れるかどうかを悩んだバンドだ。
 「好きなグラム・メタルのアルバム」というタイトルなので、メタル感を重要視したいのだが、AUTOGRAPHの音楽性はメタル感が薄いのである。
 AUTOGRAPHの音は、グラム・メタルというよりもハード・ポップ、或いは、メロディアス・ハードであり、キッズ達の善良なパパママが聴いても顔をしかめるような要素は殆ど無い(ただし、筆者は英語が苦手なので歌詞の内容は不明だ)。
 それでいて、ヴィジュアル的には完全にグラム・メタルなので、時代性が感じられて面白い存在でもある。
 今回取り上げたのは彼らの1stアルバムなのだが、「本当に新人ですか?」と訊きたくなるほど曲作りが上手い。
 とにかく、楽曲の完成度が高いので、この機会に聴いてくれる人がいるといいなと思い、リストに入れることにした。

■ 第7位

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title BLACK 'N BLUE[ブラック・アンド・ブルー]
artist BLACK 'N BLUE[ブラック・アンド・ブルー]
released 1984
origin Portland, Oregon, US
comment  BLACK 'N BLUEというバンドは、あと1つの「何か」を持っていれば、もっと派手に売れていたのではないだろうか?
 このアルバムは1stアルバムなのだが、この時点で既に曲も良いし、サウンドクオリティも高い。
 70年代に人気を博した英国のグラム・ロック・バンドSWEET[スウィート]の名曲"Action"のカヴァーも、ばっちりと嵌っている。
 メタルとしての重さを持ちながらも、メロディは取っ付きやすく、この時期のグラム・メタル・バンドとしては、あらゆる面で平均点を上回っている。
 しかし、その「あらゆる面で平均点を上回っている」ということが、逆に仇となったのかもしれない。
 同時期のライバルであるMÖTLEY CRÜEやRATTには、良くも悪くもMÖTLEY CRÜEやRATTでなければならない有無を言わせぬ強烈な個性があったが、BLACK 'N BLUEはあまりにも優等生すぎたのではないだろうか?

■ 第6位

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title SHEER GREED[シアー・グリード]
artist GIRL[ガール]
released 1980年
origin London, England, UK
comment  GIRLは、1980年頃に英国で興ったNew Wave Of British Heavy Metalというムーヴメントから登場したバンドだが、最初期のグラム・メタル・バンドでもある。
 GIRLというバンドの価値は、"Hollywood Tease"というメタル史上、否、ロック史上に残る、屈指の名曲を生み出したことに尽きる。
 もし、筆者がミュージシャンで、こんな神がかった名曲を書けたのであれば「もう引退してもいい」とすら思うだろう。
 このGIRLの1stアルバムは、1曲目の"Hollywood Tease"という曲がずば抜けて良すぎるため、2曲目以降が地味に聴こえてしまうのだが、メタルという枠に納まらないような曲も含まれており、実は佳曲が揃った名盤である。
 "Hollywood Tease"は、シンガーのPhil Lewis[フィル・ルイス]が後に参加するL.A. GUNS[エルエー・ガンズ]でもリメイクされることになる。
 ちなみに、Phil Lewisは、SKID ROWスキッド・ロウ]のシンガーだったSebastian Bach[セバスチャン・バック]と並び、筆者が生で見たことのあるミュージシャンの中で最も美しい容姿を持つ人である。

■ 第5位

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title STAY HUNGRY[ステイ・ハングリー]
artist TWISTED SISTER[トゥイステッド・シスター]
released 1984
origin Long Island, New York, US (Ho-Ho-Kus, New Jersey, US)
comment  このアルバム・カヴァーにも写っているTWISTED SISTERのシンガーDee Snider[ディー・スナイダー]は、見てのとおりこのヴィジュアルなのでアホっぽく見えるかもしれない。
 しかし、実際には非常に頭の良い人物であり、それは彼のことについて書かれたWikipediaの日本語版ページを読めば手っ取り早く理解することができる。
 このバンドは、キッズが何を求めているのかを理解しているバンドであり、音楽評論家ではなく、常にキッズの方を見ているバンドだ。
 ヴィジュアルとは裏腹にTWISTED SISTERの音楽性はストレートなハード・ロック/ヘヴィ・メタルであり、このアルバムは彼らがグラム・メタル・ムーヴメントを賢く上手に利用したヒット・アルバムだ。
 バンドの起源はニュージャージーにあるが、その後、ニューヨークに拠点を移し、全盛期のメンバーの殆どがニューヨークの出身である。
 筆者にとって、ニューヨークを象徴するバンドと言えば、NEW YORK DOLLSか、このTWISTED SISTERなのである。

■ 第4位

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title W.A.S.P.[魔人伝]
artist W.A.S.P.[ワスプ]
released 1984
origin Los Angeles, California, US
comment  W.A.S.P.のシンガー兼ベーシスト(後にシンガー兼ギタリスト)のBlackie Lawless[ブラッキー・ローレス]は股間にノコギリを装着しているので、アホっぽく見えるかもしれないが、実はこのミュージシャンも非常に頭の良い人物だ。
 悪の権化のようなヴィジュアルなのでデス・メタルでもやりそうに見えるが、その音楽性は極めて高性能でキャッチーなヘヴィ・メタルである。
 このアルバムは、筆者がヘヴィ・メタルを意識してリアルタイムで買った最初期のアルバムであり、あまりの曲の良さ、そして、カッコ良さにノックアウトされてしまい、1年くらい毎日聴き続けた。
 W.A.S.P.(というよりもBlackie Lawless)は、後に「THE HEADLESS CHILDREN」というシリアスなアルバムや、「THE CRIMSON IDOL」というコンセプト・アルバムを制作するが、その片鱗は既にこの1stアルバムの中にある。
 Blackie Lawlessが描く世界観は独特であり、それは彼がネイティブ・アメリカンをルーツに持つ人物だからなのだろうか?
 とにかくこのアルバムは、完成度の高いヘヴィ・メタルを聴きたい人に、絶対の自身を持ってお薦めできる1枚なのである。

■ 第3位

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title TOO FAST FOR LOVE[華麗なる激情]
artist MÖTLEY CRÜE[モトリー・クルー
released 1981年
origin Los Angeles, California, US
comment  グラム・メタルを好きであろうが嫌いであろうが、多くのロック・リスナーにとってグラム・メタルの象徴と言えば、MÖTLEY CRÜEなのではないだろうか?
 このバンドのベーシストでありブレインでもあるNikki Sixx[ニッキー・シックス]も、TWISTED SISTERのDee SniderやW.A.S.P.のBlackie Lawlessと同様、頭の良い人物である。
 ただし、Nikki Sixxはドラッグのオーヴァードーズにより死にかけているので、その点では愚かな人物だ。
 「グラム・メタル=MÖTLEY CRÜE」というイメージがあるが、MÖTLEY CRÜEのアルバムの中で純粋にグラム・メタルと呼べるのは、この1st「TOO FAST FOR LOVE」と3rd「THEATRE OF PAIN」の2枚だけだ。
 3rdは平凡なグラム・メタルのアルバムだが、この1stはロックの歴史に刻まれたグラム・メタルの名盤中の名盤だ。
 そして、あまり言われないことだが、このアルバムを名盤たらしめているのは、実はMick Mars[ミック・マーズ]のギターなのである。

■ 第2位

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title PYROMANIA[炎のターゲット]
artist DEF LEPPARDデフ・レパード
released 1983年
origin Sheffield, South Yorkshire, England, UK
comment DEF LEPPARDの3rdアルバム「PYROMANIA」、これはグラム・メタル以前にロック・アルバムとして完璧な作品である。
 このアルバムに靡かないロック・リスナーは、相当へそ曲がりなロック・リスナーなのではないだろうか?
 このアルバムはメロディ、コーラス、アレンジ、サウンド、どれをとっても完璧であり、何一つ欠けたところが無く、1曲目の"Rock! Rock! (Till You Drop)"が始まった瞬間から抗いがたい魅力に捻じ伏せられる。
DEF LEPPARDはグラム・メタルという定義からは少し外れると思うのだが、このアルバムが後に現れる多くのグラム・メタル・バンドに与えた影響の大きさは計り知れないものがある。
 何より凄いのは、普段メタル系の音楽を聴かない人までをも巻き込んだことであり、結果として1,000万枚以上の売り上げを記録している。
 ちなみに、次作「HYSTERIA」も傑作なのだが、「HYSTERIA」は「完璧すぎるアルバム」、そして、この「PYROMANIA」は「完璧なアルバム」という具合に、同じ傑作でも微妙にニュアンスが異なる。

■ 第1位

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title OUT OF THE CELLAR[情欲の炎]
artist RATT[ラット]
released 1984
origin San Diego, California, US
comment  このランキング・リストを作ると決めたときから、1位はRATTの「OUT OF THE CELLAR」にすると決めていた。
 このアルバムは骨の髄まで、徹頭徹尾、グラム・メタルなのである。
 自らがラットン・ロールと呼んだ、妖艶でありながらもカジュアルでスポーティなサウンドは唯一無二であり、これこそが筆者にとってのグラム・メタルなのである。
 グラム・メタルは軟弱なイメージを持たれがちだと思うのだが、RATTサウンドには重さもあり、Warren DeMartini[ウォーレン・デ・マルティーニ]のギターはテクニカルだ。
 同じムーヴメントから現れたMÖTLEY CRÜEはトレンドを巧みに取り入れることのできる器用なバンドだったが、RATTはそれができない不器用なバンドなので、4th「REACH FOR THE SKY」以降はセールスを落としてしまうのだが、4thおよび5th「DETONATOR」も筆者にとっては傑作だ。
 復活作となった2010年の7th「INFESTATION」も傑作なのだが、このバンドはメンバー同士の人間関係を悪化させることが多く、安定した活動を継続できないのが残念なところである。

 

【総括】
前回は1970年代の「好きなグラム・ロックのアルバム10選」を書いたので、今回は、そのグラム・ロックから影響を受けた1980年代の「好きなグラム・メタルのアルバム10選」を書くことにした。


ただし、グラム・メタルは筆者が最もレコードやCDを買ったジャンルなので選びたいアルバムが多すぎるため10枚に絞るのが難しい。


よって、今回は1980年~1984年までにリリースされたアルバムを10枚、次回は1985年~1989年までにリリースされたアルバムを10枚選ぶことにした。


筆者はドンピシャのグラム・メタル世代であり、グラム・メタルに対する拘りが強い。


筆者の中におけるグラム・メタルとは、1970年代のグラム・ロックに、AEROSMITHエアロスミス]、KISS[キッス]、AC/DC[エーシー・ディーシー]あたりのエッセンスを加えたものだと思っている。


音楽的にはAC/DCの影響が大きい。


「なぜBON JOVIボン・ジョヴィ]が入っていないのか?」と思う人もいろかもしれないが、筆者の中におけるBON JOVIはグラム・メタルではない。


BON JOVIは好きなバンドなのだが、BON JOVIにはグラム・メタル的な「いかがわしさ」が無いからだ。


EUROPE[ヨーロッパ]も同じ理由でグラム・メタル的ではないと思っているので入れなかった。


EUROPEはこの先「 好きな北欧メタルのアルバム10選 」を書くときがあれば入れたいと思う。


DEF LEPPARDは今回のリストに入れてしまったのだが、やはり同じ理由でグラム・メタルではないと思っている。


ただし、DEF LEPPARDの「PYROMANIA」というモンスター級のアルバムが無ければ、グラム・メタルがあれほどの隆盛を極めることは無かったかもしれないので入れることにした。


HANOI ROCKSハノイ・ロックス]は多くのグラム・メタル・バンドと同世代でありながら、彼らに大きな影響を与えたバンドであり、筆者の好きなバンドの中では殿堂入りの存在なのだが、HANOI ROCKS自体はグラム・メタルではないと思っている。


HANOI ROCKSはこの先「 80年代以降の好きなロックンロールのアルバム10選 」を書くときがあれば入れたいと思う。