#0070.5) 気分はグルービー / 佐藤宏之 【1981~1984年】


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筆者が愛読している「SMELLS LIKE PUNK SPIRIT」というブログがある。


少し前のことだが、そのブログに"ロックンロールプリズナー BY-innocent blue birds-配信スタート ~ROCK'N'ROLL PRISONER~"という記事が掲載された。


この記事で「SMELLS LIKE PUNK SPIRIT」の管理人さんが書かれた"Rock'n'Roll Prisoner"という曲が公開されているのだが、この曲がとても気に入っていて、最近ちょくちょく聴いている。


筆者のブログを読んでおられる方はごく僅かだと思われるが、この"Rock'n'Roll Prisoner"という曲に興味を持たれた方は是非一度聴いて頂きたい。


ここ最近の行儀の良いロックに違和感を覚えている人には大いに共感してもらえる曲になっている。


この"Rock'n'Roll Prisoner"という曲で歌われているロックへの、或いは、ロックン・ロールへの想いを綴ったちょっと青臭いくらいの歌詞を聴いて、自分がロックを聴き始めた若かりし十代の日々を思い出した。


ロックを聴き始めた頃に聴いていた大好きだったバンドのことも思い出したのだが、どういうわけか大好きだったある漫画のことも思い出した。


1981年から1984年にかけて週刊少年チャンピオンに連載されていた佐藤宏之の「気分はグルービー」という漫画だ。


この漫画のストーリーを簡単に説明すると、ロック・バンドをやっている高校生の恋愛や友情を描いた青春漫画である。


バンド名はピテカントロプス・エレクトス、メンバー構成は下記のとおり。


奥田隆(ヴォーカル&ギター)
稲村明人(ギター)
松原明(ベース)、バンドリーダー
友永寿子(キーボード)、主人公の彼女
武藤憲二(ドラムス)、主人公


登場人物の名前が漫画にありがちなキラキラネームではなく、いたって普通の名前なのが良い。


このバンドのどこが好きなのかと言うと、バンド活動の描き方にリアリティのあるところだ。


そもそも作者の佐藤宏之がバンドマンなので、バンド経験者が読むと、「そうそう」とか「あるある」と言いたくなるようなシーンが多い。


この漫画を面白くしている要因の一つは主人公の担当パートがドラムスだということだ。


世の中には色々なバンド漫画があるが、主人公の担当パートはヴォーカルであることが多い。


しかし、ヴォーカルが主人公のバンド漫画というのは、どうにもリアリティが感じられないものが多いような気がする。


バンドというのはどのパートも大切なのだが、バンド経験者の立場から言わせてもらうと、ヴォーカルを主人公にするよりもドラムスを主人公にする方が物語により一層の面白みが加わるような気がしてならない。


繰り返しになるが、バンドというのはどのパートも大切なのだが、筆者はドラムスというパートは非常に重要だと感じている。


ドラムスが小気味よいリズムを刻んでくれると他のパートがまぁまぁでも、けっこう聴いていられる演奏になる。


これが、ドラムスがダメだと総崩れになる。


Terry Bozzio〔テリー・ボジオ〕のように、沢山の太鼓やシンバルを使っての超絶テクが必要だと言っているのではない。


ドラムスというパートは他のパートに比べると、生まれながらの才能が大きく影響するパートのような気がする。


超絶テクを使うわけでもないのに、リズム感のいい奴はスネア一つでも実に小気味よいリズムを刻んでくれる。


そうすると他のパートも自然とのってくる。


もしかすると、これがRock’n’Rollにおける「Roll」の部分なのかもしれない。


今回取り上げた「気分はグルービー」の主人公であるドラマーの武藤憲二がまさにそういうタイプのドラマーとして描かれている。


以下はネタバレを含むので、これから「気分はグルービー」を読もうとしておられる方はこの先を読まないで頂きたい。


筆者がこの漫画で好きなシーンの一つが、コンテスト出場に向けたバンドの練習が行われる合宿のシーンだ。


リーダーでベース担当の松原明(通称・大将)が、バンドで以前からやっている彼の書いたオリジナル曲の新アレンジの楽譜をメンバーに配布する。


その新アレンジがとにかく凝っていて難しい。


バンドの中で唯一楽譜の読めない主人公でドラムス担当の武藤憲二(通称・ケンジ)は、「うちはロックン・ロール・バンドだろ?」と疑問を投げかける。


それに対して大将は、「誰がそう決めた?お前、単純なロックン・ロールばかりやっていて飽きないのか?」と逆質問を投げかける。


バンド・メンバー全員が曲を仕上げるのに苦しみ、特にドラムスのケンジはダブル・アクションが出来ずに苦戦する。


バンド内の人間関係まで悪化する。


ようやく曲が仕上がったところで大将が、「アレンジを元に戻す。うちはやっぱりノリが一番だ」と宣(のたま)う。


ケンジをはじめバンドのメンバー達は呆れながらも、「やっぱり、そうだよな」と喜ぶ。


そう、ロックとは、ロック・ロールとは、技術レベルの高さが圧倒的なアドバンテージにはならないのだ。


こういったバンド関係のシーン以外でも、この漫画の好きな部分がある。


主人公の彼女である友永寿子(通称・ヒサコ)の家庭環境が複雑なのである。


母親が既に他界しており、継母とその連れ子の義姉との関係が難しく、多感な年頃のヒサコを苦しめる。


実は筆者も少々複雑な家庭に育っており、この辺りのストーリーがとても共感できるのである。


先日、この漫画の全13巻を一気に読み直したのだが、改めて名作であることを再確認できた。


復刻してほしい漫画なのだが、登場人物の高校生達が劇中で酒や煙草をガンガンやっているのでコンプライアンス的に復刻はちょっと難しそうである。


今回は番外編として漫画を取り上げてみた。