長期間に渡り解散してた伝説のバンドが再結成して新作をリリースした場合、筆者にとってイマイチな作品になることが多いような気がする。
再結成後の作品にも嵌って、次作のリリースを楽しみにしていたバンドは、筆者の場合、今パッと思いつく限り、NEW YORK DOLLS〔ニューヨーク・ドールズ〕くらいのような気がする。
しかし、NEW YORK DOLLSの再結成は、ヴォーカルのDavid Johansen〔デイヴィッド・ヨハンセン〕とギターのSylvain Sylvain〔シルヴェイン・シルヴェイン〕以外は他界しており、けっこうなキャリアのある新メンバーを迎え入れた形での再結成であり、実質的にはほぼ別のバンドになっていた。
逆に、それほど有名ではなかったバンドが知らぬ間に再結成してひっそりとリリースした新作には、オリジナルの活動期にリリースした作品よりも嵌る場合が多い。
今回取り上げたS*M*A*S*H〔スマッシュ〕の3rdアルバム「GOODBYE W.G.C.」もそんな一枚だ。
ただし、S*M*A*S*Hはオリジナルの活動が1996年に終わり、2004に再結成、2007年には2ndアルバム「ICON」、2014年にはEP「(WITHOUT REGRET.)」をリリースしているので、実は「GOODBYE W.G.C.」はそれほど長い期間をあけてリリースされた作品ではない。
単に筆者がS*M*A*S*Hの再結成を知らなかっただけだ。
今月、偶然にもAmazon Music Unlimitedで「GOODBYE W.G.C.」を見つけたので聴いてみたところ、これが実に良かったのである。
S*M*A*S*Hは1990年代中期に英国で興ったブリットポップ・ムーヴメントのサブ・ジャンルのようなニュー・ウェーヴ・オブ・ニュー・ウェーヴ(以下、NWONW)にカテゴライズされていたバンドなのだが、このNWONWというのがよく分からないムーヴメントだった。
他にはELASTICA 〔エラスティカ〕、MENSWEAR〔メンズウェア〕、THESE ANIMAL MEN〔ジーズ・アニマル・メン〕等もNWONWと呼ばれていたように記憶しているが、これらのバンドのどこに共通点があるのかさっぱり分からなかった。
当時のS*M*A*S*Hの音楽性はSEX PISTOLS〔セックス・ピストルズ〕やTHE CLASH〔ザ・クラッシュ〕等、オリジナルのロンドン・パンクに影響を受けたストレートで粗削りなロックン・ロールであり、はっきり言ってオリジナリティは無かったのだがNWONWと呼ばれているバンドの中では一番好きだった。
まぁ、こういう類のロックン・ロールというのはオリジナリティよりも、まずは心意気であり、ロックン・ロールをやりたいんだという初期衝動が大切なのだろう。
そういうところが可愛くて、どこか憎めないバンドだったのだが、久しぶりのリリースとなった「GOODBYE W.G.C.」は成熟して渋さも感じさせるロックン・ロールになっていたのでちょっと驚いた。
テナーサックスがムードたっぷりに哀愁のメロディを奏でる曲が入っていたりして、「S*M*A*S*Hもこういう曲も書くような歳になったんだな」と思うと感慨深いものがある。
今後も大きな活動が期待できるバンドではないが、次のアルバムのリリースを楽しみに待てるバンドの復活は嬉しいものである。