ロックとダンス・ミュージックの融合と聞いて、多くのロック・ファンが真っ先に思い浮かべるアーティストはTHE STONE ROSES〔ザ・ストーン・ローゼズ〕なのだろうか?
確かに彼らの1stアルバム「THE STONE ROSES」がロック史上に燦然と輝く名盤であることに筆者は一言の異論もない。
筆者も一時期は、ほぼ毎日のように「THE STONE ROSES」のみを聴きまくっていた時期があった。
しかし、「THE STONE ROSES」というアルバムはロックとダンス・ミュージックの融合なのだろうか?
筆者にとって、「THE STONE ROSES」というアルバムは完璧なギター・ロック・アルバムであって、ダンス・ミュージックの要素は殆ど感じられない。
筆者にとって、ロックとダンス・ミュージックの融合と聞いて真っ先に思い浮かぶアーティストは、THE STONE ROSES よりも、むしろ、彼らと同時代に活躍したJESUS JONES〔ジーザス・ジョーンズ〕や、今回取り上げるEMF〔イーエムエフ〕なのである。
EMFはロックとダンス・ミュージックの融合を単純明快に表現したバンドだ。
彼らは、打ち込みによるリズムとハードなギターを融合させて、実に解り易く高性能なロック・ミュージックを作りだした。
そのスタイルは、全米No.1を獲得したヒット曲、"Unbelievable"に顕著だ。
と、書いてはみたものの、実は筆者は"Unbelievable"という曲にそれほど面白みを感じていないし、それが収録された1stアルバム「SCHUBERT DIP」も、"Unbelievable"程のクオリティを持つ楽曲は無いと思っている。
筆者がEMFというバンドが凄いと感じたのは、今回取り上げた2ndアルバム「STIGMA」からなのである。
EMFの評価は、この「STIGMA」以降、下がったのだが、筆者はこれを愛聴していた。
このアルバムは、単にロックとダンス・ミュージックの融合ではなく、「聴かせるロック」として機能しているのだ。
このアルバムには、実に心惹かれるメロディがたくさん収録されている。
そして、このアルバム...と言うよりは、これはこのバンドの特徴だと思うのだが、ヴォーカルの存在感が極めて薄いのである。
例えば、EMFとほぼ同世代であるMANIC STREET PREACHERS〔マニック・ストリート・プリーチャーズ〕のJames Dean Bradfield〔ジェームス・ディーン・ブラッドフィールド〕やSUEDE〔スウェード〕のBrett Anderson〔ブレット・アンダーソン〕等、個性的なシンガー達と比べると、EMFのシンガーであるJames Atkin〔ジェイムズ・アットキン〕は圧倒的にヴォーカルの存在感が薄い。
しかし、その無機質とも言える薄いヴォーカルがEMFの奏でるデジタル・ロックにはピタリとはまっているのである(これは同系統の音楽性を持つJESUS JONESにも言えることだ)。
「STIGMA」というアルバムは、EMFというバンドのカジュアルなイメージからすると意外なほどハードな曲が多い。
完全に忘れ去られた感のあるバンドだが、そんなバンドをあえて取り上げるのもブログを書く楽しみの一つである。