本格的に洋楽を聴き始める前から何となく知っていて、後になってからその曲がどのアーティストの曲かを知ることはけっこうあるのではないだろうか?
筆者にとっては、今回取り上げた10cc〔テンシーシー〕の3rdアルバム「THE ORIGINAL SOUNDTRACK」に収録されている"I'm Not In Love"が洋楽を本格的に聴き始めるだいぶ前から何となく知っていて、「えぇ曲やなぁ~」っと思っていたものの一つだ。
"I'm Not In Love"が10ccという風変わりな名前を持つバンドの曲であり、彼らの祖国である英国で1位、米国でも2位を記録した大ヒット曲であることは洋楽雑誌のMUSIC LIFEを読むようになってから知ったのだと思う。
"I'm Not In Love"のシングルが欲しくて街のレコード店を何件か回ったのだが、どの店でも見つけることができなかった。
そもそも、この曲がシングルとして日本でリリースされていたのかどうかも知らなかったし、この曲が10ccの本国である英国でリリースされたのが1975、筆者がレコード店を回っていた時期は多分1980年代の半ばなので、仮に日本でリリースされていたとしても在庫切れになっている可能性が高い。
結局、当時、よく行っていた輸入レコード店に出向き、そこの店主に「10ccの"I'm Not In Love"が聴きたいねん」と伝えたところ、「これに入ってんで」と言って店主が教えてくれたのが「THE ORIGINAL SOUNDTRACK」というアルバムだった。
筆者は「映画のサウンドトラックかぁ、10cc以外の曲は欲しないなぁ」と思ったのだが、店主が「これ、10ccのアルバムやで」と教えてくれた。
確かにアルバム・カヴァーには10ccと書いてある。
「なんや、10ccが全部の曲書いてるサウンドトラックやん。ほんなら買うわ」と言って購入に至った。
それが、「架空の映画のサウンドトラック」という体で作られたアルバムであることを知ったのは数年経ってからのことだ(気軽にインターネットを使えない時代にはこんなことがザラにあった)。
はっきり言って"I'm Not In Love"以外の曲は全く期待していなかったのだが、"I'm Not In Love"が霞むくらい名曲が詰まっているのに驚かされた。
今では一番好きな10ccの曲が"I'm Not In Love"から"The Film Of My Love"に変わってしまった。