今回取り上げたTHE FLAMING LIPS〔ザ・フレーミング・リップス〕の9thアルバム「THE SOFT BULLETIN」を聴いてみたいと思った切っ掛けは、SUEDEのBrett Anderson〔ブレット・アンダーソン〕が日本の洋楽雑誌の「年間お気に入りアルバムBest10」的な企画で「THE SOFT BULLETIN」を入れていたからだったような気がする。
THE FLAMING LIPSのことは、7thアルバム「CLOUDS TASTE METALLIC」の日本盤がリリースされており、日本の洋楽雑誌のディスクレビューで取り上げられていたので、その頃から知ってはいたが、当時の筆者にとっては特に興味を惹かれるバンドではなかった。
その後、8thアルバム「ZAIREEKA」がリリースされたのだが(これは日本盤がリリースされなかった)、このアルバムは4枚のディスクを同時に再生することで、一つのアルバムとして完成するという代物であり、「こんなもん、プレイヤー4台持っとる奴しか聴けへんやないか、なんちゅう乱暴なことすんねん」と感じてしまい、THE FLAMING LIPSに対して全く良い印象を持てなくなっていた。
ただし、上記のとおり、SUEDEのBrett Andersonが「年間お気に入りアルバムBest10」で「THE SOFT BULLETIN」を推していたことは大きかった。
当時の筆者はSUEDEが...と言うよりはBrett Andersonが放つ「英国労働者階級の美学」のような世界に嵌っており、この人が推しているアーティストはどうしても聴かずにはいられなかったのである。
「THE SOFT BULLETIN」は日本盤もリリースされており、近所のCDショップJEUGIA(ジュージヤと読み、京都では老舗の音楽関連事業者)で簡単に購入できた。
当時(今も)、もう何十年も万華鏡なんて覗いていなかったのだが、「THE SOFT BULLETIN」を聴いた時、次から次へと再生される曲たちのドリーミーな感触が、まるで万華鏡と覗いているような錯覚に見舞われた。
そして、どうにも落ち着かないバタバタしたドラムとWayne Coyne〔ウェイン・コイン〕のヴォーカルのヘタレっぷりが、そのドリーミーな感触に拍車をかけているのである。
お世辞にも上手いとは言えない演奏...はっきり言ってしまうとプロのバンドとしては下手な部類に入る演奏は、音楽に真面目さを求める人には向かないのかもしれない。
筆者は、演奏は上手いに越したことはないと思っているのだが、上手いだけでは成立しないのがロックだと思っているので、こういうのもけっこう楽しんで聴けてしまうのである。