ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕の2ndアルバム「DIRT」、これはもう手の付けられない名盤である。
筆者にとってはリアルタイムで購入して聴いたアルバムだが、2020年の今日に至るまで、その価値は全く色褪せてない。
1990年代初頭に勃発したグランジ・ムーヴメントからは数多くの名盤が登場したが、どうしてもベスト3を選ばなければならないのであれば、筆者はNIRVANA〔ニルヴァーナ〕の「IN UTERO」、STONE TEMPLE PILOTS〔ストーン・テンプル・パイロッツ〕の「PURPLE」、そして、ALICE IN CHAINSの「DIRT」を選ぶ。
そして、この3バンドのシンガーは天寿を全うすることなく亡くなっており、3人のシンガーの死に関してはドラッグが直接または間接的に関与している。
ALICE IN CHAINSのシンガーLayne Staley〔レイン・ステイリー〕はドラッグのオーバードーズにより、2002年に34歳という若さで亡くなった。
Layne Staleyの歌声が大好きだったので残念で仕方がないし、「なんで、ドラッグみたいなしょーもないもんに手ぇ出してけつかんねん、アホ!」って言いたい。
しばしば、「ドラッグが素晴らしい芸術を生み出す」という物言いを耳にするが、筆者はそんなことはある訳がないと思っているし、人間は心身ともに健康であってこそ良い成果物を生み出せるのである。
健康な時に生み出した良い成果物が世に出て高い評価を得る頃に、それを生み出した本人がドラッグでボロボロになっているため、あたかもドラッグが良い成果物に関与しているかのように錯覚してしまうだけのことだ。
「DIRT」で聴けるLayne Staleyの声は、まだかなり元気で実に艶やかである。
リード・ヴォーカリストのLayne Staleyと、リード・ギタリストのJerry Cantrell〔ジェリー・カントレル〕の二人による美しいヴォーカル・ハーモニーは聴くものを昇天させ、Jerry Cantrellのテクニカルなギターがそれに華を添える。
オープニングの"Them Bones"からエンディングの"Would?"まで、その至福の一時が絶え間なく続く。
Layne Staleyが元気でいてくれたら、この「DIRT」と同じくらいの名盤を何枚も生み出せたはずだ。
Sex, Drugs & Rock 'n' Rollなんてものはポーズだけにしておけば良いのであって、本当にやってしまったら笑い話にもならないのである。