PEARL JAM〔パール・ジャム〕の1stアルバム「TEN」はリリースと同時に購入して聴いたのだが正直なところ最初はイマイチな印象だった。
シアトル・グランジではPEARL JAMより先に聴いていたNIRVANA〔ニルヴァーナ〕、SOUNDGARDEN〔サウンドガーデン〕、ALICE IN CHAINS〔アリス・イン・チェインズ〕の方が圧倒的に好きで、それらと比較した場合、PEARL JAMの「TEN」はモッサリしていると言うか、田舎っぽいと言うか、曲は良いのだが、どこか垢抜けない印象があった。
それでも度々CDラックから「TEN」を取り出して聴いてしまう理由はEddie Vedder〔エディ・ヴェダー〕という稀代のシンガーの深遠な歌声が聴きたかったからである。
言うなれば「TEN」というアルバムは、ストレートパンチでぶっ飛ばされるようなアルバムではなく、ボディブローのようにジワジワと効いてくるアルバムだったのである。
そんなこんなで2ndアルバム「VS.」がリリースされるという情報を洋楽雑誌でキャッチし、「まぁ『TEN』くらいのアルバムやったらえぇやろ」という、ちょっと舐めた気持ちで「VS.」を購入して聴いたのだが、このアルバムは見事なストレートパンチだった。
CDを再生し、1曲目の"Go"が始まって、ものの数十秒でノックアウトされたのである。
よく言われることだが、初期のPEARL JAMというバンドはシアトル・グランジ勢の中で最も古典的なハード・ロック色が強い。
筆者のような、1980年代のメタル・バブルに洗礼を受け、そこから遡って1970年代のハード・ロックを掘り起こし、そこにドップリと嵌った者にとって、PEARL JAMの「VS.」は最も入り易いグランジのアルバムなのではないかと思う。
グランジというと、1990年代初頭に登場した(当時の)新しいロックなわけだが、PEARL JAMの音楽性にはこれと言った新しさは殆ど無く、むしろ1970年代に通ずるストレートなアメリカン・ハード・ロックなのである。
また、このバンドは、特にシンガーのEddie Vedderはドラッグとは殆ど無縁であり、今でも生き続けているという逞しさは尊敬に値する。
グランジというジャンルからは残念ながら多くの死者が出てしまったが、大切な命を自殺やドラッグで散らしてしまう人よりも、たとえ無様な姿になったとしても地に足を付けて逞しく生き続ける人の方に筆者は共感する。
PEARL JAMには、この先70歳になっても80歳になっても元気で頑張り続けて欲しいものである。