Johnny Thunders[ジョニー・サンダース]は新たなキャリアをスタートさせる時に必ず名盤をリリースするミュージシャンだった。
NEW YORK DOLLS[ニューヨーク・ドールズ]の1stアルバム「NEW YORK DOLLS」(1973年)、THE HEARTBREAKERS[ザ・ハートブレイカーズ]の1stアルバム「L.A.M.F.」(1977年)、ソロとしての1stアルバム「SO ALONE」(1978年)。
いずれもロックン・ロールの歴史に燦然と輝く名盤中の名盤であり、この3枚を聴いただけでJohnny Thunders[ジョニー・サンダース]というミュージシャンが稀代のソングライターであることが充分に分かるはずだ。
しかし、この人は自身の持つ稀代の才能をドラッグで潰してしまった残念な人でもある。
Johnny Thundersは1952年の生れであり、ドラッグに塗れたロックン・ロールを地で行く人生を送り、1991年にドラッグのオーバードーズにより38歳という若さで死んでしまった。
こういう死に方をしたミュージシャンには妄信的な信者が多い。
くだらないなと思う。
Johnny Thundersの価値は、「若くしてドラッグで死んだ」ことにあるのではなく、「優れた曲を沢山書いた」ことであり、それが全てだ。
筆者はドラッグに手を出すような人間は救いようの無い愚か者だと思っている。
筆者の近くには生まれながらの障碍で苦労している人がいるので、健康に産んでもらっているにも関わらず、自ら不健康になるようなことをする人はどうしても軽蔑の対象となる。
ただし、人間は誰しも過ちを犯すものなので、一度ドラッグに手を出しても、悔い改めてクリーンに戻れればそれで良いと思っている。
Johnny Thundersの場合は、彼の周りに彼のことを真剣に考えてくれる人が居なかったのかなと思うことがあり、もし、それが事実であるなら悲しいことだと思う。
冒頭に挙げた「NEW YORK DOLLS」、「L.A.M.F.」、「SO ALONE」の3枚は甲乙つけ難い名盤中の名盤だ。
しかし、どうしても1枚選ばなければならないのであれば「L.A.M.F.」かなと思う。
筆者がこのアルバムを初めて聴いたのは1984年にリリースされた「L.A.M.F. REVISITED」というオリジナルとは曲順の異なるリミックス盤なのだが、個人的には"One Track Mind"で始まるREVISITEDよりも"Born to Lose"で始まるオリジナルの方が好きだ。
「L.A.M.F.」にはJohnny Thunders単独のペンによる曲だけではなく、もう一人のギタリストWalter Lure[ウォルター・ルー]や、DOLLS時代からの相棒であるドラマーのJerry Nolan[ジェリー・ノーラン]のペンによる曲も収録されているが、それも含めてこのアルバムはロックン・ロールとして完璧である。
有名な"Chinese Rocks"も収録されており、実はこの曲がJohnny Thundersではなく、Dee Dee Ramone[ディー・ディー・ラモーン]とRichard Hell[リチャード・ヘル]のペンによる曲だということは、けっこう時間が経ってから知って驚いたものだ。
ちなみにこのアルバムのアーティスト名表記がJohnny Thunders & THE HEARTBREAKERSなのか、或いは、THE HEARTBREAKERSなのか、どちらが正式なのかが未だに分からなくてモヤっとしている。