今回取り上げているTHE YOUNG GODS〔ザ・ヤング・ゴッズ〕はスイスのインダストリアル・ロック系アーティストだ。
スイスという国名から筆者が連想するのは永世中立国であるということ、そして、世界的な航空機・軍需企業のSAAB〔サーブ〕および同社が開発した戦闘機のサーブ35ドラケンだ。
そう言えば、同社が開発したサーブ900という車もバブル期の日本ではそこそこ人気があり、当時の筆者のバイト先の店長がサーブ900に載っていたことを今思いだした。
とにかくスイスから連想できることと言えばそれくらいであり、ロックのイメージとは結び付きにくい国である。
THE YOUNG GODS以外で聴いたことのあるスイスのアーティストとなると、ハード・ロック・バンドのKROKUS〔クロークス〕と、ブラック・メタル・バンドのCELTIC FROST〔セルティック・フロスト〕くらいのような気がする。
THE YOUNG GODSは冒頭に書いたとおりインダストリアル・ロック系アーティストなのだが、米国のMINISTRY〔ミニストリー〕やNINE INCH NAILS〔ナイン・インチ・ネイルズ〕とはかなりテイストの異なる音楽性を持つアーティストだ。
確かにTHE YOUNG GODSの音楽性もインダストリアル・ロックらしいマシンナリーな響きはあるのだが、MINISTRYやNINE INCH NAILSほど力で捩じ伏せてくるような圧迫感は無い。
今回はそんなTHE YOUNG GODSの2ndアルバム「L'EAU ROUGE」を取り上げてみた。
このアルバムは19世紀の欧州に在りそうな場末の劇場をイメージさせる曲、"La fille de la mort" ("The Daughter of Death")で幕を開けるのだが、この曲が醸し出す「今から何が始まるのだろう」と思わせるワクワク感がたまらなく良い(ちなみに4曲目の"Charlotte"も似た感じの曲である)。
今までいくつかのインダストリアル・ロック系アーティストを聴いてきたが、その中でもTHE YOUNG GODSは極めて個性的なアーティストだ。
インダストリアル・ロックでありながら何故か静寂を感じさせるのである(ただし、普段ロックを聴かない人の耳には十分に激烈な音ではあるのだが)。
なおTHE YOUNG GODSは、あのDavid Bowie〔デヴィッド・ボウイ〕が自分のお気に入りとしてその名を挙げていたアーティストなのだが、確かにこのアルバムを聴いていると、1990年代以降におけるDavid Bowieの音楽性への影響を薄っすらとではあるが感じ取ることが出来る。