1980年代の米国からはBAD BRAINS〔バッド・ブレインズ〕、FISHBONE〔フィッシュボーン〕、LIVING COLOUR〔リヴィング・カラー〕、24-7 SPYZ〔トゥエンティ・フォー・セヴン・スパイズ〕等、メンバーが黒人で構成されているロック・バンドが登場し、メディアは彼らのことをブラック・ロックと呼んでいた。
しかし、ロックとは黒人音楽のブルースから発展した音楽であり、ロック黎明期の1950年代にはChuck Berry〔チャック・ベリー〕、Little Richard〔リトル・リチャード〕、Bo Diddley〔ボ・ディドリー〕、Fats Domino〔ファッツ・ドミノ〕、Screamin' Jay Hawkins〔スクリーミン・ジェイ・ホーキンス〕等、黒人のロックン・ローラーがいて、彼等こそがロックン・ロールの始祖なのである。
なのでBAD BRAINS、FISHBONE、LIVING COLOUR、24-7 SPYZ等をブラック・ロックと呼んでいるメディアには違和感を覚えていたのだが、案の定この呼び方は定着しなかった。
そんな中、1992年にラッパー(ヒップ・ホップMC)のIce-T〔アイス・ティー〕が、メンバー全員黒人で構成されるヘヴィ・メタル・バンドBODY COUNT〔ボディ・カウント〕を率いて今回取り上げているセルフ・タイトルの1stアルバムをリリースした時は鮮烈な印象があった。
このアルバムのリリース情報は当時読んでいた洋楽雑誌で知ったのだが、直感的に「これは絶対に聴いておかなければ」と思い、試聴もせずにCDショップに買いに走った。
まぁ、これはBODY COUNTに限ったことではなく、当時は簡単に試聴などできる時代ではなかったので、CDを買うときの頼りは直感くらいしか無かったのだが。
BODY COUNTは洋楽雑誌でヘヴィ・メタルとして紹介されていたが、たぶん彼らの音はヘヴィ・メタルの原理主義者が聴いて受け入れられる類のものではないだろう。
スラッシュ・メタル的なリフの鋭さや、王道ヘヴィ・メタル的な泣きのギターもあるのだが、そこにIce-Tのヴォーカルが乗ると一気にヒップ・ホップ感が増すのである。
つまりはラップ・メタルということになると思うのだが、ANTHRAX〔アンスラックス〕とPUBLIC ENEMY〔パブリック・エナミー〕がコラボした"Bring the Noise"のようなカラッとした感じはなく、暗黒感の漂うラップ・メタルとなっている。
正直なところ、BODY COUNTというバンドはアルバム1枚限りの余興的なプロジェクトだと思っていたのだが、途中3年ほど解散していた時期はあるものの、2020年の現在でも活動を続けているのはちょっと以外でもある。